呪術じゃねぇって!念能力だろ!   作:nyasu

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封印されたかもしれない

恵達が禪院甚爾と合流し、冥冥達が蝗GUYや疱瘡神と戦う少し前。

五条悟は渋谷の地下鉄へと来ていた。

到着すると同時に植物が空間を隔離するように伸びてくる。

それは五条悟が副都心線の楕円形の吹き抜けを通過したと同時に起きた。

 

「そんな事しても逃げないよ」

 

まるで閉じ込めるかのように吹き抜けを覆う巨大な樹木の檻、それを一瞥して下を見る。

プラットフォームには人集りがあり、仕方ないとはいえ此方をスマホで撮影している始末。

危機感の欠如、明らかな異常に対して恐怖よりも好奇心が勝っている。

 

そして、線路には呪霊が2体。

何時ぞやの火山の呪霊と樹海の呪霊だ。

 

「また、会ったね」

「今度は子供か」

 

特級の呪霊達の間から、5歳程度の子供が現れる。

術式が発現したタイミングで脳を置換したか。

 

「五条悟……」

『逃がしませんよ』

 

脳内に直接響く、呪霊の声。

呪力に意思を乗せていると思われる。

周囲には樹木がどんどん成長して、非術師たちを線路の方へと密集させていた。

だが串刺されたりぶつかったりしているのに、事が起きるまで右往左往していた様子を見るに、呪力による生成物。

……非術師には見えてないか、見えすぎるのも考え物だな。

 

「うわぁ!?」

「逃げろ!みんなこっちだ!」

「もしかして、これが作戦か?」

 

無下限で一定範囲には近付けないが、それでも線路には犇めく程に人がいる。

呪霊の周りにも人が降りてきていて、なるほど巻き込ませないようにということか、と理解した。

 

「やれやれ、非術師を守る。呪霊を祓う、両方やらなきゃいけないとこが呪術師の辛いとこだね」

「邪魔だぁ!」

 

2体の呪霊が駆ける。

……さて、無策とは思えないし呪力を纏っていることから領域展延か。

 

「遅いよ」

「領域!」

『展延!』

 

無下限と接触した瞬間、呪霊達の呪力が迸る。

光を発しながら、火花のように、まるで削るように無下限を中和していく。

だが黙って見ている必要はないので、その攻撃を回避すべく五条は宙に飛ぶ。

 

「やはり!」

「だから、遅いって」

 

飛びながら指先を呪霊に向けた瞬間、火山の呪霊の身体目掛けて赤いレーザーのように通過した。

 

「ガハッ!?」

『漏瑚!』

 

極小サイズに設定した、術式反転・赫。

それを銃弾のように浴びせていく。

身体中に穴を開け、血反吐を吐く。

 

「舐めるなぁぁぁ!」

「へぇ……」

 

ダメージをくらいながら、それは叫んだ。

五条が狙っていた火山の呪霊から発生していた呪力が増し、全身から数倍の呪力が放たれる。

それは貫こうとする赫と接触すると、数秒だけ進行を留める。

……へぇ、領域展延、それも厚みを増して展開したのか。

その数秒、ガリガリと呪力を削る術式の塊を一瞥し、火山の呪霊が攻撃を避ける。

完全な中和は出来ずとも、遅延させることには成功したからだ。

 

「だから何って話だけど」

「ぬあっ!?」

 

五条悟が腕を振るう。

まるで、見えない人型の何かを投げ技で叩き落としたような動作だ。

にも関わらず、漏瑚の身体は掴まれて投げ飛ばされたように腕の動きと連動して独りでに地面へと落ちる。

 

「無下限か!だが!」

 

この程度でダメージが与えられていたと油断している五条悟へと殴り掛かる。

そして、その拳は五条悟の腕に防がれた。

……防がれた!?触れているのか、しまった!

僅かな間に気付くも、既に遅い。

五条悟に掴まれた腕が捩じ切られ切断され、そして身体を投げ飛ばされる。

 

『おのれ!』

「いかん!領域展延を解くな!」

 

咄嗟だったのだろう。

領域を展開する間もなく肉薄する花御、まるでそこらの呪霊のように、簡単にあしらわれて壁へと叩き付けられる。

まずい、何か手はないか、そして漏瑚は手を伸ばす。

標的は、非術師だ。

 

「五条悟!こっちだ!人間どもがどうなっても……いい……」

「フハハハ!まずは、一匹ッ!」

 

五条悟は見向きもしなかった。

ただ、戦いの愉悦に、呪霊を祓う事に歓喜していた。

そこに、同族への意識を感じること等出来なかった。

……何故だ、仲間は大事にする物ではないのか。

手に灯した火炎球は勢いを失っていた。

何故なら、眼の前で同胞が無下限と壁に押し潰されたからだ。

それを成した怪物にとって、非術師など眼中にないと分かったからだ。

 

