ヒトヒトの実モデル“決闘者”withふわんだりぃず   作:月日は花客

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☆19:ふわんだりぃず×ろしなんて

 

「ああ……スロワー! スロワー!」

 

 スロワーは無事に召喚された。僕の勘が言っている、あの時のスロワーとおんなじ個体だと。

 僕のデッキの中にスロワーは2枚入っていたが、おそらくカードごとに精霊がいるんだろう。

 ロシナンテさんは小さなスロワーに抱きつき、大声で泣き始めた。

 スロワーはそれを、ただ黄色い花を咥えて笑っていた。

 

「……落ち着きましたか」

「ああ、かっこ悪いとこ見せちまったな、悪い」

「いえ……スロワーをそこまで思ってもらってるなら、この子が主人に選ぶのも妥当だなと」

 

 言ってしまえば、ただのレベル1特殊モンスターにそれだけの涙を愛を重ねられるなら、スロワーを任せても問題ないだろう。

 

「でも、こいつの本来の主人にしたかったやつはきっとローだ。ローに……会いたい……」

「そういえば、僕とロー君の関係を話していませんでしたね」

「たしか、ローはベビーシッターとか言ってたな」

「そうですね、0歳から8歳までの彼と、彼の妹の面倒を見ていました。スロワーもとても協力してくれていたんです」

「ちっちゃい頃からの友達って言ってたな、スロワーは」

「ふふ、まぁ実際は保護者みたいな感じでしたけどね……。ね、スロワー」

 

 スロワーはすっかり元気で、「当然」とばかりに鳴いている。

 それにまたロシナンテさんは鼻水を啜っていた。ちょっと涙もろい人だ。

 

「スロワーとの繋がりが切れた時は焦りました。ロー君が死んでしまったと思いましたよ」

「いや……あいつは死んでない。今気づいたが、俺の凪はまだあいつに作用している」「! なら──スロワー、ロー君の居場所はわかる?」

「──! ──!」

 

 ずっとロー君と一緒にいたスロワーなら、ロー君の居場所がわかるかもしれない。

 そう願いを込めて聞けば、スロワーは外に向かって飛び出した。きっと、わかっている。

 

「行きますよ、ロシナンテさん!」

「えっちょっここ4階うわあああああ!?」

 

 ロシナンテさんの手を引いて、4階から飛び降りる。同時に《始祖神鳥シムルグ》を召喚し、街を飛び立った。

 

「始祖! スロワーを追って!」

「ちょ、ま、速い怖い!!」

 

 爆速で向かってしまおう、ロー君の元へ!

 

 *

 

 おれはヴォルフのじいさんと日々を過ごしていた。

 ギブ&テイク。それがヴォルフの突きつけた条件。俺はヴォルフの手伝いをし、ヴォルフはおれに安全な居場所を提供する。

 騒がしいこともあったが、案外穏やかな生活だった。

 

 でも、おれの心にはまだ影がさしている。

 コラさんと、スロワーのことだ。

 宝箱越しに、おれはふたりが消えていく音を聞いた。銃声は重くのしかかり、たまに悪夢に見る。

 その度に脂汗を拭いて、ベタベタになったシャツを着替える羽目になった。

 

 あの鳥は、黄色い花は、もう二度と見れない。そう思うと、温室に咲く野菜の黄色い花を見るだけで吐き気がした。何もできなかった自分を呪ってやりたくなった。

 それでも、珀鉛病から逃げ切ってドフラミンゴの手から逃れたおれは、生きなくちゃいけない。おれの大事なものふたつを奪ったアイツに、復讐しなくちゃいけない。

 

 そういえば、おれにスロワーを託してくれたあの人はどうしているだろうか。

 両親曰く悪魔の実の能力者だったらしいから、スロワーが死んだこともわかっているのかもしれない。

 彼は、失望しただろうか。スロワーを殺すことになってしまった原因のおれに復讐しに来るだろうか。

 死ぬわけにはいかないが、ボコボコにされても文句は言えない気がした。

 

「おい! 今すぐ家の中に入れ!」

 

 ヴォルフがやけに焦った声でおれに叫んだ。なにかあったのか、緊急事態か!? まさか、ドフラミンゴが……!!

