【悲報】下江姉、エッチを知らない   作:スラバヤサトゥ

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宣言します!

午後の陽光が差し込む正義実現委員会本部は、いつものように活気に満ちていた。書類の山と格闘する者、通信機器に向かって指示を飛ばす者、そして雑談に花を咲かせる者たち。

そんな空気の中、部屋の端っこに置いてあるソファの上で虚空を見つめていたツルギが口を開いた。

 

「……気配がする」

 

「えっ!?」

 

「敵襲ですか!?」

 

「ここでかっ…!ヴィッカースだ!ヴィッカースを用意しろ!迎撃態勢を整えるんだ!!」

 

委員長の独り言の域をでない、小さなぼやきに周りの者達は過剰に反応し、ドタバタと行動を開始する。

ガンラックから愛銃を引っ張ってくるもの、奥から三脚付きの機関銃を運んでくるものと各々が戦闘体勢を整える。

 

「ちょちょ!みんなちょっと落ち着くっす!まだ敵襲と決まった訳じゃ…!」

 

「仲正ぁ!いいからお前も銃を構えろ!」

 

「…ッすぅ…ツルギ先輩!」

 

「……」

 

イチカがツルギの名を叫ぶが、本人は無言を貫く。

心の中で地団駄を踏み、彼女も泣く泣く戦列に加わった。

 

「ほら、コハルちゃんも早く!」

 

「えっ!?あっ…うん!」

 

その瞬間、委員会室の扉が轟音とともに開かれた。いや、開かれたというよりも、蹴破られた様に見えた。

 

「ドアが!先週なおしたばかりなのに!ドアがぁ!!!」

 

誰かの悲痛な叫びがこだまする。

火の気は一切ないにも関わらず、煙が立ちのぼった。

誰かがスモークグレネードでも投げたか?そう疑問を抱く者もいたがそんな疑問はすぐに頭から消えた。

 

一年生は唾を飲み込み瞳孔を揺らす、二年生はストックに頬を強く押し付け冷静にサイトの向こうの景色を覗く…三年生は…舌なめずりをしニヤリと口角を上げる。

 

煙の中からカツカツと靴底の音が響く。

 

「射撃開s… 「……ただいま戻りました」!?ストップ!撃つな、撃つなぁ!」

 

静かに、しかし怒気を含んだ帰還を伝える声と射撃停止の命令が部屋に響いた。

 

「ごほっごほっ…」

 

扉の破片が床に散らばる中、ハスミが堂々と立っていた。その後ろには、少し困ったような表情のシオリが続いている。

 

「えー皆さんどうして射撃体勢なんか…」

 

ハスミの瞳には集合写真でも撮るかのように、整えられた列。

しかも全員が武器を構えており、真正面には重機関銃が堂々と鎮座していた。

 

「えっ!?あぁ…その…訓練の一環で…」

 

苦し紛れの言い訳。

副委員長を侵入者だと思い銃口を向けていたなんて流石に言えないが、委員会室のドアを蹴破るのもどうかと思うところもあった。

 

「なるほど、ご苦労様です」

 

「ははは…」

 

乾いた笑いをつくりながら各々、元の持ち場へと戻っていく。

 

「ハスミ…ゲヘナで会議中じゃなかったのか」

 

「終わりました…」

 

「えっ!?こんな早くっすか?」

 

イチカが恐る恐る声をかけるが、ハスミの視線は鋭く、誰もがその気配を感知した。

何かあったな…と。

 

「あぁ…もう思い出すだけで怒りが…!」

 

ハスミは目をつむり拳を握る。

その拳からはミチミチと音が鳴り、微かに震えていた。

彼女の正義の怒りがどこかにぶつけられない事を微かに祈っていたが…たまたま置いてあった作業用の脚立を蹴り飛ばした。

 

「許しません!ゲヘナ!万魔殿!角突きの悪魔!」

 

「悪魔って大体、角がついてるんじゃ…」

 

「だから言ったんです!負けたと書くだけで5㎝以上の歴史書をつくる連中です!!やはりそうでした!」

 

「それは流石に関係ないのでは!?」

 

ふぅふぅと怒りのエネルギーを放出するように息を吐くがそれだけでは収まりそうなに無かった。

 

「…絶対許しません…絶対に…」

 

「……ひっ…」

 

怒りを通りこしてもはや殺意だ。

一年生、二年生は勿論…ベテランの三年生、さらには付き合いが一番長いツルギも目を丸くし、口をつぐんでいた。

 

「よく聞いておいてください!何なら、レコーダーで音声を記録しておいてください、私はッ…!!!!」

 

