アリウスの“紛い物シスター”   作:らいのあ

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今回少しスローペースかもしれません!
評価・感想、大変励になります!ありがとうございます!

*誤字脱字報告感謝します!!!


紛いなりの覚悟

ヴァルキューレ警察学校:連邦矯正局

 

 

「うーす、お疲れ様。調子どうだ?」

「あっ、先輩!お疲れっす!好調、順調、最高潮っすよ。」

「なんだそれ」

 

 

それなりの事務処理を終え、休憩中らしい後輩に声をかける。

 

 

「そういえば...お前さん、ここに来たのは最近だよな?仕事はもう慣れたか?」

「おっ!気にしててくれたんっすね!いや~、お陰様で特に問題はなく~。先輩様様ですね!」

「やめてくれ、そういうお世辞を聞くために質問したんじゃない...。」

「本当の事ですよ??」

 

 

最近の連邦矯正局は、予算不足もあって弾薬を含めた全体の装備は不足気味。更に書類手続きの問題が様々積み重なる為、ここで活動する生徒は多忙の毎日。故に慣れるのには少々時間がかかると思い、気に掛けているのだが...割と余裕そうな表情だ。

 

 

「連邦矯正局の主な監視役はキリノさんとカンナ先輩の役目、うちらは書類処理と担当区画の整備っすから~楽させてもらってます!」

「そ、そうか。」

 

 

最近では人員不足も懸念されているため、個々の作業量が増えていっているのだが...それを『楽』と言えるこの後輩は、見かけと喋り方に反して優秀らしい。

 

 

「収容せれている生徒達には困らされてないのか?」

「んー...うちはそんな被害ないっすね。最近、『五塵の獼猴』さんがやらかしたらしいっすけど...うちの担当じゃないんで~。」

「あぁ...あのマッドサイエンティストか...。」

 

 

ここ連邦矯正局には、特に厄介とされている7人の囚人がいる。最近までは大人しくしていた...が、どうやら『五塵の獼猴』こと『申谷カイ』が色々やらかしたらしい。私も内容については、そこまで詳しくは知らない...。

 

 

「被害が無いなら何よりだ。んー、お前の所で言ったら...。あぁ。『狐坂ワカモ』か。」

「そう!うちの担当区画は『災厄の狐』さんっす。」

「おとなしいのか?」

「最近はそうっすね。暴れることもないっすし、我儘言うわけでもないっすし...い、威圧も少ないっすし...。」

「あ、少しはあるんだな。」

 

 

無差別かつ大規模な破壊行為を行い、複数の襲撃事件を起こしたとして収容された『災厄の狐』こと『狐坂ワカモ』。戦術・戦略に精通し、あらゆる装備を瞬時に把握・活用する高い総合戦闘技術を持つ。総合的な脅威度はトップクラスであり、1度暴れれば避難警報を発するべきか迷うレベルの被害を与える。文字通りの『災厄』の具現化。

 

そんな彼女が大人しいとは...嵐の前の静けさなのだろうか?

 

 

「あれっすかね?周りの影響ってやつっすかね?新しい風に当てられた~みたいな?」

「新しい風...?」

「『災厄の狐』さんが最近一緒につるんでるのって新人の子なんっすよ。超大人しくて超真面目な人っす。」

「お前の区画の新人...。って?!あの凄い暴れたっていうあいつ?!」

「噂とかでは『災厄の狐』さんと負けず劣らずの暴れん坊!みたいな悪いのが流れてるらしいっすけど...ほんといい人ですよ??なんでこんな所に送られてるのか、分からないぐらいには。」

 

 

連邦生徒会周辺で襲撃事件を起こした集団の主犯格とされている新人。まぁそれだけなら良かったものの、どうやらここ最近の事件の殆どに関わっていたらしい。調査すれば調査するだけ出るわ出るわのお祭り騒ぎ。強盗、襲撃、略奪の数々。流石に手に負えないということで最近になって収容された。

 

そしてその暴れっぷり故、悪い噂がどんどん広まり今ではここの有名人の仲間入りを果たしている。しかし、目の前の後輩曰く、その本性は噂とは180°違うものだと言う...。猫でも被ってるのか?いや、そんなもん被らずともとっくに最悪印象なのに...?本当に最近の囚人はどうなってるんだ...。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

作戦開始、数時間前...

