ヒトヒトの実モデル“決闘者”withふわんだりぃず 作:月日は花客
「剣道が自慢なんですか?」
確かに和服っぽい服を着たおじさんは腰に木刀を佩いていて、剣士っぽい見た目だ。
「ああ、ここには剣の道場があってね……良かったら見学していくかい?」
「いいんですか? 是非」
男の人はコウシロウと言って、その道場の師範をしているらしい。たまたま散歩をしている時に、僕と出会ったようだ。
道場は大きく、小さな子どもを中心に鍛えているらしい。
コウシロウさんは穏やかに笑う人で、こんな人が剣道の師範レベルの腕を持っているのかと意外に思った。
「あら、コウシロウさん。こんにちはお邪魔してます」
「ああ、ロロノアさん。こんにちは」
「そちらの方は? 道場の新しい門下生かしら」
一心道場、と書かれた屋敷の門を潜ると、緑の髪が綺麗なご婦人が縁側から顔を出した。
ロロノアさんというらしいその人は、二人の赤ちゃんの面倒を見ているようで、チラチラと二人分の喃語が聞こえてくる。
それに昔のロー君を思い出した。いきなり消えてしまったけど、スロワーがいるし寂しがったりはしてないだろう。
というか、僕は赤ちゃんに縁があるようだ。
「いえ、見学のお客さんですよ。旅をしているそうで」
「遊鳥旅途といいます、流れの旅人です。たまたまここに辿り着きまして、ここは剣道の道場が有名だと言われて」
「ああ、コウシロウさんの道場はこの村じゃとっても有名ですからね。うちの子も、いつか入れたいくらい」
そう言って、ロロノアさんは緑の髪の赤ちゃんを抱き上げた。男の子だ。
たぶんロロノアさんのお子さんなんだろう。では、もう一人の子は?
「ご兄弟ですか?」
「ああいえ、そちらの子はくいな。私の一人娘ですよ」
「それは失礼を。ロロノアさんの子は……」
「ゾロ、といいます」
かっこいいでしょう? と笑うロロノアさんの笑顔は華やかだ。
くいなちゃんとゾロ君か、幼馴染らしい二人はお座敷で楽しそうに二人で遊んでいる。
もう座ったり覚束なくも立ったりできるそうなので、元気盛りだ。
「貴方にもご兄弟がいたの?」
「え? あ、いや……僕は一人っ子ですね」
「二人を見る目がとっても優しいものだから、下の子でも居るのかなと思っちゃって」
「ああ……数年、このくらいの子を世話する仕事をしていまして」
「あらじゃあもしかして美味しい離乳食の作り方とか知ってる? この子ご飯をなかなか上手に食べてくれないの」
またなんだか赤ちゃんの面倒を見る流れになってしまった。そういう星のもとに生まれてきたんだろうか。大学時代もはとこや姪っ子の面倒を見ることが多かったような……。
とりあえず縁側からお座敷に上がらせてもらい、ロロノアさんと離乳食トークをする事にした。
同じ赤ちゃんでも悩みは千差万別。レベル1にもなってない彼らの力は弱いけど、守るべき大切な命。鳴き声は大人も震わせるほど……というわけで、決して雑に扱ってはいけないのだ。
「どうせならくいなの相談にも乗ってもらいたいな、この子はすこし寝つきが悪くてね」
「僕も専門家というわけではないですが……いろいろ考えてみますね」
子どもに苦労する親はどこにでもいるようだ。
「赤ちゃんの頃は舌の味蕾が多いので、苦味を感じやすいんです。野菜などに含まれる苦味成分をより多く感じ取ってしまっているか、そもそも食事そのものに途中で飽きてしまうという場合があります」
「うちの子はどちらかといえば後者かしら? 最初は食いつきがいいけど途中でスプーンを放り投げてしまうの」
「だとするといっそ手掴みで食べられるものを用意して新鮮さや刺激を与えることも手かもしれません。一度食べなくても日を変えると食べてくれるなんてこともあります」
「ふむふむ……」
「寝つきに関しては、起きている時に運動などさせていますか?」
「くいなちゃんはゾロよりは大人しいわね。積み木なんかを黙々とやってることが多いわ」
「だとすると体力が余ってしまっているのかも。積み木以外にすこしお散歩したり、あっあと寝る時に足を温めると寝つきが良くなったりしますよ」
「ほう……参考になるよ」
ロー君とラミちゃんで培った育児スキルがここで!!
