悲しいお知らせだった。
世界は何度俺を裏切るのか。
「くぅ……うぅ……」
「泣くんじゃねぇよ恵、せっかくの入学式じゃねぇか」
「俺、許せないッス……なんで、秤パイセンが停学なんすか!」
「あぁ、うん、偉い人殴ったからだね」
横で綺羅羅が何か言ってるが、そんなことはどうでもいい。
俺は約束してた、蒼の鋼のアルペジオもまどマギも秤パイセンがいなかったら立体映像の迫力空間で楽しめないじゃないか!領域展開ってそう簡単に出来るもんじゃねぇんだぞ!
「まぁ、死ぬわけじゃねぇさ」
「先輩ッ!」
「あばよ……」
そう言って、秤パイセンは綺羅羅とバイクに乗って学校を出ていった。
待って、あれ、免許は?大型って乗っていいのか?
「何してんだ恵、入学祝いに焼肉行くぞ」
「そうだぞ、憂太の奢りな。一番金持ってるし」
「えぇ……まぁ良いけど、痛っ!なんで、どうしたのリカちゃん!」
「デレデレした!許せない!」
パンダに呼ばれて振り向けば、なんか幼女と真希が乙骨パイセン挟んで口論になっていた。
あっ、眼鏡取られて見えなくなった隙に脛蹴られてる。
痛そう、あとやり方が狡いな里香ちゃん。
「だ、大丈夫?」
「ッ……寄るな、里香に何されるか分かんねぇだろ、ロリコンめ」
「ご、誤解だよ」
『具現化系の修行?まずは一日中弄っていた、噛んだり舐めたり匂いを嗅いだり』
「うわぁ……」
「棘くん!誤解を生むような事は、あぁ、真希さんも引かないで!してない!してないから!」
可哀想に、毎日が幼女と戯れる日常だったはず。
なんだ、ただのロリコンか。
そんなロリコンの奢りで叙々苑に来た。
すごいこれが高級焼肉、タレの味しかしねぇ……美味いけど、俺は塩とかでいいな。
任務で呪霊を倒しては玉犬達のレベル上げが出来ているのに、俺はマンネリ気味だった。
反転術式も領域展開も術式反転も出来ない。
黒閃も10年くらい色々やって一回きり、五条に美味しいところは持ってかれて夏油とは戦えず、命懸けの戦いは敵でないと皆はしてくれない。
死にたい訳じゃないが、強くなりたい。
痛いのや苦しいのは辛いが、それだけ色々な事ができる。
筋トレは続かないけど、呪力の修行は楽しいから続くし、あと普通に俺は才能ある方だし。
「次は仙台?」
「そっ、呪物の回収。昔からさ呪物を魔除けにってのはあったんだけど、どっかの馬鹿が特級呪物の両面宿儺の指を使ってるって分かってさ」
「おいおい、本当かよ。だってそんなのあったら呪霊が餌にするだろ。手っ取り早く強くなれんだぞ。賢者の石とか悪魔の実とか落ちてるレベルだぞ、夏油の仕業だろ」
「自分で使うだろアイツなら、まぁ封印されてるし食べたところで……術式も持たない呪霊……準1級以下だと言われてるし」
そんな呪物の回収らしい。
ほーん、まぁいいけどさ。
「喜久水庵!あそこのずんだ餅な!」
「チッ、押し付けて買いに行くこと分かってたか」
「そんな簡単そうな任務サクッとやって新しい仕事するほど真面目じゃないだろ。何年の付き合いだと思ってんだよ、やり口分かってんだよ」
「仕方ないなぁ。恵の分も買ってくるよ、まったく」
やったぜ!窓の人に手配して、わざわざ買いに行ってもらうの気が引けてたんだよね。
学校の百葉箱に入ってるって誰でも持ち出せそうなとこに置いときやがって、祠とかだろ普通。
そんで、祠を壊したんか?って……いやまだ流行る前か。
とはいえ、任務で仙台に向かう。
行きがてら駅弁とジャンプを購入して、新幹線とかの公共機関でサクッとだ。
おっ、懐かしいな。ハンターハンターも遂にカーミラ出たか、死んで生き返るのは衝撃だったもんな。
仙台。
ずんだ餅のイメージしかないが、都会だ。
埼玉も駅前は盛り上がってるけど、東京ほどじゃないしな。
なんか似てるな仙台、親近感湧く程度に都会。
そこそこ呪霊が強そう、田舎は雑魚ばかりにたまに土地神混じるから、地方競馬みたいに前評判予想が荒れるけど、都会は評判通りの固い予想がしやすい。
「匂うわ、こっちね」
「はいはい」
クロに先導され、スマホのマップ機能で学校を目指す。
着いたのは夜、人がいなくてやりやすい。
クロの先導の元進んでいると、ピタリと足を止める。
「どうした?」
「匂いがそこかしこにある……多分、持ち出された」
「はぁ?」
いやいや、まだ目的地着いてないんですけど!
