マジック・ナンバーは9   作:白扇泉流

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テーマ「わるだくみ」
某女傑のお名前をお借りしました


気になるのなら一に行動、二に……

「……てことはさ、」

「やってみるか?」

 同じ結論にたどり着いた二人はともに部屋から飛び出す。微重力で壁を蹴り、示し合わせることなく向かった先はジークアクスの格納庫だった。単座のコックピットに二人で乗り込むとエグザべがキーを手渡した。

「ほら」

「ありがと!」

 に、と上機嫌に礼をいってからアマテが操縦桿に差し込めばオメガサイコミュが起動し、いつかと同じようにモジュールが降りてきた。更に狭くなった空間でエグザべはできるだけアマテの邪魔にならないように見守る。両手を置いてイグニッションをオンに、そのまま発進するのではなくマニュアルモードに切り替えてアイドル状態を維持する。全天モニタが周囲を移すが、人の姿は特に見当たらず、ジークアクスの冷却装置の稼働する音だけを拾っていた。操縦桿上の画面でセッティングを開いてあれこれとフォルダを潜っていく。何度か画面を操作したのち、アマテは首を傾げて固まった。

「ううん、うーん?」

「こっちだ、認証情報」

 エグザべが手だけを伸ばして画面に触れる。スクロールした先が求める情報だった。指でなぞる名前は『アマテ・ユズリハ』、あるはずのないものがそこにあった。

「あった、資格者。やっぱり私の名前になってる……?」

「それはおかしいな。君はあの時点で中立コロニーのいち学生だった。ジオンのデータベースで参照情報があるはずがない」

「そうだよ。私、このコロニーから出たこともないもん。そもそもこのアンロックキーってエグザべさんのでもないんだよね」

 振り返ったアマテは前提をふたたび確認するために疑問をぶつけた。エグザべは首肯して情報を補足する。

「まあ、そうだな。誰のものでもなかったはずだ。なにせ誰も起動させたことがなかったんだ」

「じゃあここは空欄じゃなきゃだめじゃないの」

「空欄か、もしくは僕の名前が入るか。の、はずだったけど……僕では起動しなかった」

「それが一番よくわかんない。だってパイロット首席なんでしょ。エグザべさんが使えなかったら使える人いなくない?」

「いや、限られてはいるがいないわけではないな。しかし……あの人はジークアクスに乗ることは愚か、起動すらしたことないんじゃないかな……」

「?」

 アマテは誰のことを指しているかわからずにいたが説明を求めようと目をやったエグザべは顎に手を当て、深く考え込んでしまっていた。他に手がかりを見つけるために端末をいじりだす。上の階層に戻って項目を流し見るがやはり理解はできないまま、目についたものをタップしていった。基本的に起動するときは何もいじらずにサイコミュを使っていたために彼女はジークアクスの基本的な知識に疎かった。とん、とん、と小さな打音が響き、開いたページをアマテが読み上げる。

「うーんと、起動、履歴?私、私、エグザべさん、私、私、エグザべさん、えっと、は、まー、ん?」

「あぁ、それは…………そうか、いや……まさか」

 何かを思いついたエグザべは、身を乗り出して画面を操作し始める。押し込まれた姿勢を整えようと蠢いていたが覗き込むことができず、アマテは大人しく結論を待っていた。エグザべの手が止まり、額を抑えて息を吐いた。彼を逆に押しのけながら何が映っているのか覗き込もう画面の前におさまった。どうやらチューニングモードを起動させたようでアマテが見たことのないパラメータが幾つも表示されていた。エグザべも自ら身を引いて見やすいように項目をひとつ指さした。

「やっぱり、これじゃ僕が起動できないわけだ」

「なにかわかった?」

「そのハマーンさんは僕の後輩で、彼女も首席なんだ。しかも入学時に飛び級して、今年で17歳だったかな」

「それがどうしたの」

「彼女、飛び級するだけあってニュータイプ能力が僕より強かったはずだ。その彼女がテストパイロットをしていたなら……その時にサイコミュをものすごく低感度に設定したんじゃないか。彼女が起動できないように。それがアンロックキーを設定する前だったのなら」

「そのハマーンさんがサイコミュは起動しないけどテストはしたってこと?」

「確証はないけどね」

 それなら、一応説明はつく、かなとエグザべはいいながらもまだ納得ができないままパラメータを眺めていた。アマテがパラメータを選択してフェードを拡大した。たしかに中央よりもかなり下に目印が位置していて、低感度になっているらしい。

「じゃあ、ここいじればエグザべさんでもサイコミュが起動するってこと」

「たぶんね」

「じゃあやってみよ」

「そうだな……えっ」

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