 

 

「ってことで第1部隊隊長代理の『白野イツキ』です。よろしくね、アイリスちゃん!」

「えっ噓...隊長だったの...?」

「なんか失礼じゃない??」

 

 

なんて自己紹介してきたのは、作戦会議中にほっぺを強く掴んできたあの子だ。少し前からの知り合いで、会うたびに俺の事をデロデロに甘やかしてきているので今更感があるのだが...改めて自己紹介した方が雰囲気が出る!とのことらしい。まぁでも確かに隊長代理の座についていることは知らなかった。

 

 

「元々、第1部隊は会長さん...アイリスちゃんのお姉ちゃんの部隊でね!こういう緊急時は私が代理を務めることになってるの。こう見えて、やる時はやるんだよ!」

「あっ第1部隊って会tゲフンゲフン、姉さんの部隊だったんですね」

「ん?そうそう!実力は学校1の精鋭部隊!」

 

 

危ない危ない...普段から会長呼びだったせいで、ふとした瞬間に呼び方が戻ってしまう...。『会長の妹』という事で話を通している手前、ボロを出すわけにもいかないので姉さん呼びで何とかやっている。

しかし、第1部隊ってそんなに優秀なんだ....。会長、あんまり学校の話しないから初めて知った。

 

 

「君のお姉ちゃん凄いんだよ?成績優秀で部隊を率いるぐらい強くて、おまけに超美人!才色兼備、功績顕彰(こうせきけんしょう)誉不絶口(ほまれたえずぐち)!」

「今作りました?その四字熟語もどき...?」

 

 

聞いた事無い言葉の羅列で、後半何言ってるか分からなかったが...まぁ褒め言葉なんだろう....。ま、まぁ悪い気分はしない。べ、別に妹を認めたわけじゃ無いけど、仲良い人が褒められるのは嬉しいものである。妹を認めた訳じゃ無いけどね!

 

 

「実は多いんだよ?私みたいに会長さんを慕っている人。」

「そうなんですか?」

 

 

副会長から『会長は多くの人に尊敬されてる』とは良く聞いていたけど、どういう理由で〜....とかは深掘りされなかった。知るにはいい機会かもしれない。

 

 

「そうそう!アリウス分校って、もっと昔に割と荒れてた時期があってね?色んな派閥が実権を握ろうとピリピリしてたわけ。だから皆んな政治的なことにしか興味が無くて、それが理由で学校の整備とか設備が整って無かったのよ...。」

「....もしかして、それを変えたのが...?」

「そう!現生徒会長!君のお姉ちゃん!バラバラだった派閥を1つにくっ付けて、より良い学校生活を目指して動いた第一人者!だからこそ、アリウス全体から慕われてるってわけ!」

「ほ、本当にすごいんですね....。」

「多分ここにいる人達は全員、会長さんに救われた人達。直接的にも間接的にも。」

 

 

改めて耳にすると、会長の存在の大きさを痛感する。

見ず知らずだった俺にあれほど親身に接することが出来る優しい心、『より良い学校にする為』という一生徒が背負うには大きすぎるともいえる目標、自分ではなく他者の為に行動が出来る勇敢さ。その存在は、まるで空を仰ぐような感覚に近しいものがあった。届かないと知りながら、どうしても目を離せない。手を伸ばすにはあまりにも遠く、大きすぎる。それでも、心を惹きつけててやまない。

ーーーそう、これは”憧れ”の感情だ。人々を惹きつけ。行動や言葉で救う。俺の思い描いたシスターそのものだった。

 

しかし、ある意味では悟りでもあった。おそらく俺は会長と同じにはなれない。ベアトリーチェという脅威を前に、真正面から立ち向かう勇気は無い。同じ様にアリウス分校を救いたい、なんて思ってはいるが...その目標も中途半端に、最終的には先生に丸投げでいいやなんて邪念を持つ自分もいる。

前世でもジャンヌ・ダルクという名の聖女が有名だったが、会長はまさにそれである。そして、それほどのカリスマになれる器の人なんてのは早々いない。自分の性格は自分が一番よく理解している。自分が、そんなカリスマ性を持った器の人間じゃないというのは一番理解している。

 

でも.......だからこそ、偽りでいい。嘘でもいいから、人を助けてみたい。そんな、強い憧れである。

 

 

「....凄いんですね、姉さん」

「...?」

「人を救うって...あまり想像出来ないので...。」

「....出来るよ。アイリスちゃんも。」

「えっ...?」

「会長さんの妹なんでしょ?なら大丈夫。アイリスちゃんも色んな人を助けて、救って...。それで、いつかお姉ちゃんの隣に立てるよ。絶対に。」

 

 

そんな何でもない励ましの言葉が、今の俺にとっての一番の救いだった。

 

 

「そして~こちらがアイリスちゃんのこれからのお友達たちだよ!」

 

 

なんて言い放ちながら案内された部屋には、数人の幼女がいた。おそらく...小学生ぐらいの年齢だろうか?

