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「へえ、この布がねぇ」
「結構便利なんだ。手で
メルクリオは俺から手渡された布を触って使用感覚を確かめていた。
俺は朝から黒靄市場のメルクリオの店で商品を
今回売って貰う商品は蜜蠟ラップ。以前はケイオス卿の発明として広めても良いと思ったが、蜜蝋の値段高騰が懸念されたからやめていたあれである。
メルクリオの露店の品揃えは変わりない。インフレが少し進んで値段も上がっているが他は変わらず妙な道具ばかりが並んでいる。
おお、スムースゲッコーの革が何枚かまとめて売られている。大きさはないが買う価値はあるだろう。値段は……読みにくいな、聞こう。
「ところでこのゲッコーの革の束貰って良いか?」
「あいよ、千百十ジェリーだ」
「千と……百十、じゃあこれで」
「毎度あり! でも本当に旦那は値段交渉しないね」
「俺にそんな専門技術はねえんだ。それより、この値段で売れるか? だいぶ高いだろこれ。ぼったくりだと思われるぞ」
「いいやさっぱり! だから本当なら客と駆け引きして安くして販売するのさ。下げ幅が大きければ客も上手く交渉できたと思って気分良く買ってくれる」
そして実は普通よりも高値で売れて利益が大きい、と。まあ今日のところは許すぜ。
ハルぺリアじゃゲッコー系魔物はそれなりにいて革製品の素材に利用されている。だからといっていつでも手を出せるわけじゃないけどな。
そうそう、値段の数字の1が読みにくいのはメルクリオの字が汚いせいじゃない。この国の1はまるで丸
「その点、旦那の発明品は真っ当によく売れる。でも今回のは結構変わり種だな。その上実用性もありそうだ」
「まるで普段は実用性がないものしか作ってないみたいな口ぶりじゃねえか」
「……」
「そこは黙らないでほしかったぜ」
「ははは、いやすまない。モングレルの旦那が持ち込んでくれる商品はなんだかんだ良い道具ばかりさ。串揚げだのバロアソンヌだのと、大当たりも多い」
本当にそう思っているんだろうなお前。まあ商人が客の前で愛想も使えないはずもないが。
実際メルクリオが挙げた例はかなりの大当たりだ。串揚げ屋は今も好評、バロアソンヌの流行も廃れる
「しかしそれなりの量を持ってきてくれて、売れる算段は付いているのかい?」
「当然さ。俺が作った物に外れはない」
「なら期待させて貰うとするよ。ああそうだ、先に金を渡しておこうか。ゲッコーの革を買ってくれる前に出しとくべきだった」
「ああ。でも次からは貰わないでおく」
「へ?」
お金を取り出したメルクリオの動きが止まってしまう。強引に受け取って代わりにある紙を渡した。
「蜜蝋ラップの作り方はこの紙に書かれているから、それで値段を決めてやってくれ。それに今度からは俺じゃなくてメルクリオの方で作って欲しい」
「おいおい、どうしたんだい」
「別になんてことはない。そろそろ俺も
「……レゴールを離れるのかい?」
「そんな気分ってだけだ」
実のところレゴールから出ていくのはほぼ確定である。
少しゆっくりしているのは秘密がバレたってわけでもないからだ。シュトルーベの亡霊だってバレたら手荷物だけ持って逃げるけど、そういうわけでもないしな。下手に事件性を疑われるくらいならきちんと他の人達に挨拶してから離れた方がいい。……本当はとっとと出ていった方がレゴールの人達の安全のためになるんだろうけどな。
ケイオス卿の秘密を守ってくれたサリーには悪いけど納得して貰うしかない。というかあいつだったら何となく事情を察してきそうで怖い。釘を刺しておくか。あと早めにライナに会って断りを入れておきたいんだが、どうにも捕まらない。こっちも大変だ。
というわけでメルクリオには蜜蝋ラップを開示した。ケイオス卿の発明にしても良かったが、一つだけなら俺個人の発明として世に送り出しても良いだろ。作り方を踏まえればそこまで奇抜でもない。
