生徒会役員選挙の時期がやってきた。
とはいえ、教室の雰囲気が大きく変わるわけでもない。
ポスターが掲示されたり、立候補者の名前が話題になったりはするけれど、中間テスト前のような緊張感もなければ、体育祭前のような熱気もない。
みんな普段通りに授業を受けて、普段通りに雑談をしている。
僕も特に興味があるわけではなかった。
ただ、一つだけ願望があるとすれば――
(何かの間違いで伊藤が生徒会長にならないかな)
昼休み、そんなことをぼんやり考えていた。
成績優秀。
運動神経抜群。
責任感もある。
おまけに顔まで良い。
欠点らしい欠点が見当たらない。
本人は絶対に嫌がるだろうけど、生徒会長の腕章をつけた伊藤は妙に似合いそうな気がした。
そんなことを考えていると、隣の席に座る当の本人から――
「獅子御」
「ん?」
「日向が生徒会の書記に立候補したらしい」
僕は少し驚いた。
「えっ、あの日向さんが?」
言われてみれば納得だった。
日向さんは勉強もできるし、人当たりも良い。
面倒見もいいし、先生からの信頼も厚い。
生徒会の仕事も卒なくこなしそうだった。
「日向さんだったら何でもこなせるから、生徒会長も似合いそうだね」
僕は頷く。
そして少し考えてから付け加えた。
「でも僕なら伊藤を生徒会長に推薦するよ」
すると伊藤は呆れたような目を向けてきた。
「推薦するのは勝手だが」
そこで一拍置く。
「人前に出ることが苦手な獅子御に推薦文を読み上げられるのか?」
「うっ……」
痛いところを突かれた。
体育館。
全校生徒。
壇上。
マイク。
想像しただけで胃が痛くなる。
僕は乾いた笑いを浮かべるしかなかった。
「はは……」
説得力がないにもほどがある。
推薦する側が壇上で固まる未来しか見えなかった。
伊藤はそんな僕を見て小さくため息をつく。
「それよりもっと重大な問題がある」
「重大な問題?」
僕は首を傾げた。
推薦文の朗読以上に重大な問題なんてあるだろうか。
すると伊藤は静かに言った。
「書記に立候補した生徒は複数いるらしい」
「……あ」
その瞬間、僕は理解した。
生徒会選挙では立候補者だけでなく、推薦責任者も演説を行う。
つまり――
誰かが推薦文を体育館の壇上で読み上げなければならない。
しかも複数の候補者がいるなら、それぞれに推薦人が存在する。
僕の脳裏に、一人の人物の顔が浮かび上がった。
歴史を愛し。
人前で話すことを全く苦にせず。
むしろ大勢の前で話す機会を見つけると、自ら飛び込んでいく女性。
演説というより講演会を始めそうな人物。
僕はゆっくりと顔を上げた。
そして伊藤もまた、まるで同じ人物を思い浮かべたかのように、何とも言えない表情をしていた。
恐ろしい予感しかしない。
もし僕たちの予想が当たっていたら――
今年の生徒会選挙は、きっと普通には終わらない。
―――
生徒会役員選挙の立候補者紹介が行われる日。
全校生徒と教職員が体育館に集められていた。
普段は体育の授業や集会で使われる広い空間も、これだけの人数が入ると妙に窮屈に感じる。
僕は伊藤と並んで一年生の列の後方に座っていた。
壇上には立候補者たちが椅子に腰掛けている。
その中には日向さんの姿もあった。
普段は落ち着いていて何事にも動じない印象の日向さんだが、今日はさすがに緊張しているらしい。
背筋は伸びているものの、膝の上で組まれた手が少し硬い。
名前を呼ばれるたびに表情もわずかに強張っていた。
「日向さんでも緊張するんだな……」
僕が小さく呟くと、
「当たり前だ」
伊藤が即答した。
「誰だって最初は緊張するものだ」
確かにその通りだった。
僕なら壇上に上がる前に逃亡を図っているかもしれない。
やがて司会の先生が進行を始める。
立候補者本人の演説に先立ち、推薦責任者によるスピーチが行われるらしい。
その瞬間、僕と伊藤は無言で顔を見合わせた。
お互い考えていることは同じだった。
頼む。
違っていてくれ。
僕たちの予想が外れていてくれ。
そんな願いも虚しく、司会の先生がマイクを手に言った。
「続きまして、日向柚乃さんの推薦人です」
そして。
壇上の袖から、一人の女子生徒が現れた。
長い髪を揺らしながら、堂々とした足取りで演壇へ向かう。
曽米妃美華。
予想通りだった。
「やっぱり……」
僕は思わず額を押さえた。
