天元は激怒した。必ず、かの邪智暴虐のアメリカを除かなければならぬと決意した。天元にはプラットフォームの事情はわからぬ。天元はネットアイドルVTuberである。ゲームを配信し、信者と雑談して、呪術を教えたりして暮らして来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
「んなんでだよぉぉぉ!」
やれやれ、またアカウント停止されたか。
すぐに復旧してもらおう、いつもの間違いだ。
天元は慣れた様子で申請していた。
「おのれ、羂索ぅぅぅ!」
だが、申請は却下のメールが来た。
こんなことは初めてだった。
重大な規約違反が確認されたため永久停止などと強い言葉すらある。
新規アカウントを作っても、すぐに見つかり消される徹底ぶりだ。
各種SNSすら止められ、ネット民からは言論統制だ、俺達から天元を返せとトレンド入りするくらいだ。
日本政府だけではない、同盟国アメリカが名指しで嫌がらせしているに違いなく、そしてそれを指示している相手は羂索に他ならなかった。
ネットを取り上げられた天元は荒れに荒れた、大体の事は知ってるからあっという間だったな100年とかそんなボケーっとした生活から、毎日何かしらのトラブルや変化、イベントすらある、そんな日々何かが起こるネットは劇物であった。
それが取り上げられるとは、麻薬使用者から麻薬を取り、SNS中毒者からSNSを奪うような物だ。
「こんな事になるなら、最初からネットなど知らなければよかった!」
非術師達を庇護し、チャンネル登録した信者に身を守る術を授け、法外な収入を取ってる呪術界から奪った資金で各国に空売りを仕掛け、渋谷事変を世界配信し、ジョーク動画と笑われ、呪霊も認知されて謎のオカルトな事件が起き、実際に呪術が使えるようになった者が増え、重大告知というタイトルで日本に侵攻してる各国の秘密部隊を配信ネタにして、戦争が始まると世界恐慌が発生したので空売りで荒稼ぎして、それで新衣装とか動画作成しただけではないか。
その仕打ちが、こんなことでいいのか、いやよくない。
「おい、学長が来いって言うから来たら、なんでメイド服でサンドバッグ殴ってんの?」
「ネット断たれた」
「ふーん。まぁ日本に核が撃たれるとか、両面宿儺とか言う化物が世界征服に動くとか過激だったし。アンチにキレて証明しようとやり過ぎたやろ」
「キレてないが?領海や領空に侵入してたのバラしてたのは日本を結界で守護してるから、当然のことだが?」
いやぁ、米軍さんは見なかったことにするべきでしたね。
本体を動かせないから穴熊決め込んでる俺達への嫌がらせだと思うが、外国に日本を売り飛ばすなんて売国奴め!
まぁ、多分天元の結界のせいで日本ばかり呪霊や呪術師が出来るから、そういう未知のエネルギーとか欲しくないか、的なこと言ったんだろなぁ。
アメコミとかでよくあるアレである。
「それよりどうだい、修行の方は?」
「乙骨先輩と憂憂の術式で、みんな魂は入れ替えて反転術式と領域の習得に向けて頑張ってるよ」
「そちらではない、伏黒の方だよ」
「俺は、まぁ、呪霊狩りばっかだからな。俺も魂の入れ替えが出来たら良かったんだが」
俺達には猶予期間があった。
羂索の始めたゲーム、それによる慣らしには時間が掛かるらしい。
それが終わってから本格的に何かしてくると思われる。
恐らくゲームによって発生する呪力を使うつもりで、ゲーム開催場所のコロニーに向けて外国の軍人達が向かっているのは生贄目的なのではないかと考察されている。
そして、その時間を使って俺達は基礎的な戦闘力を上げるために修行をしている。
奴らの所在は掴めないが、宿儺が真人を完全に取り込むのには時間が掛かるだろうとも予想されていた。
そこで、空間を入れ替える術式を用いて魂を入れ替える修行が提案された。
