「そんな魔法が実在するとは思えないけど……」 作:明日〜今日よりも好きにな〜れ〜る〜♪
━━━━勇者ヒンメルの死まで残り??????????年━━━━
「死か」
この世に生を受けてから早15年。兄弟も姉妹も居ない。父は数年前に病で死に、母もつい先日病で死んだ。だが、この世界は平均寿命が25年程なので、平均で見れば大往生だろう。この世界とは言っても、俺に前世だとか別世界の記憶だとかは無いので、この世界の事しか知らないが。
母の死は唐突だった。2日前に病で倒れ、昨日死んだ。生命とは斯くも脆い物なのか。薬草を取りに行く暇もなく、朝起きて冷たくなっていた母の遺体を見た。別に悲しかった訳でも、寂しかった訳でもない。ただの「死」がそこにあった。
そんな中で、今日。母の遺体を埋葬した時つい口から出た言葉が冒頭の言葉だ。本当につい口から出てしまった言葉だった。
木と藁で作られた簡単な平屋の生家に戻ってきて、囲炉裏の火を見ながら考える。
いくら山奥で周りに人が居ないとはいえ、全く別の人間と関わりがない訳じゃない。基本的には自給自足だが、出来た野菜や父の狩ってきた動物の肉を物々交換で服や加工された木を手に入れる事はある。上記の平均寿命も父と共に商人の馬車で集落に行った時に聞いたものだ。
その常識から学ぶなら……死とは生命の終着点であり不変のものである、という事だ。平均なら後10年で俺も死ぬ。いや、山奥で舗装された道もなく、父が狩りで使ってた弓と十数本の矢、後戦力になりそうなのは鉈くらいで、集落まで行くのは自殺行為だ。15歳の自給自足にも限界がある。もっと早く死ぬだろう。
そう思っていたのだが。
母の死後1週間程。俺は畑仕事もせず、狩りもせず、ただ生家にあった食物を喰らい寝るだけの日々を過ごしていて、1週間ともすれば食うものが無くなった。このまま緩やかに腹を空かして死んでいくと漠然と考えていたが、翌日になっても、3日経っても、1週間経っても、腹の虫が鳴る事は無かった。なんなら食うのをやめてから睡眠もとっていない。
明らかに異常事態。世界の、生命の、神の理に反している。ならば俺を生かしているこの力の名はなんという? 神の理、神の力に反しているならば、順当に行けば、魔の理。魔の力だ。
俺はこの力に「魔力」という名を付けた。
そして、死ぬ事がないこの魔力を応用した現象は魔の法。「魔法」と名を付けた。
1000年程経った。俺に建築の技術は無いので、雨風に晒されていた木と藁の生家はとっくの昔に風化し見るも無惨な形になった。
母の死から俺は魔力と魔法を研究しだした。現状俺以外に魔力を持った生命を見た事がないので、単純にみんな持ってるが見えないのか、持ってないのかは分からない。少なくとも生命を見ても解剖しても魔力らしきものは見付からなかった。だが、物に魔力を流したら魔力が見えるので、単純に他者は魔力を持っていないのかもしれない。まぁこんな力がホイホイあったら神も魔もない。
魔力に関してはまだまだ研究不足だが、魔力を応用した魔法については原理が大体分かった。魔力を脳に流し込み、事象を明確に
火をつける。
水を湧かせる。
土を操る。
風を起こす。
この程度なら明確なイメージをせずとも魔力を体外に放出し形を変える事で出来た。
それに伴い、魔力で起こせる現象、つまり魔法にも個々に名を着けた。とは言っても大層なものじゃない。
火をつける魔法。
水を湧かせる魔法。
土を操る魔法。
風を起こす魔法。
現状俺以外に魔力を持っている生命、魔法を使う生命に会ったことがないので、自分の中で勝手に着けた簡単な名前なのだが……
そして、最初の魔法。原初の魔法には「不死の魔法」と名を着けた……んだが、これを魔法と言っていいのか分からない。魔力を元にして起こった現象の名付け親は俺なのだから、まぁ、魔法は魔法なんだろうが……逆転現象とでも言うべきか。
俺は俺の死をイメージ出来ない。
だから死なない。
何故無意識で不死の魔法を行使したのかは分からない。少なくとも食事や睡眠を取らなくなってから発現したもの。