「あぁ……あぁ……貴様ァァァ!」

「呪霊如きが人間みたいに喚くなよ」

 

漏瑚の周囲が燃える。

それは、今しがた死んだ仲間が生み出した樹木へと燃え移る。

作戦は破綻している。

奴は、領域展開を、非術師を守る為に使わないという前提が違っているのだ。

 

「来たか!」

「電車?」

 

五条悟へと電車が迫る。

線路には非術師達がおり、止めないという選択肢を与えない。

 

「チッ」

 

電車に向かって手を伸ばし、無下限を展開する。

徐々に速度を落とす車両、それに掛かりきりになったところを漏瑚が襲う。

 

「あ?」

「今だ!」

 

五条が捩じ切ろうとした腕が、既に切断されていた。

見れば、手刀で自らの腕を切り落としていた。

……何を考えているんだ?

 

「ハハ!死ねよ!」

「喋ったら奇襲の意味ないでしょ」

 

それは、車両から現れた。

車両の窓を割って改造人間と共に真人が飛び出したのだ。

それは腕を刃物に変形させ、空中で静止する。

 

「本当に効かねぇ!」

 

落ちてくる。

頭上からたくさんの人間が落ちてくる。

改造人間が人々を襲い、呪霊が絶えず狙ってくる。

領域外の人間の救出を強いて、そして仕留める為に襲い掛かってくる。

 

「領域展開・無量空処」

 

それは0.2秒の領域展開、後遺症の発生しないと勘で設定した一瞬の展開。

対象を選択、領域による影響で身動きの取れない棒立ちとなった対象から非術師と特級呪霊を除外。

限定的な縛りを設定、対象のみ術式順転・蒼を適用。

射出、出力最大

 

「術式順転・蒼」

 

五条悟の頭上に蒼い極小の球体が発生する。

直後、プラットフォームにいたすべての改造人間が吸い込まれ、折り畳まれ、圧縮されていく。

血飛沫すら零さず、ただ青い光に飲み込まれていく。

蒼いブラックホールとでも言えば良いのか、それは僅か1秒の事であった。

 

「ハァハァ……」

「獄門彊」

 

声がした。

子供の声だ。

思い出される封印する方法についての話。

故に足が後退る。

 

「開門」

 

眼の前に、箱が落ちてくる。

それは内側から広がり広げた肉片の中心に巨大な眼球を付けたような見た目をしている。

捕縛される前に逃げる、ただそれだけだった。

 

「やぁ、悟」

「ハァ?」

 

眼の前に、かつての親友が現れる。

呪霊となる前の、夏油傑だ。

 

「なんで……」

「妾のことを忘れたのか?」

 

そして、その傍らには救えなかった少女、天内理子がいる。

 

「お前は……」

「久しぶりです、五条さん!」

 

死んだはずの後輩が立っている。

あり得ない、ならばこれは幻覚。

 

「先生!大丈夫か!」

「五条、助けに来たぞ!」

「ちょっと、待ちなさいよ!」

 

教え子達が掛けてくる。

悠仁、恵、野薔薇、鬼気迫る顔で助けに来たとばかりにいた。

やめろ、まずい、考えるな。

瞬間、脳内に溢れ出す教師としての時間。

 

「ジャスト1分、夢は視れたかい?」

「傑!テメェェェ!」

 

気付けば五条の身体は囚われていた。

絡みつく肉の様な拘束具、自らの領域のような物へと格納しようとしているのが分かる。

そして、眼の前には縫い目のある子供の側にかつての親友、夏油傑が立っていた。

 

「やはり、有用だな」

「どうしてお前が、それに何で呪霊操術以外の術式を持ってる!」

 

眼の前にいる呪霊が呪霊操術を持っていると六眼は識別している。

だが、確かに今、眼の前の夏油傑の呪力によって幻影が見えたのだ。

 

「呪霊操術だよ。ただ幻影の呪霊の術式を使えただけで」

「はぁ?」

「どうやらね、呪霊操術は呪霊から術式を抽出出来るんだ。一回きりだけどね」

 

それは、呪力から読みとった記憶で再現した術師や呪霊を使役できる術式。

日本上空にいるとされる幻影の呪霊の物であった。

 

「君、強過ぎるんだよ。まぁ、そのうち封印は解くさ100年……1000年後くらいには」

「良い気になるなよ、特級一人倒したところで、第二第三の特級呪術師が現れるからな!」

「悟、君はいつから魔王になったんだよ。あぁ、ほら取り込まれるよ」

「絶対許さねぇ!出てきたら一発殴るからな!羂索、お前も覚えてろよ!」

「嫌だよ、やっと封印出来たんだし」

 

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