術式とは、魂に宿るのか。
術式とは、肉体に宿るのか。
ある者は、肉体とは魂の入れ物であると言った。
ある者は、肉体は魂であり、魂は肉体であると言った。
呪力によって出来ているリカは外付けの術式を宿している。
ならば、肉体か。
肉体がなければ、人も呪霊も術式は使えない。
だが、ならば呪胎はどうだろうか。
術式のない肉体であった物は、生者に取り込まれ、肉体を改変し、受肉する。
しかし、何を元に生前の術式の刻まれた肉体を生み出すのか。
それは、魂に設計図のように術式が刻まれているのではないか。
では、我々が一部しか捉えることの出来ていない魂とは何か。
魂を捉えることが出来る者達は等しく、魂の存在を疑っていない。
非物質ではあるが、あると確信している。
故に殴ることも、入れ替えることも、切り刻む事も出来る。
そして、日車の術式による術式の強奪は奇しくも魂の証明と魂に術式が宿る事を証明した。
五条のように肉体に宿っている術式が焼き切れたなら、何らかのダメージが発生しているはずだからだ。
だって脳が3つくらいあるんだぞ、てか術式は領域展開で焼ききれてるはずだし、記憶を失ってるという説もあるが、それだと呪物に記憶が宿ってる平安術師とかは海馬ないのにどうやってという疑問が湧く。
そうなると、新しい疑問が湧いてくる。
魂が存在するならば、術式が魂に宿るならば、術式なんか無かった世界から転生した俺はどうして術式が使える。
「伏黒恵、俺の中にずっといたのか?」
『何言ってんだ、俺はグレイだぞ』
「あっ、うん、いやそうなんだけどね」
『それに伏黒恵は恵の事だろ?』
あっ、うん、いやそうなんだけどね。
自覚がないとか……いや、そうなるとシロとクロの時は魂が分割?
いや、宿儺も二人いるし、リカちゃんと里香ちゃんもいるし、うわぁ、思考が沼りそう。
謎が謎を呼んでいく。
とは言え、五条曰くざぁこと呼ばれるような術式だけで、数多の術式を扱う乙骨先輩に勝てるはずもなく、このまま宿儺はやられることだろう。
「ぐっ……」
『ゆ、ゆう……た……』
「フンッ!ゲテモノは美味いと相場は決まってるのだがな」
だから、領域がぶっ壊れてボロボロの先輩と抱える里香と半身しかないリカちゃんはオカシイのである。
「クソが、だと思ったよ!」
「貴様の術式は多種多様な術式による戦略性にこそ価値がある。ならばこそ、身の程を弁え己が力のみで挑むべきではなかったな。術式の長所を殺すとは理解できぬ程の凡愚よ」
「他のみんなは、巻き込みたくなかったんだけどな……」
宿儺が、膝を付いている乙骨先輩に手を向ける。
次の瞬間には術式による切断が待ち受けていることは想像に容易くない。
今までの俺達ならな。
「死ぬがいい、乙骨」
不可視の斬撃が、乙骨先輩を――
「――させねぇよ」
「ほぉ……来たか、小僧」
爆発するように、砂煙が発生する。
それは、宿儺の斬撃による影響。
粉微塵にされた物質の成れの果て、あらゆる物が刻まれる……はずだった。
「姿形が変わったくらいで届くとでも?」
「難しいこと、分かんねぇけどよ」
赤い、まるで特撮のヒーローのような、鎧を纏った悠仁がいる。
その背後には無傷の地面と膝を付いた乙骨先輩がいる。
「俺がお前をぶっ飛ばす!」
「ダメだ、虎杖くん!奴は――」
瞬間、悠仁の足が血飛沫を、否、衝撃と光、まさしく爆発する。
超スピードとかではなく、本当に爆発した足で、前に踏み込む。
