アリウスの“紛い物シスター”   作:らいのあ

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週に1〜2話投稿できたらなぁ、なんて希望を持ってます。
あとはモチベ次第!

評価・感想、大変励みになります!ありがとうございます!


*誤字脱字報告感謝します!!!



終焉は確実に...

『こちら連隊長です。進捗は?』

「こちらチームV、問題無し。」

 

 

部隊への連絡には似つかわしくない敬語が、トランシーバーの向こうから聞こえてくる。いつもと変わらず、ただただ淡々と行われる情報伝達。通信の相手は、私達の直属の上司の立場にある同級生。多くの人はその人を『隊長』と呼んでいる。たまに『聖女様』や『シスター』なんて呼ばれていたりもする。『vanitas vanitatum et omnia vanitas、全ては虚しい。どこまで行こうとも全ては虚しいもの。』そんな教えを真っ向から否定し救済を求める様な呼び方。それを誰が使い始めたのかなんてのは、もう分からない。気付けば周りがそう呼ぶ様になっていた。

最初はそれを聞いた時は、何かの冗談だと思った。大人に虐げられる環境に身を投じ過ぎたことによって生じた気の迷いか、と....。

 

 

「あっちに綺麗な聖女様がいた!私の事助けて治療してくれたんだよ!貴方も行こうよ!」

 

 

なんて、友達に言われた時には本格的に狂ったのかと思った。全てが虚しく終わっていくのに人を救う、それこそ聖人じみた事をする人なんてあり得ない。いるはずない。そう切り捨てて、その冗談を流すことも出来たが....あんなに空虚な目をしていたあの子を、たった数時間であんなに煌びやかに変えさせた相手がいるのなら会ってみたい。軽い興味が湧いた、最初はそのぐらいのモチベーションだった。

 

 

「お邪魔しまーす!」

「あら?先程の....後ろの方は、お友達ですか?」

「はい!」

 

 

その子に連れられ、とあるアパートの一室に入る。古めかしい雰囲気が漂っていたものの、隅々まで掃除の手は行き渡っている様で埃1つ無い。そしてその部屋の中央に腰掛けていたのが、友達の言う『聖女様』だった。所謂ザ・シスター的な衣装では無いものの、白と黒を基調としたドレス風の服とアリウスから支給されているジャケットを、シスターがよく頭に付けているウィンプルの様に被っている。少し違う気もするが、かろうじて『シスター』と言える見た目ではあるかもしれない...。清楚な服装だけで言えば、聖女と呼べなくも無い。

が...目付きが少々鋭く、凛とした顔で『聖女様』なんて前情報が無ければ、『怖い』という印象が真っ先に出てきそうな雰囲気の人である。

 

 

「どうされましたか?お怪我とかでしょうか?」

「ど、どうだっけ!貴方怪我とかあったっけ?」

「えっ...まぁ一応....」

「では、見せていただけますか?」

 

 

ほとんど治りかけだったものの、改めての消毒やら包帯やら色々な処置をしてもらえた。最初はその程度の小さな助けだった。ある時は怪我の治療で、ある時は相談相手、ある時は少しばかりのアドバイスを貰えたり、ある時は勉強を教えてもらえたり....『隊長』と出会った時から、そんな小さな希望と喜びの積み重ねが続いていった。『希望は無く、全ては虚しいもの』と大人に教えられていたにも関わらず、その優しさの毒に侵され、いつしか心のどこかで思ってしまっていた。『いつの日かアリウス全体が救われる日があってもいいんじゃないか。』なんて....大それた希望を....。

 

 

「いつの日か恩寵があらんことを。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

会長と副会長から勉強と体力訓練を教え始めてもらってから、2年の月日が経った。そして俺は7歳(仮)になった。(仮)な理由はお察しかも知れないが....俺についての情報を何も思い出せてないし、色々調べても何も出てこなかったからだ。会長も探ろうとしてくれたが、内戦の激化の影響による権力の形骸化が激しく、自由に調べものをすることも出来なくなっているらしい。なので本来の名前も年齢も出身も分からずじまいである。まぁ『アイリス』と言う名前も気に入ってるし、年齢も大体合っている感じがするのであまり不便はないし深くは気にしない事にした。

戦闘訓練に関しても段々とハードルを上げてくれている。最近では実技を見てくれる様になった。実技といっても会長と副会長の武器を一時的に借りて敵を模した的を狙う練習である為、本格的な実戦ではない。しかし筋は良いらしく、優秀だとよく褒めてくれた。会長に関しては『さすが我が妹』なんて言っていたので十中八九、贔屓目だろうが....。

