先生を助けてただけなのにキヴォトスを敵に回した生徒さん 作:竹製のたけのこ
いつものようにシャーレで仕事をしていたときのこと。
シャーレ専属の事務員兼私の護衛役である五十嵐マキナがふと、私に言った。
「すいません先生、連邦生徒会に招集を受けまして。
少々席を外します。」
"うん、わかったよ。気をつけてね。"
「はい、なるべく早く戻りますので。
ではよろしくお願いします。」
そう言ってマキナはガチャリ、と音をたてながら姿を消した。
五十嵐マキナ。
連邦生徒会長直々に指名を受けた私のパートナー。
普段の書類仕事から出張の際の護衛、スケジュール管理や各組織への手配まで請け負う傑物。
正直、彼女がいなければ身体的にも精神的にも限界だっただろう。
それ程までに助けられている。
いつかは恩返しをしたいと思いつつ書類を捌いていると、
「こんにちは、先生。お手伝いをしにきました。」
ミヤコがやってきた。
だが、せっかく来てもらった所悪いが、既に8割方終わっている。
"ありがとうミヤコ。でもごめんね?もうほとんど終わっちゃってて。
せっかく来てくれたとこ悪いんだけどやることは多分ないよ。"
「…そうですか。そう言えば五十嵐事務員はどちらに?」
"マキナならサンクトゥムタワーに行ってるよ。さっき行ったばかりだから戻るまで少しかかりそうだけど。"
そう言うと、ミヤコの雰囲気が変わったような感覚がした。
何か、内に秘めたものを解き放ったかのような、理性をかなぐり捨てたような表情へと変わる。
「…そうですか…!」
ミヤコが歪んだ瞳を向けてくる。
「…先生、兎は年中発情期だそうですが、私は兎ではないので。」
突然ミヤコが私を押し倒してきた。
"ミ、ミヤコ…?どうしたの?"
彼女の顔を見ると明らかにおかしい。
顔が火照っている。おまけに息も荒く、目線も落ち着かない。
嫌な予感がする。
普段なら風邪の心配をするところだろうが、私には別の可能性が浮かんでいた。
見覚えがあったのだ。
「…兎は年中発情期だそうですが、私は兎ではありません。
私は今が発情期です…!」
ミヤコが私の腕を握りしめてくる。華奢な雰囲気からは想像もつかぬ程の握力で思わず顔を顰めでしまった。
"ミ、ミヤコ…!痛いよ…!離して…!"
「あぁ…その顔…!
あなたはそうやっていつも私を欲情させる…!
誘っているんでしょう…?
これはもう合意ですよね…!?」
"やめてミヤコ!私達女同士だよ!?"
「関係ありません!!先生、私の思いを受け取ってください!!」
あぁ…これが私の初めてか…と絶望していた矢先、
「では先生…作戦を開始しま「そこまでにしてもらいましょうか。」…っ!?」
"マキナ…?"
そこにはつい先程出向したはずのマキナが立っていた。
「五十嵐事務員…!」
「…呆れますね。助けてもらった身でありながら、それを仇で返す真似をするなど。
SRTも堕ちたものですね?」
「黙ってください。」
そう言うとミヤコは私の上でハンドガンを取り出し、マキナへ向けた。
「シャーレに引きこもっているだけのお飾りは消えてください。」
「先生を無理やり押し倒し、私に銃を向ける…。
これは我々、連邦捜索部シャーレに対する明確な敵対行為です。今なら見なかったことにします、銃をしまいなさい。」
「…もう一度言います。消えてください…!」
「一度しか言いません。銃を下ろしなさい。
最悪、武力行為もあり得ます。」
額に僅かな汗をかくミヤコ。
マキナの物怖じしないはっきりとした態度に気圧されたのか銃が震えている。
ミヤコがトリガーを引く瞬間、それよりも早くマキナはミヤコへ発砲した。
拳銃の形をしたそれから電極のついた物体が発射されミヤコの体につき、発電。
彼女は声を上げることなく気絶した。
「…はぁ…ふぅ…。
…なんとかいきましたね。」
"…ありがとう、マキナ。
でも、なんでここに…?"
