意味深な事ばっかり言ってたら1000年後の未来に跳ぶ100人の英傑に選ばれた男   作:まだ早い

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遅れるけど続くよ


27話:かなり主人公っぽい背景

 

 

 そうして何やらブツブツ呟く怖い不審者3人を放置して進み、神獣『ケツァルコアトル』の前に辿り着く。

 

 道中の雑魚退治は当然省略。

 エデンの魔境ぶりを今更語っても意味はないからね。

 新世界に旅立ったのが100英傑じゃなくて凡人100人だったら1週間保たずに全滅してただろうなとは思うけど、実際に選ばれたのは世界屈指の強者集団(僕や極一部の非戦闘員は除いて)だからどうでも良い話だ。

 

 それはともかく。

 ──ケツァルコアトルは長耳族の時の神獣ジャガーノートと違って生贄を求めたりはせず、ひたすら遺跡の前で寝てるだけだという。

 

 だからこその危機意識の欠如により、猫耳人間の街は悪魔にボロカスにやられたとか実はどうにか入り口付近で留められたとか色々言っていたけど……ぶっちゃけ僕は猫耳人間たちに全く興味がないからスルーしてた。

 

 で、遠目に見える奴──立髪の生えた巨大な蛇? ──は実際にすやすや眠っており。

 そんな姿を見たアルベルが。

 

「今回は紗羅が倒すのか?」

 

「はい。わたくしはまだ悪魔としか戦っていませんからね。少しはまともな相手が欲しいと思っていたところです」

 

 相変わらず好戦的な事を言う紗羅。

 紗羅はアリス以上に1000年前からほとんど変わってないな。

 つまりあの凄まじいやらかしと『美の追求』は素だったんだね。

 

 とか考えていると、我らが銀の蛮族が。

 

「でも、私が倒した神獣は雑魚だったわよ」

 

 そう言って戦闘狂の銀髪は扱き下ろすけど、あいつ多分めちゃくちゃ強かったからね。

 普通の物語……前にも似たような事を言ったけど、例えば1国を舞台にしたような規模の物語だったらラスボス張れると思うくらいに。

 

 本来なら、誰が倒す? みたいな緊張感0の相談をする相手ではなく、全員で死闘を挑むべき強敵だ。

 とはいえ神獣以上に味方側が強すぎるから、比較して雑魚扱いとなっている。

 物事は大体相対評価だからね。仕方ないね。

 

「それはそうかもしれませんが……」

 

 オッドアイセーラー服は何やら微妙な感じの表情をして。

 

「わたくしは1週間もの間ひたすら修行をしていましたが、全て独学であり、模擬戦の相手が務まる人材も居ませんでしたからね。せめて実戦で勘を整えておきたいのです」

 

「なるほどね」

 

 変な姉ちゃんが納得したように頷く。

 アリスも好敵手を欲しがってたからね。気持ちは良くわかるのだろう。

 赤金眼は再び寝ている神獣を眺めてから。

 

「お2人は既に神獣や天使たちと戦っているのですよね? ならやはり今回はわたくしに譲ってください」

 

「良かろう。そもそもあの程度の輩に大して拘りもないからな」

 

 アルベルは今のところ全部の敵を一撃で斬って終わらせているからね。

 まあ『神殺し』の一撃に耐えるか避けるかできる奴なんて、人類でも理事長とランバートと成長したルナの3人しかいないと思うけど。

 

 というわけで。

 

 紗羅が1人でゆっくりと神獣の元へと歩いていく。

 今回はアリスの時と違って遠距離から不意打ちワンパンはしないらしい。

 

 そして彼女が緩慢とした動作で剣を抜いた瞬間。

 

 神獣は目を覚まして。

 

『ギャオオオ!!』

 

 とか叫んで何かしようとしたけど。

 

「初動が遅すぎます」

 

『ギ……』

 

 紗羅があっさり一刀両断し、奴の生涯を終わらせた。

 うん。相変わらず速すぎて動きが全く見えなかったな。

 そして予想通りの結末。

 これじゃ到底肩慣らしにはならないだろうけど……まあいいか。

 

「ほう……流石だな」

 

「そうね。全く本気を出した様子もないし」

 

「フッ……当然、紗羅の実力はこんな物ではないさ。奴では試金石としてあまりに不足している」

 

