呪術じゃねぇって!念能力だろ!   作:nyasu

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イベント見逃したかもしれない

ビルとビルの間、人通りのない裏路地を一人の男が必死な形相で逃げ回る。

男は、昔から不思議な力を使える人間だった。

人に見えない物が見えて、それが人に言ってはいけない物だったのは、人から避けられて人の道から外れるまで知らなかった。

唯一の救いは自分に恩義を感じる人間に対して恩義の深さによって命令出来る、そんな能力があったこと。

若い頃は女をゲームのように操って、いつしかそんな女達で金を稼ぎ、目を付けてきた不良達は束ねて統率し、名が知れてからは暴力団に所属する事になった。

 

危険な仕事は目障りな先輩や他の組の人間を使い、自分は忠実な部下を揃えてそれなりに組にも顔が効くようにもなった。

いつしか裏社会には自分のような力を持った人間がいて、自分の力を今更ながら名前を付けるならば、貸借術式とでも言える物だと知った。

馬鹿な奴に恩を売って、借りを返して、呪いと呪術と呪詛師と言うのを知る。

呪詛師と呼ばれる奴等を配下にして、少しデカい山を狙って政治家に手を出したのが運の尽きだった。

 

1人、また1人と呪詛師が殺される。

答えは簡単だ、政府と関わりのある呪術師の仕業だ。

 

「畜生!俺とお前に何の違いがあるってんだ!金を貰って人を殺す、人を殺して金を貰う、そこに違いなんざありゃしねぇだろうが!」

「まぁ、俺から言えることは弱い奴は死に方を選べねぇし、正義は勝つだ。だって勝った奴が正義だからな」

「頼むよ、なぁ、金か?女か?何でもお前が欲しいものをやるからさぁ」

 

ヌルリと男の影から出てくるのは、呪詛師狩りの依頼をやらされてる伏黒恵。

そう、俺である。

あれは今から36万……いや16万年前か、君にとっては明日の事かもしれない。

まぁいい、とにかく俺は手を変え品を変え、総監部の嫌がらせを受けていた。

強い呪霊なんざ当てても意味ない、せや善人だから人殺しの罪悪感で潰したろ。

そんな思惑があったからか、何でか徒党を組んだ呪詛師のヤクザと戦う事になったのだ。

 

何を勘違いしたのか、俺は別に人殺しは苦手でもないし、何なら呪霊より楽だから願ってもなかった。

はえー、腐っても禪院の血が流れてるって分かんだね。

その血の宿命、穢れた血なのでナチュラルにクズなんやろな、前に会った親戚もクズだったしな。

何ならヤクザはマフィアみたいなものだし、俺にはクズの血が流れてるから吸血鬼の血が流れるとも取れるし、俺はジョルノ・ジョバァーナかもしれないとテンション上がったまである。

埼玉の不良グループ締め上げて、半グレとして接触して、謎の呪詛師ヤクザの下っ端を一人ずつブッ殺すのは楽しくすらあった。

 

「まぁ、オッサンには感謝してるんだ。なかなか楽しかったからな」

「感謝か、本当に感謝してるのか?なら助けてくれるよな?」

「あぁ?助ける訳……な、い……」

 

身体が突如動かなくなる。

どういうことだ、意識はあるが身動きは取れない。

 

「クックック、感謝ってよォ……テメェは言ったんだよォ……借りたら返す、そういうもんだろォ!」

「俺に、何をした……」

「平等だ。人は互いに平等じゃなくちゃいけねぇ……恩には恩で返す、仇には仇で、貸し借りはなし、それがルールって奴だ。術式って奴さ、お前は俺に借りを返そうとしているんだ!」

 

再び身体が言うことを聞かなくなる。

術式の開示による強化。

報復か?いや何も攻撃は加えてない、貸し借りって言葉と感謝という言葉が重要になってくる……あぁ、このすばにいたな。

はいはい、レジーナ教だな。

 

「命は大事だよなぁ、俺は今からお前を殺すことが出来る訳だが、それをしないでやってやる。どう思う?結果を言えば、感謝して然るべきだよな」

「くっ、殺せ!」

「あぁ?」

「全然感謝出来ない。心の底からそう思ってるから効果が弱まってるぞ。俺はお前とのバトルを楽しみたいのに、お前は逃げるのか?それはつまらないな」

 