実戦経験は無いが、知識はこれでもかと詰め込んだ。副会長からは隊の統制のやり方や戦略の基本的な考え方、会長からは緊急時の対応、ゲリラや各爆弾の扱い方。『まぁ色々考えられますが、爆弾があれば一発で解決です。』が会長の口癖で、それを後ろから聞いていた副会長が少しばかりのため息を吐く、というのが日常風景である。あれ....会長物騒だな....。

 

 

「もう教えるものが無くなってきました....。」

「え、そうなの?」

「はい...これも妹が優秀すぎる所為ですね....。」

「ソダネー」

「えーっと....ここ2年で私への対応が適当になってませんか?」

「ソダヨー」

「アイリスちゃん?!」

 

 

今では会長の扱いにもすっかり慣れてしまった。

こんな感じでも副会長の言う通り、ゲリラ戦においてはスペシャリストらしく、戦術などを説明してくれている時は丁寧かつ的確、それていて奥深いものだった。普段の会長から見られない様な威厳的なものを感じられるぐらいに....。会長スイッチみたいなのがあるのだろうか?ってぐらいにはオンオフの差が激しい人である。

それとは対照的に副会長はいつでも真面目。俺のことを拾ったのが副会長なので、普段は副会長の家でお世話になっているのだが、オンオフなんて無いと思う程にずっと同じ雰囲気を保っている。俺と2人の時も、会長と合わせて3人の時も、威厳たっぷりの佇まいである。俺がいるから気を使っているのかと会長に聞いたが『昔っからあの感じです。もう少し可愛げがある方が、私的には好みですが...』なんて言ってたので普段からあれなのだろう。

 

 

「ただいま。」

「おかえりなさい。ソウカちゃん、お邪魔してます。」

「おかえり!」

「会長か....構わん。」

「それで、戦況はどうですか?」

「好ましく無いな...。進捗も少なめだ。」

 

 

拾われてから2年。流石にベアトリーチェも参戦したのだろう、最近になって戦況が激化、悪化しているらしい。会長が追われる身になるぐらいには....。最近では会長はここに来ることが多くなった。どうやら副会長の家があまり知られていないということもあり、セーフハウス的役割を持っている様で、たまに寝泊まりもしている。副会長も会長の身を案じて合鍵を渡し、すっかり3人暮らしのムードになっている。しかし2人の会話を聞くに...ここも時間の問題でバレるだろうとの結論に至っているらしく、小さくとも緊張感が出ていた。

トップ2人が現場にいない訳には行かないので昼は2人とも出かけている事が多くなった。なので昼は俺の自由行動!っと言っても...本を読む、筋トレする、シスターっぽい雰囲気を出す練習以外にやる事は無い。最近の進捗は『祝福を〜』とか『恩寵があらん事を〜』とか言いながら普段は敬語で喋る。的な事をやれば、シスター基聖女っぽくなるという発見である。

 

 

「それで、アイリスの方はどうだ?」

「え?私?」

「順調です。優秀すぎて困ってしまうぐらいの妹です。」

「そうか、相変わらずだな。」

 

 

最近では、会長の妹発言にも誰もツッコまなくなっていた。俺も副会長も諦めた。『あぁ止めるのは無理だ。』と察したのだ。『相変わらず』って言葉が俺が優秀だという発言に対してなのか、会長の姉ムーブに関してなのかも判断つかない。いや、どっちの意味も持ってるんだろう。

 

 

「過激派との対立は悪化の道を辿っている。情報によれば、相手側の武器やら兵器の種類と数が増えたそうだ。」

「.....支援者がいるとしか思えませんね。対策のしようは....あって無いようなものですね。逃げ道もほとんど残っていませんし...。」

「あぁ....。すまない。家ではなるべく仕事の話は無しにしたかったのだが....つい...。」

「仕方ありませんよ。状況が状況です。」

 

 

『ずっと緊張していては、心も休まりませんし...ここにいる時は現場の話は無しにしましょう。』いつぞやの会長からの提案から始まったこのルール。建前ではそう言っているが、多分俺に気を使っての事なんだと感じる。『7歳の少女を前に内戦の話は無し』そういう意味なんだろう。本当にいい人達である。出来るだけ協力したい気持ちもあるがロリに出来ることなんて無く、話に入ろうとすれば会長と副会長が全力で止めてきそうなので、何も言えない。なんなら止められるのは経験済みである。