何それと思われるそれは、入れ替わった反復することで身体が感覚的に覚える……要はコツを掴みやすくするという修行だ。
ただ複数魂がある悠仁と、同化した天元みたいな状態のよく分かんない俺の魂みたいなのは、交換は危険なので出来ないでいる。
11分の1で両面宿儺が入れ替わる事やバグって予期せぬ事が起きないようにだ。
「それより、回収は出来たかい?」
「あぁ、両面宿儺の肉体より作った即身仏……あんなもの持ってたなんて、アンタ達どういう関係」
「ただ、1000年も前の知り合いでしかないよ」
俺はレベルアップのための呪霊狩りの傍ら、天元の依頼によって即身仏にされた両面宿儺の遺体を回収した。
これ以上のパワーアップを阻止する為、そしてハリー・ポッターとヴォルデモートの関係のように情報が漏れてる前提で秘密裏に俺達は動いていた。
「今の奴は厄介な術式を手に入れたからね。元の呪霊の屈服には流石の宿儺も時間が必要だろう。故に宿儺の器には内なる宿儺の屈服を先にしてもらわないとね」
「屈服ね……」
天元のプランは簡単だった。
まず、ゲームの方はというと戦力として特筆している特級2名による攻略を任せていた。
等級の低い者を悪戯に死なせるのは愚策、というか一般的な発生率が上がってる今は掛り切りになってるから無理だからだ。
二人は攻略しながら天使のプレイヤーを探してもらっている。
次に戦力外と思われる者達の強化、平安呪詛師達はゲームの強制参加をさせられてるが、いつゲームエリアの外に出てくるか分からないからだ。
一度ゲームエリアに入ると出れない性質上、東堂達は温存だ。
特級?あの人達は点数追加でどうにか出れるようにする予定だ。
最後に、魂に干渉して来る宿儺に対抗すべく魂を捉える修行をする予定だ。
俺と悠仁が殴り合う、それくらいしか思いつかなかった脳筋修行である。
悠仁はそれに加えて内なる宿儺の屈服とかをするように言われているが、最悪は死ぬ気でいる。
本人も両面宿儺2体で仲間を攻撃したくないと覚悟ガンギマリである。
縛りを結んで無効化する事を言われているが、そんなことは出来るのかと言ったところである。
俺はそういう修行編は周りの予想を超えていくことをジャンプで学んでるから、アイツが宿儺とコンビになってても驚かない。
「同意が必要とはいえ、東堂は術式で意識を沈めるなんてな……アイツはどこに向かってるんだ……」
意識が表に出ているならば、裏である内面に出てこなくさせる、つまりは内面世界に出させるみたいな謎理論で植物人間にしていた。
概念に対して術式を遂に発動している東堂によって、悠仁は自身の生得領域……つまりは心象世界というか、心のなかに潜っている。
瞑想で過去の術師達が至る方法を過程をすっ飛ばしてやってる感じだ。
多分、逆さまのビルとかでっかい座敷牢とか、あるいはレストランで警官と話してたりするかもしれない。
悠仁がどんな領域で戦ってるのか、俺には分からない。
ただ、虎杖悠仁が精神世界に強制的に押し込められてから2日が経過した。
2日間、アイツは眠ったままである。
本当なら東堂の術式効果が切れた瞬間に起きるはずだが、自分の意志でなのか眠ったままなのだ。
「俺だけが置いてかれてる気分だ」
「簡易領域は出来るようになったじゃないか。そんな事より私のネット問題なんだが」
「いや、ネットより日本の未来を考えろよ」
「俗世には関わらないと決めてるから……うん」
「おい、都合の良い時だけ昔の設定出すなよ。俺の目を見ろ」
「ナ、ナニモワカラナイ……」
「インターネット、やーめーろー」
何をトチ狂ったのか、自分でプラットフォームとか何ならVTuberの会社作るとか言い始めた。
お前、それでいいのか?絶賛、羂索に命狙われてるのに悠長過ぎねぇ?
「1000年間の失われた青春を取り戻して何が悪い!」
「お前、そんなキャラじゃなかっただろ」
「おのれ、羂索め!アイツ、アンチだろ!」
「何でもかんでも羂索のせいは……まぁ、残当か?」