「ここは普通の日本かもしれない」
俺が能力を自覚してから半年、俺はよく似た日本のような場所で能力者同士が戦う世界、そんな異世界に転生したと思ったのだが違う気がしてきた。
確かに、妖怪とかいるけど実は俺の前世でも見えないだけでいたのかもしれない。
少なくとも俺以外に見える奴がいない。
おかしい、絶対能力者なんて腐る程いるはずなのに……見える奴は少ないのかもしれない。
さて、そんなことに気付きながらも俺は自分の研鑽に努めていた。
研鑽、響きがカッコいい。
津美紀には、おままごととか言われたけど、女子供には分からないロマンがある。
魔力、念、気、霊力、チャクラ、いろんな呼び方があるだろう謎エネルギーも修行して使えるようになってきた。
まずは石を持ちます、そして石に向かって石をシュート!超エキサイティング!念の籠もってない石はぶっ壊れる。
なお、集中力が切れると念が出なくなる模様!クソッタレ……あっ、出た。
「かー……くぁーむぇー、違うな。銀さんのはこんな感じだったのに」
他にも念を飛ばす修行、全然飛ばない。
多分俺は放出系じゃない。
「うぉぉぉ、死ぬ気で凍らせんだよ!」
念の黒い炎を氷に変えようと思ったが出来ない。
多分俺は変化系じゃない。
「ふむ……こうかな」
「恵、お絵かきしてるの?ワンちゃん」
「違うよ、修行だよ」
より解像度を上げるべくスケッチしたり、モフモフしたり、具現化の修行だ。
温かい、こいつ、体温があるのか?食べてないのにカロリーを消費している、妖怪達からエネルギーを摂取してるとして、あいつらは何から出来てるんだ。そもそも念は生命エネルギーでそこから出てるとして、俺は何を捻出してるんだろ。ろくに飯とか食えてないけどカロリーなんだろうか。
「お手!おすわり!チンチン!三回回ってワン!」
「ワン!」
「一人で何してんだろ……」
「犬がいるの!見えないだけ!」
「そうなんだねー」
犬に芸を仕込む、これは操作系の修行だ。
うんうん、言う事聞くな。
あれ、俺、具現化系と操作系は出来てるし、もしかして特質系なんだろうか。
「凝を怠るなよ、そしてそのままスコップに込めるぜ!流れるようにやってく応用だぜ!ふぅ、薄皮一枚にするのムズいな」
「砂遊び?私、泥団子作りたい」
津美紀よ、これは念を集めてスコップを強化して、それをスムーズにやったあと見えにくくする高等技術を使った修行だ。
周から流、そして陰だ。
遊んでるわけではない!すげぇ、なんで泥団子キラキラしてんの!?
ストッキングで磨くんだ、やべぇな!ハッ、これを修業に活かせるんじゃ、玉犬も念を込めたら爪とか磨けるんじゃ……
「ワオーン」
爪と牙に黒い炎が宿る。
やはり、俺の念を念獣だから使って強化出来るんだな。
「どうして唸ってるの、お腹痛いの?」
「修行してるの!」
「そっか、そういうお年頃なんだねぇ」
うるせぇ!俺には秘密のパワーがあんだよ!
オラァ!影よ広がれ!円だ、円!おおおお!動いたぁぁぁ!
「キャイン!?」
「あっ」
「どうしたの?」
えっ、今、クロが影の中に落ちたんだが……えっ、落ちるの?
あっ、手が沈んで……これ、中に入れるんだ。
まぁ、まだまだ先だけど影から敵が出る展開があったしジャンプに書いてあるなら出来るか。
影の帝国から出てこい、我が式神よ。
「ワフッ!ハァハァ……」
「生きてた……あっ、これ」
津美紀に見えないようにゴミの下に展開したら、ゴミが落ちてった。
掃除が楽になるな、最高だぜ!
