それは徳山にあるダムであった。
日本一でありながら、利用用途が微妙じゃねと言われているダムである。
俺には分からないがネットにはそう書いてあった。
まぁ、なんで建てたんだよっていう理由としては呪術界がなんかあった時の為に作らせたんだろ。
知らんけどね、そういう大人の事情。
「で、なんやこれ」
五条に言われて来てみれば帳が降ろされていた。
それも見たこともない規模の巨大な、少なくともダムの周りすべてを囲むような物だ。
そして、その帳に侵入してみれば巨大のロボがいた。
っていうか、エヴァであった。
「おいおいおい、バカが!」
「ヴォォォォ!」
お前ほんとにロボかよと思うような野太い雄叫びが響く。
やっぱエヴァじゃないか!
そんでもって働いてる人とかダムの近隣住民とか無視してダムを壊しやがった。
ダムというのは治水と利水の役割もあり、放流することで発電とかしてるのだが、そういうのは無闇に法流出来ない。
何t出すかは河川の氾濫を考えて徐々に増やすものだからだ。
で、それをしないでいきなり全開どころかぶっ壊して穴を開けるとどうなるか。
鉄砲水のような濁流が近隣住民を襲う、というかダムを見上げてた俺を襲うのである。
バカと言いたくなるやろがい!
「うおぉぉぉぉ!」
触れた側から影に入れて、背面から排出する。
入ってくる量と出ていく量は同じでも、出ていく場所を絞ることでジェット噴射のようになる。
善人なら全部受け止めたりなんやかんやするんやろうが、普通に自重で死ぬしダムの近くで生活していた奴らの面倒まで見きれない。
恐らく、数時間後に川が氾濫して被害が出るが、俺の命優先である。
そして、空中へと飛び出した俺は供給が絶たれた故に勢いを失い自然落下していく。
「くっ!蝦蟇!」
グレイの腕が、蝦蟇の能力を引き出し弾性のある身体として腕を伸ばす。
そして、ダムの縁を掴むと同時に俺の身体を引いた。
やってることはゴム人間である、ただし慣性の制御を俺は出来ない。
そんな生きるのに必死な俺とは別に巨大ロボは何やら人型の飛ぶ物体を追い掛けてダムの中で戦っている。
こっちに気付いてないんだが、気を使ってくれませんかね。
「あれはメカ丸か、悠仁達は空振りか」
まさか総監部が人類補完計画をやってるとは、アイツら四十六室じゃなくてゼーレだったのか。
メカ丸を使って呪霊を倒して、呪霊と人間でセカンドインパクトでも起こそうとしたのだろうか。
いや、細かいことは捕まえてから聞けばいいか。
「動くな」
「ッ!?」
身体が硬直する。
誰かの言葉を聞いた直後の事だった。
俺の身体はそのままダムに激突する。
衝撃、だがダメージは呪力による強化でほぼない。
拘束は一瞬、すぐさま態勢を立て直す。
「誰だ!」
「いや後から来られて、それは私のセリフなんだが」
そこにいたのは、僅か5歳ほどの子供だった。
子供なのに口調は大人のようで、気持ち悪い。
そして額の縫い目、一目で俺は奴が羂索だと気付いた。
「お前、羂索だな」
「五条悟といい、どうやって知ったんだ」
「みんなのアイドル天元ちゃんが教えてくれたぞ」
「……なんて?」
困惑する子供に俺は懇切丁寧に布教してやる。
「ご存知ないのですか!彼女こそ平安から生きる呪術師アイドルVTuber、天元ちゃんですぞ!」
「いや知らないが、クソ!私の知らない情報で、私を殴って来るな!あの引きこもりめ!」
「よく分かんねぇけど、お前は殺す!」
「私はね、サブカルの言葉を引用する奴には警戒するように学んだんだ!」
「パスカルの間違いだろ!」
ダムで戦ってる奴らを放っといて、ガキの方へと殴り掛かる。
どういう訳か棘先輩と同じ呪言を持ってる。
まぁ、NARUTOだって暗部に百眼とかいたし敵が味方の力を持ってることはあるあるだ。
「厄介な」
「こんなとこで」
「死ぬわけにはいかないんだよ」
子供が更に小さくなっていく。
更に年齢の小さい子供、分裂したのか?
「はぁ?戦え!逃げるな!」
「いいや逃げるね!私は煉獄じゃない!」
子供達の姿が透明になる。
たが、俺の鼻は呪力を匂いで捉える。
というか、今気付いたが術式を3つも持ってるのか?
乙骨先輩と同じってことか!
「喰らえ!」
『動くな、動くな、動くな』
突如、俺の足元にスマホが飛んでくる。
スマホからは奴の声が聞こえてきた。
そこから奴の命令が、呪言が聞こえる。
スマホに呪力が宿ってる。
呪言の拡張術式か、だが長くは保つまい。
『動く……ななななな』
「くっ!」
バン!っとスマホ自体が爆発する。
呪言は実力差があると喉に負担があると聞いたことがある。
恐らくキャパを超えると負担があるのだろう。
スマホに代わりをさせたとして、それ自体がスマホに負荷を与えたといったところか。
出会って数分のやり取りであったが、まんまと逃げられた。
「なら」
見上げる空にはレーザーと翼で空を飛ぶ人間の姿がある。
内通者はメカ丸で正解、問題は何故か争っていることだけだ。
あの飛んでるのは悠仁があった、魂を操る特級呪霊と言ったところか。
なんで逃げねぇ、勝てる見込みがあるのか?