いや、クロの鼻を疑う訳じゃないけど急いで問題の高校にたどり着く。
あった、百葉箱!んでもって、空いてる!はい、ない!
スマホで真っ先に五条に連絡する。出ろ、出ろ、出た!
「もしも――」
「おい!指なくなってんだけど!」
「えぇ、マジ?夜のお散歩じゃん、ウケる」
「お前……おま、マジで……」
「それ見つけるまで任務続行で、じゃ僕寝るからまた明日」
「はぁ?ちょ……切りやがった」
殴りてぇ……アイツ寝てる時も無下限切らねぇから出来ねぇけど、最近対策されたからゼロ距離から殴るって出来ないけど。
僅かでも影から離れてから殴るプロセスからして空間があるから無限を配置したとか、言う意味不明理論で対策されたしよ。
「クソがよぉ!」
「荒れてるねぇ、呪霊食べていい?」
「あぁ?あぁ……2級呪霊か、寄ってきてんなぁ」
狼のマーキングみたいなもので、やべー呪力から避けるようになるのは分かるが寄ってきてる時点でだいぶ封印とやらも緩んでるし、呪霊も別に外敵じゃねぇって慣れて来てやがる。
ヤバい呪術師の呪力にはビビるのに、弱い奴やら寄ってくるのに近い。
クロが呪霊と戦っている間、百葉箱を壊して校庭の設備もぶっ壊す。
学生の悪戯なら、何かしらこれで反応する奴らが出てくるはずだ。
最悪人が死ぬようなレベルだが知ったことはないので一泊してから学校に再び来た。
呪術関係者なら分かるように、シロを引き連れて普通に登校。
ビビったりすると怪しまれるが、堂々としてたら問題ない。
「おい、ポスト壊れてるぞ。手の形してるってよ」
「警察が来るらしいぜ、やべぇよ」
「百葉箱ってさ、なんか入ってる噂のやつだよね」
ざわざわと騒いでる生徒達、シロを見れば首を左右に振ってる。
相変わらず広範囲に残穢があるようで、どんだけやべぇんだよ。
漏れてるだけで広範囲に匂いがするなんて。
まぁ、平安時代での五条みたいなやべー奴らしいからな。
文献が残ってないくらい大敗してたらしい、勝手に消えたとかなんとか。
平安時代って天元の話だとレベルが今より高くて、呪霊も呪術師も呪詛師もたくさんいた修羅の国なのに、どっちが強いやら。
「祟りだわ!これは祟りに違いないわ」
「やっぱり、なんかやべぇのだったのかな。あの指」
「……見つけた」
生徒の中に挙動不審な女がいて、そんな女と話してるツーブロックの男。
どうして中身が指だって知ってんだろうな。
俺はソイツに近づいて、腕を掴んだ。
「ッ!?誰だお前!」
「おい、指って言ったか?」
学生にしては、その反射速度や力強さが半端じゃなかった。
呪力強化混じりの俺の握力を軽く振りほどく程にパワーがある。
軽くではあるが、そう簡単に外せるほど弱くはないぞ。
「お前、ウチの生徒か?」
「それより指だよ、指。呪われてる指のこと知ってんのか?」
「匂うよ、コイツとこの女からプンプンする」
ビンゴ!コイツらが持ち出した馬鹿だ。
問題は残穢が強すぎて、どっちが持ってるか分かんねぇって事だ。
「お前ら、コイツが見えるか?」
「なんの事だよ」
「ねぇアナタ!指のこと知ってるの!」
反応からして、シロは見えてない。
なら、野良の呪術師でもないな。
「見えるようになってから、もっぺん聞きな」
「どういうこと!やっぱり、オカルトは実在するのね!」
「いや、それより先輩。コイツ、制服違うしソッチのほうが」
ほぉ、そこに気付くとは天才か。
まぁいいや、案外簡単に終わりそうだな。
「俺の名前は伏黒恵、呪物ハンターだ」
「お前、何言ってんだ?厨二病ってやつか?」
「うわぁ……いや、顔はいいけど無理だ……」
おい、引くな。