敵は知性ある呪霊、人型、強いモンスターは人になるっていう伏黒の理論が証明されちまった。
つまり、コイツは虚ではなく破面レベル、特級だ。
七海が交戦したツギハギ呪霊、術式は肉体の変化。
条件は触れることで化物を作れる。
魂に触れて、魂を変える、魂を操作する術式。
「つまり、アルティミットシイングカーズか」
「なんて?」
「究極生命体カーズ様か」
「なんて?」
何故か困惑する呪霊に向かって殴りつける。
拳が入る、奴の身体、腕から羽根が生える、それは俺の腕から出た鎌で切り落とす。
「クソ、飛べない!」
「腕の羽くらいで、飛ぶには重すぎんだよ!」
いつかのことだ、勉強になるからと伏黒がくれた空想読本ってのに書いてあった。
だから鳥はクソ垂れ流しながら軽くしてるし、人間は胸の筋肉が足りないらしい。
つまりできるのはホバーだけ、移動能力が上がるが、上る前に斬る。
「チッ、だったらぁ!」
「ッ!?」
眼の前に鎖と刃が10本出来る。
指だ、指を刀身の付いた鎖に変えてやがる。
腕を交差させて身を守る。
肉体を引き裂き続ける指から伸びた鎖付きの刃の嵐。
「だから、どうした!」
「来んのかよ!?」
肉体が裂ける、血が出る、でもすぐに塞がって、肉もくっつく。
痛くても、動ける。
ならば、前に進む、そのまま腕を交差させたまま突撃する。
「ガハッ!?はぁ?」
「うぉぉぉぉ!」
ふらつく呪霊、何やら口から吐血してる。
その隙、その身体に頭から突っ込む。
壁と俺に挟まれる呪霊、壁に亀裂が走りコンクリートが罅割れる。
そして、そのまま俺達は校庭に向かって落ちていく。
「毒かぁ!死ねぇ!」
「ダルシムかよ!?」
落ちながら、呪霊の腕が伸びて俺を殴ってくる。
真上から拳を叩き込もうとしたのに、ふっ飛ばされる。
「ゴム人間だ、すごいだろ」
「ヨガじゃねぇのか、そっちか」
なら、ギアセカンドとかサードとか使ってくるんだろうか。
何かよく分かんない、俺の腕から生えた鎌も血液となって垂れ流される形になった。
傷口もいつの間にか治っている。
で……出てこない!何だったんだ、アレ。
「さぁ、第二ラウンドだ!倍化の術!」
「おい、パクリだろ!」
呪霊の身体がどんどんでかくなり、校舎並みに巨大になる。
というかそれ、超倍化の術の間違いだろ。
コイツ、にわかだろ!
巨大な手がこっちに迫る、その手がこっちを掴もうとして握った瞬間に上に飛び乗る。
その時、俺の足が掴まれる。
「なっ!?」
コイツ、腕に腕が生えてやがる。
腕からたくさんの手が伸びてきて手足を掴んでくる。
そんなことも出来んのかよ!
どんどん身体が小さくなっていく。
その身体からはたくさんの手足が増えて此方を掴んでおり、千手観音みたいな見た目になってやがった。
「はい、おしまい。無為転変」
『俺の魂に触れるか、痴れ者が疾く失せよ』
『今だ、九相図ファイアー!』
「カハッ!?」
何か分からんけど吐血して拘束が緩んだ!
多分、中のみんなが何かしたんだ。
喰らえ!5連釘パンチ!
「がッ、ぐッ、ケヒヒ」
「えっ?」
いない、服、後ろ、声、やばい、死……まだだ!