「モングレルの旦那がねぇ……」
「ま、ケイオス卿に並ぶ大発明家がいなくなるわけだが勘弁してくれよ」
「ははは、確かにそりゃあレゴールの大損失ってやつだ。……次の街でも同じことをするつもりかい?」
「どうかなー、面倒でもあるんだよなぁ」
黒靄市場も
今だってそうだろう。意図したことじゃないがレゴールを出ていけば最悪、この街が不況に
俺を狙ってくるだろう連中と戦わなきゃならんし、しばらくはそういう重責から離れたいぜ。
「ダフネも立派なギルドマンだ。俺の手助けもいらない。安心してくれよ」
「もうダフネの心配はもうしてないよ。だがまぁ、そうか」
遠くを見つめるようにメルクリオは呟いた。こいつとも結構長い付き合いだから色々思うところもあるのかもしれん。それだけ親睦を深めていたなら嬉しい。
「なら俺にできるのは早く、そして高くこの蜜蝋ラップを売り切ってやることだな」
「別に気にする必要はないんだぞ。また会えるかわからないんだ」
「だからこそだよ、旦那。商売には信用が不可欠! 一度取り決めた約束を違えちゃなんねえのさ」
「そうか……ありがとう」
そう意気込む大切な友人の言葉に俺はただ感謝した。
「で、引っ越しするにしても問題は山積しているわけだ」
そんな問題を解決するために俺はバロアの森の深くに入っていた。具体的に言えば地下室の如く作った危ない発明品の倉庫に行く途中だ。あれこの方角で合ってたよな?
俺がレゴールを今まで離れなかった理由は複数ある。治安が良いとか、差別が酷くないとか、シュトルーベまでの往復がまだ楽とか色々だ。そしてそれらに並ぶくらい重要なのが発明品をどう処分するか決めていないというものがあった。
仮にバロアの森に放置しても
……秘密基地4号を発見しても1号から3号までどうするのか考えなきゃならないのは一旦無視しよう。見つけるところから頑張らなきゃならないし、そもそも俺が抱えきれる量はそんなに多くねえんだ……。
スコルの宿に置いているコレクションもどうしようか。“
「お、あった……あれ?」
木々が生い茂っていない開けた場所の中心に枯れた切り株が一つ残されている。間違いなく俺の秘密基地の入り口が隠されている場所だ。特に損壊しているようなことはない。
しかし切り株には見慣れない人物が寄りかかっていた。けがをしていて血を流している小柄な女性である。
「おい、大丈夫か!? 俺の声ちゃんと聞こえているか!?」
駆けよって声をかけた。目は半開きだが意識が
ボリュームのある長い茶髪のせいでわかりにくいが、尖った耳をしている。エルフだ。服装はジャケットとシャツ、キュロットスカート、あとはブーツか。ギルドマンの認識票もないみたいだし、どこから来たんだろうか。
傷跡は鞭や縄のようなもので攻撃されてできたように見える。叩くというより
「ポーション持ってて良かったぜ」
ポーションを傷にかけるとたちどころに女性の傷は癒えた。うら若い女性の服を多少
さて秘密基地の発電機やらを処分できる状態じゃないなと思っていると、場違いな足音が森の奥の方から聞こえてきた。
とん、とん、とん、とん。
小気味良い
月下の死神が騎乗する馬よりもずっと平凡な茶色い個体。おそらくバルガーのダブルヒットの方が余程体格もよく強そうに見える。
特筆すべき点はスーツを着用しているところだろう。どうやって着込んだのか上下ともに人間のスーツ姿だ。さすがに大きさは馬専用になっているが、馬主は何を考えてこんな服を着せているんだろう。
それに森に馬って、それはないだろ。あまりにミスマッチだ。
「しぶといな。そこの男に治療までされているとは」
いきなり渋い声が耳に届いた。服を着た珍妙な馬の口の動きに合っていた気もするが、いやいやさすがに馬は喋らないだろ。透明になれるスキルなりギフトでも使っている誰かを想定して周囲を見渡す。
「言語が異なると理解もできないか」
馬が喋ってるじゃねーか! しかも日本語だぞ日本語!
