仮説、呪いとは呪力、負の感情から生み出された念によるもの。
ならば、成長の先に手に入る反転術式を行使できる式神の力があれば、正の呪力、硝子先生より強力なそれで中和することで解呪出来るのではないか。
その仮説のもと、俺は片っ端から呪霊を狩っていた。
呪霊を狩る、狩って食わせる、怪しい依頼や精査が足らない等級不明でも進んでやる。
学校なんか通う暇があれば、狩って狩って狩りまくる。
「恵、ありがとう。お陰で助かったわ」
「津美紀……」
「反転術式、私のために覚えてくれたんでしょ?」
ベッドから起き上がる津美紀、微笑みながら俺を見る。
はぁ、全く趣味が悪い。
俺はそのままベッドの上に登ると同時に上半身だけ起き上がらせた津美紀の顔を思い切り消し飛ばした。
「ガァァァァァ!」
「うるせぇなぁ、殺すぞ」
一瞬で世界が古びた廃墟の中に変わる。
綺麗な病室は消え去り、景色が変わる。
俺の身体は黒い鎧に包まれ、俺の眼の前にはミイラのような呪霊がガラスを引っ掻くような声で喚いていた。
「津美紀が反転術式なんか知る訳ねぇだろ、馬鹿が!喰っていいぞ!」
「ヤ、ヤメテ、メグミ、ヤメテェェェ!」
「黙りなさい、お前は私の獲物よ!」
俺の腕が肥大して、そのままクロの頭部が出てくる。
それは命乞いする呪霊に向かって一口で噛み千切る。
ゲームから着想を得た捕食モード、効率を重視したらこれが早い。
「幻術か、準一級ならいい経験値になったな」
「趣味の悪い呪霊だったわね……」
犬の形態となり、俺の足に頭を擦り付けてくるクロを撫でる。
シロもクロも、俺の成長に合わせて知能が上がってきていた。
俺達は相互に能力を共有しているのか、それとも影で繋がっているのか、今では俺自身が合体してなくても帯電出来るようになっていた。
スキルツリーのように式神の能力が解放され、使えるようになってきているのかもしれない。
最近は大蛇の能力が解放され、赤外線のような視線を手に入れた。
ピット器官というのを聞いたことがあるが、サーモグラフィーのように温度が見えるのだ。
温かいものは赤い色が付き、冷たい物は青い色だ。
まぁ、おそらくはそういうイメージのフォーマットに沿って変換されているんだろうけどな。
「恵、あと何体か同じの食べたら次もいけそう」
「そうか、夏だからな。また湧いてくるだろ」
祓って祓っても湧いて出てくるのが呪霊だ。
強いのは少ないが、弱いのなら掃き捨てるほど出てくる。
餌には困らない。
任務を終えて、次の任務を何するか高専の空き教室を借りて選んでいたら、空き教室のドアが開く。
見ると、見知らぬポニテの女がいた。
おっぱいデカいな、うお!腕とか太腿が太い!筋肉モリモリだな。
「お前が伏黒だな」
「誰だよ……あっ」
教室の外、廊下でパンダがコソコソこっちを見ていた。
パンダじゃん!パンダはパンダじゃん!パンダがパンダしてるじゃん!久しぶり過ぎで語彙力死にかけた。
「パンダがパンダしてる、パンダじゃん!パンダはパンダだろ」
「うぉぉい、何言ってるか分かんねーし、頭可笑しくなるぞ」
「シャケ」
「シャケナベイベー!誰?えっ、パンダの知り合い?」
パンダの横から変な男が現れた。
お前の知り合いかよ、この理由分からん女。
「おい、無視すんじゃねぇよ!」
ドン!と俺の座っていた机に女が近づいて机を叩いた。
俺は座っていたので、ズイッと女の胸が顔の前に来る。
タプンと揺れる、なんだテメェ……痴女か?無視出来る訳ねぇだろ。
「どちら様ですかね」
「おい、こっち見ろよ。胸に話しかけんな」
「掛けてねぇーよ!別に興味ねーよ!」
「嘘つくんじゃねぇーよ!常に視線が顔より下じゃねぇーかよ!」
チラッと顔を見て、視線を下に戻す。
チラ見せはバレるって言うからな。
「馬鹿がよぉ、胸ガン見して顔チラ見してんじゃねぇーよ!思春期かよぉ」
「ぎゃあぎゃあうるせぇな、脂肪の分際でよぉ!」
「ゴラァ!オッパイから離れろや!」
一触即発だった。
多分俺は触れたら爆発する。
それくらい強烈だった。
クソ、任務ばかりで女子の胸がこんなに……いや念能力に違いない!視線を操作されてる!デカい!D?Eはあるんじゃないか!
