安楽の証明ー祈りの果てにー 作:ナオミ・ペンバー
Lは大量の資料に囲まれながら、モニターを見つめていた。
暫くするとワタリが静かに部屋へ入り、手元の封筒を差し出す。
「L、例の教団に関する調査報告がまとまりました」
「ありがとうございます、ワタリ」
Lは封筒を受け取り、無造作に開く。視線を資料へ走らせながら、体を揺らし椅子はギコキコと不協和音を鳴らす。
「ふむ……信者の数は減っていない。それどころか、信仰はより強固になっているようですね」
ワタリが静かに頷く。
「ええ。ですが奇妙な点があります。ここ数ヶ月、教団の言う“救済”がほとんど行われていません」
Lは動きを止め、ゆっくりと視線を上げた。
「……興味深いですね」
信者は増えている。だが、それに反比例するかのように、“救済”は減っている。
これまで徹底して観察者に徹していた“安楽様”が、このタイミングで動きを止める。
……これが偶然である可能性は低いですね。
Lは膝の上に頭を乗せ思考を巡らせる。
「救済が止まっているのに、教団は動揺すらしていない……。通常なら不信感が生まれるはずですが」
ワタリが資料を捲りながら答える。
「むしろ、信仰はますます強まっています。信者たちは、病気や事故、老衰など自然死すら“安楽様の意思”と解釈しているようです」
Lはマシュマロを口に運びながら、静かに言った。
「……つまり、安楽様という存在はもはや“概念”として確立されている。ということですね」
ワタリは慎重に言葉を選ぶ。
「このまま放置すれば、教団はさらに大きな影響を持つかもしれません。
既に教団の影響は、有力者層にも広がりつつあります。表立って支持を公言する者はいませんが、情報筋によると政財界の一部に“安楽様”を信奉する動きが見られるとのことです」
Lは目を細め、椅子の背もたれに寄りかかった。
「そうですね。しかし、信者が“完成する”と繰り返し言っている……それは何を意味するのか?」
Lはマシュマロを口に放り込み、指を唇に当てながら考え込む。
「……ここが行動原理の、最大の糸口だと確信しています」
キラ事件の優先度が高い今、安楽様の動向は二の次とするべきか。それとも……。
悩んでいる暇はない。手をこまねいている間にも情報の鮮度は落ちていく。
手元の資料をめくりながら、静かに呟いた。
「この情報を月君と共有しましょう」
自身がキラだと疑っている夜神月ならば、独自の発想をもたらしてくれるかも知れない。
Lはそう結論付けた。
____Lから情報共有を受けた月は、静かにデスノートを見つめていた。
(……奇妙だな)
安楽様に関する調査情報。
ここ暫く、間違いなく“救済”が減った。いや、減ったと言うよりも、所有者は一度もデスノートを使っていない。
(何か目的があったはずだ。なぜ使わない? 使えない状況だったのか? それはあり得ない……Lや僕ですら未だ特定できていない。ならば外部の誰かが先に辿り着けるはずがない)
つまり、“使えない”理由が外的要因ではなく、所有者自身の意志によるものだと考えるべきか……?
不信感が募る。
ノートを使わなくなった理由は、目的を達成したからか? いや、違う。ならば……何かを“確認”しているのか?
月は自身も“デスノート所有者”という視点から、思考を巡らせる。
安楽様の計画は、まだ終わっていないはずだ。
ならば“完成する”とは何を意味する?
画面に映る掲示板の書き込みを見つめる。
『安楽様は、もうすぐ完成する』
『我々の理想の世界が訪れる』
(完成する……これは、何かの“準備期間”だったと考えるべきか?)
信者たちは「完成する=安楽様が望む理想の世界」と解釈している。
だが、もし信者たちと所有者とに“認識”のズレがあるとしたら?
信者が作り出した“安楽様”が、ここに来て初めて明確な意志を持ち動いている。
何かを計画している、一体何を。
月は眉をひそめた。
(Lも動き出すか……ならばここは、ノート所有者を見つけ出すまでは協力した方が僕にとっても都合が良い)
月はデスノートを開いた。
今日も世界を綺麗にする為に。
新世界への障害は何であろうと取り除くまでだ。
Lも、お前も_______必ず僕が排除する。
Lと月、それぞれの視点から安楽様の正体へと迫る道が交差し始めていた
あと1~2話くらいで纏めたいですね。
月と主人公は方向性が合わないですが、aキラと主人公は仲良くできそうな気がします。
卵白みたいな文ですけど、構造上こうなってしまう……はやく黄身を加えたいです。