それは無垢な願いだった。
「ユズリハ。入学祝いです」
あなたとずっと一緒に過ごせるということを。
「えっ。あなたからもですか?」
体が弱くて立つこともままならない。
「あなたぐらいですよ。この超天才美少女に物怖じせずに渡してくるのは」
あなたを、ヒマリをずっと守っていくために
「ふふっ。名前は何にいたしましょうか」
「大丈夫。決めてある」
私は強くなる。強くなりすぎてみんなが遠巻きに見る中、親友と呼んでくれた私にはもったいない
「そうですか?それじゃあお聞かせください」
「その銃の名前は……」
高嶺の花。
だから
「はぁ〜あ。つまんないの」
そう言って私は大量の現金が詰め込まれたバッグを持って違法カジノから出る。
イカサマが分かり易すぎてイカサマを利用して仕返したら、
持ってきていた金額が5倍くらいに膨れ上がった。
先生が着任というニュースからはや一ヶ月位経った。
先生の着任時にヴァルキューレの牢屋から脱出し、ブラックマーケットや元々持っていたセーフハウスで身を隠しながら生活している。
「いたぞ!七囚人、血染めの雪月花だ!」
「見つかった。めんどいなぁ」
そう言って私はこっちに突撃してくるスケバン達の上にハンドガンを向け、発砲する。
「はっ!どこ狙ってんだか?……えっ?」
重たいものが落ちたような大きな音が鳴り、先頭を走っていたスケバンの後ろには看板や使われなくなった電柱が倒れていた。
「あとはあなただけ。ねぇ」
「あ、あ、やめ」
「戦いを放棄する者に、死に方は選べない、かける情も慈悲も無いよ」
そう言って私はハンドガンを発砲する。
意識を失ったスケバンを放置して、帰り道を歩く
「はぁ。群れることしか出来ない弱い人ばっかでつまんない」
ハンドガンの弾倉を新しくして、その場から離れていく。
少し離れたとき、落ちてきた看板に潰されたであろう車が爆発する
「綺麗な花火」
私は後ろを見ずに前へ進んでいく。
現在停学中のミレニアムサイエンススクールの3年生。
そして、現在脱走中の七囚人の一人である。
高い戦闘スキルと観察眼。ミレニアム出身という知性で捕まえることはおろか、探し出すのも大変と言われ、過去のヴァルキューレやSRTの記録ではFOX小隊の戦闘時に逃走されたと記述されている。
「隠れ方が雑」
目も向けずに放った路地裏には、隠れていたマーケットガードが倒れていた。
「数も多いししつこいなぁ。なんでバレているんだろ?」
素顔を晒しながら歩いていることを彼女は気づいていない。
ブラックマーケットを出ると外はすでに日が落ちかけており、街灯が明かりを灯し始めている。
一番近い隠れ家の方向を考えながら、歩を進める。
(一番近いのは……アビドスの方だったかな?)
"こんな夜中に歩くのは危ないよ"
「?……私?」
アビドスの市街地に着いて歩いていると、誰かを呼び止める声が聞こえた。周りを見ても私と声をかけた人しかいなかった。
"うん、君。ごめんね呼び止めて、私は"
「知ってる。シャーレの先生でしょ?」
"正解。よくわかったね"
「調べたら簡単に見つかるよ。それに、歩いていて一番危ないのは外から来た先生の方。私がここで撃ったら先生は死んじゃうんだよ?」
ハンドガンに手をかけて先生に銃口を向ける。
"そうだね。確かにそうだけど、君は撃たないでしょ?"
「……」
(確かに、今状況で撃ったところでなんのメリットも無いし、リスクが増えるだけ)
先生もそれがわかっているからこそ、こういうのだろう。
ハンドガンを下ろして、ホルスターに戻す。
「それじゃ。また、どこかで会えるといいね」
"うん。おやすみなさい"
先生の言葉に返さずに、私は夜の街を歩いた。
"名前聞いてなかった。今度会えたときでもいいかな"
先生は知らない。彼女が大犯罪者であることを。
彼女は知らない。この出会いが自分の過去と想いと真実に向き合うことを意味することを。
遠く離れた幼馴染は知らない。彼女が生きていることを。