調子に乗ったらなんか身体が重くなったので、質量は保存されるようである。
ジャンプを買いに行きながら、バレないように影に物をぶち込んで食べ物を確保する。
いつも千円札を持ってジャンプとお菓子を買っていくガキをコンビニのバイトが微笑ましそうに見ている、顔馴染みだ。
最近、万引き被害にあってるらしくて変な人がいたら教えて欲しいとのこと。
「まんびきってなに?」
「うーん、泥棒ってことだよ」
「わかった!どろぼう、みつけたら、おしえるね!」
全く、万引きなんて酷い奴もいたもんだ。
急にやめたら怪しまれるから回数減らすか。
「チッ、新しいシノギを見つけねぇとな」
世の中はクソだ、恵まれてる奴等が多過ぎる。
こちとら親の財布に金がなきゃ、食うにも困ってるのによぉ。
俺の精神年齢が低ければ死んでたぜ、たぶん。
「おっと、警察か」
踏み出した一歩目が地面に沈む。
そのままドプンと身体が落ちる。
深海のような黒い世界、天井には様々な形の白い模様がある。
絶えず形を変えるそれは白い影、出口でもある。
水があるわけじゃないが、水中のように呼吸は出来ない。
式神は影を加工して作ってるからか、影を捉えて泳ぐことが出来る。
平泳ぎの要領で時折、水面のような白い影から外に顔出して息継ぎしては家まで帰るのだ。
なお方向は分からなくなるので迷いがち。
「プハァ、あっ水色」
「えっ!?誰!」
時たまスカートの中に出るのはあるが、いわゆるコラテラルダメージと言うやつだ。
全然性欲湧かないのは4歳だからか。
今度こそ人の影じゃないとこから出て家につく。
どうでもいいけど、ゴミとか食い物とかどのへんに沈んでんだろうか。
出そうと思ったら出てくるから分からんけど。
「ゴミ袋にシュート!燃えるゴミと燃えないゴミの自動選別だ!我が宝物庫のゴミを喰らえ!」
「ワンッ!」
「待て、ドックフードはそっちだ」
これ質量保存とかなかったら海の水とか収納して、沈ませ続けて加速して、小さい出口から出すんだけどな。
いや入るそばから出せば行けるのか?そもそも少量なら行けんのか?
試しに水道水を影に入れて、両手を合わせるようにして小さい影から落とし続けた水を出してみる。
「わぁぁ!なんだ!?」
「あっ」
「コラァ、誰だ石投げたの」
家の窓ガラスがスゲェ勢いで割れまくった。
こわぁ、銃弾みたいな穴空いてるよ。
外から石投げられたって近所の人に泣きついてアリバイ工作しよう。
でも新しい技を覚えたぜ。
4歳にもなると一般家庭では幼稚園なり保育園に行くんだと思う。
母親は実の娘は入れてるが、俺は放置だ。
だから公園で筋トレするために遊びに行くと、暇な小学生に絡まれる。
「民度クソか!婦警の時と違うじゃねぇか」
「みんどとか分かんねぇこというなよ!小学生だぞ、生意気だな」
「えぇ、イキるとこそこかよ」
ヒーローごっこな!戦隊ヒーローはお前らで怪人は俺!
よっしゃ、強化系はシンプルイズベストなんだよ!
「うわぁぁぁん!」
「覚えてろよ、兄ちゃんに言いつけてやる!」
「貧乏人の癖に!」
絡んできた小学生3人組を追い払い、俺は勝利した。
うむ、抑え込まれても転がせるくらいパワーがあったけど、技術がないといつか力押しは出来なさそう。
なんかカラテとか柔道とか習えないかな。
しかし、小学生の襲撃はそれだけで終わらなかった。
「おい、お前がうちの弟ぉぉぉ!」
「死に晒せぇ!」
「兄ちゃん!?お、覚えてろよ!」
兄貴を連れてきたので股間を蹴って撃退したら、その兄貴が友達を連れてきた。
「この間のぉぉぉ!」
「おい、やめろぉぉぉ!」
「やべぇって!股はやべえって!」
で、全員の股間蹴り飛ばしたら従兄弟だ何だと中学生がやって来た。
「ホントにガキじゃん、こんなんが!?」
「オラァ!」
「ちょ、顔、顔はズルじゃん!鼻血!これ鼻血!」
「一撃で沈まねぇとはやるじゃねぇか、死ね!」
なんか次から次へとお礼参りが連鎖してきた。
うわ、民度悪すぎ。
俺わかった、この世界ヤンキー漫画の世界だ。
じゃないと連日4歳児に絡みに来るやつが多すぎるだろ。
俺の日常に喧嘩の予定が加わった。