アリウスの“紛い物シスター”   作:らいのあ

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幼少期、最終話。


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別れ。

 

「では予定通り第1部隊はここで待機だ。何かあったらすぐに連絡するように、お互いにな。」

「はい!了解です副会長!」

「ん、では行ってくる。」

 

 

なんて言った副会長に続いて第2部隊の皆がぞろぞろと敵拠点に向かっていった。正直に言ってしまえば、早く姉さんゲフンゲフン...会長に会いたい気持ちはあるので一緒に向かいたかったが。まぁ足手纏いの高望みというやつである。

 

 

「さぁっ!暇になったね!」

「...代理隊長...?仕事はありますよ??」

「アハハ~ソウダッタネ~」

 

 

緊張の影響により、はりつめた空気があたりを満たしているのを察してか...。イツキさんと部隊員が軽い冗談を交わす。後ろを振り返ると暗い顔をのぞかせる子供たちがいる。おそらくあの子たちを何とかして和ませたいのだろう。

『任せてください』と言わんばかりの目配せをする。それくらいは俺にも手伝えそうだ。

なんて思いながら、近くでうずくまってたイツキさんの妹...あの緑髪の子に近付いて隣に腰掛ける。

 

 

「大丈夫ですか?体調が優れないとかですか?」

「......」

 

 

うーん...ちょっと堅苦し過ぎたか?

 

 

「えーっと、何か出来ることある?あっ、膝枕とかなら今すぐにでも!」

「......」

 

 

ダメだ...。子供ってこんな難しいのか...?前世でも小さい子とかからあんまり好かれないタイプの人間だったから分からん。

 

 

「ご機嫌麗しゅうございますお嬢様!お膝枕の準備が整いました!さぁさぁどうぞこちらへ!!」

「......」

「プフッ!」

 

 

姉の方が反応しやがった。違う、反応が欲しいのそっちじゃない。

 

 

「会長さんと似てる顔でそんな冗談言われると...!ははっ!なんか、面白い!フフッ!ギャップというか、結構性格違う??」

 

 

そりゃ血繋がってないから、あんまり似てないよ。性格。

 

 

「あっ!お菓子いる?さっき持ってたやつがここに...」

 

 

今の持ち合わせが、会長譲りのサブマシンガンぐらいしか無いので何も出来ないと思ったが。そういえばお腹が空いた時様に、ちょっと食べ物をくすねてた事を思い出した。

過去の行いに感謝しながら、ポッケを探って出てきたのは......手榴弾だった。

あっこれ...。

 

 

『はい!これ!いつも頑張っている可愛い妹の為にこっそり持ってきちゃいました!』

『えっ...?』

『自衛手段です。』

 

 

手榴弾...?こういう時って普通、飴ちゃんとかクッキーじゃないの??真顔で物騒なもの渡さないで、この世界ではこれが普通なの?

普段冷静な副会長ですら、凄いものを見るような目で会長のこと見てるよ?やっぱり普通じゃないよね?

 

 

なんて流れで少し前に貰ったやつである...。

 

 

「アイリスちゃん、手榴弾は食べ物じゃないよ...はっ!もしかして会長さんの家の主食って手榴弾?!」

「違う!!断じて!!」

「...フフッ」

 

 

あっ!妹ちゃん笑ったね!!今!笑ったね!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

突入開始からおおよそ15分。別拠点に向かった各部隊からの通信が入る。全員予定通りに事が進んでいるらしい。

無線からは断続的に情報が飛び交うが、全員が息を殺している。

 

 

「全員、位置を確認。発砲は指示があるまで待て。」

「監視カメラ無効化。」

 

 

通信担当から報告が入る。

 

 

「最新の情報では、会長は2階東側の部屋に確保。警備は推定25名。生存者優先、静かに進め。1階クリア開始。」

 

 

チームは完璧な連携で進む。各自が担当区画を素早く確認し、遭遇した敵を無音で制圧していく。だが、倉庫の奥で、警備員が突然無線機に手を伸ばした。

狙撃手が即座に対応するも、一瞬遅く、警報が鳴り響く。

 

 