まぁ俺も『ベアトリーチェが裏にいる』って事ぐらいしか知らないので手伝えないと言う方が正しい。原作でもベアトリーチェがアリウスの生徒会長の座に就いている事は描写されているが、どうやってその座に就いたのまでは語られていなかったと思う....。大した情報になり得なく、何とももどかしい。

2人が考えた計画を聞いて「ここはこう変えた方がいいんじゃ無いか?」ぐらいの助言しか出来ない。もっとも、戦術とかに関しては会長らの方が経験豊富だろうし、そこまでの助力になって無いかも知れないが...これが俺に出来る最大限なのだ。

そして、先程の発言の通り『裏で誰かが手を引いている』事は2人も分かっているのだ。分かった上で手詰まりになっている。そんな現状。

 

 

「あっ、シチュー作っておきましたよ。皆んなで食べますか?」

「あぁ、いただこう。」

「いただきます。」

 

 

いつまでこの生活が続くのかは分からないが、少しでも長く続いてほしいという思いが膨れ上がる一方だった。

 

 

「そういえば、そろそろアイリスちゃんの武器も決めていきたいですね。近距離から長距離、比較的全てを網羅出来るように豊富な種類の武器を教えましたが、お気に入りがあってもいいと思いますし。」

 

 

食事中、会長がそんな提案をしてきた。

 

 

「そうだな。それであれば、会長が使うサブマシンガン、私が使うライフルのどっちかから選んだ方がいいだろう。どちらかから選んでもらった方が、これからもより専門的に教えられるしな。」

「うーん...その2つだったらー....」

 

 

ライフルもサブマシンガンもどちらも好ましい。ライフルを使ってる時の副会長は様になっているし、かっこいい。会長は...かっこいいと言うよりかは爆弾も使いこなしながら暴れて回っていて、迫力がある。それに加えて爽快感も...。うーん、迷う....。

 

 

「個人的なオススメで言えばサブマシンガンだな。ライフルも筋はいいが...お前、反動に耐えられてないだろ。」

「ぎくっ....で、でも年齢とか慣れとかの問題かも知れないじゃん!」

「今から訓練するなら既にある程度使い慣れた銃の方がいいだろう。1回目のライフル訓練のことを忘れたとは言わせないぞ。」

「あら?何かあったのですか?」」

「あぁ、弾が発射されたと同時に反動に耐えきれなかったアイリス自身が後ろに発射されていた。そのまま壁に激突して一時的に気絶だ。まぁ、あれからは成長したと言えるが...」

 

 

そう。的当て訓練初日、副会長のライフルを借りて中長距離射撃の練習をする予定だったのだが....。原作でキャラ達が反動を感じさせない撃ち方をしていたせいもあってか、銃に反動がある事をすっかり忘れていた。そんな状態で撃ったもんだから、まぁ...後ろに吹っ飛んだ。それはもう派手に吹っ飛んだ。目が覚めた時には見知らぬ天井....では無く副会長宅の天井だったのは覚えている....。勿論でっかいタンコブのハッピーセットも付いてきた。

 

 

「ゆ、油断してただけだもん!!」

「アイリスちゃん意外とドジっ子ですもんね。」

 

 

うるさい!自覚はある!!

 

 

「あの時はお腹が壊れるかと思った....。」

「人が気絶してる時に笑ってたの!?」

「あの惨状を見せられて『笑うな』と言われるのは無理な話だ。誰だって笑うぞ。」

「うぅ....」

「なら、ソウカちゃんの言う通りサブマシンガンの方が良さそうですね。幸い、私の予備のものがあります。それで良ければお渡し出来ますよ。」

「えっ....いいの?」

「妹の頼みですので!」

 

 

かくしてマイ武器が決まり、同じ武器になったのが嬉しいのかウキウキの会長との特訓が始まった。教えに熱が入ったのか、使う爆弾の数も増えたような気がする...。戦闘中『ひゃっはー』なんて声が聞こえても違和感が無いのかも知れない...。物騒さが増した会長の完成である。

副会長はというと...何も変わった点はなく今まで通りの的確な指示の元、戦略とかの教えを貰っている。2人とも相変わらず『優秀だ』と褒めてくれるが、俺ではなく教えるのが上手いだけなんだよなぁ....。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

しばらくの間はそんな生活が続いていた。が....突然と終わりを遂げることとなる。突然の事だった。とある日の、夜の出来事。珍しく慌てて帰ってきた副会長の声が聞こえた。

 

 

「っ!会長が!会長が行方不明になった!」

「え.....」

 

 

そんな素っ頓狂な声しか出なかった。





さぁ行かん、シリアスへと
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