【悲報】下江姉、エッチを知らない   作:スラバヤサトゥ

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誤字報告、感想ありがとうございます。

あ、3Dティーパーティーの三人良すぎましたね。


戦争を軽蔑する者

議論、というにはあまりに剥き出しの感情が飛び交う。

言葉がぶつかるたびに、テントの布が揺れるような気がした。

私は、端の席でおずおずと手帳を握りしめるしかできない。

 

(イチカちゃんの言う通り…ツルギ先輩が来たら万事解決だけど…そう事が上手く進むかなぁ…)

 

そんな風に思いながらも、心臓の鼓動は早まっていた。

この空気は、居心地が悪い。ただでさえ、私はこういうのに慣れてないのに……

というかなんだろう…背中に謎の威圧感が…頭痛薬、どこにしまったっけって言っても意味ないか。

 

──その時だった。

 

「……静かにしろ」

 

低く、通る声がテントの外から響いた。

テントの入り口が静かに開かれる。

そこに現れたのは、真紅の瞳を宿した――

 

「委員長……ツルギさん……」

 

その一言で、すべてが変わった。

あれほど喧しかった空間が、嘘のように静まり返る。

誰もが彼女の一歩を見守っていた。私も、息を飲んでいた。

 

声にならない声が漏れ、誰もが道を空ける。

ツルギは無言で中央のテーブルへと歩き、資料を一瞥する。

 

「……緊急事態だ」

 

ピリピリしていた空気が、一瞬で霧散するように収束していく。

各方面から『戦術兵器』と恐れられる暴走マシーンのような姿ではない…落ち着いており、威厳のある様子はまさしく正義実現委員会の委員長だ。

 

「緊急事態?」

 

「あぁ、戦線に動きがあった」

 

その一言に皆が反応した。

 

ツルギは地図に載っているとある平原に指を置く。

弾薬庫を中心に見て数キロ地点…ビーツ畑が広がる場所…他には林があるのみだ。

そんな場所で一体なにが起きたというのだろうか。

 

「先発した偵察部隊がやられた」

 

「…ツルギ、待ってください。トラック2台で構成された機械化部隊ですよ?そう簡単に…」

 

「対戦車砲。負傷者はいないが、残りは機関銃と砲に狙われて釘付け状態だ」

 

装甲がひしゃげ、燃えている車両…そして地面に張り付いている仲間の情景が目に浮かぶ。

戦闘が始まってしまった。

 

「即座に救出部隊を編成した方がよさそうですね」

 

「ですが…攻勢部隊からこれ以上兵力を裂くと…」

 

「少数がいいだろうな、イヤ少数じゃないとダメだ救出地点そのものが罠かもしれない」

 

「部隊を投入してそこに例のデカい砲で蹂躙されたらたまったもんじゃないからな」

 

(……誰が、指揮するんだろう)

 

ほんの一瞬、問いかけるべきかどうか迷った。

気づかないふりをしていれば、誰か他の誰かが声を上げるかもしれない。

 

だが、心の奥に残るざらつきが、それを許さなかった。

静かに手を上げた。声も、静かに。

 

「…その少数なのは良いとして…その部隊の指揮官は?」

 

シオリが眉を八の字にし、恐る恐る聞いた。

一瞬、空気がピタリと止まる。

その場の誰もが思いつく平凡な質問…そんな問いに皆が顔を見合わせ言った。

 

「シオリ。任せた」

 

「はい?」

 

「そうだな、そうしよう」

 

「いやその…」

 

「そうっすね~シオリが良いと思うっす」

 

「イチカちゃん!?」

 

先輩達からは任せたみたいな感じで言われるし、同級生からは『ドンマイ』とでも言いたげな眼で見られるし…友人は笑ってるし…

ハスミ先輩にいたっては救援の視線を送っても微妙な顔されて目をそらされるんだけど。

 

「つ、ツルギ先輩は…ど、どうお思いで?」

 

「………弾薬庫の事は考えなくていい、仲間の救出に全力を注げ」

 

「あっ…ハイ」

 

貴女もですか…そうですか!

