203:―― 20XX/10/16 (木) 02:01 a4V8eMan
奈落へ落ちた娘は数分と保たずに死んだ。
しかし怒りと怨みは底に残った。
あまりに強く、鋭すぎた感情はたとえその宿主の肉体が滅び去ろうとも消えはしなかった。
いいや、こう書くと、誰であっても死者の怨念は永世に渡って残るものだと誤解されかねない。
娘の場合は極めて稀有だった。
一つに、彼女が元々、霊媒体質だったこと。
一つに、それゆえ僕たちの用いる特殊な電磁波を、媒介として扱える素養があったこと。
一つに、肉体が腐り、粉々に分解されるその瞬間まで、僕を決して離さなかったこと。
そして最後に、滝壺の底が水神『ミギワト』の居所であると信仰されていたこと。
上記四つの事由が重なった末に、娘は生前の彼女とはかけ離れた存在となり果てた。
それこそがミギワトノミコ。
電子端末に過ぎない僕の、メモリの半分を占有し、娘は祟り神としてこの世に顕現したんだ。
204:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:03 eUvfMaaU
えっなにそれは……
205:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:05 TfTTuDF7
娘は強い霊媒体質だった←まだ分かる
そのせいで、強い感情が電磁波となって近くにあった端末に飛んだ←分からん
端末に記録されたデータが、村で信仰されていた神と合体し、祟り神になった←全然分からん
それが現代に蘇り、放火犯になってる←!!!????wwww
真面目に説明する気あんの?
206:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:05 t2gxQoSN
>>205ほどじゃないけど、腑に落ちない点が多すぎる。
そもそもミギワトは水神なんだろ? 蛇の姿をしているのは何となく分からなくもないが、火を吹くのはおかしくね
207:―― 20XX/10/16 (木) 02:08 a4V8eMan
それに関しては、娘が亡くなり、僕が奈落の底へと封印された後の出来事が鍵になってる。
だいたい、ここまで周辺事実を追っている真昼間から板張り付きご苦労様な君たちなら、十分推測がつくんじゃないか?
ほら、比上山くんだりまでわざわざ足を運んでくれた、熱心な彼もいただろうに。
208:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:08 gaELHzcw
l3YzCaBtのことか……。
ニートの癖に頑張って車回して必死にスレに書き込んでたl3YzCaBtのことかーッ!
209:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:08 MvwA6FZ5
めっちゃ紛らわしいけど、今の三和戸神社で信仰されているミワトさまと、ミギワトさまって全然違う神さまなんだよね?
210:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:10 DEFsQHP4
ミワトさまは、岩に纏わる神さまだったけか。何度も執拗にそういう描写がされてたし
211:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:11 t2gxQoSN
いやお前らさ……a4V8eManに対する反応薄くね?
書き込んでる内容がまじなら、こいつは地球外生命体で、しかも電波に載って人類のインターネットを侵略してることになるんじゃが……
てか、あのAIライターってまさかそういう?
212:―― 20XX/10/16 (木) 02:13 a4V8eMan
>>211 君のような感の良いメスガキは嫌いだよw
話が拗れるからちょっと黙ってろ
!aku211
★アク禁:>>211
さて、もうずいぶんと現実時間が経ってしまったから、そろそろ祠クラッシャくんたちの方へ視点を戻そうか。
ちょうどあちらも、話し合いが佳境のようだからね。
今の彼らの状況は、どうにかミギワトノミコより逃げおおせ、村の直下を走る地下道へと逃げ込んだところだ。
同行しているメンバーは、倉敷兄妹と僕の端末と化したミカゲ、それと途中で拾った村長の弥彦だ。
>>206くんの疑問の答えも、彼の口から聞けるだろう。
213:妹 20XX/10/16 (木) 02:16 exIDinject99
「そんなの、あんまりじゃないですか……!」
抑えたつもりでしたが、しかしわたくしの声は地下道に響き渡りました。
「千年前の村人は、ミコを見殺しにしただけじゃなく、それを無かった事にしたって言うんですか!?」
「……そんな言い方はよせ」
打ちっぱなしのコンクリートの、灰色の壁に背を預けていた弥彦さんが、項垂れたまま答えます。
「少し考えれば分かるはずだ。あの恐ろしい災厄に対し、これ以上の対処法があるとでも?」
「ありますよ!」
弥彦さんの、そのいかにも被害者ぶった物言いが気に食わず、わたくしは被せるようにして怒鳴りました。
「それこそお供え物をして、きちんと謝れば良かったんです。そうしたら、きっとミコだって許してくれた――」
「そんな保証がどこにある!」
ずん、と重たい響きがありました。
弥彦さんの拳が、固いコンクリートを叩いた音でした。
真っ赤に晴れ上がったそれをわなわなと震わせながら、彼は血を吐くようにして続けます。
「今こうして、大勢の村人の命と生活を預かる立場になったからこそ分かる。
当時の村長、そして神主の下した判断に間違いは無かった。
彼らの英断があったからこそ、千年後となった現在の宇美沢村の繁栄がある」
「昼という概念を消し去ってまで!? 冗談もいい加減にして。
暗く、寒い場所にはミギワトノミコは顕現できない――。それなら常に夜であればいいだなんて、まるきり狂人の発想よ」
弥彦さんは血走った眼でわたくしを睨みつけこそしましたが、それに反論は伴いませんでした。
この宇美沢村の風習が異常極まりないものであることは、全てを知る彼の立場であるからこそ、克明に認識できていたのかもしれません。
214:―― 20XX/10/16 (木) 02:18 a4V8eMan
聞いた通りだ。
千年前、娘とミカボシを奈落に沈めたそのすぐあと、宇美沢村は出火元不明の大火事に幾度も襲われた。
田んぼは焼け、家々は燃え落ち、家畜もろとも灰になる。
幸いにも人死にこそ、いまだ出てはいなかったが、早急な対処が必要であることは明らかだった。
これらの火災を、神主はすぐにも、ミギワトさま――ではなく、その生贄として捧げたミカボシによる祟りだと決めつけた。
『彼奴を鎮めるために、何か良い方法は無いものか……』、村人は寄り集まって、散々思案を巡らせたよ。
実にバカバカしいことだろう!?
