呪術じゃねぇって!念能力だろ!   作:nyasu

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異世界転生したのかもしれない

「……痛ッ」

 

頭が痛かった。

あー、二日酔いだこれ、寝てんのか。

そんな取り留めのない思考が結論を出す。

昨日の自分を思い出そうとして、強烈な吐気が思考を中断させる。

 

「うっ……」

 

自分の寝床にぶち撒けるように、吐瀉物を撒き散らす。

鼻を突くツンとした匂いが最悪な気分にさせる。

それと同時に、原因である記憶が頭の中で想起される。

 

どういう訳か30歳くらいの公務員のオッサンである俺と3歳である俺の記憶が同時にある。

どっちかって言うと、オッサンの記憶のせいで思考回路というか、精神年齢が色々可笑しくなってる気がする。

頭痛の原因これじゃないかと思って来たのだが、一つの結論に行き着く。

これ、あれだ、異世界転生って奴だと。

だって、俺、何かよく分かんない転生特典が使えるって何故か知ってんだもん。

 

「取り敢えず、掃除するか」

 

まず、育児放棄気味の毒親によって生み出されたゴミ屋敷を掃除することから始めることにした。

 

 

 

元のオッサンの知識はだいぶ穴だらけで、俺の名前が伏黒恵という名前という事だけは分かった。

母親代わりの女は苗字が違うし、父親の姿は見たことはない。

親同士はあってるらしいが、俺はあったことは無い。

あと伏黒津美紀という姉がいる。

 

母親はキャバ嬢で、夜は水商売で昼間は客か友達の家か知らんが帰ってくることのほうが少ない。

というか帰ってきても寝て、起きてる間は部屋を散らかすだけの生活破綻者だ。

ゴミ屋敷だから男は連れ込んでないが、教育に悪過ぎるクソ。

姉はそんな母親から優しくしては殴られたりする典型的な虐待児童、そんな親に依存するなんてアホかよと思ったが、まぁ生まれた時から一緒なら正常な判断なんか出来ないかと納得。

俺の異常だという認知した世界は、姉にとっては日常なんだろ。

で、転生特典だが何か影から式神を生み出す能力らしい。

 

「何だこの、ぼくのかんがえたさいきょうのちーと、みたいな能力」

 

チラシの裏に整理のために書き連ねるが、書くほどラノベの主人公が持ってそうな能力だ。

なんか、えっと、あれだ、吸血鬼の真祖から授かった力でやれやれみたいなアニメ昔あったろろ……そんな感じ。

 

①初期キャラとして玉犬と呼ばれる白と黒の犬が手に入る。

②召喚方法、名前、能力が分かってる式神を自分だけで倒すと言う事を聞かせられる、これを調伏という。

③式神は死ぬと二度と生み出せなくなる

④死んだら手持ちの式神に能力が引き継がれる

⑤八握剣異戒神将・魔虚羅という名前の式神だけ詠唱が必要

 

「いや無理だろ、何だこのラスボスの式神。能力適応って一人で倒せんだろ、自殺用か?」

 

いや、これ、敵味方巻き込む奥の手みたいな感じかも……あっ、調伏って他人も参加者として指定できるみたいだな、予備知識が生えてきやがった。

 

「自分の能力なのに、思いつかないと補足説明みたいなのも頭に浮かんでこないとか、仕様がクソだな」

 

そもそも影から式神ってなんだよ、物質化したってことか?

つまり、漫画の知識からして俺は具現化系能力者ってこと?ワンちゃんペロペロしたってことかよ。

 

「うわ、これ小学生の頃に見てたアニメだ……逆算して2005年かよ」

 

ゴミを木に変えたり、木をゴミに変えたり、最終的にループするんだよな。

影を式神にする力!みたいに俺の力もループ出来んのかな。

式神にも影があるんだろうか、その影から式神を出せたり出来ねぇもんかな。

 

で、試しにやってみたら白いのと黒い大型犬が出てくる。

クソ人懐っこい、調伏してないのに俺のこと好きすぎ。

犬種はなんだろう、てか牙と爪すげぇなぁ、ニホンオオカミって奴なんだろうか。

顔に入れ墨みたいなの入ってるな、なんか見たことあるぞ。

定礎、結、滅!って犬が主人公の相棒なパターンあるしな。

 

