アリウスの“紛い物シスター”   作:らいのあ

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原作既読の方が多いとは思いますが、1話目ということもあり説明メインで書かせていただきました。

評価・感想、大変励みになります!ありがとうございます!

*誤字脱字報告感謝します!!


第一章 本編前:幼少期
目が覚めたら...アリウス分校でした。


高層ビルに囲まれた忘れ去られた路地裏。錆びた非常階段と、所々剥がれたコンクリートの壁に囲まれたこの空間は、わずかに雨風をしのぐ避難所となっていた。積み重ねられた段ボールの山は、朽ちた雑誌や新聞と共に、湿った匂いを漂わせている。

頭上からは、ビルの隙間を通り抜けるように雨が降り注いでいる。その雨粒が作り出す幕は、まるでこの場所を外界から隔てる透明なバリアのようであった。排水溝から溢れ出た水が、黒ずんだ地面を流れ、小さな流れを形成し、その先で暗い下水道へと消えていく。

 

遠くで響く銃声は、この街のどこかで、俺の知らない物語が今も紡がれ続けていることを示していた。その音が消えると、再び雨音だけが支配する世界が戻ってくる。

 

 

「っ____!!」

 

 

身体中に出来た銃弾による傷口が、降り注ぐ雨粒のせいで刺すように染みる。

 

雨の幕の向こうから、かすかな足音が聞こえ始めた。規則正しい足音は、誰かがゆっくりとこちらに近づいていることを知らせている。やがてその人影は、路地裏に差し込む街灯の光を背に、俺の前で立ち止まった。雨に打たれたボロボロの黒い傘から、細かな水滴が滴り落ちる。

その人影が傘を傾け、かがみ込んできた。温かな吐息が、冷えきった俺の頬をそっと撫でた...

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして再び目を開けると、そこには美しい満点の星空がー....!

なんて事は無く、古めかしい雰囲気が漂うアパートの一室だった。そして、どういう訳か...俺には記憶が無かった。いや、ボロボロの状態で路地裏にいて拾われたってのは分かるけど...それ以前の記憶がないのだ。

えっ...ほんとにここどこ?

 

 

「ほら、シチューだ。食べろ、温まるぞ」

「.......あ、ありがとう」

 

 

なんて考えてると、俺を拾ってくれた金髪のべっぴんさんが、俺の事を気遣って食料を恵んでくれた。こんな見ず知らずの子に手を差し伸べるなんて...めちゃ優しい!キャッ、惚れそう⭐︎

 

...いや、違う!!考えるべきはそこじゃない!まぁ確かに顔も重要だけどね...?そんな事よりだ。

 

 

「...ん?どうかしたのか?」

「いっいえ...!な、何も...」

「はぁ...それにしても、ストリートチルドレンなんて今時...いや、増えてきてはいるのか...」

 

 

彼女の頭上には、水色に輝く天使の輪っかの様な何かがついているのだ。

最初は、「(あ、ここは天使の国なのかなー??)」なんてメルヘンちっくな事を考えて、現実逃避していたのだが....。

そんな妄想を打ち砕くように、彼女の着るジャケットの腕辺りの紋章が目に入る。

 

王冠を使った髑髏と薔薇の花を合わせ、それを一周するかの様に刻まれた『Vanitas vanitatum et omnia vanitas』....そして中心には、『Arius』の文字。

そう、前世の俺がハマって遊びまくったゲーム『ブルーアーカイブ』の世界......そして、色々な不憫な目に遭う『アリウス分校』に転生し、生まれてしまったという事実を突きつけられた瞬間である。

 

あの....シチュー飲みながら俺の髪の毛ワシャワシャするのやめてくれない....?飲みにくいよ??

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「外は危ないし、この大雨だ。大人しく、いい子にしてるんだぞ」

「は、はい....ありがとうございます」

 

 

シチューを飲み終えると、安心した様にほっと息をつき、金髪っ子が立ち上がる。

 

 

「ん、じゃあ。私は学校に行ってくる」

「行ってらっしゃい....」

 

 

どうやら、彼女はアリウス分校の学生だったらしい。まぁ、あの紋章が入った服を身に纏っている時点でほぼほぼ確定みたいなもんだろう。

幸い、俺を見つけてくれたのが早朝だった為、今から学校に向かっても間に合うらしい。

 

そして1人になって思考を巡らせる。

 

 

