呪術じゃねぇって!念能力だろ!   作:nyasu

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復活かもしれない

黒い球体が夏油を飲み込み、そして瞬時に崩壊する。

余りにも展開時間が短く、一瞬だが呆気にとられる。

俺達の眼の前には、いつの間にか筋肉が盛り上がった夏油がいた。

そして、身体に穴が空いた状態で呆然とする火山の呪霊、それが地面に膝を着いている。

 

「ガハッ……」

「焼け焦げた、今のは惜しかったね」

「領域……展延か……」

 

呪霊が傷口を塞ぎながら、片手を向ける。

すると、その先から銃弾のようにマグマが飛んてくる。

それはまるで機関銃のように夏油に向かっていくが、夏油はそれを避けもせず身に受けた。

 

「なるほど、術式の中和がされる前に当てるか」

「馬鹿な……儂は大地の呪霊だぞ、格が違うはずだ」

「ひょっとして、まだ自分が格上だと思ってるのか?」

 

夏油の身体が、内側からドンッという音を発しながら膨れ上がった。

全身の筋肉が膨張し、背中には膨張した筋肉が笑ったような顔に見える。

中心から夏油の身体は黒くなり、金属光沢のような輝きすら発していた。

 

「おのれぇぇぇ!」

「フン!」

 

呪霊が飛ぶ、足からジェット噴射のように炎を出して空へと逃げたのだ。

それを踏み込み、ジャンプで追いかける夏油。

そして、そのまま足を掴み地面へと叩き落とす。

 

「ぐぁ!?くっ……まだだ!」

「チッ」

 

火山の呪霊は何度か叩きつけられながら、自らの足を自分で切り落としていた。

同時に、その場から逃げ出した瞬間に夏油の持っていた足が周囲を巻き込み爆発をする。

ビルの半分を飲み込むほどの巨大は爆発、それは離れていても痛いほどの高温を発している。

 

「ハァハァ……ぬおっ!?」

「やるねぇ、今のは効いたよ」

 

その爆発の中から紐のようになった肉の束が、火山の呪霊の首に巻き付き、その身を引っ張っていく。

爆炎の中から、腕を触手のようにした夏油が飛び出してきた。

 

「んんっ!ていやぁ!」

「ハッ!甘い甘い!」

 

手を伸ばし、反撃しようとした呪霊の両腕がサイコロ状に切断されていた。

凄まじい速度で振るわれる、ワイヤーのような肉の触手による物だ。

 

「何故だ!儂は大地の畏れだぞ!」

「非日常の災害など、たかが知れている。本当に恐ろしいのは日常に潜む実体験さ」

「夏油、どうして裏切った!それ程の力があるならば、我々と共に君臨出来たはず!なぜ、人間の味方をする!」

 

腕を直しながら、火山の呪霊が問う。

その憤る声は、離れた位置で見る事しかできない俺達にもしっかり届く。

 

「生憎、頂点に興味はないんだ。あくまで私は強くありたいだけなんだ」

「抜かせぇ!いや、そうか……へへ!」

 

火山の呪霊がこちらに手を向ける。

まずい、奴の攻撃がこちらに来る。

咄嗟に俺は前に出て、壁のように影を展開。

マグマが押し寄せたのは、ほぼ同時だった。

 

「ぬあぁぁぁ!?」

「不愉快だよ、弱者を利用しようとする。そんなあり方が」

「ぐっ……」

 

影の展開をやめて見れば、首を掴まれた火山の呪霊がいる。

その呪霊の首と夏油の手が一体化しているように見えた。

 

「やめろ!こんなとこで死ぬわけにはいかんのだ」

「死なないさ、私の中で君は生き続ける」

「何だこれは、儂は、儂らこそが真の人間に」

「元人間の僕から言わせれば、それほど良いものじゃないよ」

 

夏油の身体に飲み込まれるように、火山の呪霊が重なっていく。

特級呪霊の吸収、それが奴の狙いだったのか?