「あ、あれは!?」
特級呪霊の肩が爆発する。
そのまま呪霊は山に落ちた。
悠仁の話では、七海の攻撃は効かないとのはず、だったのにだ。
メカ丸はダメージの与え方を知っているのか?
どうする、見捨てるか。
「ウオォォォォ!」
巨大なメカ丸がそのまま追撃すべく、落ちた特級呪霊に突撃した。
勝ったかと思われた瞬間、山の、森の一体が黒い球体に包まれた事により罠だと理解した。
「領域展開か」
触れる必要のある術式が、必中にて当たってしまう。
魂の形を変えられる。
流石にメカ丸、死んだか?
数分も経たないうちに領域が解かれ、メカ丸が死んだことを確信した俺は立ち去ろうとした。
「次はお前だ!狗巻!」
「コイツ、動くぞ!なぜ動かせる!」
突如、ジャンプしてきたメカ丸が、巨大ロボのメカ丸が俺の前に現れたのだ。
お互いに固まる。
どうしてここにと、お互いに思っていることだろう。
だが、その瞬間、俺は強烈な匂いを感じて前に飛んだ。
「お前は、伏黒……」
「逃げろメカ丸!」
メカ丸の背後から芋虫のような姿の特級呪霊が見えたからだ。
身体をドリルのようにして、今にもメカ丸に当たろうとしている。
ロボなんだ、緊急脱出とか出来るだろ。
「行くぞ!メカ丸ぅぅぅ!」
「チッ、バレたか!」
巨大メカ丸の中から、いつものメカ丸が飛び出し特級呪霊とぶつかっていく。
なんでさっきから、お前は戦おうとするんだよ。
「聞こえるか、伏黒!」
「聞こえてるよ!」
「説明は後だ、俺が奴を抑える。そしたらコイツを叩き込んでくれ!」
そう言った巨大なメカ丸から、杭のような装備がガシャンと排出された。
何だよこれ、説明は後じゃなくて今してくれ。
「アイツにはダメージが与えられないはずだが」
「それを刺せば簡易領域を展開することで術式の中和を行い奴の肉体にダメージを与えられる。お前のお陰でまだ呪力に余裕がある、援護は任せろ」
話は以上だと、俺を置いてけぼりに小さいメカ丸の後を追う巨大なメカ丸。
なんで複数操れるんだよ、どういうことだよ。
でもって手渡された杭を持ってる俺。
「あぁ、クソ!」
領域展開直後、確かに狙い目ではある。
小さいメカ丸に肉体を引きちぎられながら、小さいメカ丸を壊し、今は巨大ロボのメカ丸と戦っている。
特級呪霊は巨人のようになって、巨大ロボと取っ組み合いをしている。
やるしかないか。
影に潜って一気に奴に近付き、その背後から飛びかかった。
「ニヒィ」
「あっ……」
特級呪霊の背中、そこに巨大な眼球が発生していた。
目が、確かに俺とあった。
そうだった。
コイツは自分の魂を弄って、肉体を変えれるんだった。
「新手か、死ねよぉぉぉ!」
「しまった!」
空中で身動きの取れない俺に、背中から触手のように特級呪霊の腕が生えて此方に迫る。
「伏黒!クソぉぉぉ!」
「残念だったな、メカ野郎!ハハハ、そのまま仲間の死に様でも見てろよ!」
手が俺に触れて身体が膨れ上がる。
何かが、俺の何かがグチャグチャになって崩れていく。
死ぬのか?また俺は死んだりするのか?
「はぁ?なんで」
「まだだ!」
死ねるかよ、せっかく生まれ直したのに!
こんな簡単に死んでやるかよ!
「うぉぉお!」
前に、進む。
掴んできた腕を掴んで、引き裂いて、奴の背中に身体からぶつかる。
そして、手に持った杭を思い切り突き刺す。
「なんで魂が、戻って、ぐあぁぁぁ!?」
巨人となった特級呪霊が内側から爆発する。
刺した杭を中心に、破裂したのだ。
これが、メカ丸の奥の手か。
「伏黒!?何故、もとに戻って」
「知るか!」
俺は自分の身体を見る。
激痛と何かが変わる感覚、自分じゃなくなるそれは半身を膨れ上がらせていた。
なのに、確かに膨れ上がった筈の身体は、元に戻っていた。
奴の術式を食らったはずなのに、どうして無事なんだ。
「何だお前……なんでダメージを……魂を知覚してるのか!?アイツと同じ!」
「畜生、生きてやがる」
「何なんだ、魂が2つある?いや、混ざってる?」
グジュグジュの身体で、特級呪霊が俺を指差し震えている。
その身体は半身が骨と内臓を露わにして、ダメージを追っていた。
徐々に回復して再生されるが、追撃は掛けるには危険すぎた。
「気持ち悪い、肉体に合わせて魂を変えやがったな!」
「何言ってんだテメェ!」
「クソが!今はまずい!」
特級呪霊が、何を思ったのか踵を返して逃げていく。
その姿を見て、正直ホッとしている自分がいた。
死んだと、そう思ったからだ。
「伏黒!?」
身体から力が抜けていく。
瞼が重く、視界が暗闇に移ろうとする瞬間。
俺の名前を呼ぶ男の姿があった。
メカ丸なのか?怪我してないじゃん。
「伏黒!おい、伏黒!」
「……誰?」
混乱したまま、俺は意識を失った