ヒトヒトの実モデル“決闘者”withふわんだりぃず   作:月日は花客

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☆10:ふわんだりぃず×でいすい

 

「殺しはしないが、取り敢えず落ち着かせて頭を冷やさないと。急激なアルコール摂取は身体にも悪影響だよい」

「ふふふふふ、せっかくの決闘なんでぇ、先行はマルコさんにお渡しします。ヒック」

「……マジで相当酔ってるな。あのしおらしい態度とは大違いだよい」

 

 マルコさんは僕と戦うのが初めてだからね、おてみ? おて、お手並み拝見しなきゃね。

 しゃくりあげるような息が止まらない。頭が熱い、船酔いみたいにフワフワする。いや、僕は酔ってない、正気だ? たぶん。

 でも気分がとても楽しいから、良い。

 好きに遊ばせていたろびーな達を呼び戻し、カードに戻す。デッキに収めると、僕はマルコさんの出方を伺った。

 

「適当に当て身で気絶させるか……」

「行動してこない? ターンエンドですかぁ? ヒック、じゃあ僕の番ですね!」

 

 それじゃあ僕のターンを始めようじゃないか。

 まずは《ふわんだりぃず×ろびーな》から。さらに《ふわんだりぃず×いぐるん》に繋げ、《ふわんだりぃず×えんぺん》をサーチ。

 

「小鳥だけで対処されるほど甘くないよい」

「じゃあにーげよ! あは、いぐるん、お願い!」

「あ!!」

 

 きっとマルコさんの狙いは僕自身なので、手っ取り早くいぐるんに肩を掴ませて空に逃げる。そして《ふわんだりぃず×とっかん》を召喚し、とっかんとろびーなでアドバンス召喚!

 

「えんぺん、頑張って〜!」

 

 空から船を見下ろして、僕はえんぺんに攻撃の指示を出した。それにえんぺんはどこか戸惑ったようなそぶりを見せつつ、身体に氷を纏って突進する。

 

「氷なんて炎で溶かせば──は?」

 

 呆けた顔をしたマルコさんがえんぺんの攻撃を直に受ける。なにか信じられないものを体験したような顔だ。

 それでも少し後ずさるだけで転びもしないのは、流石この世界の海賊といったところか。

 

「どうしたマルコ」

「不死鳥に……なれない」

「は!?」

「能力が封じられてるよい!!」

「あはは、相手の効果はぁ、ちゃんとヒック、読まなきゃ〜ダメですよー」

 

 《ふわんだりぃず×えんぺん》は相手の特殊召喚された攻撃表示モンスターの効果を無効化する。

 これのせいでえんぺんは害鳥ペンギン呼ばわりされているのだ。クソ。

 それが悪魔の実の能力者にも適用されるらしい。それって、すっごく、僕が有利ってこと? ははは。

 

「ヒック、えんぺんのぉ、効果……ですよぉ……。眠くなってきた……」

「は、ちょ、そこで寝たら海に」

「おやすみなさ〜い……」

 

 ふっと意識を解けば、なんだかふわりと浮遊感が襲ってきた気がした。でも、眠気に勝てなくて、眠くて、僕はそのまま眠りにつく。

 誰かの叫び声が聞こえた。

 

 *

 

「…………はっ!?」

 

 ガバリ、と目が覚めて飛び起きた。

 なんかとんでもないことをしでかした気がする。酒を強制的に飲まされたあたりから記憶が無い。

 僕は周囲の人間に酒癖が悪いと散々言われていたので、自分の許容範囲以上は飲まないと決めていたのに……。

 周りを見ると、どうやら医務室に近い部屋のようだ。机には包帯やカルテらしき書類が置かれている。僕はそこにあるベッドに寝ていた形になる。

 

「ああ……気づいたかよい」

「あ、あの……僕は何を……」

 

 椅子に座っていた、白衣姿のマルコさんが視界に映った。おそらく酒癖で何かをやらかしたのだと思われるが、いかんせん何をやらかしたか全く覚えていない。

 なんか、すっごいハイテンション? になっていたような……。

 

「取り敢えず、お前さんは悪く無いよい。酒を無理やり飲ませたシャンクスのやつが悪い」

「う、僕お酒弱くって……」

「ああ。それで、昨日あったことは……覚えてないみたいだな」

「すいません……」

 

 責任問題で指詰めろとかそういう話にならないだろうか。今すぐここから逃げ出したいけど、強烈な二日酔いの頭痛で動けない。

 マルコさんは昨夜あったことを説明してくれた。

 つまり、僕は酔うと戦闘狂になって、闘い始めたと思ったらすぐに寝落ちて、能力が解けて海に落下したと。で、シャンクス君が僕を泳いで助け出してくれたと。

 どおりで服が今までの臙脂色のシャツと違う白いTシャツなわけだ。誰のだろうか、僕の膝くらいまであるダッボダボだ。

 

「問題はその時のお前の能力だよい。あのペンギンが現れた時、おれは悪魔の実の力を使えなくなった。どういうことだ?」

「ええっと……えんぺんには、攻撃状態の相手の能力を封じる? 力があって……それが悪魔の実の力にも作用したのかな」

「お前さんも使えなくならないのかよい?」

「味方には作用しないんです。敵にだけ能力無効化を押し付けられるんですね」

 

 そう言うと、マルコさんは困ったように眉間に手をやった。「やりやがったコイツ」とでも言いたげなため息までついている。

 

「良いか遊鳥。その力は絶対に他のやつに喋るな。言いふらせば最悪世界中から狙われてすぐお陀仏か死ぬより酷い目に遭う」

「えっ……は、はい」

 

 深刻そうに告げられた言葉に、考える暇なく僕も真剣に返事をする。

 悪魔の実の能力を封じられることは途轍もなく重要なことらしい。白ひげ海賊団とロジャー海賊団の間ではすでに緘口令が敷かれているとか。

 えっそんなにやばいの。

 

「世界政府や海軍、その他海賊や組織……ヒューマンショップの連中にもだな。まぁバレたら奴隷にして都合の良い駒にってのもありうる」

「怖い怖い怖い」

「だからお前さんは気軽に酒を飲むな。えんぺんを出すな。戦うな。ってのが言えることだよい」

「あ、えんぺんは正しい手順を踏まないと悪魔の実封じはできないんで、出してても怒らないでください……」

「…………その正しい手順を踏まないって約束できるかよい」

「はい! 命の危険が差し迫らない限りやりません!」

「なら良いよい。勿論自分で言いふらさないこと。あの夜のことはこれで終わりだ。シャンクスが謝りたがってたから、行ってくると良いよい」

「はい、こんな……ありがとうございます! 雛神鳥が選んだ通り、良い人ですね、マルコさんは!」

 

 そう言うと、マルコさんは何故か眩しいものを見たように目を細めた。

 

「ごめん! 無理やり酒飲ませた俺が悪かった!!」

 

 シャンクス君には、会うなり綺麗な九十度の謝罪を見せられた。

 僕としても迂闊だったし、酒に弱いことを言ってなかったのも悪かった。だからおあいこにしよう、助けてくれてありがとうと告げる。

 すると、少し悔しげに顔を歪めたと思ったらパッと笑顔になる。この子の顔はコロコロ変わって見てて面白いかもしれない。

 

「あの鳥すっげーのな! 氷がバーンってなって、キーンって」

「いや伝わらねぇわボケェ!!」

 

 近くで様子を伺っていたらしい青髪くん──バギー君というらしい──のツッコミが響いた。

 なんというか、白ひげ海賊団もロジャー海賊団も、愉快な船だ。







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