【悲報】下江姉、エッチを知らない   作:スラバヤサトゥ

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お疲れ様です。

ば、バーが満タンに…感謝してもしきれませんありがとうございます。
頑張って続けます、よろしくお願いします。


風邪とテストとえだし本

玄関の扉を開けると、朝の光が勢いよく差し込んできた。

冷たい空気を含んだ風が足元を撫でるが、空は雲ひとつない青。

自然のざわめきと動き出した人々の音…そして相変わらず、街並みにの上に輝く巨大な光輪。

 

「うわ、いい天気……」

 

コハルがルーズソックスを引き上げながら、眩しそうに目を細めた。

帽子がずれていたので靴箱の上に置かれた小さな鏡を見ながら位置を直す…が服がずれ肩がかなり露出してしまっている事には触れないようだった。

鞄を肩にかけ、何度か靴を踏み鳴らしてフィットさせると、くるりと振り返る。

 

「お姉ちゃんは安静にしててよね!」

 

「あはは……はいはい、わかってるよ。いってらっしゃい、コハル」

 

シオリは玄関の奥、廊下の陰から毛布を肩に羽織ったまま顔を出していた。パジャマ姿にスリッパの音がぺたぺたと響く。額には熱さましのシート、頬はうっすら赤く染まり、寝起きの声は少しかすれていた。

ドアの隙間から射す朝の光に、思わず目を細める。

 

「無理しないでよね…雨の中、傘もささず、レインコートも着ずに戦闘するから…」

 

「だって…余裕ないし…邪魔なんだもん…」

 

「そのせいで風邪ひいたのよ?もう…」

 

コハルは唇を尖らせながらジトっと姉を見つめた。

そんな妹の表情をシオリはバツの悪そうな笑みを浮かべながら、うなじをポリポリと掻く。

妙な空気が流れ「あはは」と控えめに笑った。

 

「大丈夫大丈夫これくらいで寝込んでたら正義実現委員会にはいられないよ~」

 

「全然説得力ない…その状態で銃撃戦とか行ったら、流石のお姉ちゃんでも救護騎士団行き…いやもう行ってきた後ね…」

 

「いやいや、ほら……根性でなんとか」

 

「寝なさい」

 

ピシッと指を差され、シオリはぴたりと口を閉じた。

どう見ても妹の方が上手だ。元気がないぶん、反論のキレも鈍い。

 

「お昼どうするの?作るの禁止だからね?お鍋開けたら警報鳴るようにしてあるから」

 

「えっ……こわっ、我が家ってそんなセキュリティだったっけ……冗談だよね?」

 

「お姉ちゃんが冷蔵庫の中の材料で無理やり料理しようとするからでしょ。前みたいにウィンナーとイチゴジャムでチャーハン作るとか、やめてよ?」

 

「あれは実験だよ!あと、普通に美味しかったし」

 

「うそだ!!お姉ちゃんあのあと無言で水飲んでた!!」

 

「お、お粥ぐらいは作って良いでしょ?ね?」

 

「まぁ…うん」

 

「えへへ」

 

わちゃわちゃと、体力の限界が見えかけてるくせに口だけは元気な姉と、それを容赦なく止める妹。

そんな二人のやり取りに、朝の日差しがふわりと差し込む。

 

「……じゃ、ほんとに行ってくるね」

 

「そうそう、私の心配より自分の心配をね」

 

「その言葉…お姉ちゃんにそのまま返すから」

 

くるっと振り返ったコハルの背中に、シオリはちょこんと手を振った。

 

「いってらっしゃい、我が妹よ〜健闘を祈る〜」

 

「……うん、じゃあお姉ちゃんも……早く治してよね」

 

ふと、その言葉だけは、少しだけ声が優しくなった。

 

 

「……はぁ~」

 

扉が閉まり、静寂が戻るリビング。

一人残されたシオリはふぅと息をつき、毛布の裾を直してソファへと歩く。

 

柔らかい塊に身を預けて、毛布を引き上げる。

室内はぽかぽかと暖かく、空気清浄機の微かな駆動音だけが空間を満たしていた。

 

シオリはまぶたをゆっくり閉じてみる。

 

(全員、テスト……かぁ……)