何回か魔力切れでぶっ倒れてる時に野生動物に食い散らかされた事があるが、気が付いたら全裸で五体満足で復活した。肉体の破損を繰り返して気付いた事なのだが、脳以外の肉体は破損する度魔力で再生しているようで、段々と肉体が無くなっていき、見た目は同じだが俺の肉体を構成するのは「肉体のような魔力」になっていった。だが、脳だけは再生出来ないようだ。というより脳は壊れない。俺にとっての「自分の死」の定義は「脳の破損」のようで、魔法で心臓を破壊したり体を爆散させたりは出来るのだが、自分の脳の完全破壊だけはイメージ出来なかった。
詳しく言えば、最初の頃は切り離された肉体の構成物質はそのまま残っていたが、最近は破損した部位がそのまま残るのではなく魔力の粒子になって消えていくようになった。「痛覚を無くす魔法」で痛覚を無くし、「大体何でも切る魔法*1」で腕を切って検証済み。
時間は腐る程あるので、まだまだ実験する事は山ほどある。
更に1000年程経った。たまに人間の集落に行くが、未だに他者で魔力を観測出来ていない。知的好奇心で「死者を蘇生する魔法」というものを作ってみたかったのだが、上手く行かなかった。魔法はイメージの世界だ。良く知らない他者を蘇生させる事は出来なかった。魔法の感覚としては理解出来るんだが、如何せん他者のイメージが出来ない。
なので自分を蘇生してみた。
俺は俺の事をよく知ってる。なので、腕を切り落としてそこから蘇生させてみたら、なんと俺が出来た。魔力も技術も記憶さえも模倣した……否、魔法が上手く作用しているなら俺と同一の正に「俺」そのものが立っていた。
「「成程……ん?」」
口から言葉を出してみたら、目の前の俺も同じ事を喋った。試しに右手を上げたら、全く同時に右手を上げた。俺が「あ」と喋れば同時に「あ」と言うし、「か」と言えば「か」と言う。これじゃまるで鏡だ。……いや、そりゃそうか。なぜなら目の前の存在は俺と同じ存在。同じ事を考えるだろうし、同じ事をするだろう。所感だがオリジナルの俺と分身の俺は99.999%同じ感じだ。唐突な奇行に走ろうとすれば、全く同じタイミングで同じ「唐突な奇行」 をするだろう。そしてそれが分かるから実行しない、ということも分かる。
だが完璧な魔法は存在しない。現に俺と目の前の俺は99.999%同じ……つまり0.001%違うのだ。今は作ってすぐなので分からないが、時が経てばその違いは浮き彫りになって行き、俺とは違う道を歩むだろう。
「「しかし、ならば暫くコイツは消えないのか」」
俺は俺の死をイメージ出来ない。だから目の前の俺の死をイメージ出来ないし、同義である消滅も出来ない。知的好奇心に駆られて死者の蘇生等するべきでは無いな。
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「おい、南でまた悪魔が出たらしいぞ」
「またか……」
数百年前からの伝説で、今でも度々風の噂で聞く
「悪魔」の存在。
なんでも、その悪魔は見た目はただの青年だが、人の住む集落にふらりと現れたと思ったら、村民を捕獲し
「実験」をする。
ある時は人を生きたまま火種もなく燃やしたり、またある時はバラバラにした臓物をじっくり観察したり、またある時は餓死するまで観察したり。捕獲された人間が生きたまま戻ってきたと思ったら、人格が豹変してて人間を発狂しながら食い殺す化け物になっていたりする。
何故そんな悪魔の話を今でも聞くのか。単純にその悪魔が人間に敵対心を抱いていないから、らしい。とは言っても人間を大量に殺すし、悪魔を討伐する為に帝国の騎士隊が動いた事もあるらしいが全滅したそうだ。その行いは悪魔そのもの。敵対心を持っていないというのも、人の住む集落に現れては人で色々実験はするが「全滅させてやる」という気は無いらしく、逃げれば追ってくる事は無い。なので生き残りはそれなりに居て、その生き残りが伝説として悪魔の存在を紡いできた。しかし、捕獲した人間が使えなくなったらまた人を捕獲する為別の集落に現れる。
悪魔が今何処にいるのかも、いつ生まれたのかも、なぜ何百年経っても姿を変えず死なないのかも、そもそも何故人を殺すのかも分かっていない。
故に、悪魔は「悪魔」として恐れられた。
そして、最後の「悪魔」の目撃から気が遠くなる程の時間が経ち、伝説は神話となり、人々は「悪魔」の恐れを忘れていった。
好評だったら続く。
好評じゃなくても気が向いたら続く。