先程も言った様に、ここはブルーアーカイブの世界。

学園都市:キヴォトスを舞台に学園の生徒たちが、何処からともなくやってきた先生と共に、勉強したり、政治をやったり、青春したりするキラキラした物語....なのだが....『アリウス分校』、ここだけはかなり雰囲気が特殊なのだ。

トリニティの領内にて自治区を有した分派の一つ。しかし、諸派の統合に向けた「第一回公会議」にて唯一反対の立場を取り続けた結果、異端認定され、激しい弾圧を受け、少なくとも表舞台からは姿を消した背景を持つ分派。

そして蓋を開けてみれば、エデン条約の10年以上前から内戦が続き、アリウス内部でも混乱状態になっていて、そんな時に悪い大人『ベアトリーチェ』通称『ベアおば』に目をつけられ、実権を握られ、胸糞悪くなるレベルの体罰や洗脳教育を受けさせられる....何とも不憫な分派。エデン条約編を読んだ時は、アリウスにブルアカのシリアスを全部詰め込んでるんか?ってツッコミを入れたくなるぐらいには、可哀想な展開だったのを今でも覚えている。

 

で、問題はそのアリウスの運命に俺が巻き込まれるのが確定してる点だ。恐らくだが、まだベアトリーチェはアリウスの実権を握ってはいない。根拠は2つ。

まず、あの金髪っ子の「ストリートチルドレンなんて今時...」っていう発言だ。俺の記憶が確かなら、ストリートチルドレンが増え始めたのは、内戦が酷くなるであろう、ベアトリーチェが来た後の話だ。アリウススクワッドの4人も、それに該当してると言えるだろう。ベアトリチェがすでにアリウスにいるのなら、ストリートチルドレンで溢れてるはず...なので「今時」なんて言葉は出てこない筈だ...という予想。

もう一つは、金髪っ子が学校に向かったという事実である。記憶が正しければ、ベアトリーチェが来てアリウス分校を支配してからは、洗脳教育のせいで学校という概念なんてとうの昔に崩れてる筈....それこそ、「学校に行ってくる」よりかは、「訓練に行ってくる」って表現する方がしっくりくる気がする。まぁでもこれに関しては、決定的な根拠は無くただの勘でしかない。あの子が訓練する場所=学校と認識しているのなら、あの発言は何もおかしくはない。

あくまで、予想でしかないので色々調べる必要がありそうだ。

 

 

「それ次第で色々変わってくるよなぁ」

 

 

それに加えて『自分が何者か?問題』もある。

最初にも言った様に、俺にはこの世界での記憶がないのだ。前世にて『死んだ』と思って目を瞑り、もう一度開けたら、あら不思議。さっきの路地裏で雨に打たれていて、金髪っ子に拾われたのだ。自分がどこで生まれ、育ち、どんな経緯であそこにいたのかが一切分からない。

 

 

「はぁ...転生した早々、凄い目に合ってる気がする」

 

 

なんてボヤきながら鏡の前で自分自身を観察してみる。

ウルフカットを少し長めにしたぐらいのセミロングの髪型に、色はかなり薄めの水色...何なら限りなく白に近い。そこに、所々濃い青のメッシュが入ってる。薄いピンクの両目。それらとは対照的に、色濃く青々とした大きい十字架のような...星ともいえるようなヘイロー。まだ4、5歳ぐらいの幼女にも拘らず、かなり顔立ちが整っている。

うん、めっちゃ可愛い。美少女だ。

 

 

「可愛いけど...それ以外は、なんも分からんよな」

 

 

自分自身の見た目で何か手掛かりが無いか探ろうとしたが、まぁ現実そんな甘くはない。

ブルアカのあのキャラに似てる~なんてことがあれば、そのキャラの妹的な線も疑えたのだか...そんなこともなさそうである。強いて言えば、雰囲気がどことなくアリウススクワッドの『秤アツコ』に似てるとも言えなくはないが...激似!って感じでもないので、何とも言えない。

 

 

「まぁでも今考えても、八方塞がりな気がするし...そこら辺は後々調べるとして...だ。これからどうしよう」

 

 

自分の事は、この際一旦置いておこう。でも、今後の方向性ぐらいは決めておきたい。

もしゲームのストーリー通りのシナリオで物語が進むのであれば、先生によるハッピーエンドが確約されているので、その点はいいのだが....問題はそのハッピーエンドまでの過程の部分である。