「お渡ししたブザー、覚えていますか?」
"ブザー?そんなのあったっけ…。”
そう言い体をまさぐる。すると制服の内ポケットに硬い感触があった。
”あっ…。"
そう言えば私がキヴォトスに来た日、何かあった時に押せと言われブザーを渡されたことを思い出した。
今まで使う機会がなく完全に忘れていた。
どうやら偶然にも、押し倒された時の衝撃でスイッチが入ったようだ。
「…その顔、忘れてましたね?」
"うぐっ…!"
「私、言いましたよね?自分の身に何か迫ればこれを押せと。」
"ぐふっ…!"
「あなたの身を守る為のものなんです。今回はなんとかなりましたが、次はないかもしれないんです。
しっかりしてくださいね…。」
"はい…。"
何も言い返せない。いや、私が悪いのだから当然なのだが。しかし、情けないな…。
「それにしても先生、またですか?」
また。
そう、またである。
今回のようなことは1度ではない。
過去にも同じように生徒に性的に襲われたことがあった。
その度にマキナに助けられた。
しかも、私がまだキヴォトスを知らなかったころの"可能な限り生徒を傷つけず制圧してほしい"という要望に答えるため、今まで使っていた武器を捨て、テーザー銃を持つなど迷惑もかけてしまっている。
あぁ…駄目だ…嫌になる…。
どれだけ彼女に迷惑をかければ済むんだ…!ただでさえ彼女は忙しいのに、私が生徒とうまく関係を築けなかったせいで生徒に銃を向けさせるなんて「ふんっ!」痛っ!?
"な、なにするの…!?"
突然マキナが頭を叩いてきた。
私に配慮してかそこまで強くなかったが、痛いものは痛い。
「失礼、先生の顔がどんどん酷くなって見れたものではなかったので。」
"そこまで言う…?酷くない…?"
「…はぁ〜…。…それで?また自己嫌悪に陥っていたんですか?」
"い、いや〜…。その、何と言うか…?"
「わかりやすいですね…。」
"………。
…うん…ごめん…。そうなんだ…また、ね…。"
「私に迷惑をかけてしまった、と?」
"うん…。"
「まぁ、以前のように自傷行為に走らなくなっただけマシ、なんでしょうか?」
そう、襲われるようになった当初、私は誰にも相談できずリストカットを行っていた。
偶然マキナが傷跡を見つけなければ彼女を信頼することもなく今も続いただろう。
「…私はあなたではないので、銃弾が飛び交うことに対する恐怖は分かりませんし、同性に性的に見られたこともないので共感することはできませんが…。
それでも、側に寄り添い、居場所をつくる程度ならできます。酒に溺れたいなら面倒は見ますし、趣味に没頭したいなら付き合います。
だから…1人で抱え込まないで…。」
"ありがと…。"
あぁ、私の醜態の数々をしっかりと覚えているようだ…。
ある日、ストレスで自棄酒をしていた時、誰か一緒にいてほしいと思いマキナの家に行ったのだった。
酔いが覚めた時には私は布団に寝かされ、温かいシジミ汁が用意されていた。
そして酔ったまま1人で出歩くなという警告と共に、飲みたいなら付き合うと言ってくれたんだ。
しかも、酒に頼るのは良くないと思い好きなロボットシリーズのフィギュアを見に行った時のこともある。
彼女もそのシリーズを知っていたのを良いことに一日中連れ回してしまった。
彼女は良いリフレッシュになったと言うが恐らく疲れただろうに。気を遣わせてしまった。
しかし、これだけやってもなお抱え込むなと優しく声をかけてくれるなんて…。
生徒と先生という関係にしてはあまりにも歪だということはわかったいるが…。
「…さて、私は月雪ミヤコをヴァルキューレに連れて行きます。先生はどうします?付いて来ます?」
"うん、少し一緒にいさせて…。"
やっぱり…辛いな…。
しばらくして。
「先生、どうします?昼食。」
"そうだね…柴関ラーメンにしようか!
あそこなら人も少ないし安いし美味しいから。"
「ではそうしましょうか。」
さっそく駅まで行こうとした矢先マキナが
「そう言えば先生、私、車の免許をとったんです。
良ければドライブしながらいきませんか?」
なんと私の知らぬ間に免許をとっていたのだと言う。
そういうことなら私も早くとるべきだった。そうすれば彼女を助手席に乗せることもできたのに…!
しかし、私が免許を持っていないことも、乗せてもらった方が早く、安全なのも変わらない。
"じゃあ、お言葉に甘えようかな…?"