 

「おい、恵!パンダ!撤退だ」

「誰だアンタ」

「日下部!」

 

俺の前に、身を挺して守ろうと現れたのは噂に名高い日下部さんとやらだった。

トレンチコートに刀だけ、まるでやる気を感じられない。

だが、なろう系を読んでる俺は知っている。

こういう田舎にいそうな昼行灯キャラが実は剣聖だったりする奴。

 

「全員逃げろ」

「そうか、俺達がいると全力が出せないんだ」

「えっ?……あぁ、そうだよ!お前らがいなくなったら俺も」

「本気出せるってことか、日下部ぇー!うぉぉぉぉん!」

「あっ、違っ……」

 

俺とパンダの言葉を肯定した日下部さんは、ゆっくりとだが刀を構えた。

渋々構えたように素人は見えるかもしれない。

だが俺達には分からない高度な攻撃予測をしながら牽制しつつ構えたのだろう。

俺ならすぐに構えるもん。

 

「日下部さんか、昔の誼だ。退いてくれ」

「悪いがそれは出来ねぇ」

「やれやれ、戦う気はなかったんだが、そちらがその気なら仕方ないか」

「いや待て、戦う気はないのなら話し合おう」

 

驚愕の発言に、日下部さんの後ろにいた俺達が何言ってるんだと騒ぎ出す。

特級呪霊、それに特級の術師だった呪詛師だ。

話し合いの余地すらないだろ。

 

「いいだ……ッ!?」

「昨今の独占放送とやらは無粋だと思わんかね!」

「私に触れるなぁ!」

 

夏油の背後に、ものすごいスピードでお爺ちゃんが跳躍する。

何だあのジジイ、ターボジジイかなんかなの?

っていうか、日下部さんは油断を誘うために会話をしていたのか。

話し合いに応じようとしてたように見えたぜ、やっぱ実力を隠してるタイプか。

勝てそう、そう思ってるうちは手のひらの上という訳だ。

五条が一目置くだけはある。

 

夏油は全身を四角いフィルムのような物にとらわれる、そのまま殴られて後方へと吹き飛んでいく。

 

「遅いな」

「ぐっ!」

 

反対側に現れた爺が移動しながら触れて、殴る。

吹き飛ぶ方向に現れては触れて殴る。

まるで壁打ちのボールのように、走り回る爺の内側で夏油が殴られ続けられていた。

まるでアメコミのフラッシュだ、爺は残像を残して走り回ってやがる。

投射呪法、触れた物に動きを強制させて出来なければ停止させ、出来たら無限に加速出来る術式だ。

本当はもっと色々あるけど簡単な認識は、だいたいそんな感じ。

 

「フン、いくら特級とはいえ奴も消耗していた」

「直毘人さん、いきなりの奇襲は肝が冷えます」

「言ったら奇襲ではないだろ」

 

最後に振り抜いた形で止まる爺、夏油はボロボロになって吹っ飛んでいった。

あんなに強かったのに、防戦一方になっていただと……違和感。

 

「アンタ達なぁ!」

「やったか!」

「ぬっ、日下部1級術師。よく気付いたな」

 

その時、夏油が吹き飛ばされた周辺の瓦礫が爆発するように弾けた。

そして、その中心から異常発達した骨と筋肉の化物が歩いてくる。

まるでニチアサの怪人のような、タイラントとかネメシスとかバイオハザードに出てきそうな化物になって現れた。

 

「油断したな、まさか日下部一級術師は気付けたというのに」

「えっ……いや、あ、やはり撤退を!」

「ここまで来て生徒の味方か。だが、奴は逃がしてはくれないようだぞ」

 

重量を感じさせる、およそ人が出しては行けないような足音を出しながら夏油が歩いてくる。

溢れる呪力は周囲を圧倒し、まるでスーパーサイヤ人のようだ。

なお、呪力は真っ暗な闇のような色である。

 

「大丈夫か、ブラザー!……なっ!?」

「今、何かしたかい?」

 

合流する京都校の面々、東堂が手を叩いたが術式は不発。

あの呪力は、領域展延ということか。

 

「私の呪力を捉えたのだろうが、距離が伸びれば入れ替えのための強度のような物も弱くなるのでは?近接向きの術式、実に私好みだ」

「夏油……傑……」

「久しいな、乙骨憂太」

 

空から乙骨先輩と知らん女が降りてくる。

誰だあの女。

 

「久しぶりだね、夏油くん」

「ハハッ、特級呪術師の揃い踏みだな。九十九由基」

 

あの女、特級なのか!