「お前にサンが救えるか」

「ワンッ!」

「アウ?」

 

白いのにアフレコしてたら黒いのに首を傾げられた。

そうか、君にはまだ早かったか。

俺の知識を引き継いでるパターンじゃないのね。

奇妙な2匹と俺の生活が始まった。

 

 

 

シロとクロと安直に名付けた犬について、生活して3ヶ月くらいで分かったことがある。

まず影から出来てるコイツらは物理干渉が可能らしい。

ゴミ掃除の際に大いに役立ってくれた。

次に餌はいらないようだった。

正確には、小蝿みたいなのとか小人みたいな化物が自室にいたのだが、それを食べてた。

始めて見たときはペッしなさい!と慌てたが、別にコイツら本物の犬じゃないし、良いのかと気付いた。

多分、妖怪かなんかじゃねぇかな。

ジャンプで最近連載始めた奴の悪霊とかそんな感じだし、先生はいつかエロ書き始めるんだよなぁ……師匠の絵とか若い、死神の世界とかあんのかな、あっ同じ死神でもノートで呪い殺すとかのほうか、ってか俺以外にも能力者がいるかもしれないな。

 

「あまり呼び出すと、なんか魔力的なの感知されて気付かれたりするんだろうか」

 

ただ、この妖怪と呼んでる奴らは母親に取り憑いた時に母親がヒステリックになってたりしたから、多分悪いもんなんだよな。

あと、魔力的なの手からちょっと出たりすんだよ……黒い炎みたいなの、使いたくなるやん。

 

「人前に出さないでおくだけにしよう」

 

うちの子達は室内犬になることが決定した。

まぁ、津美紀の前に出したら見えてないのは分かってるから、外に連れ出して見える奴を炙り出してもいいかもしれないが3歳児じゃ勝てないからやめておかないとな。

 

「取り敢えず、俺はまだまだ弱いからな」

 

コップに入った水に幾ら黒い炎みたいなの流しても何も変化しないからな。

俺の練はまだ弱い!畜生、変化しねぇ!

 

「いったい俺は何系なんだ」

 

具現化系じゃないのに具現化してたら、生まれつきの能力とはいえ相性最悪かもしれんしメモリーの無駄遣いが過ぎるぞ。

まぁ、パワーが上がるし多分これ念能力だと思うんだよな。

 

「シロ、保育園から津美紀が帰ってきたら傍にいろよ。クソババアが手を上げようとしたら守ってくれればいいから」

「ワンッ!」

「クロは昨日当番だったから今日は休みな、好きにしていいぞ」

 

取り敢えず、異世界転生したら幼少期あるあるの修行しかないだろ。

あっ、ジャンプ買って来なきゃな。

クソババアの財布どこだっけな、津美紀が帰ってくる前に抜いとかないと。

 

「待てよ、グリードアイランドの修行は俺にも使えるのでは」

 

やはり、俺は念能力者な気がする。

この黒い炎、多分だけど念をジャンプ見ながら修行しなきゃ。

ちょうど、修行編連載してる頃だったからネタには事欠かないぜ。

 

「じゃ、留守番頼むな」

「ワン!」

 

俺は千円札を片手にジャンプを買いに行くことにした。

で、なんでこんなことになるんですかね。

 

「僕、お母さんはどこかな」

「民度良すぎだろ」

 

ジャンプ片手に持ってた俺は、婦警さんに話し掛けられていた。

馬鹿な、不良に絡まれるならまだしも警察に保護されかけるだなんて。

 

「…………」

「…………」

 

その時、俺の脳内で流れるジャンプという聖典。

念を、足に集中!凝を怠るなよ!答えはこれだ!

 

「フッ」

「あっ、逃げた!待ちなさい!」

 

待ったら捕まえるんでしょ!児童相談所とかに、なんやかんやするんでしょ!自由時間少ないと困るんだよ、ネグレクト万歳なんだい!

やはり念能力、俺の足は普段より気持ち早くなった。

やっぱり、これ、念だろ!

1時間くらい掛けて、なんとか婦警さんから逃げ切った。

走りすぎて気持ち悪い、心肺能力も鍛えなきゃ。

 

 

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