呪霊退治は恙無く終わった。
虎杖は普通におかしいが鉄筋じゃないからと殴ってコンクリを壊し、釘崎は芻霊呪法とかいう由緒ある術式で倒した。
飛び出てきた呪霊をシロが食べようとして、口の中で爆発四散して可哀想な事になってたけど。
しかし、素晴らしいな。
釘崎の術式は照応の概念に干渉する術式だと思われる。
呪術的な意味で言えば、俺はロード・エルメロイを読んでるから知ってるが、類感呪術と感染呪術の複合型だ。
類感呪術は、同じ形の物は似たような形の物に影響を与えるという概念の考えだ。
ようは、藁人形への攻撃は同じ人型に対して同じように作用する。
感染呪術は、元々同じだった物に対する影響は伝播して影響する考えだ。
こっちは、髪の毛を通して持ち主に影響が与えられるような物だな。
「釘崎、頼みがある」
「嫌だけど」
「お前を騙した五条に一矢報いたいと思わないか?」
「よし乗った」
そう、それは五条に対して一撃を加えられる術式ということだ。
五条の髪の毛をセットした藁人形に……五寸釘は痛そうだから呪力を込めたパンチをしてもらう。
何、上手くいくか分からない?原理は一緒やし行けるやろ。
「せーの、芻霊呪法!共鳴り!」
「うっ……ちょっとトイレ行ってくる」
「おかしいな、効いてそうだけど弱いぞ。パンチだからか?」
「私の術式は希少性とか距離とか呪力とかの実力差で効果とかも変わるのよ」
しかし実験は成功だった。
離れたところで悠仁と話してた五条が腹を抱えてトイレに行ったからな!
やったぜ、無下限を攻略出来たぞ。
反転術式が使えるようになれば、致命傷とかを藁人形に移せるんだろうな。
ワラワラの実みたいなことが出来るんだ。
「おーい、五条先生が寿司連れてってくれるってよ!回んねぇの」
「ええい、人が戦ってるのに寿司だと!小僧、貴様は殺す!」
「仲直りしてやめりゃ良いじゃん。そしたら食わせてやるよ」
「……無理だ、奴ら諦めんからな。着いたら寄越せ!」
俺と釘崎と離れたところで、なんか悠仁の額に人面瘡が出来て会話していた。
釘崎はドン引きだが、俺はキング・クリムゾンみたいでテンション上がったぞ。
エピタフみたいでええやん。
「えっ、キモッ……宿儺ってあの宿儺?」
「女、貴様もいつか殺す」
「コイツは宿儺、殺すしか言わないんだ」
「いや、知ってるけど。気持ち悪い体質ね、拾い食いなんかするからよ」
拾い食いと言えばそうだが、普通に死ぬんだよな。
俺の持ってる指とか芻霊呪法使ったら悠仁にダメージが行くんだろうか。
いや、釘が刺さらないか……藁人形の中に入れればワンチャンあるか?
飲ませないで持ってよ、いつか使えるかもだし。
トイレから戻ってきた五条と寿司に行くのだった。
目隠ししたまま便座座ってる五条とか想像したらウケる。
6月の頭に編入して、座学で一通り勉強しながら任務を待つ。
梅雨時はジメジメしてるからか、呪霊も湧きやすく忙しい時期である。
俺はというと、てんでダメな悠仁の修行に付き合ってたりしていた。
「そうそう、呪力を肚から出してとか言うけどアレは嘘だ。呪力は念能力だから、全身の細胞から出すんだよ」
「念って呪力なの?」
「違うが」
「違うのかよ。でも呪力は念なんだろ」
「そうだよ」
「訳分かんねぇよ」
呪力を念扱いしてもいいけど、念は呪力扱いするなってんだよ。
俺は未だに呪術は念能力だと思ってるからな。
「あのさあのさ、かめはめ波撃てねぇかな。月牙天衝とかさ、螺旋丸でもいいけど」
「無理だな。放出系になるには呪力が少なすぎる。悠仁に出来るのは釘パンチくらいだろ」
「か、界王拳も出来るし!」
今の悠仁が出来るのは打撃の後に時間差で呪力の打撃が連続で打てるくらいだった。
まさに釘パンチ、感覚を短くできればいつか黒閃を撃てるかもしれない。
「どう考えてもお前は強化系じゃん、馬鹿だし」
「おま、言っちゃいけないこと言った!そういう性格だから伏黒は変化系なんだよ」
「はぁ?俺は特質系だが?個人主義だが?」
そう言えば、食事の邪魔をされるのが嫌で宿儺は九相図と冷戦状態になったらしい。
何となく、身体の中で呪胎九相図が死ぬと分かるらしい悠仁が言っていた。
その代わり、食事の度に餌付けする縛りとか結んだらしいけどな。
不用意に縛りを結ぶなとあれほど言ったのによ。
「いつかさ、宿儺も改心して仲間になると思うんだよな」
「馬鹿か貴様、殺すぞ」
「馬鹿か悠仁、死ぬぞ」
「二人してヒデェ」
お前のそれはハリーの中のヴォルデモートが仲間になるくらいあり得ないぞ。
儂らには救えぬ者じゃ。
「なぁ、術式宿ったらワン・フォー・オールみたいになるかな?」
「九相図が対話仕掛けてくるのか、リボーンみたいだな」
「超直感か、今も何か来るって呪力あると分かるもんな」
「えっ、分かんないけど。なにそれこわい」
なんか俺の知らん能力に目覚めてない?