隣では伊藤が無言で天井を見上げている。
たぶん現実逃避だ。
そんな僕たちの不安など知らず、体育館の空気は少しざわつき始めた。
特に一年生の反応が大きい。
「ねぇ、あの人誰?」
「曽米先輩だよ。チア部の先輩」
「えっ、可愛くない?」
女子生徒たちがひそひそと話している。
少し離れた場所では男子たちも盛り上がっていた。
「うわ、チョー美人じゃん」
「あの人、彼氏いるのかな」
「モデルみたいじゃね?」
「二年生だよな?」
どうやら曽米さんを知らない一年生たちは、その姿にすっかり目を奪われているらしい。
無理もない。
曽米さんは見た目だけなら完璧なのだ。
整った顔立ち。
明るい笑顔。
人前でも物怖じしない堂々とした立ち振る舞い。
遠目に見れば、まるで理想的な優等生にすら見える。
壇上に立つ姿も妙に様になっていた。
だから一年生たちは勘違いしている。
曽米さんを知らないから。
本当の曽米さんを知らないから。
僕は壇上を見ながら小さくため息をついた。
隣の伊藤も同じ気持ちらしく、腕を組んだまま目を細めている。
日向さんはどこか諦めたような表情をしていた。
たぶん彼女も分かっている。
これから何が起こるのかを。
一年生たちはまだ知らない。
教職員の大半は知っているが、赴任してきたばかりの先生は知らないはず。
この学校に入学してまだ半年ほどの生徒たちは、今まさに重大な勘違いをしている。
壇上に立っているのは、優秀な推薦人ではない。
普通の推薦演説など絶対にしない人物だ。
歴史という燃料を与えられた瞬間、誰にも止められなくなる災害級の存在。
僕たちは知っている。
曽米妃美華という人間の真の正体を。
そして今、この体育館には全校生徒と全教職員が集まっている。
つまり――
被害者の数も、過去最大規模だった。
壇上に立った曽米さんは、予想に反して極めて真面目だった。
少なくとも今のところは。
マイクの前に立ち、一礼する。
「皆さん、お時間をいただきありがとうございます。日向柚乃の推薦人、二年一組の曽米妃美華です」
声はよく通り、体育館の隅々まで響いた。
さっきまでざわついていた一年生たちも自然と静かになる。
僕は少し拍子抜けしていた。
てっきり開口一番、
『皆さんは神聖ローマ帝国をご存じでしょうか!』
みたいなことを言い出すと思っていたからだ。
隣を見ると、伊藤も同じことを考えていたらしい。
警戒したまま腕を組んでいる。
しかし曽米さんは真面目な表情を崩さない。
「まず、私と日向柚乃の関係についてお話しさせてください」
そう言って語り始めたのは、僕も知らない話だった。
「私たちは小学生の頃からの友人です」
体育館が静まり返る。
「六年間、同じクラスでした」
僕は少し驚いた。
そこまでは知っていたが、六年間ずっと同じクラスだったとは知らなかった。
曽米さんは少し遠くを見るような目をした。
「私たちが通っていた小学校は――」
そこで一呼吸置く。
不吉な予感がした。
そして案の定だった。
「万人の万人に対する闘争を体現したかのような荒んだ学校でした」
体育館のあちこちで、
「……?」
という空気が流れる。
たぶん大半の生徒は意味が分かっていない。
でも何となく大変だったことは伝わったらしい。
曽米さんは構わず続ける。
「私は祖父母の影響で幼い頃から歴史が大好きでした。祖母から古代ローマを、祖父から三国時代の話を毎日のように聞かされました」
それは僕も知っている。
というか、この学校で知らない人は一年生と今年から赴任したばかりの先生くらいだろう。
「しかし当時の小学生にとって、古代ローマや三国時代の魅力を語る少女は理解し難い存在でした」
当然だと思う。
僕だって当時聞かされても逃げ出していた。
「結果として私は周囲から浮き、やがていじめの標的となりました」
その言葉に、体育館の空気が少し変わった。
さっきまで曽米さんを美人だ可愛いだと言っていた一年生たちも真面目な顔になる。
僕も思わず壇上を見つめた。
曽米さんはいつもの笑顔ではなく、静かな表情をしていた。
「そんな曽米妃美華を救ってくれたのが――」
曽米さんは後ろに座る日向さんへ視線を向ける。
日向さんは居心地が悪そうに目を逸らした。
「日向柚乃でした」
体育館が静まり返る。
「彼女は私を馬鹿にしませんでした」
一言一言を噛み締めるように話す。
