意味深な事ばっかり言ってたら1000年後の未来に跳ぶ100人の英傑に選ばれた男   作:まだ早い

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記念すべき10万字に到達しました。
ここまで来る事が叶ったのは皆様のおかげです。
今後も高評価と感想の程よろしくお願いします。







16話:10傑とはつまり

 

 

 引き続きアルベルが悪魔を1撃死させたり、僕やアリスがギミックを解いたりして探索している最中。

 

 知っての通り、現状僕たちにはかなりの余裕がある。

 族長だけはなんか険しい表情だったり困惑だったり諦めだったりとコロコロ表情を変えてるけど、僕としてはそれはそれで非常に良い感じなので放置している。他2人も特に気にしてないしね。

 

 そのためアリスが僕に対して。

 

「ねえ、フェルナンド。そもそも水晶宮って何なの?」

 

 遂にその質問が来たか。

 というかむしろ今まで良く我慢してくれていたよね。

 

「そうだな……私は建設に携わっていたわけではないから又聞きにはなるが、構わないか?」

 

「俺も興味があるな。それで構わないから聞かせて欲しい」

 

 随分と楽しそうな顔をしているアルベル君。

 あの4つの水晶ギミックを見てからというもの、アルベルもアリスもかなり面白そうといった雰囲気を出しているからね。

 

 まあ僕も同じなんだけど。

 やっぱり未知なる冒険を楽しんでこその100英傑であり、その最上位たる2人だろう。

 

「フッ……承知した。まず、水晶を使用する魔法は数多く存在する。それは理解出来るだろう?」

 

「魔法やら何やらで色々反応を見せるのだし、そうなのでしょうね」

 

 アリスの言う通り、そして僕が見せたように水晶は魔法で様々な反応を見せる物質であり、占星魔法など様々な術の触媒となっていた。

 質の差によって効果が変わるなんてのは最早言うまでもなく。

 

 そして上質な水晶を使う必要がある以上、間口が狭く庶民にはなかなか手の届かない魔法の1つだった。

 まあ程度の差はあれ、庶民には難しいというのは魔法全般に言える話ではあるんだけど……特に厳しい種別の1つだったと思ってくれたらいい。

 それにお金持ちでもわざわざ数ある選択肢の中からこれを選ぶか? となっていたわけで。

 つまり、一言で表すと不人気魔法だったというわけだ。

 

「ならば、建物を水晶にしてしまえば研究が捗るのではないか? といった発想で建設が決められたのだそうだ」

 

「ええ……?」

 

 ドン引きするアリス。

 うん。僕も初めて聞いた時、凄いアホみたいな発想だと思ったからね。

 他の利点として、世界最高の学術院の建物の1つが丸々水晶ならば、水晶を使う魔法に手を出してみようと考える人が増えるだろうという考えについては理解出来るけど……でも、いくらなんでもねえ。

 

 なんか市場に出る水晶の量やここで大量に消費する事による価格高騰を加味しても宣伝のメリットの方が大きいだろうみたいな話になったらしいけど……その辺りの話は難しいからうんうん頷くだけだったな。

 

「ふっ……面白い発想じゃないか。俺はそういうのは好みだがな」

 

「理事長も同じ事を言っていた。当然、コストは極めて嵩んだとの事だったが」

 

 建物全体が研究に使えるレベルの質を持った水晶だからね。

 お値段がどうなるのかはお察しである。

 

 ……そんなネタみたいな発想で不人気魔法のために小さな国なら簡単に買えそうな費用を出す理事長ってほんとイカれてるよね。

 あの人は基本的にはめちゃくちゃ理性的だけど、やっぱり一部おかしいというか、目的の為なら他を気にしない超マッドというか。

 

「コストだけで済む話なの? 耐久性とか加工性とか実現の為には色々な問題がありそうなのだけれど」

 

「当時の世界最高の職人たちが集結してその辺りを解決したと聞いている。故に、再現などはそうそう叶わないとな」

 

「なるほど……だからあなたはずっと、何故ここに水晶宮が? と言っているのね」

 

 そうなんだよね。

 少なくとも1000年前に新世界計画を敢行したあの日の時点では、これを建設するだけの人材も資源も既になかった筈。

 つまりこれを建てたのは恐らく人類ではないだろうという予測になるわけで。

 

「加えて言えば、水晶宮は今まで私が語ってきたような意図を持って建設された物だ。しかし、これは……」

 