 

コハル、委員会の皆…と言うかトリニティの全員が試験を受ける日。

 

コハル…張り切ってたなぁ。

最近は勉強を見てあげる事も出来ていなかったが…あの子なりに頑張っている事は知っていた。

きっといい点数を引っ提げて英雄のように帰還するだろう。

 

前日に姉妹で最終確認…みたいな事もしたかったが…まぁ私が完全にダウンしてたわけで…熱っぽさと喉の違和感でベッドからほとんど動けずだ。

 

今の時点で、リビングまで出てこれたのは奇跡に近い。

セリナちゃんからもガチなトーンで安静にしろって言われちゃったしなぁ。

 

(みんな頑張ってるのに、私だけ……)

 

罪悪感。

その単語が、じわじわと喉元に溜まってくる。

 

自分がサボってるわけじゃない。風邪だ。

体調不良という、正当な理由があるはず。

 

テストをさぼる…流石にそんな勇気ある行動と言うか、ぶっ飛んだ思考になる人は果たして存在するのか。

いたら握手したいかも…そして友達に…なんか楽しそうだし。

 

「私は…病人…」

 

けれども――それでも、なんだか胸の奥がざわつく。

 

「みんな今ごろ……着席の時間か…」

 

うっすらとした罪悪感が、毛布の中でじんわりと広がっていく。

シオリはそっと目を閉じてみた。

 

だけど、眠れない。

 

体がだるくて力が入らないのに、神経だけが変に起きている。

スマホをいじる気にもなれない。

ゲームはコントローラーを動かす力がでないだろう、何しろ脳が疲れる。

 

「映画でも観ようかなぁ……」

 

リモコンに手を伸ばしかけて、すぐに思い直す。

 

観たい映画が浮かばないし、そもそもそこまでの体力がない。

アクションは多分興奮して風邪が悪化する…ホラーは多分ショックで悪化する……何を見てもダメな気がした。

 

というか…娯楽を楽しむのは如何なモノか…皆は机に向かっているのに私だけ横になりながらなんて。

 

「ごほっごほっ…」

 

寝たくない時に眠くなり…寝たいときに眠くならない。

 

睡魔よ、私はココだ!早く来い!

今日はいくらでも受け入れてあげるから!

私の胸の中はほぼコハル専用みたいな感じだけど今日は来て良いから!!

 

「……」

 

部屋に響く空気清浄機の駆動音がいつもよりうるさい。

 

「ふぅ……」

 

ソファの上で毛布にくるまりながら、何度目かの溜め息をつく。

体はだるい。けど、眠くもない。頭だけが微妙に冴えていて、どうにも落ち着かない。

 

(ここで丸まってるのも、限界かな……やっぱ寝るのはベッドだよね…)

 

気を奮い立たせて、シオリはゆっくりと体を起こす。

汗ばむ額を拭いながら、脚を床に下ろすと――ひんやりとした感触に軽く身震いした。

急いでスリッパを履きなおす。

 

ふらふらと立ち上がり、ドアを開けて自室へ向かう。

廊下の静けさが、やけにしんと胸に染みた。

 

「……うん、寝よう。今度こそ、ちゃんと寝よう……」

 

自分に言い聞かせるように、呟く。

ドアノブに手をかけた、そのときだった。

 

「ん……?」

 

足元、ドアの脇に何かが落ちている。

 

一冊の本だった。

ピンク色の装丁に、ふんわりとした制服姿の女の子二人が描かれている。

 

表紙の中央にキラキラと箔押しされたタイトル――

 

『ピュア・ラブ・スクール☆』

 

漫画…にしては薄いし、サイズが大きい。

 

「……コハルの…かな?」

 

ゆっくりしゃがみ込んで拾い上げると、ほんのり甘い香りがしたような気がした。

どこかで見たことがあるような、ないような……それでも、どうしてこんなところに?

 

(玄関出るときに落としたのかな……?それとも、昨日の夜……?)