「すじこ!おかか!シャケ!」
「すごい、俺達ができない事を平然とやってのける、痺れるぜ!って言ってる」
「クソが、上等だエロガキが!お前らもボコす!ぜってぇーボコす!」
すごい勢いでパンチが飛ぶ。
それを影から出てきたクロが防ぐ、俺はそれと同時に胸を掴んだ。
くっ、ブラが邪魔でイマイチ柔らかさが分からない。
いや、フニャッとしてるが布越しの触感だ。
「ひゃっ……くっ、死ね!離せ!」
「うおぉぉ!真希からメスの声が出たぞ!」
「イクラ!ツナマヨ!」
「パンダ!テメェ殺す!棘、てめぇーもだ!ってか、離せや!」
「何だコイツ、中身爆豪かよ。口悪いなぁ」
離してやると、胸を抑えて俺から距離を取った。
で、何なんだコイツ。
「胸の人とオニギリはパンダの友達なの?てか、パンダ、デカくね?また増量した?」
「胸の人じゃねぇーよ!無視すんじゃねぇ!」
なんか暴力系ヒロインなのか、すごい速さで殴ってくるのだがクロが全部防いでくれる。
影になって俺の周りで実態化してはパンチやキックを防ぐ。
黒い布が独りでに動いてるように見えることだろう。
「最近、増量したのよくわかったな。アイツは禪院真希、ツンデレ。こっちは棘、狗巻家の人間で喋るとマズイからオニギリの具で会話してる」
「何言ってるの?会話になるわけねぇーじゃん」
「しゃけ、しゃけ」
「シャケシャケうるせぇなぁ、クリスマスしか食わねぇーよ」
生活に支障が出るような縛りだな。
ちょっと、ノーパソ貸すからこれで会話しろよ。
「棒読みちゃん入れるから、これで打って」
『その発想はなかった……狗巻棘、よろしくね』
「おー、棘がスイッチみたいになった。流石ジャンプだぜ」
『こんな簡単に会話出来るとは、ゆっくりしてってね』
「ゔぉぉぉい!何馴染んでんだぁぁ!」
なんかクロに拘束されて動けなくなってる女がいた。
そっか、蛇みたいに巻き付くことも出来るのか。
「何しに来たんだよ、マキマキ!」
「誰がマキマキだ!テメェ調子乗ってるらしいなぁ!」
「あー、真希はお前の話を聞いてひと目見に来たんだよ。アレだ、ツンデレなんだよ」
「ツンデレかよ、何キレてんだよカルシウム不足か?発情期ですかバカヤロー」
「どう考えてもセクハラだろうが!びっくりだよ、初対面で揉みしだいてくるの!怒るわ!」
胸を揉んだ?
何言ってんだ、胸が揉んできたんだ。
俺の手を胸が揉んだんだ、俺の手は触れてるだけで、俺は悪くねぇ!
「所詮、マキマキは敗北者……」
『犬にまで煽られて草』
「棘!マジで覚えてろ!愉快に喋りやがって、テメェ饒舌じゃねぇーか!」
『ひえっ、とづまりしとこ』
何やら騒がしい奴等だが、一応先輩らしい。
なんか入学してたらしいんだけどスレ違いで会ってなかったらしい。
まぁ、任務なんか出てたら会う機会減るよね。
「なんかピリピリしてるって五条が言ってたからなぁ、様子見に来たんだぜ」
「ほーん、俺に親戚の姉ちゃんがいたの知らんかったわ」
「……親戚?」
「えっ、禪院だろ?クソの禪院って俺の親父の実家だけど」
「お前伏黒だろ……どういうことだよ」
「昔は禪院だよ」
いや、術式というか俺の念能力見たら分かるでしょ。
十種神宝モチーフだよ、遊戯王にある由緒正しき神話のアレよ。
式神、多分そこから来て……あぁ、そっか、通常じゃない使い方してるもんな。
「お前が親戚……」
「うおおお、真希がフリーズしたぞ!無量空処だ!無量空処!」
『オッパイって何で2つあるんだろ』
「パンダ、この先輩だいぶ愉快だな!」