「作戦変更。迅速展開。人質の安全確保最優先。」

 

 

階段を駆け上がる途中、上階から自動小銃の銃撃が降り注ぐ。チームは壁や柱に身を隠しながら応戦する。閃光手榴弾を投げ込み、一瞬の隙を突いて突入。2階廊下での近距離戦が始まった。

 

 

「人質の部屋まであと20メートル。2名が足止め、残りは突破。」

 

 

後ろからの追手に必要に応じて対応しながら、そして応戦しながら前進するチーム。敵の銃弾が壁を貫通し、床を削る中、何とか東側の部屋の近くまで辿り着いた。と同時に扉を力任せにこじ開ける。

 

 

「会長!無事か!?」

 

「...?!あぁ、ソウカちゃんでしたか。来てくれてありがとうございます。」

 

 

部屋の中心には拘束された会長の姿。笑みを絶やさずに私の名前を呼ぶが、その手足からは赤い液体が滴っていた。今までのやり口からして、手段を辞さないとは理解していたが...。頭で理解するのと実際に目の当たりにするのではまた違う話だ。内側では怒りの波が静かに、しかし確実に高まっていた。

 

 

「...ソウカちゃん。取り乱すのは今じゃないです。お顔が台無しですし、部下の方々が怖がってしまいますよ。」

「っ!すまない...。い、今解放する。」

「でも、怒ってくれるのは素直に嬉しいです。ありがとうございます。」

「怒りが沸かないわけがないだろう。っと...その状態じゃあまり早く移動出来ないだろう?私が運ぶ。背中に捕まってくれ。」

「面目ないです。」

 

 

会長の身柄を確保すると同時に各部隊にその旨と撤退、脱出命令を伝達する。これで第3~第5部隊の隊員はすぐにでもアリウス自治区からの脱出口へと向かうはずだ。無線の向こうから聞こえてくる歓喜の声。そのまま会長に呼びかける人まで出てきた。普段であれば注意すべき点ではあるが...今回ばかりは仕方ない。

 

 

「ふふっ、私って幸せ者ですね。」

「...普段の会長の行いを考慮すれば当然のことだ。」

「ふふっ。っと...そういえば重要な情報を掴んだので、そのまま無線で皆さんにお伝えしても?」

 

 

撤退路を確保しながら、脱出口へと向かう。

しかし...この作戦の展開に違和感を覚え始めていた。今回の作戦、あまりにもスムーズに進んでいた。「出来過ぎている、何かおかしい。」と直感が告げている。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「会長さん、無事だって!!」

 

 

なんて一番に声を上げたのは暫く言葉を発していなかったイツキさんである。その言葉を皮切りに、第1部隊の隊員たちがほっと息をつく。長らく妙な緊張感と無言が続いていたのは、全員、会長の無事を心の中で祈り続けていたからだろう。それは俺も同じだった。

そのまま会長が皆を呼びかけ状況の説明を始めた。

過激派と呼ばれている勢力は、手荒ではあるものの会長の殺害は目論んでいなかったとのこと。今回の誘拐事件の主な目的はその血筋、つまり『ロイヤルブラッド』を標的をしたものだということ。そして、会長率いる穏便派の士気低下を狙ったものだということ。

 

 

「血筋...か。」

 

 

アリウス分校、そしてベアトリーチェにとって『ロイヤルブラッド』というのは大きな意味を持つ。立場上の扱いはVIPに近く、特殊な体質と強い神秘の持ち主。そして、ベアトリーチェからは計画の要として重要視され、スクワッド内では"兵力の増産"兼"最終的な生贄"という役割を与えられていた。

そんな『ロイヤルブラッド』が、先生の物語が始まるおおよそ10年前から狙われているというのは驚きだったが...。現時点でもうすでに、ベアトリーチェに目を付けられているという事だろうか?余程『生徒会長の血筋の者』を自分の手元に置いておきたいらしい。何はともあれ、無事でよかった。

 

 

『現在、私達は出口に向か……う……し、……ま……せん……』

「ん?会長さん?なんて?」

『ピー……ガガガ……ザーッ……プツッ』

「ん?どうしました?イツキさん?」

「無線が急に調子悪くなって...。さっきまで調子よかったのに、なんで急に?別に地下にいるわけでもないのに。まぁ、重要事項は聞けたしあんまり支障はないと思うけど...。」

