七海達と合流したが、中にも呪詛師がいたらしい。
七海が戦ったのは七海の拳を食らっても無傷の男。
どんなに殴っても倒れず苦戦したが、術式はあべこべ。
拡張術式に躓いた際にはダメージが入ったことから、強い攻撃が弱く弱い攻撃が強く効くとかいう敵だったらしい。
マウント取って殴って気絶させたらしい、やはり物理か。
「街中に呪詛師がいました。嘱託式の帳、わざと見つかりやすくする縛りでも結んでるんでしょう」
「こっちも窓を狙った呪詛師がいたよ」
「予想通りと言うことですか」
眉間の皺を深くして七海がため息を吐く。
残業確定したからね、辛いんだろうな。
ハゲるぞ、気にしないほうがいい。
「ナナミーン!」
「この声は……悠仁?」
アイツ、ビルの上で何叫んで……あっ、嫌な予感がしてきた。
「五条先生がー!封印されたー!」
「予想通りと言うことですか……ハァ、合流しますよ」
「ナ!ナ!ミ!ン!あっそーれ、ナ!ナ!ミ!ン!は!か!た!の!塩!」
「あのクソガキ、ブン殴るぞ」
七海が珍しくブチギレてた。
何やってんだアイツは緊張感ねぇなぁ。
「想定済みの事態です。特級がどのくらい削れているか分かりませんが、帳の解除を進めますよ。時間さえあれば九十九特級術師も合流します。今は乙骨君たちが頼りです」
「取り敢えず、あのバカは回収してきます」
「分かりました、猪野君は私と一緒に民間人を保護しますよ」
七海と別れたら影を伸ばして高所のビルまで掴んで移動する。
俺が後ろにいるのに気付いていないバカを後ろから叩いた。
「ナ!ナ!あべぇ!?」
「何やってんだよ」
「伏黒ォ!馬鹿になっちゃうよ!」
「もう馬鹿だろ」
ナナミン、ブチ切れてたぞ。
マジだよ、マジ、おおマジだよ。
で、何があったん?
『その話をするには、時間が足りない』
「その声は……メカ丸!?」
『伏黒恵、この状況になったということは俺は死んでいることだろう』
「えっ、三輪さんと付き合ってイチャコラしてるけど」
『はぁ?……えっ、付き合う……えぇ……』
なんか悠仁が取り出したベイブレードみたいなメカ丸から声が聞こえる。
でも、なんか混乱した声も聞こえるし、コイツAIか?
『じ、自分に……脳が焼かれる……』
「おい!煙!煙出てきてる!」
『あがががが!』
「メカ丸!メカ丸ぅぅぅ!」
眼の前でボンっと爆発したメカ丸。
どういうことだよ、何なんだ。
「で、五条が封印されたのはメカ丸から分かったってことだな」
「いや、いやいや!メカ丸の心配しようよ!ボンだよ!爆発したよ!」
「日本製なんか使ってるからだろ」
「逆だろ!バック・トゥ・ザ・フューチャーじゃないんだから!」
そうだった。
コイツ、映画見るから細かいネタとかツッコめるじゃん。
「まぁ、壊れたゴミは捨てといて」
「伏黒!お前人の心無いのかよ」
「ねーよ、話聞けって。今は嘱託式の帳が降ろされてる。他のもあるはずだ、探すぞ。多分一番高いとこだ」
そのほうが見つかるリスクが上がる。
リスクはバネ、制約と誓約みたいな縛りの特徴だ。
となると……渋谷の中で一番でかい場所だな。
「なぁなぁ、これ使えるかな!」
「ワイヤーって……真希パイセンか」
悠仁の身体能力があれば、パルクールとワイヤーでビルまで登れるか。
まぁ、落ちても呪力さえあれば……クソ、空とか飛べたらな。
今はもう合体したせいで鵺が使えないのは痛い。
「まぁ、あれだ、奇襲とかで使えるかも?」
「おぉー、じゃあ行くか。早く、みんな助けねぇとだもんな」
「あぁ、全部呪詛師のせいになるからガラス割って突入するぞ」
ということで施錠されてるビルのエントランスにタックルで突撃。
ガシャンとガラスの入口を壊して投入した。
エレベーターは使えそうなので、普通に二人で乗る。
電源落とされてもこじ開けられるしな。
そして、最上層フロアに来たら呪力の匂いを感じた。
なんかタンスみたいな匂いがする。
「いるな」
「よし……」
「行くぞ!」
二人して階段をダッシュ、ドアを蹴破れば呪詛師が二人いた。
此方に驚き固まるババアと構える男。
匂いが強いのはババア、よしそっちを狙う。
