時は2012年、高学年に俺はなった。
この頃になると遠足とか課外学習とか、下の子と一緒に行動することが多くなった。
未だにこんな事あるのかと思う自分と、昔って治安良かったのか?と思う自分がいた。
学校の先生からは手の付けられない問題児扱いされていて、ここ数年ずっとやってる喧嘩のせいで俺の評判は悪い。
なんかあったら津美紀呼んでくるのは禁止カードだと思うんですけど、何が姉ちゃん来た!これで勝てるだよ、ダボハゼが!頭上がんないでしょうが!
なお、なんか呪力がバレると規定違反で命を狙われるらしい。
知ってる知ってる、ハンター十か条みたいなもんやろ。なに、念の秘匿は別に書いてない?何してるんだパリストン!改正しろ!
まぁ、見えないからバレないけどバレる可能性があったら処罰されるらしい……揉み消しとか普通によくあるらしいので終わってる。
俺の親戚である禪院家とか、今まで御三家とか言うのでやりたい放題だったから、違反なんて割としてるっぽい。
ポケモンみたいだよな御三家、なお五条家は没落しかかってたのを五条が立て直したらしい、本人談。
生まれただけで立て直したとか頭湧いてること言ってた。
残る加茂家は地味で語ることもないくらい良くも悪くもないから優しくするように言われた、可哀想な加茂家さん。
なお、呪力を使って非術師を殴るのは規定違反だったので五条が揉み消したらしい。
ハハハ、御冗談を……俺のは念能力だし、まぁ念能力に目覚められたら困るから自重してやるがな、ビビってないぞ。
「オメェが伏黒恵だな!」
「なんだ!誰だ!」
「津美紀ちゃんのよぉ、好きなもんを教えろや!」
「うるせぇ、死ね!」
まぁ、それはそれとして絡まれ続けるので喧嘩はするけど。
呪力使わないなら殴っても平気、体術の訓練じゃ!
週末、埼玉から電車を乗り継いで東京に来る。
土日は勉強と仕事があるからだ。
高専に来たら真っ先に保健室に向かう。
「先生、来たぜ!」
「ん?おー、また怪我してんなぁ」
保健室を開けると、タバコ吸いながら酒飲むイカれた女がいる。
目にクマがあってダウナー系の硝子先生だ。
最近、ズルして医師免許も取ったから医者もできるらしい。
「修行のせいかな、修行の」
「どうせ喧嘩だろ〜ひゅーんひょい」
「すげぇ!これが反転術式!」
物理法則を無視した、よく分かんねぇ力を頭でコネコネしてプラスの力にしたら出来るとかいう、よく分からねぇ理論の塊、それが反転術式。
五条も全然出来なかったけど、先生は最初から出来たらしい。
何なら俺くらいの時はステゴロで正の呪力を流して呪霊にクリティカルダメージ与えて倒してたまである。
触れただけで呪霊が弾け飛ぶらしい、怖い。
でもそれで見つかって、有能過ぎて飼い殺しされてるから肉弾戦なんかもうしないって、元ヤンか何かかよ……
「ハッハッハッ、すごかろう」
「先生って元ヤンなの?あと、あの夏油とか言うヤベー奴も知り合いなの?」
「元ヤンじゃねぇよ、夏油なぁ。アイツ何してんのかねぇ、会ったらしいねぇ」
「休日は拾った女児とプリキュア見てるって言ってたよ」
硝子先生の顔が見たことないくらい引いてた。
まぁ、事実だから仕方ないね。
「いーな、反転術式。術式反転とかもやってみたいんだよね」
「難しく考えすぎなんだよ、私達は呪力をマイナスの力だと思ってるけど、呪力はマイナスの力だとは思ってないんだよ」
「はえ?」
「それ自体は形のない心が生み出したエネルギーの塊で、呪力自体はマイナスじゃないんだよ。そのエネルギーをマイナスだと認識して、定義して、流してる訳。形のないものを流すってのも意味分かんないけど、ひゅーんって流れを変えるだけなら変わらないけど、ひょいと流れを変えたらグルグル混ざってぶつかって、そしたら違うものになるんだよ」
何言ってんだ、さてはこの人頭いいだろ。
だから分かんないやつのこと分かんないんだろな。
説明が自分しか分かってなさそう。
「んー、もっと分かりやすくして」
「そうだな……呪力を数学で考えるから難しいんだよ。反対の反対は賛成、じゃあ正しいねってことで、理屈ないものを理屈で語ろうとするからダメ」
みんなその辺ナンセンスだよねぇ〜と硝子先生は笑った。
酒のんでパッパラパーかと思うが、実に分かりやすい。
覚えておこう。
なお先生は若い頃から酒もタバコやってるけど、常に反転術式で肌から脳までフレッシュ、フレッシュ過ぎて寝てなくても生活できるらしい。
なので三徹してるらしい、寝なよ。
「まぁ、あまり生き急がなくて良いんだよ。元気でいてくれりゃね」
「先生……」
「そのまま死ぬ奴多いから頑張って生きて、私に貢いでくれ」
「台無しだよ!」
でも反転術式からの術式反転はどんなふうになるんだろうな。
平面の影を立体の物質にしてるし、物体とかをカード化するみたいな?
