自販機で飲み物を買っていたら、東堂とマイマイがいた。
真依ちゃんすまない、術式とか呪力使えなくなってるのは俺のせいではない。
で、いきなり東堂が突っ込んできたので取り敢えず殴る。
「だろうな」
「キャウン!?」
東堂を殴った瞬間、東堂がグレイと入れ替わった。
テメェ……ざけんなよ。
「よくも俺にグレイを殴らせやがったな!」
「俺と接触して拍手したお前が悪い」
拍手じゃねぇだろ、どう考えても殴打だったろうが。
二度と入れ替えさせないために、グレイを纏う。
「どういうこと、なんでいきなり殴られてるの!てか、誰?」
「物を知らないのね、東堂は呪力のあるものを入れ替えられるのよ」
「術式効果なんか、聞いてねぇんだよ」
あっちはあっちでバチバチやってんな。
で、このゴリラなんでこっちにいんだよ。
「テメェ、なんでいんだよ」
「待ちきれなかったのさ、これからの戦いを」
「いいや、違うな。お前はついてこいと言われてくるようなやつではない、そうか分かったぞ」
コイツの言う戦い、それは高田ちゃん関連。
「関東で、イベントがあるんだな!ハハッ、ボコしてイベント行けなくしてやるぜ!」
「理解が早いな伏黒、だがお前は弱い!」
東堂の身体に拳を叩き込む、反撃はない。
追撃のために俺が一歩踏み出し、後ろに下がる。
「ッ!?」
「それだけで十分だと思っていた、だから停滞していた」
東堂の拳が入ってくる。
何だ、何が起きた?
前に進もうとすると足がまた後ろに下がる。
後ろに下げようと思ったら前に進む。
「そういうことか」
「見直したんだよ、術式を」
やろう、俺の感覚を入れ替えやがった。
いつだ、何がトリガーになった。
「コングラチュレーション、正解だよ」
「てめぇ!人が考えてるときに拍手すんじゃね」
煽りか!何回するねん!いつ入れ替わるか頭使うんだぞ!
畜生、殴っても身代わりに何かと入れ替わられる。
それに、感覚が可笑しい。
右腕を動かしてるのに左手が動きやがる。
殴るまでは平気だった。
殴ってから弄られたのか?
「面倒くせぇな!全部ぶっ壊してやる!」
「全体攻撃か!」
敢えて、グレイの実体化を弱めてドロドロの肉体を纏うようにする。
傍から見たら溶けているように見えることだろ、その状態で全身から触手のように影を伸びして周りを切り裂く。
動かなくても倒せれば問題ねぇ、手足の一本は覚悟しろよ。
「俺は殴った時と殴られた時、接触をトリガーに認識を入れ替えた。呪力のある人間だけに作用するそういう縛りだ。通常の拍手では出来ない」
「お得意のブラフか?」
「なら、先程の一回分は何を入れ替えた?」
一回分?そうか、さっき殴られたときにか!
「伏黒、お前の見ている俺は本当に俺か?お前が仲間だと思ってる奴は本当に仲間か?」
「な……」
「悩んだな、それがお前の敗因だ!」
一瞬の隙、可能性を考慮した瞬間、重い一撃が叩き込まれる。
よく考えたらこんな重いパンチ東堂以外出来るかよ。
畜生、反撃しなきゃ!
『恵!』
「あぁ?」
足が滑る、立とうとして立てない。
力の入り方が滅茶苦茶だ。
押すとしても現実は力を抜いて、右手は左手に、進めば後退する。
ヤバい、何もできない。考えろ!考える時間を作れ!
「グレイ!」
俺の意思を汲み取って、黒い球体と化すグレイ。
入れ替えをしたとして、一体化してるグレイは剥がせない。
そして此方からは攻撃出来ないが、時間は稼げる。
『どうする』
「効果が強すぎる。もっと縛りがあるはずだ」
クソ、影で飲み込んでしまえば接触という条件を喰らわずに済んだ。
いや、術式効果ならあの手があったか。
「円鹿だ、無効化できる」
俺の感覚が正常化するのが分かる。
ちゃんと視覚も動作も正常だ。
「ほぉ、何らかの方法で解決したか。絡繰は、その光か」
「反転呪力だ、自前じゃないがな」
「なかなかおもしろそうだが、時間切れだ」
東堂が空を見上げる。
その先には、巨大なリカちゃんが浮いており、その上に東京校のみんなが腕組んで立っていた。
リカちゃんの上で横並びに見下ろしている。
えぇ、観戦してたのかよ。
「勝負は預けよう」
「待て、どこに行く気だ」
「決まってんだろ!握手会だ、殺すぞ?」
「勝負は預けたんじゃなかったのかよ」
はぁ……クソ、でも引き分けだから今回は負けてねぇよな。
てか、釘崎は?
