2018年10月31日、渋谷全域に帳が降ろされる。
それは、内通者としてダブルスパイをしていたことになっているメカ丸からの情報と一致していた。
敵は羂索、特級呪霊が4体。
魂を操るマヒト、マグマの呪霊ジョウゴ、植物の呪霊ハナミ、海の呪霊ダゴン。
目的は五条悟の無効化であった。
『この動画が公開されている頃、渋谷は呪術により人々が出れなくなっていることだろう。私の名は羂索、呪術師だ。さて、見える者には我々の姿が見える事だろう。日本政府は秘匿すべく削除するだろうが、その前に保存して拡散する事を勧めるよ。我々の要求は1つ、五条悟との一騎打ちだ』
そんな動画が事件発生後に流され、ネット界隈では検証と称して渋谷に行く若者が増える。
そして、一度入ったら姿が消えて戻ってこない映像が出回り更に現場は混乱した。
マスコミ、警察関係者、呪術界と関わりはあっても謎の圧力でしか関わりのない彼等までも一部が暴走して渋谷へと入ってしまった。
非術師、一定以下の呪力量の人間が入ったら出られない帳の中に入っていったのだ。
「総監部で僕に何かしようとした奴は更迭したよ」
「こうてつって?」
「あれ、あれだよ、カチカチにすんだよ」
「バッカじゃーねぇーの……人を入れ替えんのよ、勉強しときなさい男子ぃ」
シリアスでなんか語る五条、難しい言葉を使うなよ馬鹿に見えるぞ。
俺達がな!
で、呪術規定とか無理だろと諦めて呪術に関しての隠蔽はしない事にルール改定したらしい。
そして、俺達の他にも呪術師を集めて渋谷を平定するんだと。
平定って何やねん。
「羂索達の相手は勿論、僕がする」
「相手は勝てる算段があるんだろ、危険じゃ」
「獄門彊さえ気を付ければ足手纏いは少ないほうがいい」
実際、その通りとしか言えない。
敵の目的は分かっているため送り込むのは良くないが、非術師を見殺しにするという選択肢はない。
俺は普通に馬鹿しかいないし、見捨てていいと思うけどな。
「俺が敵なら連絡を断つ、まずは窓の人を狩る。そもそも五条は囮かもしれない」
「両面宿儺の復活がメイン目標ってことか」
「えぇ、じゃあ俺が狙われるってこと!?」
まぁ、そうだろうなとしか言えない。
五条を誘き寄せたら拉致、そして指を飲ませて受肉が流れとしてはあり得るだろう。
「俺はお前一人で行かせるのは反対だ」
「足手纏いになっても?」
「いや、そもそもお前に戦力の逐次投入は考えられない。叩くなら同時に、なら戦場は限定される」
もし俺が敵なら地下鉄にでも呼び出して、別働隊で人質の虐殺を始める。
それか人間爆弾にして内側から呪霊にしたりとかな。
海の呪霊がいるって話だし、地下鉄を海の水で埋めてしまえば五条は術式を使いっぱなしで身動きを封じることができるだろ。
順転で脱出することは置いといてだ。
「敵はマグマグに柱間とゴブリンスレイヤーみたいな奴か」
ウォーターカッターをぶつけ続けて、マグマで一酸化炭素中毒、残りは領域展延とか正攻法ならこんなとこか。
「特級以外、いるであろう呪詛師を此方から狩る。五条が封印される前提で動いたほうがいい」
「大丈夫でしょ、僕最強だし」
「ヴァンピィちゃんは黙っててもろて、最悪を想定して動くんで」
多分、封印されてからじゃ後手後手、俺なら封印後に邪魔されたくないから呪詛師や過去の術師を使って防衛する。
「まぁ、露払いとして帳の外郭に術師を配置する話はあったけどさ」
「何だよ、不満かよ」
「別に、僕のこと舐めすぎじゃね?」
「お前だって人間じゃん。人間なら攻略しようがあんだろ、連続で領域展開ぶつけるとか」
特級呪霊全部が使えるなら、必中必殺を連続でとかね。
対抗するのに領域の展開をするとして、術式の焼き切れと行使が困難になったら五条も流石に抵抗出来ないだろ。