身体の自由が戻ってくる。

感謝をポイントとしたら、相手の願いを叶えることでポイントを減らし、そして隷属効果を弱めるって所かな。

 

「何、言ってんだよ……」

「理解出来ないだろう。世の中には手段の為に目的を選ばない奴らがいる。戦いのためなら何でもいい俺のような存在だ。漫画みたいな世界で平凡に生きたくない、そんなイカレ野郎が俺だよ」

 

身体の自由が完全に戻る。

何を基準にしてるのかね、心底感謝されてないと本人が思う事も条件なのかな。

 

「今度は感謝しないぜ、だってお前が俺に殺されるのは仕方ないことなんだ。うん、さっき感謝したからチャラで、何なら俺に感謝して欲しいくらいだ。来世はきっと楽しいぞ」

「テメェ……テメェなんか怖くねぇ!」

 

懐から男が銃を取り出した。

でもさ、その懐、服の下には影があるんだよな。

 

「あ?て、手がある!?」

「俺の影とアンタの影は繋がってる、そして俺の手はアンタの服の裏に繋がってる訳だ」

 

取り出した銃を服から伸びる俺の手がガッチリと押さえる。

呪力を使って強化すれば、飴細工のように銃をグチャグチャに出来る。

発砲したら暴発して手首吹っ飛びそう。

 

「やめ、やめろ!」

「食べていいぞ」

「あっ、あっ、服の裏に!犬が、犬がぁぁぁ!」

 

裏路地でボトリと倒れる死体が一つ出来上がる。

ヌチャヌチャ肉が咀嚼される音が聞こえるし、普通にグロ画像だが、それを見ても俺も肉食いたいから昼は焼肉にするかと思える自分がいる。

うーん、人を人として見てないのかもしれないな。

まぁ、所詮モブみてぇなもんだしな。

 

「マキマキ、棘パイセンときて、漫画ならパンダの周辺でなんか起きそうだけどな。あいつ、学校から出ないから何も起きないかな」

 

乙骨パイセンが夏油に狙われてるし、フラグの概念的にありそうだと思ったが、学校だからそんなことが起きる訳もなく、半年の遠征を終えて俺は学園に帰るのだった。

 

「えっ?」

「だから、お前が遠征して広島だかのヤクザ狩りしてる頃、こっちはテロリストが学校に乗り込んできて大変だったんだよぉ!」

「モチロン、憂太さんが解決したぜ。なぁ、乙骨。お前の武勇伝聞かせてやれよ」

「やめてよ真希さん、近っ……あた……うっ……」

『ラブコメの波動を感じる』

 

とか思ってたら俺の知らない間で、なんか面白そうなイベント発生してるんですけど!

フラグは夢だけど夢じゃなかった!

学校にテロリストが来るなんて乙骨パイセンを中心に世界は回ってるのでは?

やはり、主人公か……シンジ君みたいな声してるしな。

 

「で、目的は?」

「何か言う前に戦いが始まったから知らね」

「事前に顔とか分かってたからな、呪霊だらけでヤバかったぜ」

『最初からクライマックスだった。初手からリミッターを外したぜ』

 

えー、何かしにきたのに分からないってどういう事やねん。

夏油さんも可哀想にお労しや……まぁ今の時代、やりようはあるけどさ。

 

『宣戦布告だ!視聴者の皆々様。耳の穴かっぽじって、よ~く聞いていただこう!来たる12月24日、日没と同時に我々は”百鬼夜行”を行う場所は呪いの坩堝、東京・新宿!呪術の聖地・京都!各地に千の呪いを放つ。下す命令はもちろん”鏖殺(おうさつ)”だ!地獄絵図を描きたくなければ、死力を尽くして止めにこい思う存分、呪い合おうじゃないか!』

 

インターネットを使って各種SNSからの予告はマジで草。

こいつ、呪霊の正体とかバラしかねないスゴ味がある。

マジでやりたい放題のテロリストじゃん。

テレビなどでもテロ予告だと話題になったが、大人の力でなんやかんや有耶無耶になった。

まぁ、テレビは報道しなくてもネットじゃお祭りだけどね。

総監部にはテレビしか情報源がないって分かんだね。

 

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