 

 

どうやら機械の不調らしい。ここまで順調だったが最後の最後で不具合発生である。ただの不具合...と思いたかった。

 

 

「代理隊長!ジャミング信号です!通信妨害です!」

「はぁ?!」

 

 

静寂が突如として砕け散った。

 

 

「ピッ」

 

 

最初は何の音か認識できなかった。皆がを止め、耳を澄ませた。

 

 

「ピッ、ピッ」

 

 

規則的な電子音。三秒間隔。血の気が引いた。

 

 

「爆発物のタイマーだ!」隊員の誰かが、息を殺して呟く。

 

 

「ピッ、ピッ、ピッ」

 

 

音の発生源を特定しようと素早く辺りを見回す。部屋の隅、配電盤の陰に小さな赤い光が点滅している。

 

 

「退避!今すぐ!」

 

 

叫び声が喉から飛び出したのと同時に、カウントダウンの間隔が狭まった。

 

 

「ピピピピ」

 

 

全員が反応する時間すらなかった。

眩い閃光が視界を埋め尽くし、轟音が耳を突き破った。熱波が皮膚を焼き、衝撃波が体を宙に浮かせる。一瞬の出来事だった。

空気が塵と煙で満たされ、耳鳴りの向こうから遠くかすかに聞こえる悲鳴。床に倒れ、すぐに動けなくなる感覚を感じた。

 

警告は遅すぎた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なに...が...起きて...!」

「ゴホッ...ガハッ!」

 

 

俺の近くにいたイツキさんが瓦礫の下敷きになりながらも、なんとか起き上がろうとする。その妹は打ち所が悪かったのか、少し遠くで気絶していた。

 

 

「うっ...ごほっ!...あぁ...!!」

 

 

俺もなんとか持ちこたえたいいものの、爆発の衝撃のせいで立てそうにもない。悶絶し、痛みによるうめき声をあげる事しか出来ない。

しかしさすが、精鋭部隊というべきか...。これほどの大規模爆発による奇襲にも関わらず、第1部隊の皆は何とか持ちこたえ、起き上がろうとする人が殆どだった。

 

 

「動くな!」

 

 

なんて思ったのも束の間、ガスマスクをつけた集団が20名ほどぞろぞろと押し寄せこちらに向けて銃を構える。十中八九、過激派の部隊だろう。

 

 

「現会長...チヨリ会長の妹はどこだ!そいつをこちらに引き渡せば見逃してやろう。」

「う...そ...なんで、その情報が!漏れて...!」

 

 

イツキさんが驚愕の声を上げる。どうやら会長に妹がいると本当に勘違いしているらしい。まぁ確かにここ最近はずっと『会長の妹』として振舞ったし、周りからもそう認識されていたので無理もないか...。盗聴、ハッキング、スパイ...手段は今となっては知る由もないが、どれかの手段で情報を掴んだのだろう。

奇襲の狙いは、俺...というよりは血筋。ベアトリーチェは意地でも『ロイヤルブラッド』を手に入れたいらしい。

 

 

「誰がっ渡すかっ!」

「くっ...!はぁ...!はぁ...!」

 

 

声を上げたイツキさんと一緒に答えたいのは山々だったが、先程爆風を大量に吸い込んでしまって上手く呼吸が出来なくなっていた

 

 

『第1部隊!何が起こった応答しろっ!イツキ隊長!...くっ!急いでそちらに向っている』

「ふ、副会長さん...!敵の奇襲です!大規模な爆発により、被害甚大...!」

 

 

恐らく爆発音が向こうにも届き、心配になったのだろう。先程までジャミングされたはずの無線から声が届く。

 

 

「ふっ...お前らの上官か丁度いい。そいつにも先程私の提案を伝えろ。『会長の妹を渡せ』とな。『渡さなければ今目の前にいる全員を、ヘイローが壊れるまで痛めつける』とも付け加えろ。」

「ちっ...!」

 

 