なんなのお前、才能マンなの?主人公かなんかなの?
「男子二人、任務行くわよ!」
「おっ、釘崎じゃん!なーにー」
「にーんーむー!うわっ、こっち来た。汗臭いのよアンタ」
何だかんだ同級生に囲まれて楽しい学生生活だった。
まぁ、そう世の中甘くないと忘れていたんだけどな。
任務は、ある少年院で呪胎が確認されたというものだった。
で、問題なのは今は活動形態ではないが変態したら特級相当であること。
保守派の人間がいないこと、五条が出張中であること、本来放置してもいいのに救出してこいとか意味不明な任務なことだ。
どう考えても罠任務である、メガテンとかエヴァで学んできてないのか。
「俺さ俺さ、馬鹿だから分かんねぇけど、窓とか特級って何」
「窓は見える人、特級は火影とか十刃とか四皇みたいなもんだよ」
「マジでやべーじゃん、下っ端の俺等が行くやつなの!?」
行くレベルじゃねぇーよ、死ねって言ってるようなもんだわ。
しかし、緊急事態で異常事態故に行かなきゃダメ。
呪術規定違反になるし、活動形態でないから問題ないとのことだった。
捕獲しようとして動いた使徒だっているのに、何を学んだんだ。
「息子が!中に息子が!」
「離れて下さい!」
なんか外で女が騒いでるが少年院にいる子供の母親だろ。
残された受刑者とか見ると二回も無免許で人殺してるクソである。
うーん、生存してなさそうだし助ける必要ある?
「なぁ、助けよう伏黒」
「助ける気ないぞ」
「はぁ?なんでだよ」
「事前情報読んどけよ、どうしようもないクズだ」
胸倉を掴んでくる悠仁、馬鹿が……お前が俺に勝てる訳ねぇだろ。
俺はそのポケットに手を突っ込んだ状態から押し込むようにして、影を通して悠仁の服の襟からパンチする。
顎に重い一撃を食らって、握力が弱まる。
そのまま悠仁を影に沈めて、慣性を残したまま、落ちる先に影の出口を設定する。
地面の影から足を出すように逆さまの状態で飛び出した悠仁、全身が上に落ちて、空中から重力に引かれ頭から地面に落ちようとする、その無防備な腹に蹴りを叩き込んだ。
「カハッ、ゲホッ」
「ちょっと伏黒!」
「目を覚ませよ悠仁、死にたいのか」
「それでも……俺は助けるよ」
そう言って、立ち上がって構える悠仁……はぁ、分かったよ。
俺の影からシロが現れて、横に侍る。
さっさと回収して、帰るぞ。
どうせ生きてないから、影に収納することになるけどな。
「ハァ……さっさと行くぞ」
「伏黒ぉ〜!」
「引っ付くな、油断してんな。マジで死ぬからな」
「えっ、殴り合ってなんで仲良くなってんの、キモッ」
知らねーよ、あぁ嫌な予感しかしねぇ。
そして少年院に入った瞬間、世界が変わった。
「はい詰んだ、領域化してやがる」
「落ち着きなさい、メゾネットタイプよ!」
「んなわけねーだろ」
俺達の前には九龍城とでも言うような、違法建築だらけの迷宮みたいな建造物が広がっていた。