……落ち着こう。つまりこの喋る馬は蟻人間達の仲間だと見て間違いない。マジか、戦闘の用意なんてできてねえぞ。自称神やグレナデンくらい強かったら勝ち目なんてゼロだ。
「いやわかるけどさ、この子はお前が襲ったのか?」
「ほう……モングレルと名乗っていると聞いたが、あなたがそうか」
「質問に質問で返すなよ。まあ、俺がモングレルだ。それでこの子の傷はお前が負わせたんだな?」
「では諸共に殺されて貰おう。殺し合いだ」
「話が通じねえなほんと! “
会話が成り立たない連中ばっかりなので何となくこうなることも予測していた。
俺が剣を抜きギフトを発動すると同時に地中から幾本もの何かが迫ってきた。ダートハイドスネークよりも太く長い透明なそれは、避けようとした俺の足を少し
女性を襲ったのはこの喋る馬の攻撃だろう。彼女から離れつつ、おそらく透明な大蛇の群れとも距離を取って喋る馬に詰め寄る。
“
幸い女性はまだ目を覚ましていないようだ。この状況を見たら錯乱されてややこしくなりそうだからな。後でゆっくり事情を聞きたいところだ。
そして俺は浮遊感に襲われた。
『は?』
唐突に落下している感覚になり、次いで急に地面に開いた大穴に落ちていることに気が付く。しかし全ては遅かった。
深淵の暗闇に、どこまでも落ちていった。
『ぐえ』
不格好に大穴の底にぶつけられて情けない声を上げた。特に骨折したわけじゃないが痛みは誤魔化せない。
大穴の底は廃墟と
どうやら喋る馬も転移してきていたようで、俺とは違って綺麗に着地したらしい。あの女性の姿がなかったのは不幸中の幸いだ。
『専用のバトルフィールドってわけか。これがあんたのギフトか?』
「……」
『何とか言え!』
『“
とりあえずビールくらいの気軽さで俺の攻撃スキルを使用する。毎度バチバチと燃えるチャクラム数枚の投擲は見えない何かに阻まれる。あの透明な大蛇は俺の剣でも斬れないものの払えはするのだが、逆にこちらの攻撃も守れはする。お互い防御面で攻撃面を上回っているということか。
それにしてもあの大蛇、蛇なのに噛み付きはしてこない。あるいは蛇ではなく別の何かかもしれない。動く音や攻撃から長虫っぽいと感じていても断定はできなかった。
そこらの廃墟に登って喋る馬に飛びかかることも考えたが、空中で迎撃される恐れがあってやめていた。
攻めあぐねていると喋る馬の後ろから二体のスケルトンが出現した。それぞれ剣と斧を持った典型的なスケルトンは喋る馬に目もくれず一直線に俺に襲いかかる。
『今の姿は馬よりお前らに近いはずなんだけどな!』
たかがスケルトン如きに負ける俺ではない。かつてはその動く人骨に恐怖を覚えたものだが、自称神の作った彫刻を見た衝撃に比べたら何とも思わなくなった。
しかし本番はここからだった。スケルトンだけじゃなく、明らかに巨人の骨に思える巨大なスケルトンや腐肉を残したグール、迷信だと勝手に思っていたゴーストや頭蓋骨に蜘蛛の足が生えたような奇怪なアンデッドともつかない魔物が続々と現れ、襲撃してくる。無限に湧き出るかと思うほど大量のアンデッドだ。
喋る馬は距離を保つのではなく自分の足で近づいてくる。好都合だ。
廃墟の壁を白く輝く骨の腕で持ち上げる。
『おおら、よっ!』
そのまま力任せに壁をぶん投げてやった。
『“
喋る馬はたまらず防御行動を取るだろう。飛んでくる壁にも射出された投擲武器にも、な。
だからいつまで経っても壁しかやってこなければ混乱するだろう。
「……まさか」
『俺はスキルを発動していない。魔光の確認くらいしろよ?』
俺が壁の後ろにいたせいで魔光の確認なんてできなかっただろう。
『普段は下手を演じているけど、投擲も得意だぜこっちは!』