と言うかなんでそんな落ち着いてるんですか、いつもみたいにこの世のモノとは思えない声出してくださいよ。

 

「ハスミ。シオリ以外の人員は任せる…救出部隊は編成次第出撃、本隊は30分後だ」

 

「分かりました」

 

そう言いツルギは去って行った。

彼女の気配が消えるや否や、シオリは頭を抱え机に突っ伏す。

 

「…な、なんで」

 

「まぁ言い出しっぺの法則ってのがあるしなぁ」

 

何かを否定する暇すら与えられなかった。

 

「アレだ、最後にボールを触っていた人が片付ける奴」

 

「私、昼に校庭でフットボールするタイプの人間じゃないんですけど…」

 

「今、最も状況を正確に把握しており、作戦意識を持っている者が指揮を取るのが自然だろう」

 

シオリの目の前の空間が、ゆっくりと重くなっていく。

空気が肩にのしかかるような感覚だった。

抗うべきか迷うよりも先に、あまりに自然な流れで任務は彼女の肩に置かれた。

 

テーブルの上、地図の中心にある赤い印が、不意に重く見えた。

 

ここにいるのは、戦術を語る者たち。

「適任」と判断された以上、その言葉に理由は必要なかった。

 

(……言わなきゃよかった、なんて言わない)

 

(でも……やるって決めるのに、ちょっと時間はほしいかも)

 

深呼吸を一つ。震える指先を膝の上で隠しながら、シオリは姿勢を正した。

 

「……わかりました。下江シオリ、任務指揮、拝命します」

 

言い切った瞬間、背中がほんの少しだけ伸びた気がした。

 

「良い心意気だ、下江と言ったな?我々からクルセイダーを一両出そう」

 

「どうも…」

 

「一年に腕の良いスナイパーがいます、彼女もつけましょう」

 

「り、了解です」

 

その後はとんとん拍子で話が進み、各部隊への振り分けが完了した。

作戦会議が終わると、テント内の空気は一気に緩んだ。

椅子を引く音、メモ用紙をまとめる音、そして話し合いながら退出する生徒たち。

 

シオリもまた、静かに席を立ち、テントの隙間から外へ出た。

空気は冷たく、ひんやりと肌を撫でていく。

一歩、また一歩と前に出て、ようやく小さな溜め息を吐いたそのときだった。

 

「お姉ちゃん…!どうだった?」

 

「ん?」

 

どこか軽やかな声が聞こえてくる。

あぁ天使の声だ。

 

「コハル、友軍救出部隊の指揮官に抜擢されたよ…あはは」

 

「す、すごい!」

 

キラキラとした眼差しで見つめてくるコハル。

ほぼ押し付けのような形で決まったなんてとてもじゃないけど言えない…やめて、そんな眩しい視線を向けないで…

 

「はぁ…いくよコハル」

 

「も、もしかして私も同じ?」

 

「うん、私とコハル…そしてスナイパーが一人とティーパーティの戦車が一両…それが救出部隊」

 

「なんか…少なくない?」

 

無言で頷く。

少数精鋭と言えば響きはいいがそれにしても少なすぎる。

三年生は一人もいない、私が指揮官…そしてコハルとスナイパーが一人かぁ。

腕が良いとは聞いているけど一年生だからどこまでやれるかは分からない。

そして茶会さんの戦車…それの車長がどんな人かによって色々変わってくる…怖い人じゃないと良いけど。

 

 

 

数分後、部隊は戦車のエンジンデッキに腰を据え、小刻みに揺られながらHQを後にした。

コハルはタンクデサントに慣れていないのか、私にしがみ付いてくる。

 

ゲートが上がりいよいよ出撃、なんだかテーマパークのアトラクションに乗っている気分。

『楽しいか』って言われると流石にNOだけど。

 

イチカちゃんと目があった…片目を閉じてまるでいたずらっ子のように笑い、グッドラックと手でサインを作ってくれた。

誰かに信じられている…それだけで、少しだけ前を向ける理由になるのだった。

 

 

「その、よろしくお願いします」

 

「んへ?」

 

元気よく挨拶してくれた一年生…例のスナイパーさんだ。

彼女の背丈に不釣り合いなレベルで巨大なライフルを抱えている。あれって対物ライフルだよね…滅茶苦茶重そう。

…待てよ、この子どこかで…そう思い恐る恐る聞いてみる。

 

「人違いだったらごめんね?前に会った事あるよね?」

 

「…!はい、勧誘会で…」

 

「勧誘会…」

 

脳の引き出しを片っ端から開けて記憶をまさぐる…えーと、えーと。

ここにきて記憶力の弱さが露呈してくるとは…どこだったかは忘れたけど一発で物事を完全に記憶できる人がいるらしい…少しだけその力を分けて欲しい。

 

「…!」

 

唇を少し噛んだ所でシオリに電流走る。

 

「あぁ~あの時のぉ!」

 

