夏油傑によるテロ発言はネットのおもちゃにされてMADが作られたり、何ならわざわざクリスマスに東京と京都に行こうとか言う話まで上がってる。
政府官庁の発表で全面封鎖などが宣言され、爆弾などが仕掛けられてる可能性があると世の中には伝わっている。
場合によってはテロ幇助で逮捕されるなどコメンテーターが言ってたり、陰謀論があったり、妖怪の仕業だなどオカルトめいた事を言う芸人がいたりする。
「信じるか信じないか以前に消されないか、コイツ?」
核心に迫りすぎた芸人の未来が心配だ。
さて、作戦の結果を聞いた俺の第一声は罵倒だった。
「ばぁ~かじゃねぇの?」
夏油が勝てない戦いを挑むはずはなく、故に戦力は過不足なく均等に割り振らないといけない。
京都には秤パイセンなどを派遣して、呪術連とか言うFATEでいうところのアトラス院みたいなとこにまで協力を要請してるくらいの総力戦。
ほな乙骨パイセン出そうかと思えば、いやぁ強すぎるので学校で待機でとなったらしい。
今まで、真希、棘、パンダと来たら、俺か乙骨パイセンのどちらかに会いに来るのは自明の理だろうに、俺が編集者ならそうする。
変に長い展開でグダらせるくらいなら、読者の予想も簡単に出来るくらい話を整えるまである。
「孤立させたら狙い撃ちされるだろ」
「それはない。例え乙骨が殺されたとしても、主従契約は変えられないんだ。だから一度契約として互いを呪っているリカを傑は奪えないんだ」
「破戒すべき全ての符と読んでルールブレイカーというのがあってだな、そういう道具を持ってないとは言えないやろ」
「何それ」
かぁー、勉強不足な男ばい!
召喚系ならFateとかFFは必修やろがい!
っていうか、俺を派遣しようとするとか何考えてんだよ。
学校には津美紀がいるんだし、俺なら呪霊を囮にして忌庫を襲撃するね。
持ち出しちゃヤバいのがあるんだから、狙ってバラ撒いた方が手っ取り早く非術師を殺せる。
俺の勘とジャンプの叡智から学校に来ると見た。
「忌庫は天元の結界で入口が変わるし門番だっている。それに、それを言うなら京都の方に行く可能性だってあるさ」
「いや、フラグ的にこっちだね」
「まぁいいさ。どのみち僕は反対だったからね。万が一恵が死んだら、シロとクロが呪霊として解き放たれるし」
下手したら特級足りうるポテンシャルを秘めてるらしい。
まぁ、あらゆる物に適応って無敵ってことだもんね。
クリスマス当日、秤パイセンや綺羅羅とLINEで連絡を取っていたら通信が遮断される。
電波遮断、そして外は帳が落ちていた。
「帳!?一体誰が……」
「パイセン、そんなの夏油に決まってんじゃん」
教室の窓に身を乗り出すパイセン、外は夕闇を一段階暗くするような帳が落ちる。
窓の人達は避難勧告はされてたけど、仕事で校内にいるから最悪殺されたかもな。
「行くぞ、迎え撃つ」
「来い、リカ!」
窓から飛び出す真希と乙骨パイセンに続くように、俺も自分の影に沈んで後を追う。
「……いた」
「アイツか、嫌な匂いがするぜ」
「本当に人間か?」
影の世界ではシロとクロが召喚されている訳でないから同時に存在している。
夕方だからかどちらも外に出れるが、相当な悪臭がするらしい。
まぁ、影の世界に沈めれば一発で倒せるがどうだろう。
見えざる帝国のように、影から現れることがいつでも出来るように近づいて行くと先に接敵した真希が呪具を片手に戦いを挑む。
「君か、猿には用はない」
「生憎、猿扱いは昔から、なんで、ねっ!」
真希が悪くない動きで戦いを挑むが、難なく避けて体術だけで対応している。
格闘技の動きだ、コイツもゴリゴリフィジカルで攻めてくるタイプか。
意外と戦える相手だと分かる。
「来たか」
「お願い、リカ!」
空からパイセンも参戦、完全顕現してるけどテロが悪いな。
敵味方関係ねぇから使えませんとか言われてたけど、ほとんど味方いないから暴走しても最悪良いやって判断で使ったって事やろな。
高専壊れたら夏油のせいにすればいいしな。
「出てきたまえよ、伏黒恵。残穢が隠しきれてないぞ」
「チッ……何時から気付いてたんだよ」
「君が子宮の中にいる時からだよ」
コイツ……BLEACHを知ってやがるだと!?