「シイッ!」
「――攻撃が……」
左腕が前に伸びる。
間合いのギリギリ、牽制の一撃。
ジャブを宿儺が掴み、悠仁の腰が回転する。
足、腰、背中、肩、腕、踏む込みと腰の回転は右の拳に力を込める。
右ストレート、だがそんな見え透いた攻撃を宿儺が見逃すはずもない。
残る5つの腕、その一つが掴みに掛かる。
「超血術式!」
「ぬっ……ッ!?」
左腕を掴んでいた宿儺の手が、後ろへと弾かれる。
態勢を崩すその瞬間、悠仁の右ストレートが爆発して加速した。
それは、宿儺の顔を捉えてぶっ飛ばす程の威力を放つ。
「爆裂拳!」
「ぐっ……」
音を置き去りにした拳、遅れて空気の爆裂音、そして黒い閃光が発生する。
黒閃、その威力は2.5乗とか言われている。
吹き飛び、瓦礫の中へ突っ込む宿儺。
そんな瓦礫が弾け、中から鼻血を出した状態の宿儺が仁王立ちで現れる。
つまらなそうに鼻血を指で拭き取り、宿儺が腕を組んだまま停止する。
ど、どういうことだ……表情が無だ。
黒閃を食らって、鼻血程度だと!?
「って、やりやがった……アイツ……」
「妙な打撃だ、呪力による衝撃か?それに、何故効いている……」
「なんで、攻撃が効いてる?」
駆け付けた俺の前で、乙骨先輩が狼狽えていた。
どういうことだ、領域展開内で何があったんだ。
「先輩!一体全体どういうことか説明してくれ!」
「あ、あぁ……宿儺には攻撃が効かないんだ。恐らく、真人とか言う呪霊がベースのせいだ。どんな怪我も無傷の状態にすぐに戻る……はずなんだ」
だが、虎杖悠仁の攻撃は確かに通り、鼻血程度だがダメージを与えていた。
「俺の超血術式は、血で出来そうなことは何でも出来る。俺達兄弟の術式の特盛だ!」
「小僧、貴様は何を言ってるんだ?」
「何を言ってるか分かんねぇと思う、俺も分かんねぇ!だが、お前を倒せる!」
さぁ、今のうちにとでも言わんばかりに構える悠仁。
俺はそんなアイツの背中を見ながら、乙骨先輩を後方へと放り投げた。
キャッチは誰かがやってくれるだろう。
「伏黒……」
「お前……俺のパクったろ」
「色が違うけど!?」
赤と灰色の鎧を纏った俺達。
相対するのは、顔が3つ、腕が6つ、阿修羅のような宿儺。
「随分と様変わりしたじゃないか」
「そうだろうなぁ」
俺の左腕には歯車が浮いている。
法陣とでも言えばいいのか、元は多分違うのだろうが盾のように付いている。
そして右腕には灰色の発光する剣がある。
ガコン、と俺の左腕の盾が8分の1だけ回転する。
「左腕の法陣、適応の盾は解析ごとに8分の1回転する。俺も何に適応しようとするか分からない。そして右腕の剣、退魔の剣は正の呪力を放つ」
「八将神か、呪術的な聖数でもある。発展、八という数字は多を表し、八卦は宇宙を象徴する」
「そ、そうなのか?」
「学のない奴め……」
おい、残念な感じやめろ。
漫画のコマなら、よく貼られる画像みたいになりそうだな。
返しは悠仁の馬鹿だから分かんねぇけどでいいか?
「伏黒も馬鹿なんだな」
「うるせぇよ、緊張感のない奴め」
「悪かったよ。じゃあ、やろうぜ……」
俺の隣で悠仁が構える。
俺も合わせるように拳を構える。
待ち構える宿儺は憮然とした態度で此方を見据える。
「次から次へと、つくづくお前達は飽きさせぬな」
「お前をぶっ飛ばして、もう悪さ出来なくしてやるよ」
「祓うと言えぬ所が貴様の甘さよ」
俺達の戦いが始まる。