 とか言いながら僕たちは紗羅の方に歩いていく。

 合流して、彼女の第一声は。

 

「悪魔もですが、新世界の連中には揃いも揃ってノロノロしないといけないルールでもあるのですか?」

 

 既に死んだ神獣への死体蹴りだった。

 

 いや普通の生物は攻撃する前にはそれなりの予備動作が必要だからね。

 17歳という若さで100英傑の中でも7位に認定されている、歴史上でも数少ない……というか上回るのはアルベル他数人しかいないくらいの超絶天才である紗羅に普通を語ってもという話ではあるんだけど。

 

 とはいえ。

 

「それは私も感じるわね。威力偏重が過ぎるように思えるわ」

 

「ふむ。俺も概ね同意だが……唯一、その肝心のパワーも知れた物というのはあるな」

 

「当然わかっているわよ。その上で、という話」

 

「それはそうだな」

 

 どうやら超人達は同意見らしい。

 そして1000年前もそうだったけど、こういう時に僕はひたすら不敵な笑みを浮かべるだけで黙っているのみである。

 すると、紗羅が頷いてから。

 

「結局、身内の訓練か天帝ルナとやらが率いる中央組との戦いまでお預けですか。いきなり本番をするよりは丁度いい相手と実戦を積んでおきたいのですけれど、仕方ありませんね」

 

 とか残念そうに漏らしていた。

 けど、どうやら昔と同じように1人で何かに納得したらしい。

 よかったね。

 

 

 というわけで。

 

 前回と同様に、僕たちの目の前に聳え立つ巨大な門。

 相変わらず、どう見ても強固みたいな雰囲気を全面に醸し出す、重圧感に溢れた『良い感じ』のやつ。

 来る者を拒むべく閉じられたそれは、やはり僕にとっては物凄く見覚えがあるもので(前フリ)。

 

 紗羅は門を少し眺めてから。

 

「この門……どうやらお三方には見覚えがあるようですね」

 

「まあ、俺たちは既に遺跡を1つ攻略済みだからな」

 

「そうね。少し意匠が違うみたいだけれど……門の細かな違いなんてどうでも良いし」

 

 紗羅の言葉に反応を返す2人。

 僕はいつものように黙っている……だけではなく。

 

「……そうだな。紗羅、この部分に手を当てて欲しい」

 

 例によって、門を開閉するための核となる部分を指し示す。

 

「……まあ、良いでしょう。わかりました」

 

 何か凄く物申したげな紗羅だったけど、印に触れた瞬間に。

 

「! なるほど。これはつまり……こうでしょうか?」

 

 突然1人で門に向かってぶつぶつと呟き始めるという、実に怖い姿を晒し出した。

 うん。やっぱりどこからどう見ても不審者だ。

 

 そんなセーラー服の不審者を見た銀髪の不審者が。

 

「なんか凄い見覚えのある光景ね……」

 

「ふむ。フェルナンドは、紗羅とアリスに似たような対応を取るみたいだな?」

 

 鋭いなアルベル君は。

 僕はかつて、紗羅の事も主人公候補……正確には彼女の事は外伝主人公扱いをしていたからね。

 

 前にも言ったように、紗羅もアリス同様に万能の天才であり、紗羅を見たあらゆる人物が

『大和は君を捨てたというのか……? あまりに愚か過ぎる……』

 とか

『どのようにしてこのような逸材を……』

 とか何故か僕の方を見ながら戦慄していたくらいの超絶天才だった。

 

 その才能はアリスと同じくらいって評価……つまり全能力が人類最高クラスって扱いだったな。

 

 

 とりあえず、今はアルベルの問いに回答せねば。

 

「フッ……そんなつもりはないさ。偶々だ」

 

 無論ちゃんと回答するとは言ってない。

 

「ほんっと、白々しいわね……」

 

 いつものように誤魔化す僕をアリスはジト目で軽く睨んできた。

 そうして話していると。

 

「これで……終わりですね。存外、楽しめました」

 

 セーラー服のドヤ言葉と共に門が開いていく。

 そうして、僕たちは遺跡の内部を見て……

 ああ、今回はそう来たか。

 

「フッ……これも因果か」

 

「……どうしたの?」

 

 やはり良い感じで聞いてくれるアリスに向かって。

 