「では車を取りに戻りますか。」
マキナの車に乗せてもらい柴関ラーメンへついた。
彼女の車は砂塵にも強い仕様だと言う。
しかも走破性も高く、砂漠とは思えない快適なドライブだった。
「こんにちは、大将。2人です。」
「おう、五十嵐さんに先生じゃないか!らっしゃい!」
"こんにちは〜。"
相変わらず良い匂いのする店だ。既に腹の虫が声を上あげている。
「私は柴関ラーメンを。
先生はどうなさいます?」
"私も同じのをお願いします。"
「あいよ!柴関2つね!」
威勢の良い声で注文を繰り返しながら、手際よくラーメンの準備をしてくれる大将。
この人は私の事情を察し、セリカのシフト表をくれたり、予約のある日を伝えてくれる心から信頼できる人の1人だ。
「お待ち!柴関ラーメン2つね!」
「ありがとございます。先生、箸をどうぞ。」
"ありがとございます!
マキナもありがと。"
2人声を揃えていただきますを言い、麺をすする。
相変わらず美味しい。濃厚なのにさっぱりとした後味、私は料理人という訳ではないがどうやって作っているのか気になってしまう。
「こんにちは〜」
…っ!
この声は…!
「あ、あぁ、いらっしゃい。」
「ん、お昼を食べに来た。」
「セリカちゃん、接客してくれても良いんですよ?」
「嫌よ、今日は休みなんだから!」
「皆さん、余り騒いじゃ駄目ですよ?」
「大将〜5人ね〜。」
アビドスの皆だ。
今日は席が空いていたからテーブル席に座っているので見えずらくはあるがいつバレるか…。
マキナに何か案がないか目で訴えようと彼女を見ると、
「…」ズズッ
何もないかのようにラーメンをすすっている。
矢鱈と上品に食べているのが余計に腹立たしい…!
"ねぇ、マキナ…!"
「なんですか…?」
"どうしよう?このままだと見つかるよ…!"
私がアビドスの皆を警戒する理由、それはミヤコと同じように性的に襲われたことがあるからだ。
しかも、私を5人で共有するなんて、まるで私を人と思っていないかのような言葉も吐いていた。
今では仕事以外でアビドスに行くことはなくなってしまった。
「どうしようもありません。見つかっても私が守りますから。
…だから落ち着いて。」
…やはり、マキナは私のことをよく見ている。
さっきから動悸が止まらない。
本当なら今すぐにでもここから出たいが、私の身体能力で逃げられる訳ない。
…彼女に任せようか…。
「ん、先生発見」
見つかった…!
落ち着け…!私は1人じゃない…マキナがいる…。
「うへ〜先生だ〜。最近あんまり来てくれないから寂しかったよ〜。」
"…ごめんね、ホシノ。最近はちょっと忙しくて時間が取れないんだ…。"
顔は引き攣っていないだろうか?
トラウマのせいで喋るのですらキツイ。
マキナ…助けて…!
「…」カリカリ…
駄目だ、こっちには目もくれずにメモ帳に何か書いている。
「それじゃあ…私達が先生を手伝ったら解決ですね!」
"えっ…と…その…。"
「先生本人が処理しないと駄目なんですよ。その仕事。」
マキナが助け舟を出してくれた。
「いたの?あんた。」
「ええ、私は先生の護衛でもあるので。」
「本人が処理しないといけない仕事って例えば〜?」
「エデン条約関係の調整や先生が決裁しなければならない書類などです。
それと先生、そろそろ時間です。」
…?何か予定でも入っていただろうか?
思いだそうとしていると膝に何か当たっている。手に取り机の下で見ると
「トリニティに視察に行くという体で切り抜けます。合わせて。」
と書かれたメモの切れ端があった。
さっきのメモはこれを書いていたのか。
"ごめん、そうだったね。
えっと、これからトリニティに視察に行かないといけなくて…。悪いんだけどもう行かないと…。"
「ん、それならしょうがない。」
「是非また来てくださいね!」
案外すんなりと見送ってくれる…。
妙な違和感の抱きながらも勘定をし、マキナと共に店を後にする。
「うへ、相変わらずあの事務員、邪魔だね〜。」
無事に店を出られた安心感からか、その声に気づくことはなかった。
マキナの車の中。砂に揺られながらこれからどうするか考えていた。
"マキナ、この後どうする?"
