呪術じゃねぇって!念能力だろ!   作:nyasu

3 / 76
スタンド能力なのかもしれない

この世界に能力者はいない、それが俺が1年で出した結論だ。

というか、気にしてたら徒党を組んできた奴らと戦えない。

シロとクロの攻撃(不可視の体当たり)がないと、中学生に5歳児が勝てるわけ無いだろ!馬鹿野郎、俺は勝つぞ、勝つぞ俺は!

 

「やはり格闘技術が俺には必要だ」

 

喧嘩ばかりしていた俺は今更ながら力技に限界を感じていた。

なので、ゲーセンで不良から奪った金を使って修行することにした。

 

「ハァ?クソですわ!即死コンボとか、無限ループナーフ不可避ですわ!」

 

そう、それは格ゲーである。

侮ることなかれ、影使いなどありふれているのである。

影から式神を作ってるって、俺も解釈的には影使いだからセーフ!

遊んでるわけじゃねぇから、画面端で永遠とアッパーで燃やされてるけど、ヴォルカニックばっか使うんじゃねぇ!

 

「ドラゴンインストールする前にぶっ殺してやらぁ!」

「フッ、まだまだだね」

「野郎ぶっころしゃぁぁぁ!」

 

このあと、めちゃくちゃボコボコにされた。

 

 

 

格ゲーから着想を得た俺は能力の分析に明け暮れた。

まず初めにやろうとしたのは、玉犬達の影化だ。

頭の中には実体化するプロセスがあるのだが、こう、誰かに決められたテンプレートみたいな感じが自由度を奪ってる。

1番おもしれぇ奴が強いってアニメで言ってた。

というか式神使いと言うには、影絵を媒体にしているからどっちかって言うと影使いだと思う。

じゃあ、影の形を式神という完成形に加工してると考えてるとして、決まった形にしか出来ないというのもおかしな話だ。

その形に加工してるのは俺自身のはずだからだ。

 

「イメージは出来てる、泥のように、半液状の形に、今はできなくても必ずできる。出来るというイメージだ、当たり前だと、コーラを飲んだらゲップが出るくらい当たり前だと思うんだ」

 

だって、ジャンプにそういうこと書いてあったもん。

時だって止められるはず。

 

「っていうか、本当に念能力者なんだろうか?コイツらスタンドだったりしないか?」

 

いや、波紋のエネルギーにしては俺は普通に呼吸してるし生まれながらの波紋使いにしては……なんか黒いし陰キャみたいなオーラだから違う気がする。

やはり俺は念能力者だな、俺は詳しいんだ。

 

まぁ、でもスタンドならスタンド能力があるはずなのに、コイツら犬だからな。

 

「アウン?」

「ハァハァ……」

 

たぶん、隠された力があるんだろう。

いや、俺が設定してないのかもしれない。

ホワイトドッグとブラックドッグとかどうだろ、俺と場所を入れ替えるみたいな。

ゴリラじゃないから無理だろうか。

 

「格ゲーじゃ影の上に乗って滑れるんだよなぁ」

 

つか、忍者だってホムンクルスだって影自体で戦ってるのに、式神にできるなら影のまま攻撃出来なきゃ可笑しいだろ。

なんで独立させたがるんだ、影のないとこでも使うためだろうか。

いや、勝手に決めるなよ。そういう設定で、能力を固定されても困るんだがな。

 

元々影ということなら、足の下だけ物質化して影自体を広げてそこに引っ張って貰えばスライド移動出来るな。

俺の影を伸ばす、足元を物質化してスケボーみたいにする、スケボーより下の部分の影が伸びてる方の影とくっついて犬の形になろうとする、俺自身が動くから影が前に伸びる、以下ループ。

 

「頭の前にある人参を追いかける馬みたいだな」

 

でも適当な理屈で出来るという確信がある。

確信があるということは出来る。

出来るだろ、ほら出来た!

 

「あっさり出来るな、もっと難航すると思ってたのに」

 

結構解釈次第で自由度高い能力なんだろうか。

まぁ、念って思い込み次第なとこあるしそういうもんだろ。

 

「あぁ、そそそぼぼ、ぽぽぽ」

「他にも牙とか爪とかに出来てるなら、影自体を棘とか刃に見立てて」

 

眼の前に滅茶苦茶長身の女がにじり寄って来る。

よくいる妖怪の類だ、たまにでかいのは人みたいな見た目してる。

あれ、八尺だろ、ぽぽぽって言ってるしな。

 

「あそ、ぎゃぁぁぁ!?」

「ほら出来た、顔だけの部分召喚も出来たな。食べていいぞ」

 