「紗羅を仲間に加えた私たちにとって、あまりに都合が良すぎると思ってな。しかしまあ、どの道同じ事だ」

 

「またそんな言い方をする……」

 

 うんうん。

 無事に意味深ポイントを貯められているようで何より。

 

 ──どういう事かというと。

 

 この遺跡は、かつてあのフェリシアの管轄であり、当然彼女の弟子たる紗羅が所属していた……アルカディアの時空宮そっくりだったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜1000年前 大和にて〜

 

『戦だ』

 

 これが、先代大和の大君である夜叉姫が遺した遺言状を見た大名たちがまず最初に確信した事だった。

 

 侍ですらない紗代姫に大和大君の証たる最強の刀『政宗』を継承させるという夜叉姫の遺言状は、はっきり言って誰がどう見てもどういう観点から考えても絶対にあり得ない馬鹿げた妄言であり、それはどんなに優れた武将とて死に際の耄碌は避け得ぬ物という事を示しており。

 つまり。

 

『紗羅姫が従うわけがない。間違いなく、紗羅姫は紗代姫を即座に討ち取り、首を天守閣に掲げる……その時こそ決戦よ』

 

 強き侍が尊ばれる大和において、身内の下剋上はそうおかしな話ではない。

 更には、今は少し何かが起きただけで戦が起きる……いや、特に理由などなくとも戦が起きる終末の時代。

 今回の件は火種としてはあまりに十分すぎた。

 故に、全武将が大きな戦の匂いを強烈に嗅ぎ取ったのである。

 

 ──紗羅が語っていたように、家臣団は遺言状に意を唱えなかったというのは、事実ではあるが真実ではない。

 

 遺言があまりにもあり得なさすぎて絶対に戦が起きるから、全員が一目散に自領に戻り、戦準備に励んでいた。

 これが真相だった。

 

 猛将武内は愛刀の調子を確かめながら語る。

 

「米野は当然として……甲斐野と、可能ならば島根の首も獲りたいですな」

 

 知将山手は急遽策略を練りながら。

 

「米野は無論ですが……私としては芳川のお命も頂戴したいですね」

 

 義に厚き甲斐野は。

 

「米野殿。我らはもはやこれまで」

 

 そう言って開戦と同時に『ゆるしゃったもんせー』の声を上げて切腹し、どうにか妻子のお命は守る腹積りだ。

 

 そして、誰からも死を予測されていた米野。

 

 何故なら、米野は大和のNo2であり、夜叉姫と義兄弟の盃を交わした男。

 そしてかつての夜叉姫の夫は彼の弟……つまり米野は紗代姫と紗羅姫の叔父だったから。

 紗羅姫が紗代姫を討ち取り下克上を果たした場合、いくら実の娘の行いとてそれは夜叉姫への翻意に他ならず……つまり、米野は義を以て紗羅姫を討伐しなければならない。

 

 勿論、そんな事は不可能というのは言うまでもなかった。

 紗羅姫は知っての通り、初代大和大君の覇者の双眼を初めて継ぐ正統後継者であり、そして武において1年前に若干12歳で単騎で軍に匹敵する武勇を誇る夜叉姫を上回った天上の領域に立つ存在。

 今の紗羅姫があの時以上の力を有しているであろう事など言うまでもなく。

 

 加えて領地経営にもあらゆる芸にも天賦の才を持つ、仏に愛された……いや、紗羅姫こそが終末に瀕する大和に遣わされた仏だと見做す侍は多かった。

 

 つまり、相手にして勝てる相手ではなく。

 

「上様……いえ、紗耶殿。誠、お恨み仕りますぞ」

 

 米野は亡き夜叉姫たる紗耶に恨み言を言っていた。

 大名として、義に生きる侍として。

 彼は紗羅姫を相手にして無惨に討ち取られるのが宿命。

 

 米野は自らの息子の方を見て。

 

「息子よ。済まぬ。貴様の命は助けられぬ」

 

「父上。承知の上で御座いまする。むしろ、妖術ではなく紗羅姫と戦って果てるならば本望」

 