そして、渋谷にいた全員が、夏油の前に合流した。

この数だ、流石の夏油も勝つことは出来まい。

 

「夏油!良くも五条先生を……」

「特級呪霊を祓われたら困るからね、それに……」

 

俺達の背後から、悍ましい呪力が発生した。

背筋を凍らせるような強烈な呪力だ。

振り返る、そこには和服のおかっぱ女と小さい子供、そしてツギハギの呪霊。

 

「五条悟を救うためだろ、夏油傑。裏切ると思ったが、こちらの指を盗むとはね」

「羂索か。元より私は君達の仲間ではない」

「大方、連続領域展開による術式の焼き切れで殺されるのを心配したんだろうけど、六眼はそれすらも超えてくる。私は既に知っているんだ、だから封印した」

 

三つ巴の状況が出来上がる。

俺達、夏油、そして羂索だ。

 

「そんな事より、全員やっちまおう!殺してやるよ、虎杖悠仁!」

「不服だが、そこの呪霊と同じ意見だ」

 

ツギハギ呪霊と俺が逃がしたおかっぱが戦闘態勢に入る。

誰かが動けば、均衡は崩れる。

 

「そうだね、裏梅。契約を果たすとしよう」

「契闊」

『まさか、そういうことか羂索!』

 

ツギハギ呪霊が首や指を鳴らしながら俺達を一瞥する。

そして自分の身体を確かめるような動き。

なんだ、様子がおかしい。

そして、何かに気づいた両面宿儺の声が悠仁の方から聞こえた。

 

「やっとか……おい、さっさと寄越せ」

「此方に、お久しゅうございます」

「あぁ?お前……裏梅か!実に久しいな!」

 

おかっぱが取り出したのは、布に包まれた何かだった。

おい、まさか、アレは違うよな。

 

『羂索、貴様……』

「御託はいい、さっさとやるぞ。無為転変」

 

布の中身は、やはり両面宿儺の指であった。

それをツギハギ呪霊は飲み込み、地面に手を付く。

瞬間、地面に巨大な印が発生して空に向かって呪力が伸びていく。

 

「術式の遠隔操作か!」

「御名答!」

「知ってるのか、九十九!」

「いや、知らない。何をした!」

 

遠隔で無為転変、魂を操作する術式を使ったのか。

 

「私のマーキングした非術師に無為転変を行った。一つは術師の脳に、もう一つは呪具に耐えられる身体に……1000人の虎杖悠仁が放たれると思ってくれ」

「マーキングだと……」

 

いや、まさか、お前か。

 

「お前ぇぇぇ!」

「はぁ?」

 

俺の腕が奴を捉える、その間合いまで跳躍する。

コイツが、コイツの呪いが、津美紀の倒れた理由。

 

「十種か、宝の持ち腐れだな」

「どけぇぇぇ!ぐぁぁぁ!?」

 

眼の前にツギハギ呪霊が、否、恐らく受肉したであろう両面宿儺が邪魔をする。

あと少し、あと僅かにも時間があれば、俺は腕で羂索の頭を殴り飛ばせた。

文字通り脳髄を撒き散らして、殺すことが出来た。

だが、それより先に宿儺の拳が俺に入る。

 

「伏黒!?」

「クソ、クソがぁぁぁ!」

「落ち着け、それより身体に異変はないのか!」

 

周りが俺を押さえてくる。

よく分からんが、俺は無為転変が効かない。

だから、そんな心配はいらない。

 

「妙だな、受肉体か?術式は発動したはず」

「君、受肉仕立てでミスったんじゃない?」

「おい、殺すぞ羂索。肉体の慣らしが必要か」

 

ツギハギ呪霊の身体がゆっくりとだが変化する。

顔付きが、半分ほど変わっていた。

 

「今は機嫌がいい、来い裏梅」

「ったく勝手だね……まぁ君達も準備があるだろう。私もね、楽しい催しを控えているんだ」

「逃がすと思ってるのか、羂索」

「逃げるさ」

 

離れた場所から威圧するような異なる呪力が発せられる。

囲まれている、渋谷全体に強力な呪詛師がいる。

恐らく、以前に受肉した平安の呪詛師。

 

「追わないのか、つまらないね……」

「くっ……」

「さらばだ、現代の呪術師諸君。次は、互いに呪い合うとしよう」

 

それは、俺達の敗北を意味していた。

五条悟の封印、一般社会への影響、両面宿儺の復活、平安術師の台頭、そして術式に目覚める非術師と受肉する非術師への対応。

待ち受ける未来には暗雲が立ち込めていた。

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