学長が拘束されたらしい。
学長って誰?あぁ、あのプロレスラーみたいなカワイイは作れるのおじさんか。
その話を聞いたのは年末頃だった。
「なんて?」
「学長がパンダを生んで総監部に拘束されたから暫く高専来ちゃダメだよ。忙しいから」
「なんて?」
人間で男がパンダを生む?
パンダはパンダって説明されても分からんのだが、あのパンダ?
「遊ぶ?」
「遊ばないよ〜じゃ、そういうことだから」
シロの頭を軽く撫でて、そう言って五条が帰っていく。
振り返らず、後ろ向きに手を降って、なんかキザに帰っていった。
まぁ、いいけど大変だな。
高専に行けないとなると、窓の人に連れられて呪霊退治は出来なくなる。
万年人手不足、フィジカルはなくても術式は強い、そんな俺は準1級以下の呪霊退治をよくやってた。
なんか推薦とかないと級は上げれないらしいけど興味ないから別にそれはいい。
問題は特殊能力のないけど強い呪霊と戦えない事だ。
シロとクロの食事どうしよう。
「散歩行くか」
「散歩行く」
ぬくっと、伏せの態勢だったシロが起き上がって俺の側による。
もう今じゃなんか俺の呪力を使って戦闘時はデカくなるけど、基本的には大型犬程度で生活してる。
何なら不満はないか聞いたら、テレビが面白くないからパソコン欲しいとか言うくらい。
ちなみに、賢い犬リリエンタールがお気に入りらしい。
全国で言えば人手不足なくらい呪霊がいるのに、強さはピンキリで俺の家周辺は殆ど雑魚しかいない。
平安時代は死が溢れてて呪霊を見れる奴がいまくり、もっと呪霊だらけだったらしいのだが、帳の登場と共に今の感じになったらしい。
その名残が妖怪だって話だ、昔は見える人も多かったし術師は陰陽師だったんだそうだ。
「食べていい?」
「食っていいぞ」
散歩中、シロが呪霊を食べる。
呪霊を見ていると、BLEACHの虚のようだなと思ってくる。
弱いやつは小さい小人だったり、キノコとか魚とか、なんか見た目もファンシーな感じだったりする。
ちょっと強くなると少し大きくてキモくなる。
もっと強いとデカくてグロくなる、あと人っぽい。
術式持ち、準一級くらいから少し小さくなって人型になってくる。
準一級はアジューカスみたいなもんだなと思ってる。
それ以外はメノスグランデみたいなデカいだけの的、実際龍とか能力持たないけど固くて大きい奴とかいたらしい。
で、俺の近所は散歩がてらにシロが捕食してるから目に見えて呪霊がいない。
何なら、物陰に隠れる雑魚はシロの片腕が沈んだと思ったらいきなり殴られてシロの足元まで転がされてるまである。
どういう訳か、近くの影から腕だけ出てきて物陰の雑魚呪霊を殴る、殴り飛ばされた呪霊が口元に来る、食べる、みたいな事をやってるのだ。
多分、シロの腕から先が影になって、影は影で細く伸びて、離れた出口から出てくる腕と黒い紐みたいな感じで繋がってるんだと思う。
本犬はよく分かんないけど腕伸びたとか言ってたし、ゴム人間みたいなもんだろ。
「まぁ、強くなる方法は分かってんだけどな」
五条に聞いて強くなる方法はリストアップされている。
結界術を覚えたり、コントロールを極めて無駄をなくすとか、一度に込められる出力を上げるとか、後は筋トレでフィジカル鍛えるとか。
結界術を極めたら固有結界できるぞとか聞いたし、式神は式神で呪符とか呪具もあるらしい。
呪具を使うならシン・陰流とかいう道場もあるらしいけど寿命取られたり絶対服従の制約と誓約結ばれたりするらしいからやめた。
弾丸滑り覚えんのとか聞いたら、日下部さんならあるいはとか言ってた。
五条がさん付けとか日下部さんって何だよ、てか出来んのかよ。
でも剣術は覚えたいし、卍解とかBLEACHごっこしたい。
「やぁ」
「…………」
シロと散歩している俺の前に、袈裟を着た不審者がいた。
しかも、なんか俺に話し掛けているようだった。
「酷いじゃないか、無視するなんて」
「うお、ゆきあつだ……」
「ゆきあつって誰だよ」
ネットリとした、なんかイケボの不審者だった。
五条がグラハム・エーカーのモノマネ出来るとしたら、こっちは岸辺露伴のマネとかできそう。
「君、見えるね。しかも、持ってる側だね」
「おぉ、あんた念能力者か……呪詛師?呪術師?」
「基礎的な知識は知ってるようだね、私のことは知らないようだ」