 

よくわからないまま、シオリはそれを胸に抱えた。

そのままふらふらとベッドに向かい、ぽすんと身を投げ出す。

 

天井を見つめる。

 

風邪。熱。罪悪感。眠れないこの現状。

そして手元には、多分妹の私物。

 

「うぅん…」

 

表紙を眺め…顔に近づけた。

ぴくりと鼻が動く。

 

「コハルの匂い…する気がする」

 

風邪で舌もやられたが嗅覚もいかれてしまったのかもしれない。

…妹の匂い…安心する。

 

「…………ちょっとだけ、暇つぶしに……読んでる内に…眠れるかもしれないし…」

 

ページの端をつまみ、そっとめくる。

 

「……」

 

最初の数ページは、わりと普通の学園モノだった。

転校生がやって来て、クラスのムードメーカーと出会い、ぎこちないながらも少しずつ距離が縮まっていく……という、どこかで見たことがあるような、でも悪くない感じの物語。

 

「ふふ……わりと好きかも、こういうの」

 

シオリは笑みを浮かべながら、ページをめくる指に少し力を込めた。

だが、物語が進むにつれて――何かがおかしい、と感じ始めた。

 

キャラクターたちの台詞が、徐々に妙に息が多くなってきた気がする。

 

『ねぇ、○○……あのね……』

『……そんなこと、言われたら……私……』

『ち、近いよ……こんなとこで……』

 

「……なんでこんなに顔、近づけてるんだろ……」

 

ページをめくるたびに、キャラ同士の距離感が縮まっていく。

背景は消え、なぜか空間がキラキラしてくる。

空気感は完全に“それっぽい”だが、肝心の内容はまだシオリの理解の外だった。

 

「あ、キスった」

 

なるほど、これがラブコメって奴か…コハルも読む年ごろか。

そうシオリは目を細め唇を尖らせた。

 

「え?……この後、どうなるの?」

 

ふと、次のページを見た瞬間――

 

「あっ、また制服しわくちゃにして……これ、学校だよね…あれ?でも、これってなんか……?」

 

「ええ?脱いじゃったよ…すっぽんぽん…」

 

「むむむ…そのまま抱き合うのね?まぁ地肌が一番温まるってよく聞くし」

 

シオリはひとり納得したように頷いた。

お互いの腕を絡めて、ぐいっと引き寄せる描写が続く。

 

「……え? 今度はベッドに?ほ、保健室…」

 

ページをめくる指が少しだけ迷った。

でも、ここまで読んだら結末が気になる。

 

その前に鼻をかむ…鼻水がずるずるしており気持ちが悪い。

もう数枚テッシュをつかみ取り痰を吐く。

 

唾を飲み込んだ時に喉が痛むヤツ…あれが今回は発症していない為それだけでかなり楽に思えた。

 

「あ…ゴミ箱がテッシュでいっぱい…捨ててくるのもめんどうだしいいや…」

 

ゴミを無理やり押し込みまた、ベッドに横たわる。

 

「さて…続きを…」

 

シオリはページをめくり次のコマに視線を落とした。

 

「うわっ、なにこの擬音……ど、どうやって発声してるのこれ!? 体からこんな音出るの!?」

 

なんだこの肉を潰しているみたいな音は…なんかグロいというか…何と言うか…

 

ぱたん、と一度本を閉じた。

少し力強く。

 

「…………」

 

シオリは腕を組み、真剣な表情で天井を見つめた。

顔が真っ赤だった。

パジャマのボタンを外し、前を開けキャミソールをパタパタと引っ張り風を作る。

 

「これは、たぶん、あれだよね……医療……か、運動……?キスは…人工呼吸?でもわざわざ服を脱ぐ理由がなぁ…セリナちゃんに聞けば分かるか…な」

 

何かを納得しようとするようにコクリと頷き、またページを開く。

 

「たぶんこう……背中の筋肉を鍛えてるんだよね。うん、ストレッチとか、大事だし……」

 

ぶつぶつと独りごとを言いながら、読み進めていくシオリ。

読めば読むほど“運動”からは遠ざかっていくが、本人はまったく気づかない。

 

「でもラブコメでしょ…?えぇ?」

 

額の汗を拭きとり、唸る。

 

「熱っつい…」

 

風邪だからもあるが…それ以外の理由もある気がする。

頭も熱いが、お腹も熱い…まぁ冷えるよりはマシだろうか。

 