ハスミは拳から人差し指を解き、天に向かって突き立てる。

 

「私は……羽川ハスミは…ここに宣言します!」

 

その場にいた者達の注目がハスミに集まる。

一体何を言うんだ?…まさかゲヘナへの復讐か?各々が思考を巡らせる。

 

「私はダイエットをします!!!!!」

 

外は呆れるほどの晴天…なのに雷の爆音が聞こえた。

 

「!?」

 

「????」

 

目をパチクリさせるツルギ…マシロも呆然と立ち尽くす。

 

「わお…」

 

イチカは目を見開き、小さく声をだした。

 

「ダイエット…ですか?」

 

「そう、ダイエットです」

 

「具体的には…」

 

「はい!私が一日二回以上の食事をした場合や、おやつに手を伸ばした際には…」

 

「さ、際には?」

 

恐る恐る、一年生が聞いた。

 

「撃ってください!ライフル弾どころか6ポンド砲でも構いません!」

 

「そこまでします!?と言うか、食事は三回してください!」

 

「そもそも、ゲヘナの会議とダイエットの繋がりは…?」

 

「それは…私の口からは言いたくありません!そこのソファを壊してしまうかもしれませんので!!!シオリ、あなたが説明してください!!!!」

 

「あぁ…」

 

部屋の片隅、空気を消しコハルの横で紅茶を啜っていたシオリ…そんな彼女に対して唐突に矢が飛ぶ。

先ほどまで副委員長に向けられていた委員会の視線が全て注がれる。

コハルは視線を察知するとすぐさま姉の影に隠れた。

 

「何があったんすか?」

 

「シオリ、話せ。流石に気になり過ぎる」

 

「イヤぁ…その…まぁ確かに…ハスミ先輩がこうなるのも無理はない状況ではあった…かも?」

 

シオリはカップを置き、腕を組みながら数時間前の事を思い出しながらゲヘナでの事を語り始めた。

 

 

 

 

 

 

数時間前…ゲヘナ生徒会、万魔殿の応接室での話だ。

ボディーチェックを無事乗り越えた二人は出されたお茶を飲みつつ、会議の相手を待っていた。

と言ってもお茶を飲んだのはシオリだけだったが。

 

予定時間通り、会議は始まった。

ハスミは正直、遅れてくるかと思っていたのでちょっぴり好感度が上がった訳だ。まぁ元々のハードルが低すぎたという事もあるだろう。

 

「なるほど…お前があの「剣先ツルギ」でそっちが「羽川ハスミ」だな」

 

「え?いや」

 

「えっとそのぉ…」

 

万魔殿のトップ…羽沼マコトは、足を組みながら最初にハスミ、その次にシオリに視線を向けてそう呟いた。

 

ここまではまだいい…人違いをされただけだ。ハスミもシオリも特に深く気にすることは無く、名前を訂正してもらおうと口を開けたが…それを上書きするかのようにマコトはつづけた。

 

「想定以上の規格外さだ、そしてそっちはかなりのピンクだな、不愉快だ」

 

対面する正実の二人をマコトは鋭い目でふんぞり返りながら眺めた。

 

「これがトリニティの戦略か…まぁ悪くない考えだ…が!そんなのはこのマコト様には通用しない!インパクトだけでは勝てないぞ!」

 

マコトはパチンと指を鳴らす。

 

「イロハ!サツキを呼んで来い!サツキならトリニティの奴らを一人で蹴散らせる!」

 

「「はい?」」

 

ハスミとシオリの抜けた声が重なる。

 

マコトの指示に応じて、一人の少女が会議資料から顔をあげる。

えんじ色のウェーブがかった髪を肩に垂らし、気怠げな表情を浮かべている。

棗イロハ…万魔殿の戦車長。AFV*1に関わる者達にとってはかなりの有名人らしい。

 

「えーと、マコト先輩…」

 

イロハは、ため息混じりにそう呟いた。

 

「こちらの方々はですね…右が副委員長の羽川ハスミさんでして…」

 

「むっ、ではそっちのピンクがツルギか」

 

「いえ…補佐で来られた下江シオリさんです……一応、資料にもあったと思いますが」

 

すすっとマコトの前に一枚の資料を滑らすイロハ。

 

「あと…胸の話をされているとしたら…それはもう残念ですね、多分サツキ先輩でも勝てません。あと髪の毛の色の話だとしたら一体、何の勝負をしようとしたんですか」

 

後輩の言葉を耳に入れつつ、マコトは目を細くし、資料に載っている内容を確認する。

相手のプロフィール欄を見たところでガバッと顔を上げ声を出した。

 

