呪術じゃねぇって!念能力だろ!   作:nyasu

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可哀想かもしれない

京の禪院、江戸の五条と呪術界で言われてはいるが、意外と残る御三家である加茂家はどこの家かは知られていない。

突き抜けてゲスでも無ければ、突き抜けて傲慢でもない。

パッとしない加茂家は正直な話、目立たないのである。

一応、奈良時代の平城京の頃からあると言われているが些細な話である。

だって諸説ありだから。

その当時のパワーバランスと癒着してる国家権力によって繁栄した家というだけなのだ。

奈良時代は加茂家、平安時代は禪院家、江戸時代は五条家、大体そんな感じだ。

 

歴史だけは長いからパッとしない加茂家さんは沢山いるのだが、昔やらかして呪術的文化財(呪胎九相図)を作ったはいいけど没落、呪術全盛で戦闘民族が求められていた頃には殺伐とした家の禪院家が覇権を取り御前試合でやらかし、大名を徹底管理したせいで恨みを買い過ぎて護りならと抜擢された五条家が江戸時代は覇権を取り、なんだかんだ外交しなきゃ内輪で争ってる場合じゃねぇ!で落ち着いて、世界大戦じゃ呪術的な研究が進んで式神が進歩したりとか呪術的な裏側の歴史ではあった。

なので、加茂家は奈良時代から奈良に拠点を持ってるんですね。

 

「二十四層になる結界術、呪具による呪力供給施設三機、猟犬代わりの呪霊、式神数十体、無数のトラップ、本家は一部領域化……流石、御三家の加茂家だねぇ」

「何の用ですか、五条悟!何故、我が加茂家に襲撃を!同じ御三家に対しての狼藉、抗議させてもらいますよ!」

「まぁ、関係ないけど。あぁ、モブの皆さん退いてくれる?」

「何百年経とうと、加茂家が五条家の下につくことはない!白昼堂々の襲撃、呪術界で生きていけると思わないことです!」

 

家人総出で五条悟の前に加茂家の人間が出てくる。

既に攻撃しているものもいるが、全てが五条の前で停滞、否、停止している。

どんなに進もうが、到達することが出来ないからだ。

 

「僕はさ、同じ御三家だなんて加茂家の事も禪院家も思ったことないよ」

 

指を、人差し指と親指だけ伸びして銃の形を象る。

手首には添えるように左手が、右手は銃の形に、そして指先には赤と青の球体が螺旋を描きながら混ざっていく。

 

「特級が1人、五条悟。推して参る」

「逃げよ、アレは分からぬがまずい!逃げるのだ!」

「忠道忘れし臣下どもよ、見下げ果てた忠義と共に死ぬが良い……なんてね、バンッ!」

 

軽い言葉とは裏腹に、唸る呪力の塊は紫の色を死を連想する暴力の塊だった。

大慌てで逃げていく加茂家の家人の間を、その暴力は破壊をもたらしながら突き進む。

そして残るのは無惨に空いた、加茂家邸宅である。

 

「呪術的な防護も建物事壊したら意味ないよね」

 

加茂家の歴史とも呼べる、防衛設備の破壊に恐れ慄く家人達を横目に傍若無人の体現のような男が加茂家へと入っていく。

何も無い、何も無いはずだが、しかし違和感を抱く。

違和感、それは戦闘に際して経験から出される推測。

 

「よもや、ここが暴かれるなんぞ。思わなかったぞ」

「アンタ、羂索?」

「あれ?なんで知ってんだよ」

「縫い目あるし」

「だとしても、さてはカマかけかー」

 

五条も知る加茂家の重鎮、六眼もそうだよと訴える、だが圧倒的な胡散臭さが漂っている人物が現れた。

だからカマかけたのだがアッサリと白状された。

 

「加茂家で何やってるんだか、特級呪霊を使って世界征服か?」

「それも面白そうだね。なんだ、もう私の正体に辿り着いたのか」

「肉体を奪えるんだろ、まぁタネは分かったよ」

 

もし仮にだが、羂索とやらが本気で別人を演じていたならば六眼を欺くことは出来ただろう。

今のように額に縫い目があるくらいしか、識別は出来ない。

それが肉体という一種の領域の中にあるからか、それとも結界術の応用か、恐らくは後者だろう。

 

「話の続きは高専で聞くとするよ」

「それはごめん願うよ」

「ッ!?」

 

五条の背後から、小さい背丈の襲撃者が襲いかかる。

ズズズと無下限を削るように進んでくる。

 

「領域展延か!」

「Exactly!」

 

術式が中和しきる前に蹴りでその柔らかい腹部を蹴り飛ばす。

だが、今度は銃弾の嵐が五条を襲う。

五条の周りで停止し、落ちていく銃弾。

だが、銃撃は収まらない。

 

「自己補完でどこまで呪力を使い続けられるのか、興味深いね」

「現代兵器じゃ、僕は倒せないよ」

「へぇ、スタングレネードは?」

「無駄だよ」

 

銃撃がやんだと思った。

その一瞬、周囲が明るくなるが五条悟には無傷だった。

必要最低限の光以外無下限が到達させないからである。

要はサングラスような物で光の一部を遮断しているようなものだ。

 

「参ったな」

「これもダメか」

 

周囲から急に煙幕が溢れる。

黄色い色、明らかに有毒そうなガスだ。

そのガスの中、近づく人影。

今度は女の人影だ。

 

「今のは惜しいけどね」

 

恐らく領域展延による術式の中和と毒による殺害を試みたのだろう。

近付く前に術式反転で吹き飛ばす。

しかし、先程退避した奴らと違って命を捨てながら特攻してくる人間達。

忠義、それとも縛りか、毛色が違う手合いなのは確かだ。

 