『ベアトリーチェ』がアリウスに来た瞬間に、あの洗脳教育が行われる。いくらハッピーエンドで終わると言っても、アリウスの生徒やアリウススクワッドの皆んなが、洗脳されていくのを『先生』が止めに来るまで黙って見届けて下さい。なんて無理な話だ。

 

 

「少なくとも...推しのアリウススクワッドの4人は、守りたいな....」

 

 

考えうるプランは3つ。

 

①ベアおばに目を付けられるキッカケとなったアリウスの内戦を止める。

②エデン条約が始まるまでに、ベアおばを始末してしまう。

③程よくアリウスの皆んなを救いながら、時が来た際に救う役目を『先生』に丸投げする。

 

まず①に関しては、あまり現実的ではない。強くなって武力を持てば話は別なのかも知れないが、今の自分の見た目は4、5歳の幼女。内戦なんてものに関われる立場にはいないのだ。それに多分だけど、あの金髪っ子に止められる。

そして②で言うと、『エデン条約が始まるまで』という点では1つ目と比べると時間の猶予があるので現実的なのかも知れないが...なにせ、主人公補正を持った先生でさえも、ベアトリーチェを追い詰めるのにあれだけ苦労していたのだ。アリウス分校に入るであろう、一般生徒の1人の俺が動いた所でそこまで状況は改善しない様に思えてしまう。なんなら、下手をすれば状況を悪化させることに繋がりかねない。計画がバレたら見せしめとして殺されるなんてのもあり得そうな話だ。

最後に③。正直、これが一番いいと思っている。

ベアおばに察せられない程度にアリウス生徒を手助けし、洗脳を弱める。正直に言ってしまえば洗脳を止めるのが一番の理想だが...それをした場合、反乱分子と見なされて消されかねないのでやめておく。完全に絶望しないように少しだけ救いの手を差し伸べて、最終的には『先生』にその役目をバトンタッチし、後は原作シナリオ通りに今度こそ完全にアリウスを救ってもらう。

 

 

「多分それが一番きれいな終わりよな、でも問題は...」

 

 

どうやってそれを実行するかである。絶望に落ちた生徒たちに希望の光を見せるにはどうするか...。そんな『すべての方に、救いを!』みたいな精神...あれ?このんなセリフどこかで...

 

 

「伊落マリー...あっ!!シスター!!」

 

 

ファンタジー世界でよくあるある!貧困で困ってる村人たちがシスターの言葉によって救われるみたいな展開!それを目指せばいいんだ!ベアおばにバレないように表立って活動するわけにはいかないだろうし、純粋なシスター精神から見れば邪道かもしれないが、裏でこっそりと救いの手を差し伸べる的なことをやればいいのではなかろうか!ドロドロとした絶望の闇から完全に救うことは出来なくても『いつか救われる』なんて希望の言葉を投げかけるとか、『優しく接する』とかだけでも、気持ちは軽くなるだろうし!

何なら『先生』の手によって救われることは確定しているので、『いつか救われる』って言葉も嘘偽りの綺麗ごとではないのだ!

 

 

「完璧な作戦だ!!」

 

 

アリウスをここまで追いやったのが『ユスティナ聖徒会』なので完全な皮肉にはなるが、シスター精神がアリウスを救えるかもしれない!

 

 

「取り敢えずの方向性は決まった。あとは...」

 

 

今出来ることとしては、ほとんど何もない。救いの手を差し伸べようにも、まだロリの俺に耳を貸す人なんていないだろう。

 

 

「でも、力を身に着けておくことに損はないよね」

 

 

なんていいながら、そこら辺の本棚から銃のマニュアル本のようなものを取り出す。あの金髪っ子はかなり真面目なようで、本棚には付箋がびっしり貼られた戦術参考書のようなものが大量にある。

力こそ正義!みたいなスローガンが似合いそうな教育を施してくるベアおばの事だ、戦力になると判断すればある程度の地位を与えてくれることだろう。それこそ、『錠前サオリ』のようなリーダー的な地位は持っていて損はない。弱い人が『救いは、いつか~...』なんて言うよりも、強くて慕われている人が言った方が、説得力もある。

 

 

「ってことで...あの子が帰ってくるまで、ここら辺の本を読み漁るか!」

 

 

未来のハッピーエンドを確実なものにする為の計画(仮)が始まった。

 




察せるかもしれませんが、実はエデン条約を読んだのが昔すぎて、色々うろ覚えの主人公です。
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