安楽の証明ー祈りの果てにー   作:ナオミ・ペンバー

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ケース1:今際の願望器

 

 

 

 

 

 

もし、そこの貴方、つかぬ事をお尋ねします。

生を全う、しましたか? 心残りはありませんか?

 

 

あなたのお話、聞かせてください。

 

 

 

____はい、ええ、結婚してから30年間真面目に働いて家族への言伝も充分ですか。なるほど、ご病気されてから悔いを残さない様に行動されたのですね。ご家族想いでいい事です、とっても。

 

 

確かに余命宣告を受ければ、泣いても喚いても仕方ないですもんね。

ご家族への遺産を残し、遺言書の作成、好きなものを食べ、後は死ぬだけ、ですか。

えっ?死ぬのがわかってれば、最後にもう少し羽目を外しても良かったかも?…ふふっ、ええそうですね。死期が分かれば、後悔も減るかもしれません。

 

 

ですが、こうも思いませんか?

 

いくら死期を知ったとしても、それは生への執着が増すのみ。

人生は「死」がゴールであり、生は死ぬ迄の暇つぶしの様なもの。

みんな死ぬ為に生きているのに「生」へ執着する「本能」は枷でしか無いと。

 

多くの人が「目的」と「手段」が反対になっているんですよ。

 

 

 

失礼、話が逸れましたね。

言いたいことは、たったひとつ。

「満足のいく死」迎えたくないですか?

 

 

痛み、苦しみ、渇望、不安ですよね。

知らないことを恐れるのは当然です。覚悟した気になっても結局は、死ぬ事が怖くてたまらないんですよね?産まれる時すら苦しい人生、最後は穏やかに逝っても良いじゃありませんか。

 

 

「手段」があるのです。

 

 

私は1人でも多くの方の不安を取り除いてあげたいのです。真の幸福を、安心を、安寧を感じて欲しいのです。

この世に救いはあるのです。

……信じられませんか?

 

 

 

あはは、そうですよね。

当然ですとも、私が貴方なら同じ反応をするでしょう。貴方は何も間違っていません、そしても私も。

 

 

ね、時計を見てください。今は10時54分…55分になりましたね。

論より証拠という言葉がありますし、証明しましょう。お話したこと。

 

 

 

 

私はワガママなんですよ、痛いのも苦しいのも嫌なんです。ずーっとネットで楽に死ねる方法を調べては、怖くて足踏みしてました。そんな日々でとある掲示板を見つけました。

 

何となく読み進めていくとこう書いてたんです。

「顔写真と名前、希望する死に方を書くとその通りに死なせてくれる何かがいるらしい」って。それを信じる者たちは、いつしかその存在をこう呼ぶようになった__“安楽様”と。

 

あからさまにオカルトちっくで初めは笑っちゃいましたよ。そんな夢みたいな方法あれば私は苦労してないって。すぐに興味が失せて、そのまま掲示板を閉じました。

 

 

そこから数日後のことでした。私、見たんです。

自分の首を切り裂いてる男の人____周りはパニックなのに、その人だけは笑ってました。痛みなんて感じてないように、幸福そうな顔で「ありがとう、ありがとう」って繰り返し呟いてるんです。何かに祈るようにずっと感謝を述べてました、とっても安らかな顔でした。

 

 

家に帰ってすぐ、あの掲示板を調べました。

もう興奮やら何やら、心臓が痛いほど鳴って、頭の中はぐちゃぐちゃでした。ずっと下の方のコメントに、こう書いてたんです。

 

 

 

「最後は痛みなく、人生に感謝して死にたい」と

 

涙が溢れました、きっとこれを書いたのは彼だったのでしょう。

救われる。それが嬉しくて嬉しくて、とにかく安心して子供みたいに声を上げて泣きました。

 

…そうして私も彼に伴って、行動に移しました。

掲示板のコメントとは別に、メールアドレスが記載されてるんです。そこに、名前と顔写真と希望の死因を書いて送りました。

 

 

 

ここからはもう分かりますよね?

そうです、今日がXデーです。終わりが始まる日、祝福の日です。

 

 

私の人生、辛いことばかりでしたから。最後は安らかに行けるなんてとっても幸せです。終わりを決めれるなんて、素敵すぎると思いませんか?これ以上の救いはないです。もう怯える事など一つも有りません。

 

 

 

 

お話してくれて、ありがとうございました。

 

願わくば、貴方にも安らかな終わりが訪れますように。

 

1人でも多くの方が幸せに終われますように。

 

安楽様は私たちの味方です。

 

 

 

___________ああ、やっと救われます。さようなら。

 

 

時計の針が11時を指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「橋本 美咲 2000年3月15日 午前11時 00分

身辺整理を終え、都内市立病院にて善良かつ死期が近いと判断した患者への布教活動を行ったのち心臓麻痺により死亡。安らかに眠る」

 

 

________デスノートに狂いなし。

 

 

そう言い残すと筆記の主は、静かにページを閉じた。

 

 

 

 

正史と異なる可能性の世界で1人。

新たなノートの所有者が生まれていた。

 

 

 

 

 

 




独自設定とか解釈あります。
例えば「デスノートに写真はOKなのか」→「ある程度鮮明で直近のもの(顔が変わってなければ)OK」っぽいので、写真添付式にしてます。
2000年に掲示板そんな盛んじゃないのも分かってます、ここは完全にご都合主義です。2006~位の気持ちで書いてます。

Lと月が本格的に出てくるのは3話から予定です。
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