「なら、領域展開ならどうだ?」

「させるわけないだろ」

 

足元に斥力を発生させての高速移動、術式を行使される前に首を術式でねじ切り、頭部だけにする。

これで身動きも取れない、脳で動く術師の捕獲が完了した。

 

「はぁ?」

「ざ……ねん……た……」

 

五条が引き千切った頭部を掴む瞬間、その頭部は銃弾に撃たれて反動で飛んでいく。

落ちた頭部は頭に穴が空いたまま事切れる。

その呆然とした瞬間、五条悟の視界の端で老婆が唱える。

数秒の硬直という隙を突かれたのだ。

 

「領域展開、胎蔵遍野!」

「必中……ではない!?」

 

それは木であった。

妊婦そのものが根となっており、絶望した顔が樹皮となった幹、吊るされた首無し死体の枝葉。

不気味で悍ましいオブジェだけが、空間というテクスチャを上書きするように存在する。

周囲の景色は変わらず、五条悟に新たなインスピレーションを与える。

閉じない領域、そういうのもあるのか。

 

「術式開示だ。私の術式・同物同治(どうぶつどうち)は他者の肉体を食べることで肉体を修復する術式だ。中国の思想なんだけどね」

「周囲が押し潰されてるな。重量の増加、いや重力か」

「冷静だな。まぁいい、そして拡張術式・脳吸により私は肉体を渡り歩いている。原理は簡単さ、脳を食べて脳を治せるなら同じ脳を作ることだって出来るはずだからね。こじつけでも術式効果が出るんだから、呪術は面白いよね」

「お喋りだな、だが無意味だ」

 

五条の周囲がメキメキと音を立てながら崩壊していく。

正確には地面に押しつぶされていると言った様子だ。

しかし、無下限の前では必要最低限の重力以外は到達しない。

五条悟の立っている場所、そして羂索の立っている場所以外が、亀裂の走っている場所であった。

 

「そりゃそうさ、面白いことは自慢したくなるだろ?私の術式の思わぬ副産物とかね。五条悟、六眼を持つ君は術式が何処にあるか見て分かるかい?」

「前頭前野の右あたりだろ」

「半分正解、正解は人によって違うだ」

 

不快感を示す五条と対象的に、老婆は笑う。

嘲笑うという方が相応しいような姿で回答する。

 

「術式は神経回路、つまりニューロンさ。そして、私はそれを取り込んでストック出来る……えっ?」

「だから、無意味だって言っただろ?」

 

老婆の胸に穴が開く。

それは座標指定した空間に突如発生する術式順転による蒼による物であった。

突如、心臓にブラックホールが発生するようなそれは中心に向かって引力を発生させる。

 

「僕の敵になるには力不足だね」

「あぁ、そうかい……ならば、再び会うとしよう。今度は準備を終えて……ゴフッ」

 

逆流した血液を口から溢して老婆が倒れる。

そして、五条悟は振り返りながら此方に襲い掛かろうとする奴等を見る。

 

「まだやるか?」

「いや、ここでの戦いはゲームオーバーだ」

 

それは男であった。

女も、子供も、老人も、複数いた。

全員がそれぞれ術式を持っている、こびり付いた呪力も異なる。

だが、何かが同一の存在であると、五条悟の勘が告げていた。

その全てが術式による重力で潰れて自害する。

終わりだ、終わりであると思わせてきた。

 

「二度目だ、僕の目を欺こうとするなんてな」

 

呪力的な痕跡、残穢は完全に消し去られている。

事前に見ていた物しか写ってはいない。

しかし、勘に従い地面を術式によって抉れば、そこには鋼鉄の防壁が見えてくる。

 

「あーあ、バレたか」

「下にも、いるよな」

 

まだ生きていた死にかけの羂索の一人がそう言って事切れた。

 

穴の空いた鋼鉄の防壁を、術式による引力で引き裂き剥がしていく。

そして、顕になった巨大な地下空間へと気負うことなく五条悟は飛び降りた。

先も見えない暗闇の中、五条悟は術式による斥力でゆっくりと降りていく。

全面が鋼鉄で出来た地下空間、明かりは五条悟の開けた穴、天井からの物しかない。

術式でその穴をどんどん広げていけば、その空間に光が差し、全てが露わになる。

 

「へぇ……」

 

それは見慣れた光景。

血と死体の溢れる場所だった。

積み上げられた臓物は人間の物だと見て分かる。

そして、地下空間の奥には水槽が並んでいた。

そこには、ピンク色の液体に浮かぶ脳があった。

口の付いた脳が入った水槽が、複数あった。

 

「生命維持装置の購入はこういうことか」

 

五条の言葉に、どこからか声が聞こえる。

 

「私のほぼ全てさ」

「脳の一部を切り裂いて」

「反転術式で複製した」

「血液は術師のクローンのためさ」

「100年バレないはずだったのに」

「面白い術式が手に入る予定が」

 

脳が、口のついた脳が、水槽に浮かぶ電極の繋がった脳が震える。

 

「化物め」

「いいや、私は人間だよ。例え水槽に浮かぶ脳だとしても化物染みた人間だ。現代の最強、両面宿儺の代わり、人間のフリをした化物め」

「化物ね。よく言われる……俺にとって両面宿儺じゃ役不足だよ」

 

水槽が、一気に割れる。

脳が潰れ、地上から鋼鉄の天井が落ちて地下空間が埋まっていく。

加茂家の邸宅全てが地下へと沈む。

可哀想な加茂家、知らん間に本家を乗っ取られて、知らん間にぶっ壊されたのである。

 

「恵達の方はどうなってるかな」

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