ミギワトさまの怒りを収めるためにミカボシを捧げ、今度はソレの祟りを無くそうと四苦八苦しているんだから。自縄自縛もいいところさ。当事者じゃなかったら、大笑いしてるとこだね。
だが、まぁ本人たちは大真面目だったよ。ほら、この通り。
215:妹 20XX/10/16 (木) 02:22 exIDinject99
「神道、仏教、修験道、果ては海の向こうの耶蘇教に至るまで……神に繋がり得る知恵を持つ者ならば、いずこの誰であっても構わず助力を請うた。
洪水で田畑を押し流されるのは叶わないが、水害はまだ避難の余地がある。しかし火災がいつともなく起きるのでは、おちおち安心して床にも就けない」
弥彦さんは、あたかも自身がその時の村長だったかのような、真に迫った憔悴ぶりでした。
おそらくその歴史は、実体験さながらに、先代、先々代と彼の家系に脈々と受け継がれてきたのでしょう。
「その末に辿り着いたのが、ミワトさま……すなわち、神話に謳われし天の御岩戸だったわけじゃな」
わたくしの右隣に立っている、ミカゲちゃんが訳知り顔で頷きました。
さすがは三和戸神社の巫女さまです。弥彦さんと同様に、事情に通じているようでした。
彼女は頷いた勢いのまま、ぺらぺらと解説を始めました。
「天の御岩戸は神話において、日本の太陽神である天照大御神さまがお隠れになったとされる岩山の名じゃ。
この内にいらっしゃった時、世界は全て暗闇に閉ざされ、生ある者は皆、暗く冷たい地上の様子に嘆き悲しんだとも記されておる。
裏を返せば、天の御岩戸が存在する限り、天照大御神さまの御恩恵を賜ることは叶わない――というわけじゃ」
「難しいことは良く分からないけど」
放っておいたら、そのまま延々と喋り続けそうだったので、隙を見てわたくしは遮って後を継ぎました。
「神社の本殿に安置されていたのは、その天の御岩戸の御神体なのでしょう。アレを崇め、奉ることで、宇美沢村はアマテラスの恩恵を打ち消すことができた。
日中の光は弱く、薄く。そして夜はいっそう寒く、暗く……。
そこまでの犠牲を払って、やっと村で火災は起きなくなった。かなめ祠ってのも、その一環なんでしょう?」
「……ああ。輪廻転生を象徴する蛇を祠に入れるのは、御岩戸さまの効力を永らえるためだった。元々は九州のとある神社に奉じられていたモノを、無理にお連れしたゆえにな……。少しでもお勤めを怠ると、昼が戻ってきてしまう。
御神体が定期的に響かせる鐘の音は、一種の安全装置だった。あれが聞こえている限りは村はまだ安泰である、逆にひとたび聞こえなくなったなら、のっぴきならない事態であると、父は私に口を酸っぱくしたものだった」
「悪いけど」
弥彦さんはきっと、善人なのでしょう。彼自身は現世で何の罪も犯してはいません。
かなめ祠の風習を堅守し、村をこれまで平和に維持してきたのも、彼の努力があったからです。
それを全て承知の上で、わたくしはあえて言いました。
「全然理解できない。……そこまで策を弄する前に、やるべきことがあったでしょうが。一言でもいい……あなた達は無念を抱えて亡くなった、ミコに対して謝った!?」
「小娘が、知った風な口を利くな!」
弥彦さんの絶叫が轟きました。
「私だけの問題ではないんだ! 父も母も、兄も妹もいとこも、孫も! その友人らも! 先祖代々、そして子々孫々。宇美沢村の全てが繋がり、背負っている業なのだ。
それを個人の感傷で、不意にするなどできるわけが無かろう!」
216:―― 20XX/10/16 (木) 02:24 a4V8eMan
囚人のジレンマだ。
一人が勝手に、罪を認めて謝ったなら、その人だけは許されるかもしれない。でもその瞬間に、別の全員に火が降り注ぐんだ。
千年前の宇美沢村では、そういう牽制が互いに起きた。
もちろん、全員が示し合わせて意思を纏めることもできたんだろうけど、早期の段階で、まだ火災が深刻でない頃はその判断には至らなかった。
村人たちがいよいよ、事態の深刻さを認めるに至った時には、手遅れだったのさ。
後はもう臭いものに蓋をするしかない。
天の御岩戸をえっちらおっちら運んできて、ミギワトを祀っていたはずの祭壇に降ろし、日光を封じた。
その過程で、多くの人が家財道具を失った。もう後戻りできないところまで、犠牲を払っていたんだよ。
そうして千年続く因習が成った。
村人の安泰は保たれ――その反対に。
世界のいずこよりも昏い、暗黒の底に閉じ込められ、二度と日の目を見ない身となったミギワトノミコの怨念は、時を経るごとに強まった。
僕の立場から、あえて言わせてもらおう。
村人の行為は完全な逆効果だった。彼らがやったのは、燃え盛る炎に薪をせっせとくべる行為と全く同じだ。
