認識を改め、敵を視認する。
敵は全身にレシートをつけた、おそらく術式上必要とは言え壊滅的なファッションの男。
火薬臭い呪力と泥臭い呪力の匂いが近づいてくる。
なんかあと一人急に出てきたな、新手か?こっちは仲間というよりは騒ぎを聞きつけてってところか。
さて、俺は聞かなきゃいけない。
「お前、名前は」
「おっと、話す気になったかな。レジィ・スターだ」
「好きな漫画はなんだ」
「スナックバス江」
なるほど、好きな漫画にはソイツの個性が現れる。
コイツ、ギャグ漫画が好きだと言うことは意表を突くのが好きなタイプ。
奇襲、搦手、パロディの多い漫画からして手段も豊富。
恐らくレシートを大量にあることから、それが関係している。
「シィ!」
「仲間か?」
泥臭い匂いのやつが、手を鋭くして貫きに来る。
肉体変化系、おそらく陰獣の病犬みたいなタイプ。
だが、相性が悪かったな。
「消え、がッ!?」
「飲み込んだ!」
俺の身体を貫き、そのまま顔からぶつかり影の世界へと落ちていく。
直接触れなきゃ攻撃できない都合上、そのままタックルすれば現実世界から影の世界に自分から入るようなものだ。
『伏黒恵に5点追加されました』
「なるほど、何処かに繋げる術式か!式神は強そうだったが、影を媒体にしているな!ならば、影に沈めたか!」
「やはり地頭がいい。それに、事前準備も怠らないタイプ。レシート集めまくったのか?」
「あぁ!ホームセンターやコンビニ、いろんな店を漁り続けたさ!」
つまり、受肉してからレシートを見つけては服に取り付けを繰り返している訳だ。
術式のために全て覚えてるのも驚異的だな。
「うん?うわ、グロッ」
「やったか!?」
レジィと話していたら、足元に内臓のようなものが落ちてきた。
モツだ、と思ったらそれは一気に輝き、爆発した。
まぁ、全てが透過されて無傷な訳だがな。
死霊術師の類だろうか。
「油断するな黄櫨!」
「まったくだ、生存フラグだぜ」
「無傷とか化物かよ!」
いや、そんなことはない。
一瞬だったから出来たが延々にやられたら死んでしまう。
それこそ、ボンバーマンがリスポーン間際の無敵中に自爆し続けるアレみたいな攻撃されたら死ぬ。
酸欠とかで……さて、爆弾化ってところか。
「喰らえ!」
「ボムボムの実かよ……今度は歯か」
俺の眼の前で歯が三つ投げられ、それが爆発する。
視界が覆われ、その瞬間に……なんかアフロが現れた。
「ぬわぁー!?」
「な、何だ!?」
アフロは、マッチョだった。
それはいつの間にか暴走族を率いて現れていた。
突如発生する呪力の匂い、これは瞬間移動の類か。
「オラァ!」
「やっちまえ!」
「ピーマンを残す奴に……生きる資格はねぇ」
アフロが謎の人物達にボコられる。
なんだこの……野菜だ。
野菜の着ぐるみじゃなくて、バイクに乗った手足の着いた巨大な野菜が人を、アフロを殴っている。
「ピーマンだけは……ピーマンだけは……」
「何だコイツ……」
「お前が、クエぇぇえ!」
海面を糸が走る。
俺達の中で唯一、高羽が引き当てた。
それは、格闘の末に海面を飛び出した。
クエ、横縞模様の高級魚、それが宙を舞い肉体を爆弾にする術式の術師の頭上に落ちてピチピチ跳ねる。
すごく、魚臭い。
「……ハッ!?高羽って誰!なんでコイツの名前を俺は認識していた。いや、そもそもどうして海に、いや海じゃない!?」
「おい待て!さっきの野菜はどこ行った!違う、そうじゃないお前の仲間か!」
「テメェ、俺をコケにしやがって……つうか、どっちだ!」
ピチピチと魚が、クエが跳ねる。
そして俺とレジィと爆弾野郎の間に黄色いアフロの男……恐らく、高羽が仁王立ちで立っていた。
「それは俺が面白いか面白くないかか?」
「何を言って……」
「俺の名前を言ってみろ!」
「いや誰だよ!?」
「喰らえ!呪術を極めた俺が生み出す力ァ!」
まさか、極の番ということか!?