「確かにそうね。見栄えは凄いし初見の探索としてはとても楽しいけれど、この遺跡の内装を水晶で形作る意味は今のところ見受けられないわ」

 

「そうだな。神玉とやらを祀るだけならば、別に普通の遺跡だろうと問題ないというのは俺でも理解できる」

 

 わざわざここまでお高い遺跡を建設したところで住人が悪魔だからね。

 宝の持ち腐れでしかない状態になっている。

 仮に悪魔に高い知性があって、水晶を利用した魔法を使うというならば話は変わるんだけど……ならばこうしてアルベルに無謀な突撃を繰り返して処理されるような醜態は晒さないだろうし。

 

 ……ん? ダンジョンの演出をここまで真面目に考えるのは野暮? 

 確かにそれはそうかも。

 

「……全てが驚嘆すべき情報だ。やはり貴殿らはあの天帝の……」

 

 

 という感じで、だいぶ奥まで進んだところ。

 

「ほう……あからさまに主の部屋といった雰囲気の大部屋に出たな。全体的に良い景観だ」

 

「そうね。なんか明らかに奥を守っていますよ感を出している悪魔がいるし。……はあ。今回はアルベルが担当なのよね? 仕方ない……」

 

 大部屋とそこを守るボス悪魔らしき奴を見て感慨深そうな声を出す『白髪理系』に反してアリスはめちゃくちゃ残念そうにしている。

 まあ、今回彼女は感知とギミック解除だけで戦闘は一切していないからね。

 普通に考えたら十分すぎる働きではあるんだけど、100英傑序列3位のアリスがその程度で満足するはずもなく。

 

「……龍帝の伝記によると、神玉の守護者は神獣に互する力を持つとの事だったが……貴殿らからすれば雑兵か」

 

 へー。

 あの神獣に匹敵するんだー。

 それは強そうだねー。

 

 ……いや、仮にアルベルとアリス無しの残りメンバーで挑もうとしたら結構な相手だと思うけどね。

 

 見た目が他の悪魔と比較して明らかになんか厳ついし。

 単純に1回りデカいのと、顔も他の個体より凶悪な感じがする。

 例によって僕では何をどう足掻こうと勝てないだろう相手だ。

 

 うーん。仮に2人なしで戦うなら、とりあえずラナリアを中心としてカルロスが二の矢。残りが魔法で補助といった感じか。

 複数人で協力すれば流石に勝てるだろうとは思うけど、ギャル1人だと死闘になりそうな予感がする。

 

 仮にラナリアがかつて使っていた魔法を今でも使えるなら楽勝なんだろうけど……あのギャルが弱体化魔法なんていうニッチなジャンルに対して、新世界に来てからまだ1週間も経っていない現状で手を出してるのかと言われるとねえ。

 

 ……そう考えると、カルロスにとってはめちゃくちゃ良い経験になりそうな感じの相手だな……

 新世界の主人公はやっぱり彼なのかもしれない。なにせ強さ的に丁度いい感じだからね。

 けど、主人公候補なのに遺跡探索の機会を得られなかったのはかなりのマイナスだな。

 まあ人選決めたの僕なんだけど。

 

 やはりアルベルとアリスは適当に理由を付けてどこかに連れて行かなければ(3度目の決意)。

 

 それはともかく。

 

「フッ……確かに強大なる敵だろうが、アルベル1人で十分だろう。任せたぞ」

 

「ああ。任された」

 

「……次の遺跡探索では私が戦うわよ」

 

 渋々といった感じの銀髪戦闘狂。

 別にいいけど、神獣と同じくらいの強さって事はどうなるのかはお察しじゃないかな? 

 

 というわけで、アルベルが1人でボス悪魔へと向かっていき。

 

『メ……ャ……グオオオオ!!』

 

 近付いてくる『白髪理系』を見た奴は何やら吠えてから魔法を使おうとする姿を見せる。

 けど、うん。それじゃあダメだな。

 

「遅すぎて欠伸が出る」

 

 言いながらアルベルは超高速で奴に近付き、魔斧ボレアスで悪魔を切り裂いた。

 僕には彼の動きが速すぎて全く目で追えなかったし、悪魔もきっとそうだろう。

 当然、あっさりと真っ二つにされた悪魔から再生する気配はまるで感じられない。

 