衝撃が身体に走る、だがそれだけだ。
俺の頭部を覆うように血液が防護膜を形成する。
まるで兜のように、ヘルメットのように覆われている。
「何……ッ!?」
金属同士の衝突音、振り向けばそこには金髪の頭が見える。
「ナナミン!」
「七三術師、生きてたのかよ!ハグしてやろうか?」
「結構です。状況報告を」
「俺のダメージは通る。二人助けれなかった。俺は術式が効かない」
ダメージが与えられる。
だったら折れた片手剣でデーモンだって倒せる。
殴り続けたら倒せるはずだ。
「いいでしょう、虎杖くんは援護を!」
「押忍!」
駆ける。
敵は、真人と呼ばれた呪霊が跳ねる。
跳ねて、全身を棘にする。
俺の身体を貫こうとして、ガキンと弾かれる。
「術式!使えぬ筈じゃ!」
「説明は後!」
俺の意思に応えるように、血液が刃となる。
簡単に砕ける針のような奴の身体、落ちてきた奴は小さくなって走って逃げる。
「いいですか虎杖くん、奴が術式を使うときは」
「タメがある」
「上出来です」
いつの間にか元の大きさになった奴は口から何かを取り出す。
それは、小さくなった化物人間。
大きくなって、こっちに来る。
あぁ、なんて、救いようのない悪党なんだ。
もう、どうしょうもなくお前は呪いなんだな。
「あ……あそ……ぼう!」
「ごめんな」
生かしていても、きっと生きたまま実験材料になるだけだ。
また俺に人を殺させるのかよ。
「虎杖くん!チッ、そちらの3体は任せますよ」
「アイツに人は殺せないよ!」
1人、2人、3人、確実に息の根を止める。
首の骨を折って……遊ぼうって子供だったのかな。
のたうち回らないように処理して……今は余計なことを考えるな。
死体を投げ捨てて奴を見て……ちゃんと埋葬してやれなくてごめん。
「3匹殺してこっちに来たか!」
「うあぁぁぁ!」
殴る殴る殴る、七海も合わせるように攻撃を与える。
磨り潰すように、死ぬまで殴り続ける。
コイツは、生きてていい存在じゃない。
「領域展開」
「なッ!?」
身体が吹っ飛ぶ、印なんて結んでる暇なんてなかったのに、眼の前に黒い球体が膨れ上がるように出来上がる。
膨らむ球体に押し出されて、奴と七海が二人きりになる。
なんで俺だけ締め出して……クソ。
「考えろ考えろ考えろ」
どんな時も思考は回せ、領域は結界だ。
どういうルールを設定してるかは各人によって違う。
アイツはなんで締め出した、二手に分けたのは確実に仕留めるためか。
なら、逃さないようにするはず……内側の強度を上げてるはずだ。
呪術の差し引き、内側が強いなら外側の外殻は弱いはず。
走る、校舎の階段を上がっていく。
屋上まで登って領域の上に、向かって飛び降りる。
「あぁぁぁぁ!」
落ちる、落ちて、球体の上から殴り飛ばして、割った!
よし入った、ナナミンは……無事!
七海の姿を確認した虎杖が見たのは硬直する真人であった。
真人はその瞬間、血に塗れた屍の上に拘束される宿儺を見た。
「はぁ?」
「言ったはずだぞ、失せよと……去ね!」
縛りに抵触し弱体化したとはいえ、術式が剥奪された訳ではなかった。
その呪力量だけで拘束されてる両面宿儺を見ただけで、真人は動くことが出来なくなっていた。
そして対象外である事から躊躇なく術式は使用された。
それは中にいる九相図が動くよりも早く行われた行為だった。
「ナナミン!」
「ガハッ!?ぐぁぁぁ!」
「無事か!……無事だな」
俺の眼の前で何故か全身から出血する真人。
領域は崩壊して、何やら弱っている。
俺、馬鹿だからよく分かんねぇけどチャンスだな!
着地と同時に真人に向かっていく。
そして、呪力を一点に集中して殴る。
真人はその瞬間膨れ上がって爆発した。
「はぁ?」
「ははは」
「やるじゃん」
「じゃあな」
「ここは逃がしてもらうぜ」
無数の、複数の、多数の、小人となった羽の生えた真人が四方八方に逃げる。
七海も叩き潰すも数が多すぎる。
どれが本体なんだ、クソ!
「駄目です逃げられました。地下に潜ったか」
「七海……」
「ふぅ……正直助かりました」
崩れ落ちる七海に近寄る。
怪我はしてない……傷が開いたとかではないのか。
「正直、死を覚悟しました。ありがとう、虎杖くん」
「でも、アイツ……」
「知恵がなければ追跡できたかもしれませんが、奴は分裂してました。あの数を捕捉は至難の業でしょう。でも深手は与えられました」
そうだった。どうして急にダメージが入ったんだろ。
「恐らく、奴の術式は魂に触れて発動します。あの瞬間、宿儺や九相図の魂に触れて、結果として何かされたのでしょう」
「そっか……」
宿儺、お前が助けてくれたのか?
『気持ち悪い事を考えるな、小僧』
「ありがとな」
『……煩わしい、黙ってろ』