2回戦目、東堂が現れた。
何故と思ったが、普通に昼ロケが終わったらしい。
昼間からビール飲んでたらしい、仕上がってると感想を言ってたがアイドルとは一体……ということで東堂が戻ってきたのだ。
「東堂ォ!」
「震えているぞ、怖いのか?」
「待ちわびたぞォ!」
互いに自ずと駆け出す。
互いに呪力を纏って肉弾戦に移行する。
東堂が、眼の前から消えた。
「馬鹿な、拍手など!」
「ぬぅ……そうか、式神の意識による自動防御か!」
背後、東堂が拳を振るった姿から飛び退くのが見えた。
一瞬で背後に移動し、俺の影の鎧による神威の再現、そしてその制御を看破された。
「何故、拍手などしていなかったはず」
「本当にそうか?」
世界が真っ黒になっていく。
暗闇の世界、元々シロを鎧に纏っていたがこれは違う、これは俺の影ではない。
「こ、ここは……」
「本当にそう思うのか、呪術師」
ドンッ!と現れる石の扉……俺は、これを知っている。
「お前は……」
「俺はお前だよ、伏黒恵。あるいは よ」
その石の扉の前には真っ白な人型がいた。
そして、知るはずの無い俺しか知らない前世の名前を言っていた。
言っていた?本当にそうか?もう覚えてない名前だぞ。
「千と千尋のように、名前は通行料……ということか」
「いや、普通に忘れてるだけだが、そんなことを言いに来たのではない。これはお前の脳内が生み出している幻に過ぎない。タキサイキア現象に近いとも言えよう」
「なんてメタい事を言うんだ」
「そうあれかしとお前が望んだ、真理としての存在だからだ」
つまりあれか、なんか似たようなこと前にもあったと思ったけど一時的な血圧の上昇やアドレナリンの分泌による、なんかスローモーションに見えるアレか?コイツ、俺の知識を元に生み出されてるから、多分答え知らないな!俺が知らないから!確かにお前は俺だ!
「さて、拍手とは何か分かるか?」
「手を叩く事だろ?」
「拍手、それは神への祈りや賞賛などのボディランゲージなどもあるが、呪術としては人に呪いを掛ける、あるいは邪気を払う方法として考えられている。拍手は神事、これは古事記にも書いてある」
「マジかよ……だが、東堂はそういう術式なんじゃ」
「拡張術式、あるいは術式自体の仕様変更だろう。拍手とはつまりは肉体同士の衝突、手と手、手と足、チ◯コと足、そこに違いなんぞありゃせんだろうが」
「違うのだ!」
何急に銀魂みたいなこと言ってるの?なんで真顔で下ネタぶち込んだ?いや、真っ白だから分からないけど、バキューンって効果音入るやつだよ!
「つまり、チンポジによる高速移動も考えられるという事だ」
「おいィィィ!違うって言ってんだろうがァァァ!開けて!この扉開けて!要らないわ、そんな知識!」
「腕と足どっちがいい?」
「そこは要求してくんじゃねェェェ!」
石の扉が開いていく、そして中から影の手が俺の身体を掴んで引っ張って収納していった。
いや、早い!展開早い!唐突!