「歴史の話をしても嫌な顔一つしませんでした」
日向さんは恥ずかしそうに俯いている。
「孤立していた私に声をかけ続けてくれました」
僕は少し意外だった。
日向さんらしいと言えばらしい。
でも本人はこんな大勢の前で語られるとは思っていなかっただろう。
「日向柚乃は、そんな過酷な環境に置かれた曽米妃美華を救ってくれた恩人なのです」
曽米さんの声が少しだけ大きくなる。
そして胸に手を当てた。
「そしてその恩人と私は――」
歴史用語が来る。
間違いない。
「刎頸(ふんけい)の交わりとも言うべき、固い絆で結ばれているのであります!」
案の定だった。
体育館に微妙な沈黙が流れる。
意味が分かる生徒はほとんどいないだろう。
でも、
『ものすごく仲が良い』
ということだけは伝わったらしい。
一年生たちが、
「なんかすごい友情なんだな……」
と頷いている。
たぶん理解の仕方としては正しい。
壇上の日向さんはついに顔を覆ってしまった。
絶対に恥ずかしいのだろう。
けれど曽米さんは止まらない。
僕はそんな二人を見ながら思った。
確かに曽米さんは歴史用語を挟みまくっている。
でも不思議と嫌味はない。
むしろ普段よりずっと真面目だった。
そして何より――
曽米さんが日向さんを本当に大切に思っていることだけは、歴史に詳しくない生徒たちにも十分伝わっていた。
問題は。
この演説がまだ始まったばかりだということ。
曽米さんの演説は、ここまでは意外なほど真面目だった。
もちろん歴史用語は飛び出していた。
でも内容そのものは日向さんへの感謝と信頼に満ちていたし、聞いている生徒たちも好意的に受け止めているようだった。
もしかしたら今回は無事に終わるのかもしれない。
そんな淡い期待を抱いた僕が甘かった。
曽米さんはマイクを握り直し、さらに一歩前へ出た。
その目は妙に輝いている。
ああ。
これは絶好調な時の曽米さんだ。
僕は本能的に察した。
「では、何故日向柚乃が生徒会書記に相応しいのかをお話ししましょう」
体育館が静まり返る。
曽米さんは堂々と胸を張った。
「私にとって日向柚乃は――」
そこで右手を高く掲げる。
「『民衆を導く自由の女神』ならぬ、全校生徒を導く幸福の女神なのです!」
体育館がざわついた。
一年生たちが、
「おお……」
と妙に感心している。
問題はその次だった。
曽米さんは全く躊躇しなかった。
「むしろこの元老院の皮を被った生徒会の会長になっても不思議ではありません!」
僕は思わず前のめりになった。
いやいやいや!
今それ言う!?
候補者本人たちが壇上に並んでいるんだけど!?
生徒会長候補も副会長候補も目の前にいるんだけど!?
元老院の生徒会長って何!?
ちらりと壇上を見る。
他の候補者たちは苦笑いしていた。
先生方も微妙な顔になっている。
しかし曽米さんは止まらない。
止まるわけがない。
「日向柚乃が女神ならば――」
嫌な予感しかしなかった。
「私はこの閉塞した学校生活に風穴を空け!」
体育館中に響き渡る声。
「革命の
一年生がざわつく。
先生たちが笑いを堪え始める。
僕は頭を抱えた。
来た。
革命が来た。
生徒会選挙なのにフランス革命が始まった。
そして曽米さんは満面の笑みで宣言する。
「そんな革命の大天使!」
そこでわざわざ補足した。
「サン・ジュストとして!」
補足になっていない。
むしろ分かりづらくなっている。
「友人を支えたいのです!」
体育館の空気が奇妙な熱気を帯び始めた。
一年生は完全に置いていかれている。
先生たちは笑いを堪えている。
壇上の日向さんは両手で顔を覆っていた。
見ているこっちが申し訳なくなる。
けれど曽米さんは最後の締めに入った。
声に力が宿る。
「最大多数の最大幸福を求め!」
ベンサムまで出てきた。
「日々学校にいる全ての人の利益のために働くことのできる唯一の存在!」
曽米さんは後ろの日向さんを指差した。
「それが日向柚乃なのです!」
演説が終わる。
体育館に沈黙が落ちた。
ほんの数秒。
誰も反応できなかった。
たぶん情報量が多すぎたのだ。
その時だった。
後方から聞き覚えのある声が響いた。
「いいぞー!ヒミコー!もっとやれー!」
那智君だった。
僕は思わず振り返る。
立ち上がりこそしないものの、完全にスポーツ観戦のノリで声援を送っている。
(那智君が煽ったらダメでしょ!)