ありがとうございますトラファルガー夫妻。赤ちゃんの悩みは全国共通なんだってわかります。気難しかったり元気すぎたりご飯食べなかったり。色々あるけど結局は案外大人ができることは少なくてある程度諦めることを必要なんだけども。
他にも二人の相談に乗っていたら、あっという間に夕陽が落ちてしまった。
見学できなかったお詫びと相談に乗ってくれたお礼にということで、泊まらせてもらった。
やっぱりゾロ君は途中でスプーンを放り投げていたけれど、手掴みで食べれるものを簡単に作って出してみたら食べてくれて、ロロノアさんはとても感動していた。
くいなちゃんは明日から少しお散歩の量を増やすという。
道場は外で練習することもあるのか庭が広く、0歳児のお散歩には十分過ぎる広さだ。
赤ちゃんのご飯を終え、ようやく大人たちはゆっくりご飯を食べることができる。
「まさかあそこまでちゃんと食べてくれるなんて……すごいわ、遊鳥さん」
「いえ、今まで大変でしたでしょう。こういう情報って案外入手しづらいですから」
「遊鳥くんはこういった知識をどこで?」
「経験と、担当していた子どものご両親がお医者様だったので。そこからすこし知識を齧らせてもらった感じですね」
子どもの味蕾の数や血流の話なんかはトラファルガー夫妻からの受け売りである。あの二人は医学的な面から子どもの理不尽を受け止めようとしていたらしい。
まぁロー君は本人の性格がちょっと難しかったからなかなか効果はなかったそうだが。
ゾロ君とくいなちゃんは素直なので、ある程度対策を練ればすんなり一日を終えてくれそうだ。
「旅人と言ったけど、ここにはどれくらい滞在する予定だい?」
「決めてないんですよね。前の島には8年いましたよ」
「8年……失礼ですけど、遊鳥さんっておいくつ?」
「えっ29です」
この世界の暦知らないけど、ロー君が8歳なので8年経ってるんだろう。
そういうと、ロロノアさんとコウシロウさんは信じられないものを見る目でこちらに目を見開いた。
「嘘、16歳くらいだと思ってた……」
「私は14かと」
「えっ僕そんな若く見えますか」
29とは思われてないだろうなーと思っていたけどそこまで若く??
でも僕の身体が老けてないのは確かなのだ。8年経ってもシワのひとつも増えず身体が衰えない事にトラファルガー夫妻も不思議がっていたが、「悪魔の実の能力だろう」と納得していた。
あ、そういえば言ってなかった。
「あの……実は僕、悪魔の実の能力者で……」
「ああ……それで時が止まっている可能性があるんですね」
「すいません、言うの忘れてて……。皆さんに危害を加えるつもりはないです」
「それは今までの行動でわかってるわ。明かしてくれてありがとう」
どう言う能力なの? とロロノアさんが聞いてきたので、僕は《ふわんだりぃず×ろびーな》を召喚する。
「まぁかわいい!」
「こんな感じで、鳥──モンスターを召喚できるんです」
「物騒な能力じゃなくて良いじゃないか、もしかして鳥に案内をしてもらっていたのかい?」
「はい、この子よりももっと大きい鳥に乗って、平和そうな島を探してもらったんです」
「なるほど、この村はその鳥のお眼鏡に叶ったわけだ」
ロロノアさんは夕飯に出されていたキャベツをろびーなに食べさせていた。まぁろびーなの可愛さは全国共通だからね!
どうせなら、しばらくここに滞在しようかな。ゾロ君やくいなちゃんの成長が気になるし、まだ剣道も見ていないし。
夜が更けていく中、僕らの話題はいつだって二人の子どものことだった。
感想、考察コメントとても助かっています。
見るたびにライフが8000回復してます。