「なッなにぃぃ!?ツルギじゃないだと!?と言うかそっちはただの二年生じゃないか!」

 

「ただの二年生…」

 

「舐められたものだ、我々の相手は副委員長とそこらの下っ端だけで十分という訳か、トリニティめ!」

 

「いや、最初からそういう話でして…あと下江さんは下っ端ではなく…」

 

「…っ!まさかこの会議自体フェイクか!?我々を呼び出し、身長と胸部で脅迫し…下っ端に我々の情けない姿を見せる悪趣味か!?」

 

「いや、そもそもこの会議を主催しているのは私たちの方で…って聞いてます?聞いてませんよね?虎丸のアハトアハト撃ちますよ?撃っていいんですね?PzGr.ですよ?」

 

コントか何かか…万魔殿主演のホームドラマでも見ている気分になるハスミとシオリ…目の前の光景に圧倒される二人だった。

 

「クソっ!不愉快だ!固定資産税がかかりそうなぐらいデカい胸を見せつけおって…そして何なんだその色鉛筆のセットで芸術的な名前が付けられてそうなピンクは!なんで頭に翼があるんだ!意味ないだろ!体の一部をアイマスクにする気かぁ!?」

 

「マコト先輩、落ち着いてください。昨日のイブキのお絵描きの様子を思いだして気分をリセットするんです。あと、人の体のパーツに言及するのはやめてください、色々恥ずかしいです」

 

「最終手段だ!そっちのピンクはこの際どうでもいい…だがそのデカ女に負ける気はない!」

 

「デカ女…?」

 

先ほどまで静かだったハスミがピクリと反応した。

 

気配が変わった。

シオリは先輩の豹変を察知し、瞳孔が鋭くなる。まるで猫の目だ。

 

「その最終手段が何なのかまったくもって見当がつきませんが…この会議がすでに息を引き取った事は分かりました。『あーあーこちらイロハです、虎丸のエンジンを回しておいてください』…さ、逃げましょう」

 

「ん?」

 

ガタッとハスミが立ち上がった。

そしてそのまま机を思いっきりひっくり返し、有名な映画の怪獣の如く叫び、羽川火山を噴火させた。

 

「このぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

「えっと…まぁこんな感じですね」

 

ぽりぽりと頬を指先でかく。

シオリが話し終えると、その場にいた全員が口をあんぐりさせ立ち尽くした。

 

「………ふぅ…さてさて…えっとぉどこから触れようかね」

 

「やっぱ、ゲヘナってやべぇですわ…色んな意味で」

 

「ぶっちゃけ、ハスミ先輩も……いや、言わないでおくわ」

 

「ノンデリカシーと言うか…脳みそがくるみ並みの大きさなのか…うーむ、ハスミがキレるのはしかたないと思うけど…」

 

「とりあえず会議は失敗…ゲヘナで副委員長が暴れたと…あれ?これ普通に外交問題じゃ?」

 

あれれ?まずくない?これティーパーティーからの雷案件では?と言ったイヤな空気が流れるがシオリが一言。

 

「あ…そのゲヘナ生徒会のイロハさんから公式な謝罪を貰ったのでこの件から戦争勃発!とはならないので安心してください…まぁハスミ先輩次第ですけど」

 

「さ、流石にここから攻める…なんて真似はしませんよ…謝罪もしっかりしてましたし」

 

「……ここでおっぱじめたらエデン条約なんて夢のまた夢だからね…」

 

「というかシオリは大丈夫なの?ピンクだとか、言われたって…」

 

「いやぁ…まぁ私は確かにピンキーだし」

 

そういって髪の先を指でくるくる遊ぶシオリ。

髪の件も、頭の翼の件も特に気にしていない…というか頭の翼は本人も何用にあるのか理解していない。

使い道…マコトが言ったようにアイマスクか、咄嗟の目の保護くらいだろう。

 

「まぁ本人が言うなら…」

 

「逆にあそこまで言われて、ダイエットに走るハスミ先輩はなんというか…かなり健全っすね」

 

「と、というか胸の大きさと身長ってダイエットでどうにかなる話じゃないんじゃ?」

 

「なんなら、少し私に分けて欲しいくらいだよ…はぁ…第二次性徴なんて机上の空論だ…ったく」

 

「では言った通り、私はダイエットを開始します!」

 

「が、がんばってくださーい」

 

「あぁ…そうでしたシオリ」

 

「はい?」

 

ハスミはシオリの元に歩んでいき、はっきりと皆に聞こえる声で言った。

 

