安楽の証明ー祈りの果てにー   作:ナオミ・ペンバー

4 / 5
ケース4:歪んだ救済

 

 

 

2004年、深夜。夜神月の部屋。

 

月はディスプレイに映る掲示板を見つめながら、静かに息を吐いた。

 

「……そうか」

 

リュークを使い、安楽様を探らせてから数日。リュークは「そんな奴はいなかった」と報告した。

 

この結果に、月はある種の納得を覚える。

 

「やはり、教義は信者が作り上げたものだったということか」

 

ノートを所有する者ならば、当然その力を何かの目的のために使うはず。

それがこいつには感じられない……

 

この時点で、月にとって安楽様は”少なくとも敵では無い”と判断できるはずだった。

 

しかし、問題は信者たちが勝手に暴走を始めたことにある。

 

 

安楽様の名を掲げた信者たちは、次第に過激な行動を取るようになっていた。

「死は救済」という思想のもと、死を望まぬ者にさえ「救い」を与えようとし始めたのだ。

 

 

掲示板には、信者たちの狂信的な言葉が並んでいた。

 

『安楽様のご意思に従い、迷える魂を救済すべきだ』

『我々は選ばれし者として、もっと多くの人々に安楽様の教えを広める必要がある』

『自ら死を選べない者にこそ、救いを与えるべきだ!』

 

 

月は小さく息をついた。

 

「愚かだな」

 

安楽死は個人の選択であるべきだ。

それを強要する教団の存在は、キラの理想にとっても不要なものだった。

 

月は指を組み、顎を支えながら考える。

 

 

この状況を放置すれば、キラへの影響が出る可能性がある。

 

“救済”の名のもとに暴走する信者たちが、キラの支配する新世界の障害になり得る。それは月にとって避けたいことだった。

加えて“安楽様”の影に潜むノートの所有者、信者たちが作り上げた理想に殉じ、暴走すら止める気配のないその無責任さが癪に障る。

 

「ならば排除すべき、か」

 

 

力を持つものは正義を成さねばならない。

確固たる信念の元、月は冷静に結論を下した。

 

 

 

 

同時刻、Lのアジト

 

Lはパソコンのモニターを見つめながら、スプーンで砂糖をかき混ぜる。

 

「……ふむ」

 

安楽様の信者たちが暴走し始めた。

最初は匿名掲示板の都市伝説に過ぎなかったが、今では”組織的な動き”が見え始めている。

 

「これは放置できませんね」

 

Lにとって、“死”を正当化する思想は極めて危険だった。

 

最悪な事にそれを信者たちが独自に拡大解釈し、社会全体に広めようとしている。

 

「安楽様の指示では無い……が、間違いなく把握している筈だ」

 

''貴方''は何を考えているのでしょうね。

Lは指を唇に当てながら、静かに考える。

 

現在の推理では、“安楽様”と”キラ”に直接的な繋がりはない。

だが、どちらも”死を選別する存在”であり、もし関係があるならば。

 

「もし”安楽様”という概念が広がれば、人々の倫理観はどう変化するでしょう」

 

Lは、教団の拡大が社会秩序に与える影響を計算し始めた。

 

 

 

今の段階では、“キラ捜査”が優先だが……安楽様も無視はできない存在になりつつある。調べる程に浮かぶ不可解な点、教団との温度差。

 

「調査を始める価値はあります」

 

 

まるで無機質な観察者のようだと、緩やかだが着実にLはパズルのピースを揃えていく。

 

「ワタリ、今から言うものの準備を頼みます」

 

 

 

 

 

____数日後、東応大学構内

 

月は大学の講義が終わった後、L____“流河”と名乗る男が近づいてくるのを視界に捉えた。

 

「夜神くん、少し時間いいですか?」

 

「……何の用だ?」

 

Lは菓子の袋を手に持ったまま、いつもの無機質な口調で続けた。

 

「最近、“安楽様”の教団が活発化しているのは知っていますか?」

 

月は眉一つ動かさずに答えた。

 

「ああ。ネットで見たよ。どうやら、少し過激な思想に傾いているらしいな」

 

Lは月の顔をじっと観察しながら、ゆっくりと頷いた。

 

「ええ。個人的に気になっているのは……安楽様の存在が”キラ事件”と関連している可能性があるかどうか、です」

 

月は心の中でわずかに警戒しながらも、表情には出さずに笑みを浮かべる。

 

「……キラと安楽様を結びつけるのは、少し飛躍しすぎじゃないか? ただの都市伝説だろう?」

 

Lは菓子を頬張りながら、目を細めた。

 

「そうかもしれません。でも、“死”に関わる事件が同時期に増えているというのは興味深いですね」

 

月は軽く肩をすくめる。

 

「偶然という可能性もあるだろう?」

 

「ええ、可能性はありますね。でも、私は”偶然”をそのまま信じるような人間ではありません」

 

月はLの瞳をじっと見つめた。

 

「それで、流河。君は安楽様をどうするつもりなんだ?」

 

Lは思案の後、口の端に微かに笑みを浮かべた。

 

「調査を進めるつもりです。特に、彼らの信じる”救済の手段”とは何なのか……それが分かれば、もっと有益な情報が手に入るかもしれません。」

 

月は内心で考える。

 

Lの関心は、まだ''安楽様”に留まっている。つまり、デスノートの存在には気づいていない。

 

「……なるほどな。まあ、興味深い話ではあるよ」

 

Lはやや身じろぎしながら、、月をじっと見つめる。

 

「夜神くんは、安楽様についてどう思いますか?」

 

月は口元に笑みを浮かべた。

 

「さあな。ただの都市伝説だろう……」

 

 

Lは少しだけ間を置き、それから微かに頷いた。

 

 

「……そうかもしれませんね」

 

そう言い残してLは踵を返した。

もう確認する事は何も無いかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死神が来ていた?____キラか。そしてLも関心を持ち始めている……」

 

『どうするんだ?』

 

「別に、何も。やる事は変わらないからね」

 

____行こう、もう少しだから

 

 

 

 

 

 




まだ流河として大学にいる頃、第2のキラが出る前の時期。

6~7話で完結予定です、次話が1番悩む。
感想評価モチベになりますどしどし下さい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。