 うん。やはりこうなったか。

『グオオオオ』とか言いながら力やら魔法やらを溜める時点であまりにも遅すぎるからね。

 奴はアルベルと戦う事の出来るレベルに全く到達していない。

 

 でも、うーん。

 何度も何度も言うんだけど、味方側が強すぎるよなあ。

 ボスを見せ場0で退場させてしまうというのは、英雄譚としてはかなりのマイナスだ。

 悪いのはアルベルやアリスの方ではないんだけど……ねえ。

 

 遺跡探索自体は楽しかったとはいえ……真なる理想を追い求めるにはやはり困難が付きものといったところなのだろう。

 

「強いわね、アルベル。未だに全く本気を出していないし……結局この遺跡探索だと強さの欠片しかわからなかった」

 

「フッ……それは君も同じだろう?」

 

「それはそうだけれど……」

 

 何やら考え込む様子を見せるアリス。

 自分ならどうやって彼と戦うのかを考えてるのかな?

 

「……アルベル殿は、この遺跡において1人で全ての戦いを担いながら一切の疲労を感じさせぬ……体力までも無尽だというのか……」

 

「強者に持続力は必須だからな。アルベルもアリスも、耐久戦においても他に遅れを取る事はあるまい」

 

 とはいえ、2人くらいの実力者になると火力が高すぎて持久戦にはそうそうならないとは思うけど。

 実際、アリスはアルカディアで弟子の女の子に訓練を付ける時以外は大体一瞬で戦いを終わらせていたからね。

 

 後は、逆に彼女が理事長からの訓練を受ける時は長々と戦っていたけど、あれはあの人が……いや、待てよ? 

 

 考えてみると。

 新世界計画によってあの人も記憶を失ったという事は、あの引退表明やら『不戦の宣言』やらも無くなったというわけで。

 つまり、そうすると……

 

 ……なんでもっと早くこれに思い至らなかったんだろう……

 別にそれで何か変わるかと言われるとそんな事はないんだけど。

 

 ──とにかく、こうしてボス戦はアルベル1人による開幕1撃で終わったのである。

 

 

 僕たちは奴が守っていた奥の部屋に入り。

 

「これが神玉? 確かに、それなりの魔力を感じるわね」

 

「そうだな。他にそれらしき物もない以上、1番目立つこれが神玉なのだろう。予想より随分と小さい……というか、アクセサリーに近いサイズだが」

 

 アリスとアルベルの言うように、部屋の真ん中に1つの宝石が安置されていた。

 しかし、僕にとってその赤く輝く美しい宝石は……

 

「……聖石?」

 

 僕にとっては非常に見覚えのある、聖石という宝石に非常にそっくりな物だったのである。

 

 過去の経験から、思わずといった感じで声に出す意味深アピールも忘れずに行えた。

 

 うん。遺跡探索の道中においては族長というライバルも居たからね。

 この辺りで面目躍如と行きたい所存。

 もう探索の最後の最後ではあるけど。

 

「聖石? これが族長やミルネンの言っていた神玉ではないのか?」

 

「……そうだ。我の知る限り、この石こそが龍帝のみが持ち帰ったとされる、伝説の神玉……なのだが」

 

 アルベルと族長が凄く良い感じの台詞を言って僕を見てくる。

 よし。これはまだまだ意味深ポイントを稼げる場面だな。

 ならば。

 

「ふむ……3人とも、これを見るといい」

 

 言いながら、僕は自らの懐からとある宝石……というか、今話した聖石を取り出して見せる。

 

「……なん……だと……? 何故貴殿がそれを……」

 

「ふむ。確かにフェルナンドが取り出した石と神玉はそっくりだな」

 

 そうなんだよね。

 似すぎていて最早同じ物なのでは? と言いたいくらい。

 でも聖石って……

 

「……でも、フェルナンドが持っている方には魔力を感じないけれど?」

 

「ああ。中に込められた魔力を使い切ったからな。今のこれは単なる宝石に過ぎん」

 

 聖石。

 それは聖者ダークネスが自らの魔力を込めて神様の呪いへの対抗策とした物なんだけど……それと極めて似た物がこんな所にあるのは全くの意味不明だ。

 いやまあ、多分別物ではあるんだろうけど。

 