「以前あなた、食事制限中だと話していましたよね?」

 

「え?」

 

グランドスラム爆弾以上の火力を誇る爆弾発言が正実の本部に轟いた。

ざわつく空気の中、全員の視線シオリへと移っていった。

コハルも「え?そうだったの?」と言いたげな目で姉を見上げる。

イチカは豆鉄砲でも食らったような顔のシオリを見て、笑いをこらえているようだった。

 

「先人の知恵は偉大です、私をどうか導いてください」

 

「え、えぇ~~~~っ!?」

 

思わず声を裏返したシオリは、後ずさりし周囲の視線を避けるように叫ぶ。

ハスミはそんな彼女の手を拾い上げて両手で握った。

真剣で熱い先輩の手と視線……シオリの目が渦を巻いていく。

 

(えぇ?ハスミ先輩!それ流石に人前でいう事じゃないよぉ…!と言うかあれ、咄嗟に出た嘘と言うか…)

 

「…シオリが菓子に手を出したら、撃てばいいわけか」

 

「ツルギ委員長!?」

 

表情を一切変えずにツルギがそうぼそっと呟いた。

シオリの全身の鳥肌が一気に立つ。

 

「いいえ、その罰は私だけにしてください…シオリには私の見守り役兼、コーチとして…」

 

「……」

 

シオリは目をつむり、小さく唸る。

 

「すみません!少しお時間を!!!!!」

 

バタバタと部屋を飛び出していく彼女を、委員たちはぽかんとした表情で見送った。

 

廊下の突き当たりにある鏡の前。シオリはそっと制服の裾を持ち上げる。

他の正実委員と違って彼女はお腹を出さない…理由は羞恥心ではなく単純に腹を冷やし、トイレに永住する事になるのを避けるためだ。

 

恐る恐る、自分の腹部を見下ろす。心臓の音がいつもよりうるさい。

 

(……あれ……なんか……)

 

思っていたより、ほんの少しだけ、柔らかい感触。むちっと、とは言わないまでも――

 

「……あ、あれぇ……?」

 

冷や汗が背中をつたう。

 

「……こんな……だったっけ……?」

 

記憶と鏡の映像が一致しない。

 

が…

 

下江に電流走る。

 

普段の食生活に心当たりは――ある。

夜食…うどん…そしてコーラ、しかもスタンダードタイプの方だ、カロリーと糖分がゼロじゃないタイプのヤツ。仕方ない…オリジナルテイストの方が味が好きなのだ…

それをデスクに広げ、映画を見る日々。

 

「……ダメだ……これは誤魔化せないやつだ……」

 

制服の裾を整え、ゆっくりと息を吐いた。

 

「……よし、やるしかないかぁ……」

 

気を取り直して委員会室に戻ると、再び注がれる仲間たちの視線。だが今度は、少しだけ背筋を伸ばして、シオリははっきりと言った。

 

「わ、私もやらせていただきます!!!」

 

 

 

 

「と、とは言ったものの……」

 

「お姉ちゃん…」

 

「食事制限なんてしたことないよぉ!!!」

 

午後八時。下江家のリビングには、空調の穏やかな風と、ちょっぴり情けない姉の叫びがこだましていた。

 

ふわっとした部屋着に身を包み、ラグに正座したシオリが、突如として妹にしがみつく。まるで劇場型絶望の演技をかますかのように、ひざまずきながら顔をコハルの腹に埋めた。現実逃避するかのように頬をすり寄せている。

 

「うぅ……いいよねぇ……コハルはスレンダーでさぁ……」

 

「え、えぇっと……お姉ちゃん?」

 

シオリは涙ぐんだ目でコハルを見上げ、鼻をすすりながら妹の着ているゆるいパーカーの裾を持ち上げた。

 

「こ、これくらいスッキリしたウエストになりたいよ……」

 

「いやいや、お姉ちゃんも十分スッキリしてるって!」

 

「スッキリの定義を一文字で述べよ」

 

「述べさせる気ない!」

 

パーカーの下から覗く、白くてなめらかな腹部。

そのすぐ目前まで顔を近づけ、シオリは鼻をひくつかせながら真剣に羨ましそうな表情を浮かべた。

 

「すべすべだぁ……お肌も透明感あるし……あ、これ何?この黒い線、首からしたまでつながってる?ナニコレ」

 

「や、やだもう!お姉ちゃん変なとこ触らないでよっ!」

 

顔を真っ赤にしてコハルはパーカーの裾を慌てて下ろし、バタバタと後ずさる。

 

しかしシオリは、じたばたする妹の手足を全く意に介さず、床に突っ伏したまま虚空を見つめて呟いた。

 