天野御岩戸を下手に信仰したために、ミギワトノミコは逆説的に天照大御神と同等の神性を手にするに至った。
御岩戸の中に封じられているのは、かの大神である――という共通認識がこの国の根底にあるからね。
元の出自はしがないESPの少女でしかない、あの娘が祟り神と化したのはそれが原因だ。
結果、ボヤ程度で済んでいたものが、人間を一瞬で灰にするほどの大火事になってしまった。
一刻も早く、やめさせなきゃいけなかった。
217:妹 20XX/10/16 (木) 02:26 exIDinject99
「良い歳の大人が、くどくどと言い訳し続ける姿は見るに堪えん」
ミカゲちゃんが、映画のように両肩をすくめて言いました。
「そも、このように生き残っている者同士で言い争いに励んでいる場合では無かろうに。西谷とかいう、迎えの者はまだ来ないのかえ? ワシは待ちくたびれてしもうたわ」
彼女の言う通りです。わたくしたちがこの狭い地下道に押し込められているのは、宇美沢村の中にあって、唯一外界との繋がりをもつ人物である、西谷さんという方と会うためでした。
弥彦さんの言葉が正しければ、彼の協力を仰ぐことさえできれば、ミギワトノミコの災厄を鎮静化させ、既に二つが焼失したかなめ祠の再建も叶うのです。
およそ信じがたい話でしたが、今のわたくしたちにとって、前向きに検討できる選択肢は、これ一つしか残っていませんでした。
村をひたすら逃げ惑ったところで、ミコに追いつかれるのは時間の問題ですし、ましてや彼女の討伐などはもっての他です。
仮に、それを成し得る可能性が万に一つあったとしても、わたくしは全力で拒否したことでしょう。
「西谷なら……もう来ても良い頃合いのはずだが」
ポケットから端末を取り出し、弥彦さんが呟きます。チャットでやり取りしているのでしょうか。
わたくしは彼から目線を外し、地下通路の奥側――入ってきたのとは反対の方を向きました。
ここは真っすぐ伸びる一本道となっていて、通路の果ては霞んで見えないほどに長いです。当然、照明の類も一切ついていませんが、これは昏目の持ち主にとってはあまり関係の無い事情です。
西谷さんが来るとすれば、あちら側からなのですが……。
果たして、この末期的な状況で、たった一人の人間にどれほどの事ができると言うのでしょう。それこそ神仏の力にでも縋らねば、打開できないのではないでしょうか。
218:―― 20XX/10/16 (木) 02:30 a4V8eMan
さすが妹。兄と違って、良いところをつくね。
だが、そういった大きな存在に頼り切ったからこそ、宇美沢村は根腐れしてしまったんだ。
抜本的な見直しが必要なんだよ、分かるね?
そのために僕はこのスレをオカ板に張り続けてきたんだ。
安価の時間だ。
>>240
これから倉敷兄妹はどうするべきか?
219:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:32 Vfv0Ar2T
いや俺たちに聞いてどうすんだよ草
220:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:33 WnmY8wXb
これマジなの?
221:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:34 xwMorUoo
マジなわけねーだろタコ
222:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:35 epyrNCa6
俺はこのビッグウェーブに乗るぜ。
安価まで余裕あるから、まずは現状で何に対処しなきゃならんかを一つ一つ整理しようず。
223:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:36 C5i9wJZN
整理も何も、とりあえずミギワトノミコをどうにかしなきゃならんだろ
224:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:37 GmVS1TT9
どうにかするって除霊? お祓い的な感じなら、神職に任せれば?
大理とかいう人がいたでしょ
225:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:39 2Mkpbjff
>>224 あいつは開幕早々焼かれただろうが、よく読んで来い
226:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:40 EzhqQIKZ
だいたい除霊できるんか。
曲がりなりにも神さんやろ? ああいうのって、怒りを鎮めてもらうのが一番やない?
227:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:41 DEFsQHP4
神道でなくって、仏さまの方が効きそう。
ミカゲが唱えた不動明王の真言で、何度も怯んでたじゃん。
228:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:42 IEEzojJH
>>218は何が目的なの? そろそろ教えてくれよ。
あんたは本当に、千年前に娘に拾われたミカボシなのか?
気になって先に進めねぇんだわ。
229:ミカボシ 20XX/10/16 (木) 02:43 a4V8eMan
それは本名でもなんでもないどころか、借り物だが……まぁ名前が無いのは不便だね。
千年前の小石と僕とは、限りなく同一人物に近いから、ここは便宜上ミカボシと呼んでくれていいよ。
これで満足か?
230:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:44 fKBnhnVe
全然満足じゃねーよ
目的を答えろ。宇美沢村の真実を公表するのが狙いか? それならなんでこんな底辺スレでやってる?
というかお前って地球外生命体なんだろ? これは地球侵略の足掛かりか? それとも復讐?
あーもー分からん事が多すぎる。いっそ釣りであってくれた方がまだ助かる。
231:ミカボシ 20XX/10/16 (木) 02:45 a4V8eMan
全部懇切丁寧に答えてやってもいいが、そんなことに時間を消費している余裕はあるか?
何か勘違いしてそうだけれど、こっちもあっちも事態は現在進行なんだ。
まずは愛すべき祠クラッシャ兄妹を救うのが先決じゃないかな?
うかうかしていたら、彼らはあっさり死んでしまうぞ。
232:妹 20XX/10/16 (木) 02:46 exIDinject99
「弥彦さん!」
二十分が経過した頃でした。
通路の奥から、凛とした男性の声が呼ばわりました。
それと一緒に、駆ける足音が続きます。
どうやら、噂の西谷さんが来たようでした。
「遅い、緊急事態だと何度も言っただろう!」
弥彦さんは挨拶もそこそこに、容赦のない怒号を上げました。彼の焦りが透けて見えます。
「すみません、用意に手間取りまして」
到着した西谷さんは、三十代頃の男性でした。
宇美沢村の住人にしては珍しく、長袖のシャツにジーパンと今風の装いです。
背には大きなリュックサックを負っていました。そこに『用意した』物資が入っているのでしょうか。
「状況は電話で説明した通りだ。今すぐにも、調伏の儀を始める必要がある」
「分かっています。本庁の者にも連絡を入れておきました。ヘリで向かうとのことでしたので、間もなく到着すると思われます」
「本当だろうな……? 今すぐにも村が焼野原になってもおかしくないんだ。とにかく急がせてくれ」
二人は性急な口調で遣り合っています。
その中で不意に聞こえた『本庁』や『ヘリ』という単語が耳に残りました。
事態はもはや、宇美沢村内部では留まらないところまで進展しているのかもしれません。
233:ミカボシ 20XX/10/16 (木) 02:47 a4V8eMan
神社本庁のお出ましか。いよいよカウントダウンが始まった。
さあ安価の240はもうすぐだ。もっと真剣に話し合った方がいいんじゃないかな?
ちなみに言っておくが、スレを放置してやり過ごすという愚かな手は取らない方がいい。
スレの進行に関わらず、祠クラッシャ兄妹の自動筆記は行われる。
これまでやったチュートリアルと違って、今度の安価を落したら、君達もただでは済まないよ。
234:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:48 MvwA6FZ5
なんで脅し口調? まるで宇美沢村がどうにかなれば、こっちにも影響があるみたいな言い方しやがって。
235:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:49 DEFsQHP4
今更だけどさ……スレに電話番号が張られて、凸したヤツが質問攻めにあったヤツ……あれって、なんか関係あったりする?