 なにせあれは人が持っていて初めて意味を成す物だし、何より今は神様の呪いも消滅している。

 つまり長耳族や龍帝とやらが僕の知る聖石を手に入れたところで無意味。

 加えて言えば、もしもの為に僕たちは呪いへの耐性を強化された肉体に調整されているわけで。

 

「また気になる事を……そんな風に言われたら、何に使ったのか疑問に思うじゃない」

 

「フッ……その話をしてしまうならば、かなりの時間を要するからな。今は神玉を回収し、持ち帰る事を優先すべきだろう」

 

 ダークネスがどうとか神様がどうとか新人類がどうとか、聖石に関わるネタはあまりに多すぎるからね。

 これらを一気に消費してしまうのは流石に避けたいところ。

 

「わかった。では、族長が持つと良い」

 

「……良いのか? これは貴殿らが手にした秘宝だろう」

 

 困惑した様子の族長。

 うん。普通に考えたら所有権はアルベルにありそうな物だけど。

 

「俺が持っていても使い道は無さそうだからな。せいぜい高値で売り付けるくらいだろう」

 

「私も特に必要ないわ。今は外付けの力よりも1000年前の自分の力を取り戻す方を優先したいし」

 

 なるほど。

 まあこの2人ならそうなるか。

 でもやっぱりアリスは英雄って感じだよね。自然とこんな台詞を出せるなんて。

 

 うーん。現時点でアルベル、カルロス、アリス、王子の4人も主人公候補がいるのに対し、僕の身体は1つしかない。

 この問題はどうしていこうかな。

 

 とりあえず、今回は僕も2人に便乗して……

 

「私もそうだな。ただ私としてはこれを見せたい男が居るから、その際には借り受けたいが構わないか?」

 

「……構わぬ。そもそもこれは貴殿らの物。我は預かるのみよ」

 

 うん。どうやら話が纏まったね。

 なんて思っていると、どこぞの銀髪がまたもやジト目で僕を軽く睨みながら。

 

「どさくさに紛れてまた気になる事を言うわね……まあ、いいわよ」

 

「ふっ……アリスとフェルナンドは恐らくずっとこうなのだろうな。面白い話だ」

 

「……『白髪理系』の癖に……2人とも覚えておきなさいよ」

 

 そうして、僕たちは遺跡探索を終えた。

 結論としては、味方が強すぎる問題はあれども、謎が多くて見栄えの良い楽しい冒険だった。

 かなり満足度は高く、これからもこんな感じで行きたい所存。

 

 

 ──というわけで、ティル・ナ・ノーグへと帰還する最中。

 

「……楽しかったな」

 

 僕の感想と同じ事を感じたか、アルベルがふとそう漏らした。

 

「フェルナンド、感謝する。俺が敵を討伐しフェルナンドやアリスが謎の解明をする。……良い感じだ。俺はこれからもこうして冒険していきたいと心底思ったよ」

 

「フッ……私も君の役に立てて嬉しいよ。ただ、今後はアリスも前に出たがるだろうがな」

 

「ふっ……そうだな。遅れを取らないようにしなければな」

 

 嬉しい。

 

 そう。僕はアルベルの言葉に対して純粋な喜びを感じていた。

 

 僕は今回の冒険において、少しではあるけれども役に立ってしまっていた。

 普段ならば、僕はあんなに率先してギミックを解いたりしない。せめてヒントを教えるに留めたはずだ。

 意味深な男ムーブをするより、冒険の役に立つ事を優先する動きをしてしまっていたのだ。

 

 その理由は簡単。

 あのアルベルと一緒に冒険しているという事実に対して僕は完全に舞い上がってしまっていたから。

 僕はアルベルという偉大すぎる英傑のファンだから、新世界計画の若返りの効果により世代を超えて彼の役に立てるという事実に興奮してしまったのである。

 

 ──僕の世代はみんな、少年の頃に

『アルベルごっこ』

 をする。

 その辺の棒を拾って聖剣ティルフィングと名付け、振り回して遊ぶ。

 そうして成長するに従い、自分はアルベルには成れないという当たり前の苦い事実を知り、そして少年たちは大人になっていくのだ。

 

 彼には多くの異名があった。

『武芸百万般』『至天の剣聖』

『白の勇者』『救世主』

 

 世界最強の男。生ける神話。

 100英傑の序列1位。

 他の99英傑を同時に相手しても勝利できる存在。

 

 それが伝説の『神殺し』アルベルなのである。

 

 

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