「フフフ、なるほどね」
「なにわろてんねん」
「いや、恵の案で行こう」
作戦は決まった。
俺達の渋谷平定が始まる。
当日、俺と七海とイノタク先輩というメンバーで呪詛師を狩る事になった。
窓という連絡手段を経つという予想から、機動性と攻撃力のバランスがある自分達が抜擢されたのだ。
他は悠仁と冥さん、禪院家当主のフレームレートおじさんと真希と棘と釘崎、パンダと日下部と乙骨チームだ。京都校も中にいる。
「グレイ、行け」
俺の言葉に傍らにいたグレイが脱兎の力で分身を作る。
本体は俺の横で、それ以外の狼軍団が一気に渋谷の周辺を駆ける。
街を埋め尽くす灰色の毛並みが、道路を埋め尽くして駆けていく。
「では、我々は中から探索を始めます。1時間後、一度落ち合いましょう」
「あと頼むな後輩」
さて、内通していたメカ丸のお陰でこちらは事前準備が出来ている。
メカ丸は、何故か直されていて呪力量も窓程度になってしまったが些細な問題だ。
今は少ない呪力と術式で術師の等級見直ししてるらしい。
三輪さんに告って一緒にシン・陰流門下生やってる。
「分身が消えた」
「見つけたか」
数分も経ってない内に、どうやら見つかったらしい。
やっぱり窓を狙うという読みは当たりのようだ。
グレイを纏って消えた分身のいたであろう場所へと向かう。
まさか敵も倒したら居場所がバレると思ってなかったんだろ。
しばらく街中を走っていると、狼軍団に襲われてる金髪ポニテの男がいた。
狼軍団が転んだり、仲間同士でぶつかったり普段しないようなミスをしている。
ミスを誘発する術式か?
「死ね」
「うわぁ!?な、何だ!」
空中から飛びかかり気味に拳を振るったのだが、空振って地面に亀裂が走る。
可笑しいな、目測を謝るなんてないんだけどな。
「何なんだよ!俺が何したってんだよ!」
「えい!」
今度こそと近付いて心臓を一突きしたらちゃんと胸に穴が開く。
あぁ、何とかなったな。
何だこの雑魚。
「使えないですね、禪院の子ですか」
「誰だよ」
金髪ポニテを処理したら、ビルの上から俺を見下ろすおかっぱの着物を着た男……いや女か?がいた。
和服、平安の呪詛師か?
「平安時代の呪詛師か」
「喋っていて良いんですか?そこは私の間合いですよ!」
立っているビルが白く色付き、窓ガラスが曇っていく。
そして、地面からこちらに向かって氷柱が発生する。
すごいな、人を殺せそうな氷柱を短期間で、凍結する術式だとしても強いな。
まぁ、物理は無効だけど。
俺を貫く氷柱、ただ影の中に入るだけで本体にはダメージを与えられてはいない。
「何……だと……」
「おい、驚くなよ。俺の間合いだぞ」
腕を引き、殴りかかる。
右腕の影がそのまま伸びて、まるでゴム人間のようにおかっぱに向かっていった。
おかっぱは驚くが、そのままビルから飛び降りる。
あっ、待て!逃がすか!
伸びた影が空中に溶けるようにして消えて、再び通常の長さで俺の腕に纏われた。
そして、逃げる呪詛師を追う。
「待て!」
「無理して戦っては実利は得られませんのでね」
おかっぱが振り向きざまに、指を向ける。
すると、指先から大量の炎が此方に向かってくる。
流石に足を止めざるを得ないが、その一瞬で帳の中へと逃げられた。
「チッ、よく分かってるな」
こっちが窓の安全対策としていることを見抜かれてる。
追い掛けると、手薄になるため中に入りたくない心理をよくわかってる。
平安からの呪詛師は随分と狡猾な考え方しやがる。
軽く当てて、倒せそうにないなら逃げて情報を持ち帰る、そんなところか。
「後で絶対ボコしてやる。恐らく火を吹く術式か氷を出す術式だな。反転を使えると思っていいだろ。穴で温度を操る術式で反転は使えないとか、いや平安出身なら使えるからやはり前者かな」