「はい。静山マシロと言います。あの次の日、願書を書いて正義実現委員会に入らせていただきました」

 

「良かったぁ、演劇部じゃなかったんだね」

 

「演劇部…?」

 

「あ~こっちの話。そう言えば仕事で会わないよね」

 

「北区に配属されてたので」

 

なるほど道理で会わない訳だ、私は中央区…北区は校舎の裏側方面だからよっぽどじゃないと一緒に仕事しない。

まぁ今日そのよっぽどの事が起こった訳だけど…

 

「ですが、来週からは中央区に移動するので…よろしくお願いします」

 

「おぉ~よろしくね。あ、そう言えば私の方から挨拶してなかったね、下江シオリだよ、そしてこの子が…」

 

急にふられ、一瞬ビクンと体を揺らすコハル。

姉の影に隠れ、目をそらしながら同じように挨拶した。

 

「下江…コハル…です」

 

「なるほど!姉妹だったんですね、よろしくお願いします」

 

「う、うん…よろしく」

 

 

緩やかに揺れる車体。微かな油の匂い。

やっぱりお尻が痛い…スカートだから直に装甲の硬さと揺れが伝わってくる…タイツを履いてくれば良かった…って言ってもあまり変わらなさそうだ。

 

そんな事を思いながら何度も姿勢を変え、痛みと格闘していると、戦車の走行がわずかに鈍くなる。

緩やかな丘を越えた所だった。

砲塔のハッチが開き、中から車長が身を乗り出し、片耳だけヘッドホンを当てながら話す。

 

「もう少しで交戦地点です」

 

「了解、思ってたより草が高いね」

 

「えぇ…こりゃ狙撃されますよ…戦車停止!」

 

ギギギとブレーキが軋む。

車長から双眼鏡を借り、戦車の上から辺りを警戒する。

耳を澄ませば、森のざわめきが、どこか不自然に“静かすぎる”

 

「…」

 

「お姉ちゃん何か見える?」

 

「何も…ん?」

 

レンズにふと変な動きが映った。

黒いモヤ…そして何だか鼻をつく匂い…煙だ。

何かが燃えていると分かった瞬間シオリは血相を変え、車長に問う。

 

「車長さん、先発した偵察部隊の編制って確か…!」

 

「車両混みの部隊ですね、2台の内どちらも破壊されています」

 

「それの煙か…総員戦闘用意!」

 

シオリの号令で歩兵の三人は停止したクルセイダーから降り、各々が愛銃を構える。

 

「車長さん!その草に突っ込んでください、その向こうに仲間がいるはずです!」

 

「了解です。この【ウォースパイト】を盾にしてついて来てください」

 

「ウォースパイト?」

 

彼女(戦車)の名前ですよ」

 

車長は砲塔側面の識別番号を叩きながら笑う。

無線機のチャンネルを車長と合わせ、行動開始だ。

 

「コハル、マシロちゃん。戦車の後ろについてできるだけ姿勢を低くして、それと攻撃の合図まで反撃は無し!分かった?」

 

「了解です」

 

「う、うん!」

 

「OK!車長さん行っちゃってください!」

 

車長は返事の代わりにサムズアップをしハッチを閉じた。

クルセイダー戦車…340馬力のリバティエンジンが激しく吠えその巨体を動かす。

右に旋回しながら草をなぎ倒し進んでいき、その陰に隠れながら三人がついていく。

 

草を超えた瞬間、視界が一気に広がる。500メートルぐらい先だろうか、先発した偵察隊のトラックが黒煙を吐きながら燃えている。

その残骸を盾にし地面に這っている正実の仲間が数十名。

奥に敵の火器があるのだろうか、確かに釘付け状態だ。

 

「シオリ先輩、友軍です!」

 

「ヨシッ…『ウォースパイト!残骸の横を通って…救出を開始する!』

 

『了解』

 

緩やかに進行方向を変え、残骸に接近する。

 

「助けに来ました、早く後ろへ!」

 

「よ、良かった…見捨てられたかと…」

 

「見捨てるもんかい!」

 

戦車が委員達の横を通ると、這っている姿勢から起き上がりぞろぞろと後ろへ着く。

やっと来たかと呆れている者もいれば目に涙を浮かべている者もいた。

 

コハルは声こそ出してはいなかったが、必死に仲間の手を引いて後方へと誘導していった。

 

「部隊の責任者は誰です!」

 

「私です!」

 

列の後ろから手を挙げながら息を切らし走ってくる一人の生徒。

その合間、前方で乾いた連射音が空気を裂きリズミカルに響く…マシンガンだ。

 

タカタカタカッ!