シロの頭部を模した影がうねうね動いて齧りつく。

うんうん、もののけ姫見てたから頭部だけで動く犬をイメージ出来たから簡単だったな。

 

「あっ、影真似の術とかやってなかった」

 

でも他人の影とか操れるんだろうか。

操ったところで形を変えれるだけで動きを止めたりとか出来なさそう。

足元だけ式神の一部として固定するとかどうだろう、物理的だけど影使いといえば動きを止めるのが前提だし……そのまま沈めたほうが早そうだな。

 

 

 

喧嘩しては、妖怪退治、そして家事をして日常を俺は過ごしていた。

どうにも犬の形をある程度崩すまでは出来るのだが、それ自体を別の形にすることは出来なかった。

ただ、その過程で影を俺として分身に出来る事が分かった。

なお、シロとクロと違って瓜二つなだけで物理干渉は出来ない。

一部を式神化することで物理干渉出来るようにしてるけど、決まった形か過程の状態じゃないと式神化して物理干渉出来ないのかもしれない。

制約と誓約だな、間違いない。

物質化出来る代わりに指定された形にしなくてはならないんだろ。

 

「まぁ、触手みたいに触れるとこだけ犬の腕とかにすればいいけどな」

 

フライパンとかは握れないが、布団を跳ね除けたり洗濯物を押さえたりは出来る。

常にグーの状態で物に触るみたいなもんだ、家事とか手数が物理的に増えてる。

 

具体的には6本だ、サンタテレサって言いながら妖怪に掴まれたら服の裾から攻撃するのってどうだろ。

前髪伸ばそうかな、エピタフの描写で前髪使ってたし、前髪の影から式神とか出せるかもだし、いや体内にも影があるから口とかケツとかから触手とか刃とかした影を出して、いやそもそも裾の広い服とか買ってそれで、いや待て金はどこから用意するんだ、そもそも――

 

「あぁ!恵、焦げてる!てか、料理だめだって!」

「やべ!俺のホットケーキが!」

「火はダメって言ったでしょ、窓!窓開けて!」

 

長々と思考してたせいでフライパンの中身は真っ黒焦げになっていた。

慌てて窓を開けて換気して、姉とわちゃわちゃしている。

何気ない日常だ、俺は異常だし、現実はクソだ。

不平等な現実だけが平等に与えられている。

でも、焦げた部分を削ってまだ食べられるよと笑う姉の顔を見てたら、まぁ悪くないと思えるから最悪ではない。

 

 

 

 

 

 

外から帰ってきたら、部屋の中がタバコ臭くなっていた。

脱ぎ捨てられた母親の下着に、イカ臭いコンドーム、煩いくらい頭に響く女児の鳴き声、中身をぶちまける赤いランドセル。

眼の前には俺を指さし何やら笑う全裸の女と、俺を見下ろしながら近付く全裸の男、蹲って腹を押さえながら鼻血を垂らしながら泣いてる姉。

男の手が俺に向かって近付いてくる。

 

「俺が何したってんだよ」

 

俺の影から式神が現れて男に向かって飛んでいく。

腹に体当りし、太腿や腕に噛みつく、喚く男を踏みつけたら、何やら女が泣き叫ぶ。

影を伸ばして女を掴む、式神の一体がドロリと影になって包んでた影の一部として物質化する。

女に触れてる部分が物理干渉出来るようになり、触手となって絡みついたまま持ち上げた。

首の周りを物理干渉出来るようになった影が掴み上げた形だ、息が苦しいのだろう、自分の首に巻き付いたそれを掻きむしってる。

このまま、コイツを殺して影に沈めて何処かに埋めれば完全犯罪だ。

 

「恵!」

 

姉が、いつの間にか俺を抱きしめて縋るように声を上げていた。

俺は女に向かって伸ばしていた手を降ろす。

連動するように影が消えて、ドサッと女は尻もちついた。

クソみたいな母親も、許せる姉も、みんな嫌いだ。

 

「もういい、もういいから、ね」

「……そうかよ」

 

悪人が嫌いだ。更地みてえな想像力と感受性。一丁前に息をしやがる。善人が苦手だ。そんな悪人を許してしまう。許すことを格調高く捉えてる。吐き気がする。

 

「ハァハァ……ゲホッゲホッ……アンタァ!」

「…………」

「ば、化物!私達に何した、何したんだよ!」

「消されたいのか?」

 

女は俺の言葉に黙った。

布団を手繰り寄せて、ただ怯えていた。

そんな女を一瞥し、姉の手を握って家を出た。

こんな場所に一秒もいたくなかったからだ。

 

 

 

その日を境に津美紀の母親は、知らない男と蒸発した。

俺が変な白髪頭と出会う2週間くらい前の出来事だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。