「テメェ、銃なんか捨てて掛かってこいや!」
「な、なんで撃たれて動けてんの!?」
「死ななきゃ安いんだよ!」
うわぁ……うわぁ……なんかお互いにボロボロなんですけど。
釘崎は血だらけだけど、真依先輩は服がボロボロだわ。
アイツ、アウトプット出来る奴が多いからって、怪我しても平気みたいな感性やめとけよ。
「何してる、行くぞ」
「がッ!?」
「大丈夫か?おーい?ダメだ、完全に飛んでる」
東堂が容赦なしに蹴り上げ、気絶させられる。
白目向いてらぁ、ほら治療するぞ。
「もう、お礼は言わないわよ」
「知るか、それより服を直せ。高田ちゃんに失礼だろ!」
「アンタね!誰がペンライト作ったと思ってんの」
お前、ペンライト作らせてんのかよ。
構築術式の無駄遣い過ぎるやろ。
「じゃあね伏黒くん、あとそこの女には覚えてろって言っといて」
「おい、私には挨拶なしかよ」
「あら、いたのね。気付かなかったわ」
俺も気付かなかったわ。
いつの間に来たんだよ、マキパイ。
「お前は変わらないな」
「あんたは変わったわね」
「何処がだよ」
「メガネ、やめたのね」
あっ、違うんです。
その人一時的に見えないものを見れるようになったから外してるだけなんです。
呪術関係以外が全部見えるなら、見えない奴も見えてると一緒やろとかいう謎理論展開してるんです。
「お前、呪術師辞める気ないか?」
「はぁ?何なの急に」
「いや、何でもない。忘れろ」
「そうやって……いつも勝手に……あっ、ちょっと!離して!」
東堂が真依を担ぎ上げていく。
おい、俵みたいに持ってやるな、黒のレースが丸見えだぞ。
「おい、何見てんだ。殺すぞ」
「こわ、別に見てねぇし」
「スパッツ見過ぎなんだよ、午後は私がしごいてやる。テメェ、東堂に負けてんじゃねーよ!」
「負けてねぇし、引き分けだし!次は勝つし!」
取り敢えず釘崎は保健室に運んで、午後はフィジカルギフテッドと戦うか。
そこは、血と骨とが散乱した場所だった。
周囲には監視の人間が降り、中心にいる男は全身を骨に拘束され血の鎖で動けなくされている。
「よぉ!」
「また来たのか、小僧。なんだ嬲り殺しにでも来たか」
「しねぇーよ。お互い攻撃しない、そういう縛りだろ」
拘束された自分に話し掛けるのは、死んだことになっている虎杖であった。
最近、領域展開を経験したり、サブスクで映画見たり、ゲームしたり、DVDしかないようなクソ映画をぬいぐるみを抱えながら見ていた虎杖だ。
「今日はさ、ハリー・ポッター見たのよ。ハリー・ポッター知ってるか?」
「黙れ、哀れな小僧なんぞ知るわけ無いだろ」
「嘘つけ、俺の中から見れんだろ」
「チッ……」
他愛も無い話だった。
周りの監視も聞き入って、たまに会話に入ってくる。
全く持って忌々しい、何がしたいのか分からない。
「おっと……じゃあな、そろそろ起きる時間だ」
「二度と来るな、鬱陶しい」
「そうだぞ!両面宿儺は危険なんだ!」
そんな呪胎九相図の言葉に鼻で笑って、言う。
「縛りのせいで弱ってるし、何も出来ねぇよな」
「小僧、お前はいつか殺す」
「なんで!?」
ここまで俺をコケにしたのはお前が初めてだ。
まるで、凡夫のように扱うなんてお前くらいである。
「そんな怒んなよ、そうだ今度はアニメ見るからさ!」
「失せろ、さっさと出ていけ」
あぁ、本当に忌々しい……