「明日から…葉っぱと水……それでいこうかな……」

 

「だ、だめだよ!?倒れちゃうってば!」

 

「じゃあパセリサラダ……あ、やっぱやだ、あれだけは食べれないや、食べれる人の気が知れないんだよね、アレ」

 

まるで逆転した年齢構図。

妹が、全力で姉を心配する構図になっていた。

 

「……もぉ、本当に……」

 

コハルは呆れたように笑って、そっとシオリの頭を撫でた。

いつものカッコよく頼れる、憧れの姉の姿はどこへやら…といった感じだが、求められている現状に自分が姉になったような、なんとも言えない感覚を刺激されちょっぴりゾクゾクしているコハル。

 

「私も一緒に考えるからさ。がんばろう? ね?」

 

「うぅ……うん……コハルは天使だよ……」

 

顔をすり寄せる姉を受け止めながら、コハルはやっぱり困った顔をしていた。

 

「多分、お姉ちゃんはあのうどんを控えるだけでいいわよ」

 

「えぇ…?」

 

「だって、お姉ちゃんって委員会だと『とりあえず投入しとけば大抵の事は解決する』みたいなポジションでしょ?」

 

「そんな、万能兵器になった覚えはないんだけど…」

 

「……と、とりあえず…運動量はいつもの任務で十分でしょ?だから」

 

「うどんを控えればいいと」

 

こくりとコハルが頷く。

 

「頑張る」

 

「うん!」

 

「でさ…」

 

「?」

 

「私はそれでいいんだけど…は、ハスミ先輩はどうすればいいのかな…私、ダイエットの経験ないんだよね…」

 

ハスミはシオリを『ダイエット経験の先人』として頼ってきた。

だがそんな経験は皆無なので、せめて知識をインプットしたいわけだが…そこらに転がっている情報やよく聞く話は信ぴょう性にかける。

 

「…ハスミ先輩は…多分、お菓子を本気で控えるだろうから…やっぱり委員会の基礎訓練とか任務をこなしていけば自然に痩せるんと思うけど…」

 

そもそも、ハスミ先輩は十分痩せているのでは…と心の奥で思っているコハルだ。

というか、あの豊満なボディーは正直憧れると言うかなんというか…がしかし本人は気にしている為、口にはできない。

 

「ねぇ…コハル…今ちょっぴり調べたんだけどさ」

 

「ん?何お姉ちゃん」

 

「えっと、楽しく、気持ちよく痩せれる方法でさ」

 

「そ、そんな一石三鳥な話があるの…?」

 

コハルはなんだかイヤな予感を察知し、身構えた。

 

「えっとね?二人でやる方法なんだけど…一人が寝て、もう一人がまたがって…そこで腰を…」

 

「ダメ!!!!!!」

 

シオリが言い終わる前にコハルが瞳孔を鋭くさせ、顔赤くさせながら叫ぶ。

そして姉のスマホをプロのスリの如く瞬時に奪いとった。

画面を覗くと…ビンゴ、思っていた通りの内容だった。

ダイエット情報なんかじゃない…そこに広がっているのはピンクでジョーク、セクシーな世界。

 

きっと姉は『ダイエット』とだとかで調べたハズだ、なのにこんなページに辿りつく…無知の癖に、そう言う話にたどり着くのが上手い……イヤ、そう言った情報が姉に集まってくるのか…?

 

とにかく!触れさせては行けない!

 

「コハル、急にスマホを取らないでよ~」

 

シオリはいつも通りの笑顔で返還を求める。怒りは微塵もない。

 

「あ、ごめん…」

 

コハルは早急にページを削除し、スマホを返す。

 

「あれ?ページ消しちゃった?」

 

「そ、その…それ偽の情報で有名なやつで…!」

 

姉に嘘をつくのは苦しいが…致し方ない。

実際にその行為で瘦せれるのかは…分からない、けど激しいモノもあるから運動量は相当だろう…がそんな事を姉とハスミ先輩にはさせられない…ちょっぴり見てみたいという邪険な思惑もあったが頭を振りかき消す。

 

「と、とにかく変な事をするよりは訓練とかした方が絶対良いって!」

 

「……そうだね、お姉ちゃんがんばるよ!」

 

姉妹はがっとお互いの手を握った。

*1
装甲化された戦闘車両の総称。




回想みたいな感じとは言え…やっとトリニティ以外のネームドキャラが出てきました。
マコトもイロハも好きですよ、愉快で楽しくて可愛らしい方々です、ごめんねアコちゃん。


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