 

飛んでくる曳光弾は戦車の前面装甲に命中するが、貫通する事はなく弾かれ四散する。

当たらないとは分かっていても恐ろしい音だ、おかげで一年生が怯えている。

 

「救援に来た下江です。部隊はこれで全員ですか!」

 

射撃音にかき消されないように大声で叫ぶ。

 

「えぇコレで全員です、本当にありがとう!」

 

「感謝は無事帰還してからでお願いします!敵さんの兵力は?」

 

「機関銃、それとキャノン砲です…口径は分かりません」

 

「とにかく戦車の後を追い、私たちの間合いまで近づきましょう!それまでなんとか耐えて!」

 

「分かった…!聞こえたか?とにかく耐えろ、姿勢を低く!姿勢を低くだ!

 

「コハル!絶対に私の影から飛び出さないで!」

 

「分かった!」

 

そんな会話とは呼びずらい大声の掛け合いをしながらも部隊は前進を続ける。

相手の機関銃は『来るな』とでも言いたげに撃ち続けるが効果は皆無に等しかった。

数十秒間の連射が停止しリロードタイム…その瞬間を待っていたかのように【ウォースパイト】の主砲である2ポンド砲が火を噴く。

 

爆音が響き、マシンガンと思える黒い塊が吹き飛んだように見えた。

 

『ひゃーほぉ!』

 

シオリの耳には無線越しにテンションの高い声が響く。

爆発音よりそっちの方が鼓膜にダメージを与えたように思えた。

車長さんか…はたまた別の搭乗員か…茶会さんの部隊にもこんな人がいるとは…

 

「機関銃の破壊に成功!」

 

「まだよ、まだ砲が残ってる!」

 

誰かがそう叫んだ瞬間、『あぁいるぞ』と答えるかのように平原の奥、林の中で閃光が走る。

砲声が響いた直後――弾が地面に命中した。

 

「――ッ!」

 

土煙が巻き上がる。しかし、直撃ではなかった。

弾頭は浅い角度で接地し、硬い地面に当たって跳ね返る。

 

ガンッ!……ゴゥンン…

 

鈍く、重い音が周囲の空気を叩くように響いた。

破片は飛び散らず、ただ砲弾が転がるように滑って消えただけだった。

 

『まずい高初速砲だ、一発でも当ればすぐアーメンだ!』

 

目を凝らしてみるが、大砲のような物は見えない、おそらく精巧に偽装してあるのだろう。

ならば方法は一つ。相手のマズルフラッシュを見てカウンターを食らわせるしかない…しかしそれは敵方も理解しているハズ…下手にバスバス撃ってくるとは思えない…どうにか撃たせる方法は…

 

「…」

 

チラリと後方を見る。

仲間たちが各々愛銃を抱えながら必死に前進している姿が目に映る。

その中でも特段目立つどでかい銃…マシロの対物ライフルだ。

 

それを見た瞬間…再びシオリに電流が走った。

 

「マシロちゃん!」

 

「なんでしょうか、シオリ先輩!」

 

「狙撃は得意だよね?動く戦車の上からでも当てられる?」

 

「できると思いますが…一体何を撃てば?」

 

「そりゃあもちろん相手さんの大砲だよ。あっちは1門、こっちは2門」

 

「……ほう?」

 

マシロが眉を上げる。

 

「戦車の主砲を、わざと外して撃つの!“リロード中か、狙いが甘い”って錯覚させるって訳。油断させれば、きっと反撃してくるはず、なんせこっちはデカい的だからね!」

 

「なるほど…後は私がそのマズルフラッシュを頼りに撃てば…」

 

「チェックメイトだね…!てことです車長さん聞こえてましたかね」

 

『デカい的呼ばわりアレですが…必ず外せって訳ですね、面白い。やってやりましょう』

 

戦車長に命令を伝え、準備を整える。

マシロは車体によじ登り、対物ライフルのバイポットを開き、砲塔上に構えた。

砲塔内から短く『照準完了』との報告。照準は、敵が潜んでいるであろう林の少し手前だ。

 

やっつけの作戦だ、上手くいくかの保証はないけどやるしかない。

 

『ファイア!』

 

ズドォォォン!!