壁を投げてその後ろに付きつつ、スキル名の宣言だけをして発動しない。その上でそこら辺の瓦礫を一つ手にし、喋る馬に肉薄した時に上へ投げて透明な大蛇どもの壁を越えて喋る馬に当たるようにする。
見事に目論見が成功して守る盾を失った喋る馬を斬りつける。足場の悪さもあって首下の胴体部分を浅く斬っただけになったが、それでも相手は傷つき鮮血が舞う。
直後に周囲のアンデッドがわらわらと押し寄せてきたが“
少なくとも今回の敵は俺が傷つけられる。なら後は透明な大蛇のような何かを攻略すれば必ず勝てる。
布を纏ったゴーストを斬り倒すと、斬られたワイシャツの
「“
耳慣れない単語に身構えると、喋る馬の四本の足が地から離れ、体がだんだんと宙に浮いていく。
浮遊のスキルかと疑ったが、突如俺の第六感が警鐘を鳴らした。その場を飛び退くと俺の体より何倍も幅がある大穴がいきなり生まれた。そして大穴は急激なスピードで掘られていき、喋る馬の体もそこに入っていった。喋る馬の足は一切動いていない。まるで何か乗り物に乗っていたような移動だった。
『どこから仕掛けてくる……何!?』
潜った喋る馬を感知する前に、空からドラゴン、いやワイバーンに似た魔物が襲い来る。スケルトンやグールを背に乗せたワイバーンの騎兵部隊は噛み付きや剣で攻撃してくる。先に乗っていたグールを斬り飛ばし、別のワイバーンのような竜の翼を切断する。
噛み付かんとしてきたワイバーンの
地響きが鳴って即座に俺は対峙していたワイバーンの背に力技で登って遠くに跳躍する。俺を追撃するように首を
土の中から出てきた喋る馬は空中でも微動だにせず、こちらを
「“陽だまりの加護”」
そう唱えると喋る馬は発光し始め、俺がつけた傷が徐々に塞がっていく。治癒魔法じゃなく回復スキルの類だ。
そして何となく“
ギフトの中には漂着者達の伝える神話に登場する神々由来のものが存在する。“
この喋る馬が使った“
らしいというのは、そもそもこの世界にミミズがいないせいで上手く翻訳されていないからだ。友人の研究者やら漂着者やらと話しているうちに、どうもある言葉がミミズを指しているとわかった。あの時は
大体の正体は掴めた。“
ギフト名宣言の効果はおそらく透明な巨大ミミズの使役効果がなくなる代わりに、より大きな透明ミミズを纏うものだろう。
幅何メートルもある長く太いチューブに馬が入って立っているとしよう。チューブを透明な巨大ミミズに置き換えればだいたい想像が付くはずだ。宙に浮かんでいたのは芋虫が歩行する時に中腹を持ち上げるような動きをしているのだろう。
改めて考えるとやばい。正直透明でいてくれて良かった。モンゴリアンデスワームみたいな怪物ミミズを視認して戦うなんて無理だ。死の恐怖以上の感情が抑えきれなかっただろう。
『“
試しに撃ってみるが喋る馬は避ける素振りも見せず、奴の何メートルも前で透明な何かに当たって止められる。この分だと防御力も変わっていなさそうだ。
俺の投擲スキルへの返答は耳を
『ファンタジー世界でそれは反則だろ!?』
鋭くなった聴覚で砲弾が飛んでくる方向を割り出し、とにかく回避に専念する。進んだ科学技術の兵器が恐ろしいのはガンマン魔人のせいでさんざん学ばされた。廃墟は盾にもならず、喋る馬がギフトで掘り進んだ穴の方も安全とは言えない。
かといって喋る馬の透明な巨大ミミズを無視していれば敗北は必至だ。
『痛っ』
おそらく尻尾による薙ぎ払いの攻撃が、周囲にいたスケルトンやグールを破壊しつつも俺の身体を
大砲を撃っている連中はワイバーンのように目が白く濁っていた。それだけじゃなく、青くなった皮膚には黒々とした血管が浮き出ていて、明らかにアンデッド系でもない異様な存在になり果てていた。俺に直接攻撃してくるアンデッドにもそういった特徴の奴らがどんどん混じってきている。人間だけじゃなくエルフや魔族の姿も見え始め、いよいよ混沌としてきた。