スポーツドリンクをひと口飲み、喉を潤しながらシオリはうなずいた。キャップをポンと閉めて再び本に向き直る。

 

「『来て!』ってなに…何が来てほしいのさ…主語を言え主語を…」

 

キャラクターの発言に突っ込むほどには真剣に読む。

漫画には中々うるさい下江姉である。

 

「……あ、これ背筋のトレーニングだ。きっと。体幹を鍛える感じの。ね、そういう体勢あるし。うんうん…これ筋トレ漫画…いやでもキスするからラブコメ…むぅ分からん」

 

「ラブコメってこんなストイックと言うか…ハードと言うか…こんななんだ…しっかり読むと結構面白いかも…やっぱり食わず嫌いって駄目なんだなぁ…」

 

ページをめくる手が止まらない。紙が指先をくすぐるたび、脳のどこかがむず痒くなる。息を止めるような緊張感と、よく分からないけどドキドキする感覚。

 

――そして、ついにその瞬間がやってきた。

 

「えっと…『つづく』?」

 

「…」

 

その文字を見たやいなや、じっとりしていたシオリの目が猫のように鋭くなった。

 

「はっ!? こ、ここで終わり?」

 

思わず、寝床の上で身を乗り出して叫んでしまう。

 

その拍子に、喉が急にチリチリと痛み出す。

 

「けほっ……げほっ……うぅ……ッつ……!!カっ…こっ…カっ!!」

 

鶏のような声が出た。

咳き込みながら、胸を押さえてゴロンと布団に倒れこむ。

バサバサと翼が無意識に動き、何枚か羽がシーツの上に落ちる。

涙は溢れ、口から唾液が垂れる…一瞬で絶対に人に見せてはいけない顔になってしまった。

急いでタオルで顔をこする。

 

「も、もう、なんなのよ~……」

 

赤くなった顔を隠すように毛布をかぶり、シオリはぐるぐると転がった。風邪なのに落ち着く気配はどこにもない。

『安静にしている』…と妹と交わした約束を完全に無視していた。

 

枕元に転がる“筋トレラブコメ本”。その表紙をじっと見つめながら、シオリはポツリとつぶやく。

 

「……続き……気になる……」

 

そのまま、ひとつくしゃみをして、鼻をかんだ。

シオリはいつのまにかこの薄い本の虜になってしまっていたのだ。

モヤモヤした気持ちと倦怠感が体の中で蠢く。

 

「コハルに言えば…続きを貸してくれるかな…」

 

シオリはぽつりとつぶやいて、枕に顔をうずめた。

 

汗のにおいがする。

コハルの匂いが恋しい。

 

布団の中でごろりと寝返りを打ち、もう一度翼をばたつかせる。羽がばさばさと音を立てて、また一枚、二枚と落ちる。

 

「はぁ……はしゃいだせいで、悪化した気がする……」

 

自己嫌悪と熱っぽさがじわじわと体を締めつける。熱は高くないはずなのに、妙にお腹の奥がむずむずして、喉の奥はじんわり熱い。

 

「…眠い…」

 

ここにきて睡魔が襲ってきた…もう少し早く来て欲しかったなぁ…

まぁいいや、君を歓迎するよ…あぁ…世界よ、お休みなさい。

 

 

 

 

 

 

靴を脱ぐ動作が、いつもより重たかった。

 

午後の陽光が傾き始めた下江家の玄関に、コハルの小さなため息がふわりと漏れる。

 

「……ただいま~」

 

声に力はなく、扉の開閉音とともに、かろうじて家の中へ届いた程度だった。

制服の肩が少しずり落ちていたのは、たぶん、あの試験のせいだ。

 

国語と歴史はまだいい…科学も…うん…けど問題は数学だあれはもう、完全に“初見殺し”だった。途中から、出題者は私に個人的な恨みでもあるんじゃないかと思ったくらいだ。

 

「はぁ……やっぱり、範囲広すぎなのよ……」

 

リビングに入ると、部屋は静かだった。

電気もついていない。

テーブルの上にはポットと、飲みかけの麦茶のボトル。少し乱れたクッション。

姉がここで過ごしていたらしい痕跡が見える。

 