俺の中のダーテンを更新する!敵の脅威度が上がったな。
「舐められたものだ、待ち構えていたにしては少なすぎる」
「目的は結婚の約束をした乙骨パイセンの婚約者カッコ幼女を寝取りに来たのか」
「幼女、リカちゃんが幼女って恵くん……」
「恵、事実だけど言い方ってモンがあるだろ。つまり、ロリコンって事か?」
「その手には乗らないよ、自分達のペースに載せようという魂胆だろう」
いや、そんなつもりはなく字面で言ったらという話だ。
でも実際そうだろうが。
「まぁいいさ、さて呪い合おうじゃないか」
「真希さん!」
夏油の姿が消えるように動く。
最近、こういうクソ速いやつが多いな!
最初の標的は真希、攻撃を呪具で防ぐが呪具ごと殴られて吹っ飛ぶ。
「ぐっ、だ、大丈夫だ……」
「まずは1人、動くのもやっとじゃないか。寝てろ」
『憂太の敵ぃぃぃ!』
「単調だな、邪魔だよ」
リカちゃんが空中から両手を握ってハンマーのように振り落とす。
それを夏油は片手を上げて防ぎ、もう片方の手で殴って迎撃。
リカちゃんが泣きながら吹っ飛ばされる。
異常な膂力、なんだコイツ、人間か?
「君は来ないのか?変身はしているようだが」
「お前、呪霊はどうした」
「くっくっくっ、気づいたか」
今の今で戦闘で夏油は呪霊を使っていなかった。
違和感、それが俺を突っ込ませるのを躊躇させる。
「私の呪霊操術は私自身を箱とし、格納と隷属を強いる術式だ。呪霊は祓われたら消滅し、術式を持つものに至っては私と異なる呪力での運用が可能だ。自分より格下の呪霊なら無条件で玉のようにして取り込み、使役できる」
「術式の開示か!」
「君のお陰で私は解釈を広げたのさ。巫蠱の術、あるいは蠱毒、私はここ来る迄に手持ちの呪霊を全て、私の中で共食いさせ、1つの呪霊を作った」
コイツ、自分の体を虚圏にして破面作ろうとしたんか!
それも奈落がやった蠱毒方式で!いやどっちも似てるけどもな!
「本来なら取り込んだ呪霊は成長しないのだが、それは隷属を強いた結果のようでね。格納した私の中で自由にさせて互いに強くなろうと勝手に共食い始めたら、成長したよ。実際、呪霊が呪物などを取り込もうとする習性はあるからね」
呪霊の事に関してはそこまで考えてなかったが、夏油の考えだと呪霊は虚なのかもしれない。
破面なんか人型だしな、特級見たことないけど人っぽいのかもしれない。
「出来上がったのは、人型の呪霊だった。呪霊は強くなると負の感情由来だから人に近付いて行くんだ、面白いだろ?特級仮想怨霊とでも言うのかな」
「ネタバラシによる強化は済んだか?こっちはお陰で真希をパイセンが助けられたがな」
「見逃したんだ、弱いものイジメはダサいからね」
「オサレの世界に入門していたか!」
「おっと、私のターンはまだ終わりではない」
何、ターンエンドはターンの終了ではないのか!?
「ありがとう恵君!くたばれ、夏油!」
意気揚々と説明していた夏油の背後からリカちゃんと乙骨パイセンが現れて、そのリカちゃんの巨大な手で握りつぶす。
えっ、流れるような奇襲。俺でなきゃ見逃しちゃうね。
おいおい、死んだわアイツ。
「やったか!いやまだだ!」
「何やってんのマキマキ、今のマキマキのせいやろ」
「はぁ?なんでだよ!」
いやいや、お約束ですやん。
まぁ、こんなので死ぬとは思ってなかったけどさ。
「酷いじゃないかぁ、乙骨」
「なん……だと……」
夏油が、失った上半身を再生させながら現れる。
服はボロボロだが肉体は無傷、だが問題はそこじゃない。
夏油の身体、その中心には黒い穴が空いていたのだ。
そう、まるで虚のようにだ。
「これが私の新しい力、呪術師と呪霊の境界を壊し、生み出した特級仮想怨霊を受肉させるという形で私は、人間をやめて人間を超越した」
夏油がニヤリと笑う。
「さぁ、第2ラウンドだ」