 

 

「えっー...と?どういうことです?」

「じゃあ詳しく説明していくね!今夜の作戦では、君達は出入口付近で後方待機してもらうことになった!護衛はもちろん私の第1部隊!以上!」

「....ん?うーん....うん...」

「り、理解してない反応だね...。」

「ぜ、前線にはいかないんですよね?」

「当たり前!君達みたいなカワイ子ちゃゲフンゲフン...非戦闘員を前線に送るわけがないでしょ?」

 

 

イツキさんの言う通り、前線に行けるわけがないのは確かである。いくら多少の戦闘知識があるとはいえ、足手纏いになるのは目に見えている。しかし...。

 

 

「でも...姉さんを救出する部隊と一緒に行動するのって...リスクがあるんじゃ無いですか?一番戦闘が激化する所ですよね?私達が行って、邪魔じゃないです?」

 

 

1番の疑問はそこである。会長を助ける為に、敵拠点へと侵入しなければならないという部隊に非戦闘員がついて行っては、万が一の緊急時に足手纏いになりかねないのでは...?っと素人目線では思ったのだが...。

 

 

「とは言ってもね〜....他の拠点に行く部隊は合図があるギリギリまで前線維持を余儀なくされるでしょ?でも、合図の瞬間即座に脱出しないといけなくもあるから...自動的に脱出口付近が前線エリアになるの。いつでも出られる様にね?だから後方もクソも無くなるわけなんだ。」

「あー....そうなんですね?」

「でも私達の部隊の場合は、敵拠点に潜入するチームがいるわけだから...そっち、つまり敵拠点内部が前線になる。まぁある意味、囮役になるの。そうすれば、脱出口付近に『後方エリア』ってのが出来るわけであって、事実上そこが1番安全になるってわけ。」

 

 

だからこそ、その安全エリアに非戦闘員を集めるという訳だそうだ。それに加えて、アリウス分校の精鋭部隊である第1部隊が後方の護衛を行うとなれば安全×2という万全の状態の完成である。

 

 

「そして、君達の仕事は簡単な監視役と皆んなの安全を祈ること!おっけー?」

「分かりました!精一杯頑張ります!」

「ならよろしい!あっ、そういえば!」

 

 

と言いながら、何かを思い出したかの様にそそくさと子供達の中に入っていくイツキさん。

しばらく待つと1人の緑髪の子を引き連れて戻ってきた。

 

 

「この子!私の妹なの!とは言っても、血の繋がりはないんだけどねー....仲良くしてあげてくれない?」

 

 

話を聞けば、最近拾った子らしい。俺と同じ境遇の子の登場で、少しばかりのシンパシーを感じる。しかし、今更『俺もそうなんです!!血繋がってないんです!!』なんて言える勇気はなく....。

 

 

「よろしくお願いします。」

 

 

としか言えなかった。同時に、手を伸ばして握手を求めてみたものの、反応は無し....。

 

 

「....」

 

 

あれ...もしかして、はちゃめちゃに警戒されている....?!俺こんなに美少女なのに?!あっ!可愛すぎて声出ない的なやつかぁー!なんだそう言ってくれればいいのにぃ!緊張かな?

 

 

「ごめんね!!ちょっと人見知りなんだ!」

 

 

仲良くなるには少しばかり時間が要りそうだ。

 

 

もうすぐ、作戦が開始される。

 

ベアトリーチェ率いる過激派の思惑、会長の安否、脱出作戦....不安要素は沢山ある。が、やるしかない。なんて言っても、俺自身が何かやるわけでもないので、今は祈るぐらいしか出来ないのだが....。

副会長が会長を連れて無事に帰ってきたら、アリウス自治区の外で、今度こそ安全に暮らしてほしい。それは、最近出会ったイツキさん率いるアリウス分校の部隊員達も同じことが言えよう。今度こそ、安心して暮らせる環境に身を置いてほしい。今の彼女達が願える1番の幸せはそれだろう。

過激派についてしまっている生徒は、既にベアトリーチェの餌食になっていそうだが...会長率いる穏便派についている皆んなは洗脳されてない筈だ。外に行こうがあまり障害も無く、残りの学生生活、人生を暮らすことが出来るだろう。

 

それに比べて俺は....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

憂鬱だ...........。

 





次回、本番、行きますか。
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