なんて舌打ちをするが、今の状態で完全武装の20名を相手取るのはまずいと判断したのか副会長に事細かに説明を始めるイツキさん。俺も、そろそろ息が整ってきた。

 

 

『ふざけるなっ!誰がそんな提案を受けるか!』

「...おまけの追加情報だ。先程まで別拠点で待機していた同僚達がこちらに到着したそうだ。まぁ簡単に言えば私達の増援だ。これでも抵抗するのか?」

『くっ...!』

 

 

勿論ブラフの可能性もあるが...。今、目の前にいる20人だけであれば、副会長の部隊で十分に対処可能だろう。しかし、それはあくまで真正面からの真っ向勝負であればの話...。現在、俺たち非戦闘員と第1部隊の隊員が人質に取られてるような状況下だ。下手なことを言えば...殺されかねない。

 

 

『私では...ダメなのでしょうか?』

「あぁ、会長救出は成功したんだな。だがお前はダメだ。私たちが欲しいのはお前の妹の方だ。」

 

 

無線の向こうから会長が提案するも、却下で終わる。ただただ『ロイヤルブラッド』を手に入れる。という目的であれば会長の提案もよかったのだろう。が、こいつらの目的は恐らく...。

 

 

「目的は...げほっ!あくまで...私ですか...。」

「『あ、アイリス!?』」

「ほぉ?お前が例の妹か。」

 

 

俺の横からも、通信機の向こう側からも発言を控えろと言わんばかりに呼び止められたが、気にしない。

壁にもたれかかり、必死に身を起こしながら理解した事を整理していく。

 

 

「狙いは会長本人ではなく妹である私...。理由は...扱いやすいから、でしょうか?」

「...」

「貴方方が会長の血筋を欲しているのはよーく理解しました...。その真の目的までは分かりませんが、血筋の人の身柄を確保したい。しかし、その役目を姉さんが負うのには2つ程問題があった...。それは。『年齢』と『人脈』....。

血筋の者を捕らえるだけでなく、その者をコントロールしたい。しかしある程度の教育、教養を身に着けている姉さんに.....コントロール用の洗脳に近しいものを施すのは容易じゃない...。何なら不可能に近い。だからこそ、教育を受け損ねていて、まだ幼い妹である私の方を狙った。今後の扱いが容易だから...。」

「続けてみろ?」

「姉さんは多くの人に慕われている。穏便派は勿論、もしかすれば過激派の中にも心の中でまだ姉さんを慕っている人がいるかもしれない....。それほどまでに影響力があった人だから。そんな状況で姉さんを捕らえ続ければ、反乱がおきる可能性が出てくる....。しかし、妹であればどうか?チヨリ会長に妹がいるなんて情報は世間一般には知られていなかった。だからこそ、隠蔽できる。その情報を広めなければ、誰にも知られずに血筋を確保できる.....。

まぁ、姉さん個人だけを見ても相当な実力者。暴れられたら相当な被害が出るのは確定していますしね...。最初は、姉さんでもいいと考え行動したが、妹がいると知ってしまった今。私を狙う方が何倍も好都合。そういうことですね?」

 

 

一通り説明を終えると、暫くの静寂が訪れた。おおよそ、7歳の幼女がしていい考察じゃないだろう。そもそもとして、俺は『ロイヤルブラッド』でもない、ただの拾われたストリートチルドレン。前提すら間違っている説明ではあるものの、過激派目線じゃそういう考えだろう。本当に妹がいると勘違いしているのだから。

会長か副会長あたりが「拾った子だから会長の血筋ではない」と否定するかと思ったが、そういうわけにもいかないのだろう。そもそも今それをカミングアウトした所で、どれだけ説得しようが、そんな発言を信用するとも思えない。敵に耳を傾ける馬鹿なんていないだろう。そして先程言った通り、ここには多くの人質がいる。変なことを言えば殺されるかもしれない。そんなひっ迫した状況だ。

 

 