僕の心のツッコミは届かない。
するとさらに追撃が入った。
「ヒミコ様!万歳!」
今度は大堤君だった。
しかも妙に声が大きい。
体育館中に響き渡った。
一瞬の静寂。
そして――。
誰かが吹き出した。
続いて別の場所から笑い声が漏れる。
それが伝染するように広がり、
「ははははは!」
「あははは!」
「なんだよそれ!」
体育館全体が爆笑に包まれた。
先生たちまで笑っている。
壇上の日向さんは完全に膝に突っ伏したくなるような顔をしていた。
曽米さんだけは、
「最後に一言だけ……聖海高校の生徒諸君よ、日向柚乃のために団結せよ!私からは以上になります。ご清聴ありがとうございました」
と満面の笑みで手を振っている。
まるで演説会を成功させた政治家だった。
僕は隣の伊藤を見た。
伊藤は目を閉じていた。
「……伊藤」
「何だ」
「これ、生徒会選挙だよね?決起集会じゃないよね?」
伊藤は数秒沈黙した後、
「恐らく、な」
とだけ答えた。
その声には、全てを諦めたような響きが混じっていた。
生徒会役員選挙は無事に終了した。
結果から言えば、日向さんは見事に書記へ当選した。
それ自体は誰も不思議に思わなかった。
成績優秀。
責任感も強い。
人望もある。
むしろ落選する方が想像できない。
本人は控えめに喜んでいたが、周囲からも納得の声が多かった。
問題は――その後だった。
「あの演説、誰だったの?」
「日向先輩の推薦人の人」
「曽米先輩だよな?」
「面白すぎるだろ」
「歴史の人だ!」
どういうわけか、生徒会長や副会長の名前よりも、推薦演説を行った曽米妃美華の名前の方が校内に広まってしまったのである。
当然と言えば当然だった。
生徒会選挙で革命演説を始める人間など前代未聞だ。
しかも演説そのものは妙に感動的だった。
おまけに見た目も良い。
結果として、一部の生徒たちの間で妙な人気が爆発した。
そして案の定というべきか。
「ライオンハート殿!」
昼休み。
大堤君が勢いよく僕の机にやって来た。
嫌な予感しかしない。
「どうしたの?」
「ついに発足しましたぞ!」
「何が?」
大堤君は誇らしげに胸を張った。
「ヒミコ様のファンクラブに決まってるでありませぬか!」
やっぱりできたか。
僕は机に突っ伏しそうになった。
伊藤も隣で露骨に顔をしかめている。
しかし大堤君は止まらない。
「ちなみにワタクシ、ファンクラブ会員第一号ですぞ!」
「そう……」
「ファンクラブ名も決まっております!」
ファンクラブ名?
大体予想はついた。
「その名も――」
大堤君は大げさな動作で両手を広げた。
「ベル・エポック!」
教室の一部から、
「おおー」
というよく分かっていない歓声が上がる。
僕は頭を抱えた。
絶対に曽米さん本人が命名しただろう。
大堤君はさらに続ける。
「そしてファンのことは『タタール』と呼ぶそうですぞ!」
「……」
「……」
僕と伊藤は同時に黙った。
大堤君だけが満面の笑みである。
「意味はよく分かりませぬが!」
そりゃそうだ。
普通は分からない。
僕は伊藤を見る。
伊藤も僕を見る。
そして僕たちは同じ結論に至った。
――それ、皮肉じゃないか?