触れた相手を調伏みたいに条件達成でカードにするとかかな。
「それはそれとして、行け!シロ!」
「俺、お前、モフモフする」
「あっ、やめろ、仕事が、今寝たら報告書が」
問答無用でベッドに来てもらいます。
理由はお分かりですね。
モフモフさせます。寝ろ!
「あったかい、ふわふわする、こんな時、どうしたら」
「寝ればいいと思うよ」
数秒後、規則正しい寝息が聞こえた。
早いな、やはり眠かったか。
五条の高校時代から逆算して25くらい、若いのに徹夜が当たり前の毎日は普通にブラックで可哀想だ。
呪力ってのが負の力だってなら、どいつもこいつも病気だよ。
今日はいつもと同じように土曜日の深夜に車に乗って仕事である。
行先は栃木、2級の犬みたいな呪霊らしい。
五条からは栃木は餃子が美味いぞと要らんこと言われた。
「うっま、うま、うま!」
「よーしよし、いやしんぼめ、三箱か!三箱欲しいのか!」
リムジンの中で大量に買った餃子をクロが食べる。
俺とシロは明日、チンして食べようと思うので生では食わない。
最初はチンしてあったけど足りなかったから仕方ないね。
「もうすぐ着きますので準備をお願いしますね」
「はーい」
いつもは担当のおじさん、竹中さんと言うのがいるのだが腰をやったらしく、急遽リムジンに乗った斎藤さんというどこにでも居そうな苗字のお姉さんが担当だった。
リムジンには運転手がいて、ただの帳担当のようだ。
でも寝てる間に餃子をコンビニとかスーパーで買ってきてくれたから好きだぜ。
「匂うわ……近いわね……」
「えっ、ニンニク?」
「私は臭くない、グルァ!」
お、おち、おちつけ!悪かった!冗談ですやん!
不機嫌になったクロを撫でながら車から降りる。
うわぁ、怖いなぁ。
深夜の山なんかに来ちゃったよ。
「…………」
「斎藤さん?」
「帳を降ろします、闇よりい出て闇より黒く……」
斎藤さんが一瞬躊躇うような顔をしてから帳が落ちる。
落ちきる瞬間、ごめんなさいと聞こえたんだが、不穏な。
子供に戦わせることに負い目があるとかそういうことかな。
「さて、でっかい犬らしいから大きさ勝負だな」
術式が身体に刻まれてるとか五条は言ってたが、硝子先生の考えみたいに理屈で説明しようとするから、回路みたいだよと言った説明になってしまうのだろう。
そういうのは変なイメージが着くから念能力では本人の感覚に任せるべきなのに、五条は箱入り息子だからダメダメである。
正解は死んで黄泉帰ってる俺がいるから、魂に刻まれてんだよ。
魂、実際にありそうだろ、幽遊白書見てる俺は詳しいんだ。
ほんで、その術式に呪力を込めるように俺の念能力であるクロに念をブチ込みまくればクロがデカくなる。
術式順転って奴らしい、シンプルに強化するだけの強化系やな。
式神使いの弱点は近接戦、そこで考えたのが完璧な作戦だ。
「合体!」
「よいしょっと」
クロが俺の身体を器用に頭でひょいと頭上に飛ばして、俺の身体は自由落下した状態でクロに落ちていく。
クロの背中に触れた瞬間、水面のようにチャプンと背中が波立ち俺は真っ暗な世界に移動した。
そして、俺の視界がクロの視界に変わる。
ゼロの使い魔とかナルト見てたけどよ、中にはいって視界共有出来たらニチアサ出来るぜ。
「いたわね」
「グルルルル」
二回りくらい小さい、大型トラックぐらいの犬が俺達を見上げる。
悪いな、普通に山の半分くらいデカいから単純に四倍くらいある。
デカさは強さだ、ペチンと叩いたら犬の呪霊は潰れて消えた。
よし、勝ったな……
「ぎゃあ!?」
『恵、攻撃された、まだ生きてる』
腕に激痛が走ったと思ったら、潰した筈の犬が別の地点に現れていた。
どういうことだってばよ……