 

車長の掛け声と共に戦車砲が火を噴く。

爆風と轟音が、空気ごと敵の心理を揺さぶった。

高く土が柱ともいえるほど高く舞い上がるがそれだけだ、命中は無し…しかしそれでいい。

しばらくの沈黙。

 

……そして。

 

瞬間、林の中。一点だけ、オレンジ色の閃光が走った。

轟音が響き、鉄が空気を裂く音が迫る。

飛んできた鉄塊は【ウォースパイト】の砲塔側面をかすめ、刻まれていたトリニティの校章を抉った後、そのままはるか後方へと姿を消した。

 

危なかったが目的は果たした。

マシロは一瞬の光を見逃す事は無く、照準のレティクルを合わせた。

 

「装填よし、外しません!」

 

彼女は引き金を引く。

 

ドンッ!!

 

重低音とともに、特大の対物ライフルが砲塔上から火を噴いた。

凄まじい反動がマシロの肩を叩くが、彼女は表情一つ変えない。

一直線に弾丸は飛んでいった。

 

「…命中です」

 

スコープの向こう、敵の偽装に包まれていた対戦車砲が、煙と爆音と共に崩れ落ちた。

弾薬に誘爆したのか、激しく火柱が上がり、十字架のような形をなしたが2秒もしない内に消えた。

 

 

その後は蹂躙だった。敵歩兵をなぎ倒すだけの簡単な仕事、機関銃も砲もなければそこらの不良と大差はない。

頼りの兵器を失った不届き者達は正義実現委員会に降伏し、それぞれがボディーチェックを受ける。

【ウォースパイト】の搭乗員達も車長を含め、下車しその光景をお茶をすすりながら眺めていた。

 

シオリとコハルはと言うと少し離れた所、共同でその場のリーダーらしき人物に尋問を行っていた。

逃げ出さないよう、足と手を縛り上げるが殴ったり蹴ったりはしない。それは正義に反するからだ。

 

「おとなしくしなさい。もうあなたの負けよ」

 

「…」

 

コハルが睨むように言い放ったが反応が無い。

無視されているようでイライラする。

 

一方、シオリはその生徒をじっと見つめてから、真面目な口調で言う。

 

「あなたが、リーダーですか?それとも黒幕が? 何が目的でこんなことを?」

 

相手の少女は、口元に皮肉げな笑みを浮かべて答えた。

 

「はん、うるせぇよ。権力の犬が調子に乗りやがって…今頃、あの要塞砲があんたらのお仲間を木っ端みじんにしてるぜ」

 

「シオリ先輩!弾薬庫の奪還に成功したらしいです!今、回収部隊がコッチに向かってるそうです!」

 

「ありがとーこっちも終わったって言っておいて!」

 

「…」

 

「要塞砲がなにって?」

 

コハルがジトっとした目をし、小バカにするように言い捨てた。

 

「チっ…これだけじゃ終わらない…いずれトリニティ…いやキヴォトス全土が混沌に包まれる」

 

「そういうのいいから…で黒幕は?」

 

「うるせぇ!ピンクの羽付き共が!アタシの“ナニ”でもしゃ○ってろ!」

 

その場の空気が、一瞬で凍りついた。

 

「…………え?」

 

「…!?!?!?」

 

シオリはぱちりと瞬きをして、困ったように小首を傾げる。

 

「しゃ?ハイ?私はもう赤ちゃんじゃないけど……あぁ!鍋の事?」

 

「だから!“ナニ”って言ってるだろ!」

 

「具体的に言ってもらわないと分からないよぉ…私は別に天才じゃないし…」

 

隣にいたコハルは一瞬言葉を失い、数秒後に耳まで真っ赤に染まりながら叫んだ。

 

え…エッチなのは…ダメ!!!!!

 

叫びながらライフルを発砲すると、見事相手の顔面にクリーンヒット。

ド近距離でライフル弾をもろに喰らい、完全に伸びてしまった。

 

「ちょっと!コハル!いきなり撃っちゃだめでしょ!」

 

「だって…えーと…そのコイツがお姉ちゃんの事バカにしたから!」

 

「え?別に悪口言われた気はしなかったけど……あぁ、そのしゃb…」

 

「言わなくていいから!えーと、その…さ、差別用語だから!」

 

「へぇ~そうなの?」

 

絶対に調べちゃダメだから、言っちゃダメだから…と姉に釘をさすコハル。

妹から学ぶ事もまだまだあるなぁと呑気なシオリだった。

 

 




シオリのメモ

しゃ○ってろ→差別用語。使う事も調べる事もしない方が良いらしい。

マシロちゃん→めっちゃいい子。狙撃の腕凄い、凄すぎ。

車長さん→普通に良い人でよかった。またどこかで。

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