タタールのくびき。
ロシア史において、モンゴル支配を指す言葉だ。
つまり自発的に名乗るようなものではない。
むしろ、
「曽米妃美華に支配されている人々」
みたいな意味に聞こえる。
いや、実際そういう意味で付けた可能性もある。
曽米さんなら十分あり得る。
しかし大堤君は完全に感激していた。
「なんと歴史的な名称でしょう!」
「そうだね……」
僕は曖昧に頷く。
「響きがいいですなぁ!」
「うん……まあ……」
伊藤は何か言いたそうだった。
たぶん僕も同じ顔をしていたと思う。
けれど指摘するのも野暮な気がした。
なにより。
もし本人に確認した結果、
『そうだよ!私に従う忠実な臣民って意味!』
などと笑顔で返されたら、それはそれで恐ろしい。
だから僕と伊藤は黙っておくことにした。
その後も大堤君は、
「会員証を作るべきでは?」
「週一で歴史勉強会を開催しては?」
「聖地巡礼として体育館を訪れるのはどうでしょう?」
などと熱弁していた。
僕はそれを聞き流しながら、廊下へ視線を向ける。
そこでは当の曽米さんが、何も知らない様子で一年生たちに囲まれながら歴史談義を始めていた。
そして僕は確信した。
このファンクラブ。
たぶん近いうちに会員数より脱退者数の方が多くなる。
なぜなら彼らはまだ知らないのだ。
曽米妃美華という人物を崇拝することが、どれほど過酷な道なのかを。
①万人の万人に対する闘争
イギリスの哲学者トマス・ホッブズが哲学書『リヴァイアサン』で提唱した概念。
国家も法律もない状態、つまり自然状態では、みんながお互いを警戒することになる。人々は安全のために自分たちの権利の一部を国家や君主に預け、社会契約を結ぶ必要性を説いた。
②刎頸の交わり
中国戦国時代、趙の食客の藺相如と武将である廉頗(れんぱ)が交わした、首をはねられても後悔しないほどの固い友情のこと。
「刎頸」とは「首を刎(は)ねる」の意。
③民衆を導く自由の女神
フランスの画家ドラクロワの作品。
「フランス7月革命」を主題にし、メッセージ性の濃いものになっている。
④元老院
共和政ローマでは実質的な最高決定機関として外交や財政を司る。
帝政ローマになると権限が弱められるが、皇帝を補佐する機関として存続した。
⑤ラ・ファイエット
フランスの貴族、軍人。
アメリカ独立戦争に参戦した経験から、王政から立憲君主制への移行を理想とし革命の原動力となる。
「人権宣言」を起草し、バスティーユ牢獄襲撃後「三色の徽章(バッジ)」を革命軍に配布した。のちの国旗である三色旗の原型となった。
⑥サン・ジュスト
フランスの革命家。
優れた容姿と鋭い弁舌から「革命の大天使」の異名を取る。
ルイ16世の処刑を決定づける演説を行い、フランス革命の中心的役割を果たす。しかし、急進派の恐怖政治に不満を持つ議員らにクーデター(テルミドールの反動)を起こされ、自らも断頭台へと送られた。
⑦最大多数の最大幸福
イギリスの哲学者ベンサムが提唱した基本原理。
個人の幸福を最大化し、合算した全体の幸福がより大きくなる政策や法律こそ正しい政治であるという考え方。
⑧万国の労働者よ、団結せよ!
ドイツの思想家カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスが共同で著作した『共産党宣言』の一節。
共産主義者への連携を呼びかけたスローガンである。
⑨ベル・エポック
「普仏戦争」によるドイツ帝国成立から第一次世界大戦までのフランス(パリ)の産業の発達や芸術の開花した時代を指す言葉。
ビスマルクによる対フランス包囲網は外交上、絶妙な緊張状態が保たれ、ヨーロッパが戦火に包まれる可能性をコントロールしていた。その期間、フランスでは「パリ万国博覧会」やエッフェル塔の建設など世界の文化の中心として存在感を放った。しかし、ビスマルクが失脚しドイツが「世界政策」に舵を切ったことで、新たな戦争の火種が生まれ、第一次世界大戦によって平和な時代は消え去ってしまう。
ベル・エポックはフランス語であり、「良き時代」を意味する。
⑩タタールのくびき
モンゴル(元)の武将バトゥはロシアを侵略し、キプチャク・ハン国を建てた。モスクワ大公国などの国々は直接統治は免れたものの、貢納を義務付けられバトゥの支配下に置かれた。
「タタール」とはモンゴル系遊牧民の総称。
「くびき」は家畜に荷車や農具を引かせるため、首や肩にかける横木のこと。