「そのことなんですが、アビドスが我々を尾行している可能性もあるのでこのままトリニティへ向かおうと思っています。
実際、ティーパーティーとの会談の予定もありますし。」
"あれ?そんなのあったっけ?"
「いえ、どうやら私との会談のようで。」
"マキナと?なんでわざわざマキナに…?"
「分かりませんが、ひとまずトリニティへ向かいますか。」
トリニティの郊外に車を停め、マキナと一緒に校舎へ向かう。
トリニティもトリニティで甘いお菓子や紅茶の香りが漂っている。
しかもただ甘ったるいだけなどではない優しく上品な甘さだ。
この匂いの香水があれば買っていただろう。
帰りに何か買って帰ろうかと考えている内に校舎へ着いたようだ。
「さて、行きますか。」
"私も付いて来たけど大丈夫かな?"
「構わないでしょう。それに、今朝のこともあるので1人にはできないので。」
"あはは…。どうにかならないかな…これ…。"
「全てを受け入れようとするからですよ…。
個人的な考えですが、円満な関係を築くにはこちらから求めることも大切だと思います。
それこそ、1人の時間がほしい、とかでも良いのでは?」
なるほど、そういう考えもあるのか。確かに、1人だけの時間というのは全然取れていなかった。
今後の生徒との向き合い方について考えている内にティーパーティーの部屋の前に来ていた。
「すいません、シャーレの五十嵐マキナです。」
「どうぞ。」
扉の先からくぐもった声が聞こえる。
扉の先には紅茶を片手にするナギサ、ロールケーキを口にするミカ、シマエナガを愛でるセイアがそれぞれこちらに目を向けている。
だが、私を見た途端イレギュラーが発生したような、私がいるのが予想外という顔をしている。
「五十嵐事務員のみをお呼びしたはずですが…。」
「失礼、少々面倒な事が起きてしまい、先生も連れています。
それとも、先生が同席するとまずい話題なのですか?」
「い、いえ、構いませんよ。」
ナギサはなんとか取り繕うとしているが、薄っすらと汗が滲んでいる。
ミカもやや気まずそうな顔をしている。
しかし、セイアは何も問題はないようにシマエナガを愛で続けている。
「今回お呼びしたのは、アリウス自治区についてです。
インフラ整備や建物の復旧が完了した今、既存自治区の管轄下に置くのか、独立させるかを相談しようと思い…」
それからは至って普通の会談だった。ある程度結論もまとまり、一旦シャーレへ帰ることになった。
「それでは、この方向でアリウス自治区の処理を進めるということで良いですね?」
「うん、良いんじゃないかな?」
「私としても異論はないよ。先生、君はどうだ?」
"私も賛成だよ。"
「それでは今回の会談はこれにて終了ですね。先生、帰りましょうか。」
マキナと共に部屋を出る。
帰りに何か買って行こうかな…。
「先生がいらっしゃるとは予想外でした。」
「これじゃあ例の計画が進まないじゃん。」
「まだ慌てる時じゃない。予備プランへ変更しようか。」
マキナの車へ戻ってきた。
"結局、マキナだけ呼ばれた理由って何なんだろうね?"
「さぁ?私としては、先生も同席するべきと感じていましたが。」
"まぁ、そこまで心配する必要はないかな?"
「そうですね。
では、帰りましょうか。」
あ、お土産買うのを忘れていた、なんて呑気に考えていたら
「っ先生!!」
突然、車から投げ飛ばされた。
何をするのかと問い詰めようとした次の瞬間
ドンッ!!!
キヴォトスでは聞き慣れた音が聞こえた。だが、ここで聞くのは嫌な予感しかしない。
"何が…!?
…マキナッ!!大丈夫っ!?"
私の声に応える彼女の声はない。辺りを満たすのはマキナの声ではなく、車を焦がす炎だけだった。
"マキナ!!マキ「アハハハハッ!!やった!あの邪魔者を消してやった!!」っ!?"
横を見ればスイッチのような何かを手にしたトリニティの一般生徒が狂気を浮かべながらこちらを見て笑っていた。
「そこまでにしなさい。」
「アハハハハ…ッ!ハハッ…ハァ…!
あれ?ナギサ様?」
「よくやってくださいましたね。」
「…えへへ…!ナギサ様の為なら何でもやりますよ?」
何が起こっている…!?