「ふっ...本当に優秀な妹を持ったんだなぁ、会長さん!びっくりだよ。まぁおおよそ当たりと言っておこうか?だからこそだ。お前じゃなく、妹の方なんだよ。」

「....分かりました。」

『おい!アイリスっ!』

「副会長。私を逃がしたい気持ちは本当にありがたいですが...。私の選択のせいで皆が命の危機に晒される方が、よっぽど心苦しいです。」

『...』

 

 

副会長が声を荒げるも...これは正直、俺にとっても好都合ではある...。

皆と一緒にアリウス自治区から出られるのなら、そりゃ幸せだろう。あれだけ良くしてくれた人たちだ。悪いことは起こらないだろう。

しかし、それをすれば、アリウス分校は原作通りに闇に落ちていってしまう。子供たちは洗脳され、地獄が始まってしまう。勿論、そんな地獄の場所に自ら残りたいと、本心で言っているわけじゃないが.....それでも、これからのアリウスを放っても置けない。未来を知ってしまっている弊害だ...。

そもそも論、選択肢なんてあってない様なものだ。俺がアリウスに残るか、脱出して皆を見殺しにするかの選択肢なんて...答えは1択しかない。

 

 

 

 

はぁ...

 

 

 

 

 

神様は非情な選択を迫ってくるド畜生なのか...?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一番の失敗点を挙げるとすれば、相手の提案に一時的にでも耳を貸してしまった点だろう。その時間を利用され、敵の増援を許してしまった...。

現在進行形で私が背負っている会長も満身創痍といった状態。一番の精鋭部隊の第1部隊は爆弾による奇襲により、ほとんどが壊滅。戦える者は、私を合わせて一部隊分程の人数。追い打ちをかけるように、人質まで取られている。どう考えても負け戦。最悪の状況、最悪の気分である。

そしてどうやら私達はアリウス自治区から追放されるらしい。二度と関わりが持てない様に、反乱を恐れての事だろう。自治区を抜けた事を目視で確認したいとのことで、脱出口前の扉まで歩かされる。扉付近まで近付いてみれば過激派側に立っているアイリスの姿が見えた。

 

 

扉付近で待っていると会長と副会長の姿が見えた。背負っている状況を察するに、会長は動ける身体じゃないんだろう。なんて思ったが、脱出口から出る直前になって会長が背中から飛び降り、こっちにゆっくりと歩みを進め、ゆっくりと抱きしめてきた。誰も何も言わないあたり、過激派の人間もちょっとの良心は残っているらしい。

 

 

「アイリス、情けない姉で...ごめんなさい。」

「お別れの言葉で謝罪なんて聞きたくないよ、お姉ちゃん。」

 

 

本当に...そんなことを言わせにここに来させたんじゃない。そんな言葉言って欲しくもない。聞きたくもない。そんな事、思って欲しくもない。背中をさすりながら囁いた。

 

 

「お姉ちゃんは一生懸命頑張ってくれたんでしょ?それで十分。自慢のお姉ちゃんだよ。」

 

 

出来る限り強く抱きしめる。

 

 

「色んなことを学んだし、ずっと楽しかった。料理も美味しかった。幸せだった。」

 

 

何を言うのが正解なのかも分からないけど、頭に過ぎる言葉はすべて吐き出す。

 

 

「アイリス....絶対。迎えに行きます。絶対です。待っててください。貴方は私の誇りです。だから....生きて、生きて、生き抜いて下さい。」

 

 

少し苦しさを感じるぐらいに強く抱きしめ返される。っと...いうか...。

 

 

「ソウカさんも、こっち来て?」

「えっ...あ、あぁ...。」

 

 

なーに傍観者してるんだろうこの人は。俺を拾った張本人、身内だろうに。ある意味じゃ、この人は母親だ。

 

皆で最後の抱擁を交わした。ソウカさんは何を言うわけでもなかったが、十分気持ちは理解できた。こちらの気持ちも伝わっているだろう。

最後の別れを告げた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

脱出口の扉が閉まる。そして改めて心に誓う。

 

 

「ベアトリーチェは...いつか絶対にぶん殴る。それで...絶対に。あの二人に会いに行く。」

 

 

たとえ会えるのが10年以上先の未来だったとしても、諦めなんてしない。

 





恨みを持たない人間なんていないだろう。
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