敵は被害などお構いなしだ。砲撃にせよ透明な巨大ミミズの攻撃にせよ、次々と仲間ごと俺を潰しにきていた。ワイバーン騎兵の突撃も止む気配はなく、“
……勝ち筋は見えてるけども。
あれから何時間も経った。敵のアンデッドの攻勢は衰えなかったし、ワイバーンや大砲をいくら排除しても新手が出現した。辺りには人骨や刀剣が数えきれないほど散らばって戦いの凄惨さを物語っていた。
だが“
そりゃそうだ。この異空間で生身なのは俺とスーツ姿の喋る馬だけ。アンデッドどもは疲れ知らずだが、単なる生物が何時間も戦闘していれば疲弊する。
俺だって疲れるが、こっちにはこれがある。
『“
内在魔力を大幅に回復するスキル“
俺が選んだ戦法は持久戦。泥臭くとも無敵の盾を持っている相手に有効な戦法だった。敵の戦力の方が多いし賭けだったが……どうやら勝てたみたいだな。
じゃ、そろそろ殺すか。
まずは先程と同じような攻撃を試す。
脇目も振らず喋る馬に向かって走る。剣や盾を持つスケルトンや火の玉じみた幽霊にぶつかるが気にしない。俺自身の肉体も“
喋る馬の目も覚めたようで、斬撃を透明な巨大ミミズの群れで防いでくる。“
「……!」
『“
黒い炎熱のチャクラムは先程と同様に見えない巨大ミミズの盾に阻まれるが、喋る馬が立ち
『“
俺の相棒、バスタードソードを射出してきたことで喋る馬の目が大きく見開かれた。燃える中途半端な剣をまたも防ぐ。
だがそれは囮だ。投げナイフを当てられた斧は宙をくるくると回転し、容易に透明巨大ミミズの壁を超える。
そして次の瞬間、喋る馬の首にスケルトンが持っていた斧がざっくりと突き刺さった。
別に俺の武器じゃないと殺せないわけじゃなかったからな。だが気力も体力も削られていた喋る馬にとってはどうにもならなかった。結果として似たような手を二度も食らってしまったわけだ。
喋る馬の首から血が溢れ出して真下に広がっていく。馬の足では刺さった斧を抜けない。もうこいつの死は確定した。
……なんでアンデッドどもはまだ動いているんだよ。大砲も撃ってきてるから回避しないといけないし……。
なんて思っていると、異空間自体がブレた。瞬きする間もなく枯れた切り株のあるバロアの森の開けた場所に戻ってきていた。空を見るとまだ日は高く、異空間で数時間経ったとは思えなかった。おそらく時間の流れが異なっている。
ご丁寧に射出したバスタードソードやチャクラムなどの装備品も周囲に落ちている。ありがてえ、バスタードソードだけは失いたくなかったんだ。
倒れていた女性の方を見ると、座ってはいたがもう起きていた。尖った耳を髪で意図的に隠している。エルフがこういう風に耳を隠しているのは個人的には知らない。
やばい“
「あの、あんたは誰?」
「あー、俺はギルドマンだ。さっき見た俺の姿は黙ってて欲しい」
「……ねえ、あいつは……馬が、近くにいなかった?」
「馬か。あんたを襲っていた馬なら俺がどうにかしておいた」
「どうにかって、殺したの!?」
息を飲む音がしたと思ったら、女性は立ち上がって凄い剣幕になる。
「あ、ああ。俺が殺したが、もしかして何か用があったのか? でもすまない、俺も襲われて――」
「ふざけるな……」
女性は
「なんで貴様ら如きヒトモドキが、あいつを殺しやがった!?」
「は!? ていうか、お前!?」
ふざけるな、のところから言語が変わっていた。この女性が話しているのも、日本語だった。
この女性も俺を襲ってきた敵の仲間なのか? ならどうして仲間の喋る馬に襲われていた? 仲間割れ?
「下賤なヒトモドキが、
今日の戦いはまだ、終わっていなかった。
VS埋没殿のサイレントリッチ終了
VS打ち砕くロッカに続く