なんでナギサはこんな状況で笑っているんだ?
それより、マキナを助けないと…!
"マキナッ!!返事をしてっ!!"
それでも彼女は応えてはくれない。
「無駄ですよ。先生。」
"ナギサッ!なんでこんなことするの!?"
「あの事務員が邪魔だったからじゃんね!」
"ミカ…!?"
「正直、すまないと思っている。」
"セイアまで…!"
「あなたがいけないんですよ。先生。
あの事務員ばかりを側に置いて我々のことは後回し…!」
「先生のお姫様は私なのにそんなこと許せる訳ないじゃん。」
"わ、私のせい…?"
私がマキナを側に置いていたことが原因なのか?
私が…私があんなことをしなければ、マキナは無事で居られたのか…?
私が正しい選択をすれば…こんなことにはならなかったのか…?
何がいけなかったんだ?襲われた時、諌めるのではなくに拒否した時か?1人で抱え込もうとした時か?相談を彼女にした時か?
キヴォトスに来た時か?
わからない…誰か教えてくれ…!
"教えてよ…マキナ…!"
それが彼女達の琴線に触れたのだろうか?不機嫌そうな顔をしながら言う。
「また…またその名を…!
何がいけないのですかっ!?私の何がっ!!
彼女よりもあなたを愛しています!あなたを知っています!あなたを理解しています!
理解できません…あんなシャーレに籠もるだけのお飾りの事務員とあなたの様な方が釣り合う訳がない…!」
お飾り…?彼女を…マキナをお飾りと言ったのか…?
ふざけるな…!マキナがいなければ私はここまでこれなかった。いつ流れ弾で死んでいたかわからない。書類仕事のせいでまともな生活もできず自殺したかもしれない。生徒を導く選択を誤ったかもしれない。
『円満な関係を築くにはこちらから求めることも大切だと思います。
それこそ、1人の時間がほしい、とかでも良いのでは?』
ふと彼女の言葉が脳裏を過った。最早、円満な関係など絶望的だが、それでも私は戦ってみせる。
"ナギサ。私が側に居てほしいのは愛してくれる人じゃない。知っている人でも理解してくれる人でもない。
辛い時、何も言わず自棄酒に付き合ってくれたり、フィギュアを一緒に見に行ってくれたり。
そんな、対等に私を見てくれる人がいい。"
「それならば私だって…!」
「あなたはただ理想を押し付けているです。」
振り返るとそこにはボロボロのマキナが立っていた。
陶器のような肌は煤こけ、深海を思わせる暗い髪には残り火が燻っている。
"マキナ…!?"
「桐藤ナギサ、あなたは自らを救った恩人に対し仇で返した。その上、選ばれなかったと癇癪を起こす。
妥当だと思いますが。」
「先生の腰巾着の癖に言うじゃん。」
「ナギサ、ミカ、落ち着きたまえ。」
「自分の学び舎を裏切った魔女に相談もせず勝手に居なくなった狐がトップとは…。
トリニティ総合学園も随分と落ちぶれたものですね。」
"マキナ、そこまで言わなくても…。"
どうしたんだ?
彼女ははっきりものを言うタイプではあるがここまで皮肉屋ではなかったはずだ。
"…?"
ふと彼女の手元を見ると手を後ろに回し私だけに見れるようにしている。
それは私を払い退けるような仕草。
逃げろということか?
なら彼女は生徒から気を引く為に?
「最早、3大学園と名を馳せたトリニティはないのですね。」
「……すな。
トリニティを…ナギサ様をコケにするナァァァッ!!!」
車を爆発させた犯人と思われる生徒がマキナに突っ込んて行く。マキナはこちらを見て一度頷いた後、前を向きテーザー銃を構えた。
私は彼女の意思を汲めていると信じ、踵を返して走りだした。
なんとか逃げることには成功した。
だか、これからどうするべきか…そう考えていると
「先生!この記事を見てください!」
アロナが最新のネット記事を拾ってきたようだ。
”え…”
目を疑ってしまった。
―元シャーレ事務員五十嵐マキナ、先生を襲撃
―連邦生徒会、再びクーデターか?
―七神リン、関与を否定
―五十嵐マキナ討伐の為、連合軍を結成
ついさっきの出来事が既に記事になっている。その上、ほとんどが偏向報道だ。
まさか、最初から仕込まれていた…?