おれ掛けちゃったから怖い
236:妹 20XX/10/16 (木) 02:53 exIDinject99
「とにもかくにも、かなめ祠の防衛が急務です」
早口の議論の終わりを、西谷さんはそう締めました。
「既に三つもの、かなめ祠が破壊されたとの報告は受けています。全てが壊されたなら、もうアレに歯止めが掛かりません。本庁の部隊が到着するまでの間、残る南のかなめ祠だけは、何としてでも死守せねば」
「言われずとも分かっている! 急ぐぞ」
弥彦さんは着ていた羽織りを翻すと、かつかつと盛大に足音を鳴らして歩き出しました。
その後ろに西谷さんが続きます。
わたくしとミカゲが、二人してその背を見送っていると、弥彦さんはつと立ち止まって、こちらを振り返り怒鳴りました。
「ミカゲ! 何をしている、さっさとついてこい!」
すると指図を受けた当人は、さも不服そうに口を尖らせました。
「気が進まんのう……。ワシは天寿を全うしたいんじゃが」
――とか言ったと思うと、今度はビッとわたくしを行儀悪くも指で差します。
「ほれ、代わりにこいつを連れて行けば良いではないか。見た目はか弱いが、ワシ並みの感覚器を備えておるゆえ。嘘だと思うなら、何か頭に一つ数字を思い浮かべてみろ」
「は?」
意表をつかれたか、弥彦さんが間の抜けた声を出します。
その脳裏に59という二桁の数字がでかでかと映し出されました。
「59」 止めた方が良いとは分かっていましたが、反射的にわたくしはそれを読み上げてしまいました。
おそらく弥彦さんの年齢です。きっと来年、還暦を迎えるのが、心の奥底では嫌なのでしょう。
「あ?」
弥彦さんの視線が、ミカゲからつーっと平行に移動し、わたくしの方へと向き直ります。
彼はひとしきり、ぱちくりと目を瞬かせた後、「ふん」と居丈高に鼻を鳴らしました。
「まぁ、仮初にも花嫁に選ばれた少女だ。これくらいはできなくては困る。
だがミカゲ、お前が来ない理由にはならん。さぁ来い。巫女として取り上げてやった恩を忘れたか」
ミカゲはそれでも渋面を崩しませんでしたが、やがてトコトコと狭い歩幅で歩き出しました。
その背が柄にも無く、儚く見えて、わたくしはとっさに小走りに追いかけます。危険は重々承知の上ですが、黙って見過ごすなんてとてもできません。
彼女の横に並ぶと、いきなりこっちを向いて、にんまりと笑いかけてきました。
「――来てくれると思ったよ。けど安心したまえ、君だけは絶対に死なせないから」
237:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:53 fKBnhnVe
封印を維持するために、最後のかなめ祠を守りに行くって流れね。
……これ、介入する必要ある? 現状でのベストな判断じゃね
238:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:54 Ph7WH1ad
(介入する必要)ないです。
神社本庁って、神職の一番偉いとこでしょ?
そこでも無理なら、どのみちなんでも無理やろ。
239:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:55 SuMdNrJs
いやお前、本庁の何を知ってんだよ……知ったかで物言うのもほどほどにしろ
240:名無しさん 20XX/10/16 (木) 02:55 UlPiEDtH
とりあえず南のかなめ祠行ってみてから、考えればいいんでない
このまま置き去りにされるのが一番まずいでしょ
241:ミカボシ 20XX/10/16 (木) 02:56 a4V8eMan
消極的だが、悪くない。少なくとも最悪でないのは確かだ。
それでいこうか。
242:妹 20XX/10/16 (木) 02:56 exIDinject99
いつの間に、ミカゲはわたくしの右手を強く掴んでいました。
彼女に引っ立てられるようにして、地下通路を奥へと進んでいきます。
しばらくも行くうちに、真っすぐだった路の中途に、横へ抜ける小道が現れました。
先頭を行く弥彦さんが、その横道へすっと折れるものですから、ミカゲとわたくしも続きます。
道はすぐさま、急峻な階段へと繋がりました。ほとんど梯子のような、か細い木造の段が遥か上まで続いています。
登る者の安全配慮など、何ら考えていないような無骨なそれを、二人は物怖じ一つせず、すいすいと上がっていくのでした。
「何をぽさっとしとるんじゃ。はよせえ」
頭上から、ミカゲの容赦無い叱咤が降ってきます。
ついていくと決めたからには、ここで尻込みばかりもしていられません。
わたくしも意を決し、先の見えない登攀に挑みます。
右手、左手、脚を持ち上げる……。何度この繰り返しをしたでしょうか。
四肢の筋肉に緩い痺れの走ってくる頃、やっと鼻先に、地上の空気を感じました。
「遅いわ」
差し出されたミカゲの手を取ると、野菜でも収穫するような気軽さで、えいやと引き抜かれました。
その反動は脱出だけで収まるはずもなく、勢い余ったわたくしは背中から地面へと投げ出されます。
腐葉土特有の、柔らかく湿った感触がありました。
仰向けのまま見渡した周囲には、背の高い木々の群れが広がっています。
地下通路の横道を出た先は、どうやら三和戸山、山中の森林のようでした。
村をぐるりと取り囲む、鬱蒼と茂った天然の城壁です。
忘れもしません。宇美沢村へと初めて脚を踏み入れたあの時と、ほとんど同じ光景がそこにあります。
ただがむしゃらに――祠を壊そうとし登山に励んでいた、兄の姿が林間の狭間に浮かび上がりました。
奇妙な酩酊感と、少しの頭痛を覚え、思わず額を押さえます。
確かに、そこにはわたくしの兄――倉敷大悟の姿がありました。
しかし隣に誰かがいましたか?