「気付いたようだな、直後に見破るとは流石だな」
「手と手ではなく、手と部位の衝突に術式の仕様を変更したのか」
この瞬間、0.01秒。
「拍手とは、魂の祈り、ならば心で拍手すれば自ずと拍手は答えてくれる。喰らえ!」
東堂お得意の投石が行われる。
この攻撃を、俺は受ける。
入れ替えがいつ行われるか分からないため、下手に殴ればその瞬間に影を経由した異空間が解除されるからだ。
それはそれとして、投石された石はそのまま反射するように数秒後に反転させることで慣性を保ったまま排出する。
石自体はまっすぐ飛んでいるのだが、俺の影が取り込みから排出に変わったのだ。
「速度に変化はなし、穿血との速度を考えると影に収納して排出しているのがカラクリか。最初から大質量の水や武器を排出しない所を考えるに、重量は加算されてしまうと見た。取り込み途中で解除し、切断する事も可能か」
「そんな、加茂先輩って結構危なかったんだ!?」
「切断しても、血液で腕を作ってくると思ったんでな。無駄だと思ったからやらなかったのによく気付けたな」
「いや、私の術式じゃそこまで出来ないが……いや、できるのか?」
互いの手札は割れた。
恐ろしい速さでの解析速度、やはり東堂は只者ではない。
戦闘が出来るバカだ。
「貴様のアイデンティティーとなっているジャンプは俺も見た。NARUTOを読んでいれば自ずと神威に行き着くというもの」
「ジャンプ、それが伏黒恵の強さの秘訣なのか……」
「高いのに、毎週買ってますもんね!弟にあげれるから助かりますよ!」
なんか外野の水色に髪を染めてるロックなバンギャと加茂ちゃんが煩い。
いや、まぁウチの方は後方腕組みパンダ以外、モンハンしてるけどさ。
「触れたら終わり、だが、果たしてそうかな?」
「何だそれは」
東堂が腰を沈め、何らかの構えをする。
そして、感じる呪力の波動。
円形に呪力が広がるそれは、円だ!居合の構えをしたノブナガの円だ、つーかこれが限界なやつ!
「簡易領域!?門下生じゃないのに」
「才能のある術師は見様見真似で技法を盗んでいく事もあると聞いたことがある。特級呪術師に見出されただけはある、東堂……やはり天才か」
「か、簡易領域だと!?」
俺が高い金を払って、冥冥さんとこの憂憂から見るだけしか許されなかった、あの簡易領域だと!
見ただけで習得したのか、俺だってまだなのに!
「死ねぇ!」
「ぬっ、銃か!」
東堂が動く、簡易領域は確かに脅威だが神威を解除されるだけで別に攻撃は通る。
術式の中和でも、シロという式神を解除するまでには至らないからな。
だが近接戦を強要するところになにかあると考えれば、遠距離からの攻撃に限る。
移動した東堂のいた場所に銃弾が到達したのか砂煙が発生する。
アイツ、銃口から先読みして動いてやがる、人間業じゃない!
「ならば」
東堂の手が、東堂の腰に触れると同時に姿が消える。
やはり、拍手以外に自分の身体を触ることで移動出来る。
だが、条件が容易になるということは恐らく距離や質量に制限が発生する。
「そこだ!柳葉揺らし、貴様読んでいるな!」
「フッフッフ、違うな。トリヒエーシェット・イーヴァヴィ・リストーク」
「多分、闇の九拳だな!やはり読んでいたか、サンデー!」
柳葉揺らし、常に相手の背後や死角を取ることで姿を消す技。
特殊な歩法や重心移動によって背後に回り込むのだが、短くなった術式の射程をそれでカバーしている。
俺がたまたま読んで居なかったら気付けなかった。
サンデーは単行本派なんだ、毎週買ってない。
「サンデーは、グラビアがあるからか!」
「高田ちゃんが繋いだ縁、それが勝利への方程式……コォォォォ!」
東堂の威圧感が増す。
両手を広げ、呪力を纏う、その姿は達人のそれだ。
やはり肉弾戦で決着をつけるしかないのか。
これは術式勝負ではない、心を摘む闘い。
そこからはシンプルな殴り合いだ。
互いに有効打は、殴打しかないからだ。
いかに呪力を温存し、相手の隙を突き、時には出力を跳ね上げ攻撃力を上げ、呪力による威圧などのフェイント。
高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に、つまり行き当たりばったりな戦いだ。
「残念だったな、伏黒」
「消え、がッ!?」
東堂の攻撃を防いだ瞬間、姿が消えたと思ったら背後から衝撃。
そこからマウントを取られての殴打戦、こいつ人を殴った衝突で入れ替えやがった。
「クソが……」
「呪力切れか、敗因は長期戦でのデメリットを知らなかったことだな」
「次は負けねぇ」
東堂の拳が顔面に叩き込まれて、頭が真っ白になった。
反転術式があるとはいえ、容赦ねぇなぁ……