(寝てるのかな……)

 

コハルは靴下を脱ぎ、ぺたぺたとフローリングを鳴らしながらそっと自室とは反対の廊下を歩く。扉の前で立ち止まり、軽くノックをしてみたが、反応はなかった。

 

「……入るね」

 

小声で断ってから、静かにドアを開ける。薄明かりの中、部屋の中はひんやりと落ち着いた空気に満たされていた。

 

視線の先――ベッドの上に、シオリは静かに横たわっていた。

近づいてみると、すやすやと浅い呼吸を繰り返していた。

 

(…ふぅ…良い寝顔…綺麗だなぁ…お姉ちゃん)

 

涙の跡が頬に残っていたためそっと指で拭う。

 

大好きな姉…疲れも相まって、抱き着きたい衝動に駆られるが…相手は病人、姉にも自分にも悪いのでぐっとこらえる。

 

口元を緩め、姉の姿を眺めているコハルだったが…ふと“ある物”が目に入った。

 

見覚えのある薄い本。

本と呼ぶには薄すぎる…冊子と言った方が正解だろうか。

 

ぼふんと何かが弾けた。

 

(????????????)

 

風邪ではないのにコハルの顔が急速に赤くなっていく。

瞳孔が猫のように鋭く変化した。

 

目にもとまらぬ速さでその本を回収し、自分の胸元に抱える。

 

(な、なんでコレがお姉ちゃんの枕元に!?)

 

試験の疲れが吹き飛ぶほど、頭が一気に冴えた。

 

(私のよ…ね?お姉ちゃんがもってるワケ無いし…でも枕元に在ったって事は…)

 

読んだ。

 

その結論が脳内におりてくる。

 

(……お…おおおお…お姉ちゃんが私の部屋からわざわざ取ってきて読むなんて事はない!絶対にない!あってたまるもんか、そんなお姉ちゃんイヤだ!!まさか落ちてた!?何やってるのよ過去の私!バカコハル!というかそれを拾って読むお姉ちゃん…イヤだ!イヤよ!死刑!死刑!しけぇぇぇぇぇい!!!)

 

静かにしなければならないのに翼がうるさくはためく。

声は出さなかったことを褒めて欲しいぐらいだ。

 

(……ちょ…ちょっと待ちなさいコハル…)

 

一度深呼吸をし、冷静に考える。

 

姉は無知だ…それはそれは無知だ…信じられないほどの無知加減だ!

天下一品の無知だ…無敵の無知だ…!むっちむちの無知だ!

 

だから…この本を読んでも、内容を理解できないハズ。

仮に、仮に…この本をラブコメだと解釈しても姉は恋愛モノを好まないので途中で投げ出すに違いない…!

 

つまりセーフ。

 

そうコハルは無理やり結論付けをしようとしたが…彼女の結論はその後すぐに台無しになった。

姉の顔ばっかり注目していたが…よく見ると、布団から覗いた姉の服…パジャマのボタンが全てはずれ、キャミソールの肩紐も片方落ちている…短パンも少し下がってるように見えた。

 

そして、なにより——

 

「……なんでティッシュ、こんなに使ってるの?」

 

ゴミ箱から溢れかけのティッシュの山。風邪のせいかもしれないけど、ちょっと異様な量だ。

 

「………………」

 

コハルの脳裏に、いくつかの“推測”がよぎる。

 

(ま、まさか……いや、でも……うーん、でも……いやいやいや)

 

ブンブンと頭を振る。

 

(いやいや! 風邪だから! それに、お姉ちゃんはそんな…!)

 

──そうなると枕元にあの漫画は、どう考えても言い訳がしづらい。

 

(違う!違う!寝相がちょっと悪いだけよ!私のバカ!変な事考えないの!!!)

 

コハルは例の本を潰れてしまうレベルで抱きしめながら背筋を伸ばす。

 

「………安静にしてよぉ…お姉ちゃん」

 

目いっぱい息を吸いながら天を仰ぎ…小さく漏らした。




最近シオリが残念な姉にしか見えなくなってきました…まぁいずれバリバリな彼女が帰ってくると思います…多分。

コハルは料理できるのか…できると思います、私はね。
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