「そんな魔法が実在するとは思えないけど……」 作:明日〜今日よりも好きにな〜れ〜る〜♪
ぶっちゃけ最後の展開を書きたかっただけ。
満足ですわ……
━━━━勇者ヒンメルの死まで残り約1100年━━━━
「あ゛〜! 暑い! 最近暑すぎないか!?」
俺が「不死の魔法」で死を克服してから暫くの時間が経った。長過ぎて何年かは覚えてねぇ。大体2万年以上くらいか? まぁとにかくめちゃくちゃ経ったって事だけ分かる。今はとある大樹にツリーハウスを作って結界を張って、その中で悠々自適に生活している。俺は食事も睡眠も必要ないが、娯楽として食事を楽しむ事はあるし、暇だったら「眠らせる魔法」を自分にかけて寝る事もある。
人を使った実験も暫くやってない。面倒だからだ。知的好奇心はあるけど、人体実験をすると帝国がうるさい。なので姿形を変えて、俺は過去「悪魔」だった名無しになった。仮の名前ならあるけど。真名? 忘れたよ……
「あっ、今日買い出しの日じゃん」
眠らせる魔法で寝ようとしたが、今日が買い出しの日なことを思い出した。慌てて部屋着から外用の服に着替えて、大樹から飛び降りる。
「高速で移動する魔法」で街の近くまで行き、門の前に出る。街へ入る関所に着いたら、顔見知りの門番に会う。
「やっ」
「お、ノインじゃねぇか」
俺の仮の名はノイン。理由はない。顔見知りの門番に挨拶を済ませ、手荷物検査を終えて街の中に入り、八百屋等で食材を買い込み麻袋に入れてプラプラする。
「ん? アレは……」
果物屋に寄ったら、リンゴを物色するエルフとオレンジ髪の魔法使いが居た。エルフは知らんがオレンジ髪の魔法使いは知ってる。最近宮廷魔法使いだかの制度を作り、人類の魔法の開祖にまで上り詰めた……らしい。よくは知らん。別にやましい事がある訳じゃ……いや、あるわ。めっちゃあるわ!
そもそもだが、魔法とは魔物と魔族の技術だ。恐らく人類初の魔法使いであるこの俺は人間だし、今もただ「不死の魔法」を使っただけの人間なのだが……多分、多分なんだけど、魔王俺の分身なんだよね……
うん……あの、むか〜しに作ったっぽい分身……アレが魔王だと思う。よく覚えてないんだけど、昔1回会った事のある魔王の死ぬイメージが出来なかった。根拠はそれだけ。俺は俺の死をイメージ出来ないから、魔王は俺と同じ姿形魔力性質を変えた分身じゃねーの? って思うようになった。ならあの不死性に納得出来る。今ん所俺以外に「不死の魔法」を実現出来た奴はいないっぽいし。
どうしよ〜。俺が魔族と魔物の生みの親で首領のオリジナルな事バレたら怒られっかな〜? ……怒られるだろうなぁ。ってか殺しに来るだろうなぁ。俺は魔族と違って魔法にプライドなんてないし、角も生えてない。
よし、逃げ━━━━━━
「おい」
「うわぁ!?」
気付けばオレンジ髪の魔法使い……記憶が確かならフランメさんが目の前に立ってた。
「な、ななななんでしょう……」
「お前、魔法使いか?」
「……は、はい」
答えに詰まってしまった。だって怖いんだもん。何千何万数えられない年月生きてても怖いもんは怖いよ。
「人間の魔法使いか」
「そうです……あ、あの、フランメさん……ですよね?」
「なんだ。私の事知ってんのか?」
「そりゃもう……人類の魔法の開祖ですし……あ、俺はノインって言います」
「ノイン? 聞いた事あるな……あぁ、
「はい。ゼーリエさんには何度かお会いして……俺、「摂生の魔法」の使い手で、人より寿命長いんですよ。とは言ってもあくまで摂生なので、人間以上、ドワーフ以下って感じですけど。」
「ハッハッ。前に
「こんにちは、フリーレンさん」
「どうも」
ツ、ツンケンしてらぁ。
摂生の魔法は俺が大魔法使いゼーリエに初めて会った時に咄嗟に口から出たでまかせの魔法。不死の魔法で歳をとりませんなんて言ったら、俺に襲い掛かる厄災は推してしかるべし……くわばらくわばら。
「……」
「な、なんですかフリーレンさん」
フリーレンの無機質な瞳が俺を貫く。こっちはこっちで怖いなぁ……
「ノインさんって何年生きてるの?」
「え? ……えーと、100年くらい、かな?」
「そう」
それっきり黙ってしまった。しかし、瞳は俺を捉えたまま。怖いぃ……
その後、フランメさんと情報共有して、俺はスタコラサッサと街から逃げた。食物買いに来ただけだし! 別にフランメさんとフリーレンさんが怖いとかじゃねぇから!!!