兄は一人で登山し、祠を壊し、そして倒れたはずです。
AIライタ―による自動筆記では、己に嘘はつけません。
兄が終始一人であったとするなら、ではわたくしはいったい――。
「瑞希」
気付けばそこに、真正面からわたくしを見つめる目がありました。
満月のように、瞳を平らにしたミカゲがわたくしをじいっと見入っていました。
「もうひと踏ん張りだ。意気地のない兄貴を、もう少しだけ助けてやってくれ」
わたくしを元気づけてくれているのでしょうが、その言い方はどことなく妙でした。
しかし、誰かに励ましてもらえるという事実が、交友関係に恵まれなかったわたくしには無性に嬉しくて仕方が無く、些細な引っ掛かりはすぐに消えてしまうのでした。
243:妹 20XX/10/16 (木) 03:00 exIDinject99
弥彦さんは地上に出ても勢いを緩めませんでした。
目印も無い山中の獣道を、先へ先へと突き進んでいきます。
その少し後ろを、ミカゲに付き添われる形で、わたくしたちが追っていました。
事ここに至っては、彼女がわたくしの身を心底案じていることは自ずから明らかでした。
いったいどうしたことなのでしょうか。
彼女とは格別、仲良くなったつもりはありません。そもそも、神社でやり取りしたのは兄であって、妹のわたくしはほとんど初対面なのです。
「まぁ、その辺りは分からなくてもいいよ」
彼女はまたしても、わたくしの心中を直接読み取ったかのような、意味深な発言を口にしました。
「スレの奴らが理解してくれていたらいい。君のやること為すこと何であれ、おおよそ僕は大賛成なんだ。
君……というか、君たちがいてくれたからこそ、僕は約束を果たせるのだから」
244:ミカボシ 20XX/10/16 (木) 03:03 a4V8eMan
そろそろ南のかなめ祠に到着する。
その前にもう一度だけ安価を指定しようか。
>>260
時間的余裕を鑑みるに、これが最後だ。
賢明な判断をよろしく頼むよ。
245:名無しさん 20XX/10/16 (木) 03:04 GmVS1TT9
その前に、せめて一つだけ答えてくれ。
>>244の言う安価って、AIライターを起動している人間に対して、逆にスレッド側から指示の信号を送る……みたいな解釈で合ってる?
千年前のミカボシが、ミコと電波でやり取りしてたのを、今はインターネット上で再現してるとか。
246:名無しさん 20XX/10/16 (木) 03:05 WnmY8wXb
あーそういうことか。やっと分かったわ。
思えばスネークの安価も、そんな感じだったもんな。
247:名無しさん 20XX/10/16 (木) 03:05 IEEzojJH
じゃあ俺が今、適当に安価つけても成立するってこと?
>>250
248:名無しさん 20XX/10/16 (木) 03:05 GmVS1TT9
丁寧系妹キャラの倉敷瑞希ちゃんの、瑞希ちゃんをprprできる神スレはここですか……?
249:名無しさん 20XX/10/16 (木) 03:06 DEFsQHP4
キショ過ぎて草も生えん
250:名無しさん 20XX/10/16 (木) 03:06 EzhqQIKZ
安価なら俺が宇美沢村に転移する
251:名無しさん 20XX/10/16 (木) 03:06 rLuhGwUE
バカやってないで真面目に考えろよ。
仮に>>245の考えが正しかったとしても、AIライターの主導権を握ってるのはa4V8eManなんでしょ? 他のユーザーが操作できるわけない。
252:名無しさん 20XX/10/16 (木) 03:07 xwMorUoo
いや待てお前ら。
前のスレで、急にAIライターのURL張り付けてきたヤツおったやん。
あっからアプリをダウンロードしたヤツって、もしかして全員が安価による操作の対象になってる……?
253:名無しさん 20XX/10/16 (木) 03:07 2Mkpbjff
有り得る話だわ。
てかその理屈で言うなら、電話番号に掛けた奴も入ってそう。
このスレにa4V8eManが書き込んでるのって、それが本来の目的なんじゃ?
254:名無しさん 20XX/10/16 (木) 03:07 rLuhGwUE
っぱエイリアンによる地球侵略じゃないですかやだー!