「むっ、来たか!孫よ」
「任せてよ婆ちゃん!」
孫、と呼ばれる男が此方に向かってくる。
背後、その後ろで詠唱を始めるババア。
呪術は引き算によって戦闘に特化しているが、それを抜きにすれば手間が掛かるが強力な物となる。
詠唱が必要なタイプは弱点を晒してる分、何が来るか分からない。
「行かせない!」
「いいや、行くね!」
俺を捕まえようとタックルする孫と呼ばれる男が俺を抱き、身体が重なる。
重なって、腕は影に飲み込まれてそのまま反対側から出てくる。
男自身も俺の影に正面から飲まれて、俺の背中から出た。
まぁ、つまりは、立体映像に抱き着いたようなもんだ。
やっぱり便利、俺の十種影法術。
「何!?行かせない!」
「お前の相手は俺だろ!」
後ろで悠仁が孫と戦う、さあ年貢の納め時だ。
「チッ、致し方ない!」
呪力を纏った拳で婆の顔面を殴りに行く。
当たれば弾けて首無し死体の出来上がりだが、呪詛師に慈悲はない。
俺の拳が、顔面に叩き込まれ……なかった。
「はい、お疲れ……」
「なっ、ぐわぁ!?」
俺の拳が掴まれた、と同時に身体が吹っ飛ぶ。
一瞬で、攻撃を叩き込まれた。
「伏黒!」
「婆ちゃん!」
俺の吹っ飛んだ身体を悠仁が抱えると同時に孫と呼ばれていた男が後退する。
一体、何が……はぁ?
「禪院甚爾、私が使うハメになるとはなぁ」
婆の右半分が、筋肉質で若々しい男の物になっていた。
しかし、俺はその顔に見覚えがある。
最も強く、最も恐れられ、最も凶悪で、最も狂っていた男。
力で捻じ伏せ、忌み嫌われ、傍若無人で、呪詛師も呪術師も狩ってた男。
最強にして最恐にして最凶にして最狂の呪詛師、禪院甚爾だ。
「降霊術、それも死者を呼ぶ、イタコか!」
「今更、気付いたところで遅いぜぇ……あぁ?」
警戒する俺を他所に、何やら様子が可笑しい婆が映る。
なんだ、なんか口調が変だが。
「何が、何故!術式が暴走、いかん!やべぇなぁ!」
「婆ちゃん!」
右半分だった親父の半身が、侵食するように左側にも変化をもたらす。
左半分は慌てふためいているが、どんどん肉体が男の姿へと、筋肉質な姿へと変形していく。
「呪いに耐性が、呪力が練れねぇ、どうなってやがる!あ、あぁ!」
「婆ちゃん!」
「魂は降ろしてないのに!あぁ、やめろ!嫌じゃ!死にたくない!」
姿が、婆から完全に変わる。
筋肉質で立っているだけで威圧感を感じる俺に似た男だ。
そんな男が俯いたまま立っている。
「婆ちゃん、大丈夫!」
「あぁ?誰だお前」
「ッ!うわぁぁぁ!」
孫と呼ばれる男が叫んだ瞬間、一瞬で血飛沫に変わった。
飛び散る肉片、爆発したように弾けたのだ。
「……俺は五条悟とやりあって」
「親父……なのか……」
「……親父?」
俺と禪院甚爾の目が合う。
目があって、瞬きした瞬間に顎を掴まれていた。
一瞬で、距離を詰められてる。
「似てるな……お前、恵か?」
「そうだよ、俺も写真でしか見たことねぇけど」
「そうか。気にすんな、俺も男の顔を覚えんのは苦手だ」
そう言って、俺の顔を離す筋肉ゴリラ。
ゴキゴキと首や身体を動かす禪院甚爾。
真希と同じ天与呪縛、完全な呪力のない身体能力の化物だ。
「俺は、死に際に未来に来たのか?何だこのビル街」
「アンタは降霊術で降ろされた死人だよ。なんで乗っ取れたか知らねぇけど」
「なるほどね、まぁ俺の肉体は特別だからな。大方、魂が肉体に形を合わせたんだろ」
まずいことになった。
少なくとも俺も悠仁も太刀打ちできない相手だ。
「どうしたもんかねぇ……今は何年だ、ディープのガキとかいんのかね」
「逃げるぞ、悠仁……悠仁?」
振り付けば、いるはずの悠仁がいなかった。
アイツ、一体どこに行った!
「今、2018年ッスね。なんかサトノダイヤモンドってのが子供みたいッスよ」
「なんだこれ、携帯か?」
「スマホ無かったんだ。あっ、俺、虎杖悠仁ッス!伏黒の友達」
「お、おう。そうか、禪院じゃねぇのか……」
「何やってんだ!馬鹿!」
「痛って!?なんで、なんで俺殴られてんの!」
こっちの気も考えろ、馬鹿!ほんと、馬鹿!