 

「デカい黄金の鳥が、こっちに向かってきてる!!」

 

 鳥。

 

 そう聞いて、おれはヴォルフの叫びを無視して空を見た。

 ベビーシッターは鳥を召喚する能力者だったと聞いている。まさか、まさか、まさかとその大鳥を探した時。

 

 目の前に、あの黄色と青が飛び込んできた。

 

「え……」

「──! ──! ──!」

 

 ああ、黄色い雨が降っている。

 タンポポが、俺の頭にたくさん降りかかる。青い翼が、ふわふわの帽子をたまに尾羽で撫でながら旋回している。

 

「すろ、わー?」

「──!」

 

 それは、死んだと思っていたあの愛しい小鳥だった。

 

「良かった! 生きてた!!」

「ロ゙ー!!」

 

 大きな鳥は、黄金の羽を広げて目の前に降り立った。

 神の使いのような大鳥には、二人、誰か人間が乗っていた。

 そこに、見慣れた黒の帽子とメイクがあって──

 

「ロ゙ー! やっと会えた! ごめんなぁ、痛かったよな、怖かったよなァ! 生ぎてて良かっ゙たぁ゙!!」

「はっ──!? こら、さん……?」

 

 あっという間に、大きな……見覚えのある背丈に抱きつかれる。紫のふわふわが、ローの頬をくすぐった。

 声も、抱きつく直前に転んで雪まみれになったドジも、その涙も全部知っている。

 死んだはずの、あのひと。

 

「夢でも、みてんのかな……コラさんと、スロワーが、いる……」

「夢じゃないよ、ロー君」

 

 そう言って、いつの間にか消えていた大鳥の辺りに、紫の瞳のひとがいた。

 幼い頃、いろんな本を読み聞かせてくれた。スロワーと遊んでくれた。一緒に勉強してくれた。あの人は。

 

「ゆ……とり……さん」

「覚えててくれたんだ。嬉しいなぁ、忘れられてるかなと思ったんだけど」

 

 忘れるはずもない。おれにスロワーを託してくれた、ラミとも遊んでくれた、いつの間にか消えていたかの人。

 まるで年齢の変化を感じさせない姿で、雪の中立っている。

 

「ロー君、これは夢じゃない。スロワーも、ロシナンテさんも、生きてるんだよ。生きて、君の元に戻ってきた。これは現実だ」

「げん……じつ……」

 

 そう言われて、どっと実感が津波のように襲ってきた。能力者であるおれは、その津波に飲まれて、巻き込まれて、どっと涙を流した。

 

「うわ゙あ゙あああああああ!!! コラさん! スロワー!」

「ロー! ロー! 生きてて良かった! 生きてて良かった!」

 

「ふふ、感動の再会だね? スロワー」

「──!」

 

 スロワーは黄色い花を降らせている。

 それは帰ってきた祝福の証。そして「ただいま」といつスロワーの気持ちだった。

 

 *

 

「──で、コイツがお前さんの言っていた恩人か」

「ああ、コラさん、遊鳥さん、この人はヴォルフ。おれをこの家に置いてくれてるガラクタ屋のじーさんだ」

「発明家と言え!」

 

 落ち着いたところで、ヴォルフさんから「説明を求める」という要請があったのでお邪魔させていただくことに。

 あのままだと寒さで凍えそうだったしね。

 実はシモツキ村にコートを忘れてきてしまって、シャツ一枚でこの雪の中を飛んできたのである。普通に寒さでLPが減っている。

 

 僕らはとりあえず、今までの事を話すことにした。

 

「僕は遊鳥旅途。悪魔の実を食べて、モンスターを召喚できるようになった旅人です。このスロワーと呼ばれている鳥は僕が召喚した鳥なんですね」

「ふむ、さっきの大鳥もその能力か」

「はい。数日前、スロワーとの繋がりが途切れたことに異変を感じ、ロシナンテさん……コラさんと言った方がいいですかね? と合流。破壊されていたスロワーを再召喚し、ロー君を探していました」

「コラさんはなんで生きてたんだ?」

「スロワーが主人を遊鳥からおれに変えて、身を挺して銃弾から庇ってくれたんだ。その後はカードになっちまってたんだが、遊鳥が治してくれた」

 

 スロワーはロー君と再び会えたことがよほど嬉しいのか、さっきからずっと黄色い花の雨を降らせている。おかげでロー君の帽子に黄色い花が降り積もってきていた。

 

「スロワーはどうやらロー君の居場所がなんとなくわかるみたいだったから、二人で空を飛んでスワロー島じゅうを探し回ってなんとか見つけたんです。三日三晩かかりました!」

「軽いな……」

 

 コラさんにちょくちょく《非常食》を食べさせながら、睡眠も取らせながら、僕はずっと飲まず食わずでロー君をスロワーと探した。

 不安で食事も睡眠もままならなかったのだ。

 

「とりあえず、無事に会えて良かったぁ〜……」

「ああ、そうだ──遊鳥さん?」

「ぁ…………」

 

 ぷち、と後頭部の傷口が開く音がして、僕は意識を暗転させた。

 最後に吐いた吐息は、安堵だったか痛み故のものだったのか、どっちなんだろう。








あっという間に20話までこれました。まさかこんなロー君がメインになると思わなかったし、スロワースワローが重要な位置に来るとも思わなかった。
みんなスロワーをデッキに入れましょう。
まだまだ続きます、これからもよろしくお願いします。
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