「
師匠と家に帰ってきて、紙袋をテーブルの上に置いてずっと考えてた事を聞く。
「アイツ?」
「ノイン……さん」
「あぁ。アイツがどうした?」
「いや、ノインさんがって言うより、摂生の魔法かな。
人間の身でありながらドワーフ程の寿命を得る。本当なら歴史に名を残す偉業の魔法だ。もしも全魔法使いが覚えられたなら、人類は今の3倍程の寿命を得られる。まぁ私みたいな
「そりゃ覚えられるなら覚えてぇさ。ノインに会うのは初めてだが、見た目は30代中頃ぐらいだったし、アレで100年なんだからそりゃ300年くらい生きるだろうよ。」
「じゃあ、なんで」
「覚えらんねぇのさ。大魔法使いノインの名と「摂生の魔法」の事は
『フランメ。ノインの「摂生の魔法」は天性の才だ。私は奴の魔法の解析を20年したが、欠片も解析出来なかった。本人は生まれつき使えたらしい。アレは「魔法」というより魔族の使う「呪い」に近い。そもそも「寿命を伸ばす」なんて原理も分からん。更に言えば超長命種の
「━━━━━だとよ。イメージ出来ねぇもんは魔法じゃ実現出来ない。ノインの脳みそを覗いて見てぇな」
「そう」
摂生の魔法は気になる。けど、ノイン本人はあまり興味はない。「呪い」という単語で少し引っかかったが、まぁ彼からは
「フリーレン。気になるなら、明日ノインに会いに行くか?」
そういえば、なんか話してたっけ。住んでる場所も共有してたのか。
「いや、いいや。「摂生の魔法」は気になるけど、別に今じゃなくてもいい。ゼーリエも
「そうか」
「怖かったァァァァァ!!!」
街からスタコラサッサとトンズラこいた俺は大樹まで帰ってツリーハウスに入ってソファに寝そべる。
いや、マジで。本音。怖かった。俺が昔に人を使って色々実験してたのとかバレたらヤバイよな〜……まぁ、大魔法使いゼーリエにもバレなかったんだ。大丈夫だろ! そう思う事にする!! 何故なら都合がいいから!!
「……は?」
食物を凍らせる魔法で食物を保存して保管庫に入れたら、ツリーハウスの扉が開く。
この大樹とツリーハウスは俺が作った結界で囲われてる。誰かが通れば分かる筈だ。なのに、目の前の男はいきなり扉を開いて現れた。結界は壊された感覚も通られた感覚もない。
「だ、誰だよアンタ」
俺には不死の魔法がある。まず死ぬ事は無い。だが、
……いや、待て。1人心当たりがある。俺と同じ、不死の魔法使い。
「お前、魔王……俺か?」
昔作った分身。俺が「死者を蘇生する魔法」で作り出したもう1人の俺……!
「半分正解で、半分間違いだ」
「今更なんだよ。お互い不死なんだから、不毛だろ」
フードの中の男の顔を見る……が、何故か顔が分からない。見える筈なのに、見えない。
「確かに俺はお前でお前は俺だ」
「だろうな。何年前か覚えてねーけど、お前は俺が「死者を蘇生する魔法」で右腕から蘇生させた俺の分身━━━━━」
「それは違う。
━━━━━━━は?
「何言ってんだよ。お前だろ。俺が━━━━━」
「その記憶は間違いだ。俺が「死者を蘇生する魔法」でお前を右腕から作った」
「な、何言ってんだよ。だって俺にはお前を作った記憶が……」
「俺にもある。お前は俺なんだから」
「ッ!! じゃあなんでお前がオリジナルなんて言えんだよ!!! お前が偽物だろ!!」
「……今回の俺は随分と愚かだ。辟易する」
「
「まぁ時間はある。説明してやろう。まず、俺達の「不死の魔法」はなんだ?」
何言ってんだ……?