 そう応える、後継に相応しい侍として立派に育った長男を見ながら考える。

 米野はあまりに身分が高すぎ、権力を持ち過ぎていた。

 甲斐野や芳川辺りは本人の切腹さえあれば周りは助かるだろうが、米野は最低でも長男の命と御家断絶は必須。

 恐らく即座に逃した次男も厳しいだろう。

 故に、次男とは別方向に逃した妻と娘だけでも生き残る事を祈るしかない心持ちだった。

 

「確かに、紗代姫がお可愛いのはわかりまする。しかし、何故……」

 

 米野の言う通り、紗代姫は見目が麗しく、愛嬌があって多くの人気を集めていた。

 血縁が近いとはいえ、長男の嫁候補にとすら考える程には米野も彼女を気に入ってはいた。

 武や学問の才は凡庸なれど、数多くの大名の子息と仲を深める姿は、確かに大君家の魔性の血すら感じられた。

 

 しかし、それはあくまで嫁入り前提の娘としての話であって、大和の侍の頂点たる大君候補としてあの麒麟児たる紗羅姫と比較すると……というか、そもそも紗代姫は侍ですらない。

 

 花と茶を愛でる、ただ愛らしいだけの小娘。

 場に添えられた美しい花であって、大和の情勢には何の影響も与えぬ単なる小娘。

 ただ今は……政宗を引き継いで大和の大君になる事を課された小娘だが……

 

 紗耶はそんな小娘に政宗を渡して一体どうするつもりだったというのか。

 夜叉姫は紗代姫に、厨房で政宗を使って兎でも解体しろと言っているのだろうか。

 

 ──耄碌。

 偉大なる夜叉姫は、死の絶望に際して娘可愛さに狂った。

 良くある話ではあるが、それは決して、仕方ないなどとは言えない。

 

 何故なら、単なる死者の戯言ではなく、それがつい先日までの国の君主の妄言となれば……国の臣下が巻き込まれるのは必然だから。

 

 そうして、米野は息子と共に開戦の合図……紗代姫の首が天守閣に飾られる瞬間を待っていた。

 

 待っていた。

 

 米野は待っていた。

 

 自らを死に導く絶望の音頭を待って。

 

 待って……

 

 ……

 

「これはどうした事だ。何故、戦が始まらぬ?」

 

「も、申し訳ありませぬ。私には……」

 

 当主の疑問に応えられない事に対して慌てた様子を見せる息子だが、米野にわからないのであればずっと横にいる息子にもわからないのは当然の話。

 彼は長男に謝る必要はないと言いながらも疑問に思っていると。

 

「と、殿! 殿ーっ!!」

 

 慌てたように声を上げる家臣が現れた。

 

「遂に始まったか……伝令の遅れはこの際には問うまいよ」

 

 覚悟を決める米野。

 自分たちに確実な死を運ぶ事がわかっている戦の先触れだ。

 恐怖から多少遅れる事は仕方ないと考えて。

 

 しかし、次の瞬間。

 

 伝令が発した言葉は。

 

 

「紗羅姫、失踪!」

 

「…は?」

 

「紗羅姫が、失踪なされました!!!!」

 

「な、何だと!!??」

 

 

 ──歴史の転換点とは、後世から見ると

『そんな馬鹿な話があるわけがない』

『一体どんなご都合主義だ。あり得ない』

 と一笑するような話が多かったりする。

 

 仮に。

 夜叉姫が馬鹿げた遺言を遺さなければ? 

 紗羅姫が大和の大君をもう少し望んでいたら? 

 紗羅姫が血縁の争いを厭わぬ大和の侍文化にもう少し染まっていたら? 

 紗代姫にもう少し勇気があり、遺言など気にせず大君と刀を紗羅姫に譲っていたら? 

 大名たちが1人でも残り、紗羅姫に声をかけていたら? 

 

 ──どこぞの謎の男が、完璧なタイミングにて突然に紗羅姫の前に現れ、見事連れ去らなかったら? 

 

 たった1つ。

 何かが違うだけで大和のみならず世界の歴史は変わっていた。

 しかし、起きた事は知っての通りだったという話である。

 

 

 ……そして、誰がどう見ても絶対に死ぬ状況から生還したのみならず、その後も大和No2として紗代姫の右腕として敏腕を奮った米野は

 

『奴は何故生き延びたのだ……』

『不死身の米野』

『ゾンビ』

 

 などと言われ恐れ慄かれたという。

 

 

 

 

 

 

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