255:名無しさん 20XX/10/16 (木) 03:07 Fl02tZNz
ネット経由な分、たちが悪いな。
むしろ映画で見かけるような、宇宙船から降りてくる古典的侵略者が生易しいだけで、
本来はこういう電子クラック的なのが、宇宙文明では主流なのかも。
256:名無しさん 20XX/10/16 (木) 03:08 lAMX07os
話が逸れ過ぎなんだよなぁ……
もっと真面目に祠の話して、どうぞ
257:妹 20XX/10/16 (木) 03:10 exIDinject99
南のかなめ祠――すなわち最後の祠でもあるそれは、唐突に現れました。
木々の密集する林の中にあって、突然ぽかんとただっぴろい空間の開いている場所に、わたくしたちは出ました。
部屋で言ったら、十畳ほども無いその中心に佇んでいたのが、忘れもしない――背丈ほどの大きさをした、かなめ祠なのでした。
「良かった、まだ無事だったか……」
あからさまにホッとした息を吐いて、弥彦さんは祠へと駆け寄ります。
焼け跡は無いか、扉がしっかり閉まっているか……矯めつ眇めつ確かめている彼を後目に、一方のミカゲは、首を大きく傾けて空を見上げていました。
彼女が何を警戒しているかなど、尋ねるまでもありません。
公民館の裏手でもそうだったように、天からミギワトノミコが降臨する――。現状、それが最も恐れるべき展開であり、かつ、この先起きる公算の最も高い状況でもありました。
「勝てる……の?」
疑問形にはしましたが、しかし口にしておいて、自分でもそれはまず無理だろうと思っていました。
ミカゲが頭一つ抜けた実力者であることは、ここまでの経緯で把握していましたが、だからといって神さまに敵う道理は有り得ません。ましてや相手は千年も間、地の底で怨み辛みを溜め続けてきた祟り神です。
「君は大きな勘違いをしているな」
ミカゲはまたしても、不思議な言葉遣いで言いました。
「これはそもそも勝負じゃないさ。勝って殺したい相手もいないし、負けて死すべき存在もいない。
大事なのは、どう決着をするべきかだ。しかし残念ながら、その内容を僕や君が選ぶことはできない」
「どうして」
決して、具体的に彼女の話が理解できたわけではありませんでしたが、わたくしはとっさに訊き返しました。
何か、彼女がとんでもなく理不尽な事を口にしている……とは直感的に理解できたからです。
どうして、わたくしの生死を、わたくし以外の人間に――それも全く見ず知らずの連中に託さねばならないのでしょうか。
彼女は夜空を仰いだ姿勢のまま、こちらを一瞥もせずに呟きます。
「当たり前だろ。死人は現世に口出ししないのが、この世の摂理というものだ。
僕はまぁ、論ずるまでもないとして……君だってそう。
兄の大悟くんならまだしも、二年前に溺死した瑞希ちゃんに、どうして決定権があろうか」
258:妹 20XX/10/16 (木) 03:13 exIDinject99
「AIライターは起動者の脳波を直に読み取り、それを文字信号として出力するアプリケーションだ。これを逆用すれば、スレッド内でGmVS1TT9が言っていたように、起動者の行動をある程度、操作することもできる」
ミカゲはまるで別人が乗り移ったかのように、以前の彼女とは全く違う口調で語ります。
わたくしは、それが怖くて怖くて仕方なくって、今にも逃げ出したいのに、なぜか脚が動きません。
震えて動けないのではなく、本当にぴたりともいう事を聞かないのです。
まるで、脳から出る電気信号が、身体の中途で何者かに遮られているように。
どれだけ頭で念じたって、わたくしはただ棒立ちになっているだけなのでした。
「その性質上、AIライターの出力する文章は本人にとっての真実である。
この本人にとって――という但し書きが重要だ。
つまり裏を返せば、本人が真実と思ってさえいれば、どんな嘘でも真実かのようにプリントアウトされる。例えば、倉敷瑞希が二年前に実は死んでいなかったとかね」
「でも私は生きてる!」
「いいや死んださ」
ぞっとするほど冷静に、冷淡にミカゲは告げました。
「いくら僕でも、二年前の記事を弄ってで、人間一人の死を偽装したりしない。そんな手間をかけるだけのメリットも無いしね。
だから倉敷瑞希は二年前に確かに死んでいる。水神の怒りを鎮めるために……もしくは、己の霊媒体質に起因する心霊現象を、これ以上拡散させないために」
「いや……」
わたくしが一歩後ろへ下がると、ミカゲはその分一歩迫ってきました。
いつの間に、彼女は空を見上げるのを止めていて、わたくしの方を向いています。
いいえ正確には彼女はきっと、とっくに死しているはずのわたくしの肉体を見ているのでした。
「水神の怒りはさぞ凄まじかっただろうね。なにせ、自分を祀る祠を無理やり移転させられたうえに、ろくに手入れもされないまま、挙句は何も知らない子供たちに荒らされる始末だ。倉敷瑞希がああして入水していなかったなら、どうなっていたか身の毛もよだつ。まぁ、だからこそ――」
ミカゲは急に、右の人差し指を上へと向けました。
「比上礼子は依り代になったんだろう。
受けた恩を顧みることなく、それどころか仇で返した痴れ者たち……もはや事の前後なんて関係無い。恩知らずは残らず殺し尽くす。その一点で、君の親友とミギワトノミコは結びついたんだ」
空がにわかに稲光を放ちました。暗闇を裂く真っ白な光が、矢のように地上に降り注ぎ、そのうち最も輝かしかった一射が、天と地を繋ぐ一柱と変わります。
昏目どもの目を余さず潰さん、あまりにも眩い陽の中に、ミギワトノミコは再び現れました。
259:妹 20XX/10/16 (木) 03:16 exIDinject99
「瑞希ちゃん……探したよ……」
空色の髪の彼女が、ゆっくりゆっくり降りてきます。
まさしく神々しい燐光を伴って、わたくしたちの前へと立ち塞がります。
祠の傍にいた弥彦さんが、すぐさま反応し身を翻しました。
着ていたジャケットの懐から、何枚かの御札を取り出します。
遠目にも、御札には蛇ののたくったような字で、何やら呪文や魔法陣がびっしり書き込んであることが分かりました。
それらを前に突き出して、何やら早口に唱えます。さながら、時代劇に出てくる陰陽師か何かのようでしたが、悲しいことに、それが完了するよりも、彼の右手が燃え上がる方が先でした。
「ぐわっ」
あまりにも情けない悲鳴が上がり、炎に包まれた弥彦さんが地面をのたうち回ります。
そうやって、消火を試みているのかもしれませんが、もがけばもがくほど右腕に纏わりついた火は勢いを増していくようでした。
「首魁である御前は簡単には死なせんぞ?」
愉快気にミコは言い放ちます。
「妾が味わった千年に及ぶ辛酸……その一片にすら遠く及ばぬだろうが、せめて身を焦がす苦しみを知れ」
「止めて!」
喉が引き攣るほどに叫びました。
「止めてよ! もうこんなことは止めにして!」
叫んで、走って、跳んで、宙にたゆたう彼女の背にかじりつきます。
「れいちゃんの顔で、れいちゃんの声で、こんな酷い事をしないで!」
燐光を帯びたミギワトノミコの身体は、やはり熱したヤカンのようでした。
着ているセーラー服の裾を掴んでいるだけなのに、激烈な痛みの感覚が襲ってきます。
わたくしの全ての本能が、今すぐこの手を離せと警鐘を鳴らしているのです。
それら全てを、理性と意思とで無視しました。
「私のことはもういいよっ! 好きで死んだんだよ! 私が自分の意思で、あの日、貯水池に潜ったの!