っマキナが危ない…!
”マキナ、待ってて…!”
車のところまで戻ってきた。
”マキナっ!”
「っ先生…!?」
ああ…そんなにボロボロになって…。
マキナはトリニティの勢力や連合軍を相手に1人で大立ち回りをしていたらしい。だが、それでも多勢に無勢、見ただけでも腕が折れ左目が裂けている。足腰も不安定になっている。
「先生、そのテロリストから離れてください。我々が処理致しますので。」
”ナギサッ…!!ふざけないで!マキナはテロリストなんかじゃない!”
「でもそいつが先生をトリニティに連れてきたからこうなってる訳じゃん?おじさんそういうの許せないからさ〜。」
「ホシノまで…」
なんでなの…なんでこうなるの…!
「…先生…私のことはいいですから…速く…!」
”そんなことできないよっ!”
マキナは置いていけない…でも、私がどうにかできる訳でもない…速くしないと…でもどうやっt「パンッ」…!
”え…?”
何が…
”マキナ…?”
ねぇ、なんでそこで寝てるの…?
危ないよ…?こっちに来なよ…
”マキナ…?ここで寝ちゃ駄目だよ…?”
「……先生…」
”…こんなに服汚しちゃって…”
「…すいません…」
”ケチャップでも使ったの…?お腹真っ赤じゃん…”
「……せん…せ、い……すいません…!」
”あれ…寝ちゃったのかな…”
マキナは目を閉じてしまった。
こんなとこで寝る程やんちゃな子だったかな…。
「よくやってくれましたね。」
「ナギサ様の為ならなんでも…!それで、約束は果たして貰えますでしょうか?」
「ええ、勿論。フィリウスの次期ティーパーティー首長は貴女を推薦します。」
何の話をしているんだろう…?でも、とりあえずマキナをベットに運ばないと…。
”ナギサ、マキナを運ぶの手伝ってくれない?”
「…ええ、勿論。知り合いに葬儀屋がいますので紹介しますよ。」
葬儀屋…?なんでナギサは葬儀屋を紹介するんだ?
”ナギサ?葬儀屋ってどういうこと?”
「死人は葬儀屋へ運ぶべきでしょう?」
死人?何を言っているんだ?
マキナは寝ているだけ、なの…に…
”え…”
”マキ、ナ…?”
…ああっ…私は…私は何をっ…
こんなはずじゃ…!ごめん…!ごめんなさい…!
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…
”マキナ…!ごめんね…!!私の…私のせいで…!!”
「何を悔いることがあるんです先生。貴女はテロリストの討伐に非常に大きく貢献してくれたではありませんか。」
”黙ってて!”
「…っ」
…マキナ…マキナァッ…!
…ごめんなさい…!
「五十嵐マキナ…死してもなお我々の邪魔をしますか…!
さっさと彼女を片付けなさい…!」
「はっはい!」
マキナ…私、貴女がいないと無理だよ…。
その時、ティーパーティーの生徒がマキナに近づいてきた。
…!
あれなら…!
「さっさと片付けますk”それを渡せ…!”っ!?」
とった…!
「先生、抵抗しても無駄ですよ。我がトリニティの制式銃が優れものとはいえ、貴女1人でどうにかできるものでは…」
”貴女達と戦うつもりはない。”
「…!そうですか…!ようやく受け入れてk”今行くからねマキナ”…!」
奪った銃を口に咥える。
怖いが、マキナのいないまま過ごすことに比べれば屁でもない。
”マキナ…私もそっちに行くね…!”
「まさか…!今すぐ先生を止めなさいっ!」
”独りにさせないからっ…!!”
パンッ
シャーレの先生は亡くなった。
彼女の訃報にキヴォトス中が悲しみ、半年経ってもなお暗い雰囲気はキヴォトスを包んだ。
先生は出世欲に駆られ謀反を犯した五十嵐マキナを止められず、その後悔の念によって自刃したと歴史に記された。
そして、キヴォトスの英雄を殺した五十嵐マキナの遺体は死後もなお甚振られ、誰からも悼まれることなく氷海に沈んだ。
後の人々は五十嵐をこう言う
”キヴォトスを敵に回した生徒”と
実は作者、ブルアカをやったことはなくアニメも1,2話見ただけのにわかです。偉大な先人の二次創作しか見ていません。