「なぁ、おい。お前呪詛師だろ、そうなんだろ」
シロが唸る。
警戒を示すということは、俺が感じ取れない何かがあるんだろ。
こんな街中の昼間にやるのか?最悪、影の世界に逃げればいいけど。
「私の名前はね、夏油というんだ。それにしても、似ているな」
「アンタ、親父を知ってるのか?」
あれ、敵だと思ったけど呪術師なんか、何だよ対人戦かと思って警戒しちゃったじゃん。
「知らない仲じゃないよ。借りがある相手でもあるねぇ」
「なるほど、分かったぜ。で、何のようなんだ」
「ここら辺の呪霊が少なくてね、調べてたら悟の秘蔵っ子がいたからさ。挨拶しに来たんだよ」
はい、五条とも仲良さそうだし同業で確定だな。
俺、3級だけどこの人どのくらいだろう。
てか、念能力は何だろ。
「そーなんだ、行きつけの駄菓子屋あるから行こうぜ。そこの婆ちゃん見える人だから昔話とかおもろいよ」
「それ、片足棺桶に突っ込んでない?」
知らないけど、シロが見えるから見える側の人間だったし、昔あった化物の話とか聞けばしてくれるから死にかけではないと思う。
夏油さんは、五条と硝子先生の同級生らしい。
二人と違って道半ばでやりたいことが出来たらしいが、要は中退をかっこよく言ってるだけだった。
呪術師が互いを助け合う理想的な世界を作るのが夢らしい、意識高い系って痛いなと思った。
「うーん」
「そんなに悩むものかい?全部買えばいいのに」
「大人になれば簡単にできるけど、少ない小遣いでやりくりするのは子供の時しか出来ないから」
「本当に君、小学生?」
ブタメンとうまい棒を買って、夏油さんに奢ってやる。
夏油さんはシャボン玉で遊んでいた、お菓子よりオモチャ派らしい。
これ、これいれると豚骨みたいになるんだぜ!コーンポタージュ味とブタメンは最強だぞ。
「夏油さんってさ、どんな能力なの」
「基本的に術式を聞くのはナンセンスなんだが、まぁいいよ。私の術式はね、呪霊を操る呪霊操術って言うんだ」
「へぇ……ポケモンマスターだ」
「まぁ……うん、そっか……」
俺と似てるな、使役するところがな。
でも二の腕とかすごいし、やっぱ五条の言う通り筋肉が大事か。
「やっぱ合体とかするの?」
「いや、しないけど。それぞれが独立してるからね」
「つまんな。奈落みたいに山で呪霊同士共食いさせてんのかと思った」
「発想が物騒すぎる……いや、蠱毒か」
「何だよ犬夜叉知らねぇの」
ちょっと見てこいよ、あれ長いけど面白いんだから。
俺が犬夜叉について語ってやると夏油さんは術式の拡張に使えそうとか言って興味持ってくれた。
特に奈落の下りなんか、その手があったかとかな。
夏油さんは五条とか硝子先生の昔の話とかしてくれた。
七海とか灰原って後輩とかいたらしいし、ミミとナナとか言う俺くらいの子供を育てたりしてるらしい。
今の世界をどう思うとか愛染みたいなこと言ってきて、中二病で草とか言ったら苦笑いされた。
「実に有意義だったよ」
「最近暇だからまた会おうぜ、体術教えてよ。俺の最近の課題なんだ」
「いや、悟が怖いからね。これが最後かな」
「えー」
なんか喧嘩別れしたのは聞いたけど、別にアイツ関係ないのに。
まぁ、気になる年頃なのかな……大人になったらどうでもいいことにこだわる時期あるよな。
「本当はスカウトしようと思ってたんだ」
「さっきの呪術師だけの理想の世界みたいな奴?それ大丈夫、聖杯みたいに自分の敵対者皆殺しとかじゃない?」
「気になる話を言うんじゃないよ……どうだい、私の仲間にならないか?」
「フリーの呪術師になりながら活動するってこと?」
まぁ、活動はしないけどフリーの呪術師はありかなと思う。
いちいち命令されたりするらしいし、このままだと。
高専ハンターって俺は呼んでるけど、五条とか忙しいのは仕事バンバンくるからだし。
「アンタの言う世界で、津美紀はどうなんの?」
「非術師の猿は嫌いなんだ、居場所はないかな」
「頭ヴォルデモートかよ、危険思想過ぎる。じゃ、無理だわ」
そうか残念だよと言って、しょぼくれて夏油さんは帰っていった。
悪いけど、義理の姉がイジメられる世界はノーサンキューなんだよな。
「アイツ、食べていい?」
「呪詛師じゃない?」
「怪しいけど、俺より強いかもだからやめとこう。いい子だから」
夕方になって出てきたシロとクロを落ち着かせながら、家に帰った。