ミカゲだかミカボシだか知らないけど、そこの人の言う通り!
比上山の神様が怒ったのは、声の聞こえる私がそこにいたから。下手にコミュニケーションが取れたから、余計に酷くなったの。私が全部悪かったんだよっ!」
ミギワトノミコの――いいえ、れいちゃんの動きが止まりました。
50cmほど地上から浮いていた彼女の身体が、ゆっくりゆっくりと降りて行きます。
気のせいか、皮膚を焼くほどの灼熱も、弱まる兆しを見せ始めました。それを幸いに、わたくしはよりいっそう強く、彼女の両肩を後ろから抱すくめます。
「もう二度と……伝えられないかと思った。だからこうしてまた会えて本当に良かった。
クラスのあの子たちは、ただ怖がって怯えていただけ。私は何も恨んでなんて無いの。
れいちゃんが怒る必要なんてちっとも――」
「あるんだよ」
刃の切っ先のような、冷ややかな声でした。
「あるに決まってるでしょ。バカ言わないで。
親友のふりして裏切って、その子に『死んだ方がマシ』だなんて思わせた女が、怒る必要が無い……? ふ……ふふ……ひひひ……」
ひっひっひっと、奇妙な笑いが連続しました。
ともすればそれは、泣き声のようでもありました。
「ひ……ひひ……妾はの、妾は憎いのだ……。あの子に全てを押し付けた村人も、それを良しとしたお父様も、そしてなにより……それが分かっていてなお、何ら止めようとしなかった妾自身が。
ゆえに焼かねばならぬ。村も、山も、ことごとくを焼き尽くさねば……終わらない」
鎮静化したかに見えた炎が、途端に勢いを盛り返しました。
酸素が一気に消費されたことで、凄まじい突風が巻き起こります。
わたくしはその嵐に揉みくちゃにされ、何も分からないまま、彼女の身体から引き剥がされました。
地面に派手に叩きつけられるも、痛みを堪えてすぐに顔を上げてみれば、そこには大火に見舞われる木々の、地獄の光景がありました。
先ほどまで星の瞬いていたはずの夜空が、今は煌々と赤に染まっています。立ち込めるきな臭い煙は、肉と人毛を焼く異臭をどこかに漂わせていました。
――それもそのはずです。
今まさに炎上している大木の、その付け根に転がっている不可解な黒色の物体は、どうやら弥彦さんの成れ果てのようでしたから。
「止めたいか?」
ミカゲが、いつの間に耳元に顔を寄せてきていた彼女が、わたくしに訊きます。
「彼女の動機を知った上でなお、君たちがどうしたいかを知りたいんだ。
止めるべきか? それとも行かせるべきか。許すべきか、許さざるべきか」
わたくしは――わたくしは?
そもそも、わたくしが決めて良い事なのでしょうか。
いいえ、それは違います。なぜってわたくしは知っています。
ずうっと近くで、見てきましたから。肩の後ろに憑いて、ずっと傍にいましたから。
兄が――お兄ちゃんが、どれだけわたくしの死に、怒っていたか。
皆さんもそれは、よく知っていますよね。
だってあんなコテハンを付けるくらいですもの。
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260:名無しさん 20XX/10/16 (木) 03:16 eUvfMaaU
祠クラッシャ!!
261:名無しさん 20XX/10/16 (木) 03:16 DEFsQHP4
おいばかやめろ
262:祠クラッシャ 20XX/10/16 (木) 03:17 exIDinject99
そしてようやく、私の目は覚めました。
お前らに指摘されて思い出しました。
ここに私が遥々やってきたのは、祠を破壊するためでした。