跳ね上がる呪力、只者ではない何かがコイツにはある。
「余計なお世話Wi-Fi!」
「…………」
「…………」
「…………」
いや、さっきの強大な呪力は何?いや、えっ、何この人?
「クソ客がぁぁぁ!子宮に笑顔を忘れやがって!」
「いや、単にお前が……いない!?」
「一体いつから、笑顔を忘れていた?」
俺とレジィ・スターから離れた場所に、爆弾化野郎と高羽がいた。
何故か高羽は白い服を着てる。
えっ、本当に何?展開が追いつかないし、瞬間移動ばっかしてるんだけど……領域展開しながら座標変えてる?えっ、マジで理解できないんだが。
「アホ抜かせ、お前が子宮におるときからや」
「黄櫨?」
「私の術式はショートコント等ではない。本当の能力は、一発ギャグだ」
「なん……だと!?」
「黄櫨!?」
「……ハッ!俺は何を、違う!口が勝手に……いや、本当に何だ」
今のは……BLEACHなのか?
いや待て、マジで何がしたいんだコイツ、敵か味方かも分からない。
何か敵の一人を持っていったから味方なのか?
敵の一人も洗脳されてる?なんだ、なんの術式なんだ、理解しようとすると何か大事な物が壊れていく気がする。
何だろう、SAN値チェックさせる術式か?
「ここは任せろヒーロー、礼はいらん。何故なら俺も通りすがりの仮面ライダーだからだ」
「仮面ライダー?」
「違う、芸人じゃぁぁぁい!お客さん、見ててくれよぉー!」
「避けろ、黄櫨!」
疑問を口にした黄櫨と呼ばれたレジィ・スターの仲間が顔面にドロップキックを喰らい、物理的におかしい距離まで飛ばされる。
いや……マジで何なんだ。
「コガネ、さっきの男の情報を出せ……高羽史彦、0ポイントだと!?」
「な、何なんだよ!もぉぉぉ!」
「何が起きたか分からないと思う、俺も分からない」
「現代の術師ってのは、あんな訳わからない物なのか?」
いや、お前みたいな合理性で変態やってる平安術師に言われたくないがアレをスタンダードだと思わないで欲しい。
俺は首を横に振るとレジィ・スターは安堵したように息を吐いた。
「オーケー仕切り直そう。どうする、やるかい?やらないなら、俺はアイツを助けに行く」
「逃がすと思うか?」
「交渉決裂、か!」
レシートが複数枚飛んでくる。
それが空中で燃えて、包丁に変化した。
包丁は様々な軌道で俺へとぶつかり、俺の身体から射出される。
そして、それは途中で消えた。
「レシートの再現か」
「本当は違うが、そういうお前のは空間の歪曲か」
「全然違うね」
前に、踏み込む。
術式が分からないならどうする。
臆して情報を得ようとするのは弱者の発想、寧ろここは攻める。
「質量保存の法則はあるんだろ!ロードローラーだ!」
「商品を出せるのか!」
俺の頭上に、俺の数倍の重機が落ちてくる。
考えたな、俺の身体以上の物体をぶつけてきたか。
俺の身体が影に沈む。
相手からは潰れたように見えただろ。
地面への入口は出された物が消えたのか、なくなった。
さっきから、数秒で消えるな。
そういう制約、縛りだろうか。
具現化系能力者って所か。
奴の足元から飛び出し、下から殴り掛かる。
「なら!近接は弱いと思うよな!」
「コイツ、読んでやがったか!」
俺の出てくる場所を読んでいたのか、奴はその場からジャンプしていた。
そして、俺の身体に液体が掛かる。
この匂い、ガソリンか!
「燃えろ!」
「くっ」
飛んできたのはジッポライター、それが引火する。
すぐに全身から万象の水を出して、内側からガソリンを吹き飛ばした。
地面に降り立ち、仕切り直しとばかりに構える。
「攻撃の瞬間は実体があるし、呼吸してる場所もあるだろうから酸欠狙ったのにね」
「勝手に地面に落ちてたライターが動いて消えたな、実行後に消える代わりに命令通り動くって所か」
「そういうお前は、あと2つ3つ隠し種がありそうだな」
相性は悪くなさそうだが、なかなかやり辛そうな相手だった。