「そりゃ、死なねぇ魔法だよ。心臓を破壊しても、体が細切れになっても死なず、老いもせず、永遠に生きる……」
「違う。「不死の魔法」の不死性は「脳の完全破壊が出来ない」という所にある」
「そ、そういえばそうだったな。俺にとっての死は脳の破損だったな」
「そうだ。分かるか? お前の脳は破損している」
「…………は? してねぇよ! 元気ピンピンだよ!」
「ならお前に生まれた記憶はあるか? 「ノイン」という
━━━真名? 忘れたよ……━━━
「時間経って忘れただけだろ……?」
「記憶の欠如は
━━━何年前かは覚えてねーけど━━━
「……ッ!」
「認めろ。受け入れろ。お前は俺と0.001%違う分身だ。そして俺は定期的にお前の人格、技術、記憶をある程度書き換える。ノインというのは「俺」という長い歴史の名前の1つに過ぎない」
「なんで!! なんでそんなことするんだよ!!」
「完璧な魔法は存在しない。それは「不死の魔法」も例外じゃない。人格はランダム、技術は一定更新、記憶は過去ピッタリ2万年前以前は消している」
「だからなんでッ!!!」
「騒ぐな。もし「不死の魔法」の不死性を貫く存在が現れるとしたら、それは俺。つまりオリジナルの俺か、知的好奇心から「死者を蘇生する魔法」で右腕から蘇生した分身と言えるお前だけだ。永遠と不死は同じようで別物だ。もしも1000万年生きたら? 1000億年生きたら? 1000兆年、1000京年生きたら? いずれか俺は俺の「不死の魔法」の不死性を壊す、つまり「俺が俺を殺すイメージが出来る」ようになるかもしれない。だから
「━━━━━━━!!!」
「もちろん、人間が進化して俺を殺すイメージが出来る魔法使いが生まれる可能性もある。しかし、その可能性は著しく低い。そもそも人間は大魔法使いフランメが生まれるより前はまともに魔法すら使えなかった。補足すると、ドワーフやエルフ等の長命種の祖先は俺だ。厳密に言えば分身であるお前が192585年前に勝手に作りやがった」
「……ま、おうは」
「そういえばお前は俺が魔王だと思ってたらしいな。魔族、魔物の祖先も
「……」
「お前がいい例だが、創造された者は創造主には絶対に勝てない。イメージが出来ないからだ。今代の魔王はもちろん、魔族、魔物、エルフ、ドワーフ。そやつらを作ったのは
「……う、うわぁぁぁ!!」
逃げた。必死に。
怖かった。記憶を消される事が。俺は不死の魔法使い。死ぬ事は無いと確信出来る。しかし、記憶を消され、新しい人格と名前を刻まれる事は、ある意味「死」では無いのか?
違う。俺は俺の死を全くイメージ出来ない。それは変わらない。つまり俺にとって記憶を消される事は「死」ではなく、ただの脳の更新に過ぎない。又は、「真名の死」ではなく「ノインの死」であり、数ある名の1つに過ぎない、そしてオリジナルの俺が言う事がすべて正しいなら、「ノイン」すら何度も死んだ識別番号に過ぎないだけ。
「嫌だ、嫌だ……!」
大樹から出て、「空間を転移する魔法」で遠くに飛ぶ。「気配を消す魔法」「匂いを消す魔法」「心音を消す魔法」とあらゆる隠密魔法を使う。これらの魔法もいつ覚えたのか分からない。それが、アイツが……アレがオリジナルで、俺が分身なんだと分からされる。
「下手に技術の記憶を残すと追いかけるのが面倒だ。あの大樹も結界も無駄に高レベルな魔法なせいで
気付けば、
逃げられない……なんで俺がこんな目に……!? あの時知的好奇心に駆られて「死者を蘇生する魔法」を使わなければ……!?
「いつもなら104年程度で記憶のリセット等しないのだがな……ゼーリエはどうでもいいが、如何せんお前は大魔法使いフランメと接触した。フランメは危険だ」
「……お前は」
「なんだ」
どうせ「今のノイン」は居なくなるんだ。最後に言ってやる……!
「お前は絶対に死ぬ……! フランメさんが殺せなくても、ゼーリエさんが、フリーレンさんが、人間が! いつか……必ずお前を殺す……! この……「悪魔」め……!!」
「……そうか」
そして、
「自分で自分の死をイメージ出来ないくせに、「死ぬ」だなんて世迷言を。その言葉を吐いたのは、
気が向いたら続く