ヒトヒトの実モデル“決闘者”withふわんだりぃず 作:月日は花客
「…………うん?」
意識が浮上する。
僕はまたベッドに寝かされて、頭に包帯を巻かれていた。この前もこんなことあった。
たしか、ロー君と再会できて、それに安心したら頭の傷が開いて……あれから記憶が無い。多分倒れたんだと思う。
起き上がらずに首だけ回して辺りを見れば、手術道具や包帯の替え、湿布なんかがローテーブルに置かれていた。
たぶん、ロー君あたりが倒れた僕の処置をしてくれたんだろう。
「今……何時……」
「あ! 起きてる!」
起きあがろうにも体がだるい。時計はこの部屋には見当たらなかった。
窓から刺す月明かり的に夜なのだろうが、正確な時間帯はわからなかった。
がちゃりと扉が開く音がして、なんだか白いもふもふした生き物が声を上げる。
「ローさん! 起きた、起きたよー!」
「本当かベポ!?」
廊下の先でそんなやりとりがかすかに聞こえる。
そんな長い時間僕は眠っていたのだろうか?
「遊鳥さん、おれのことわかるか?」
「ロー君」
「この指は何本に見える?」
「3本」
「よし、意識は正常だな……」
ロー君はテキパキとカルテらしきものに何かを書き込んでいく。
すっかり立派になって……と涙がこぼれそうになるが、心配されそうなので我慢我慢。
ロー君はカルテを書き終わった後、どかりとベッド横の椅子に座った。
隠しきれない怒気。
「頭を四針縫って、背中の打撲傷には湿布を貼らせてもらった。あとは極度の貧血と低体温。……誰にやられた?」
「そ、そこで僕が襲われた選択肢しかないの……? 事故なんだよ、子どもを庇って階段から落ちたんだ」
ぎろり、と帽子越しに睨まれるが、僕はこれが心配の証って事を知っている。
でももしこれで僕の傷の原因が誰かしらの作為によるものだったとしたら、即その人を殺しに行きそうなほどの殺気だ。
「僕、何日寝てた?」
「一ヶ月と少し」
「そんなに!? 心配かけちゃったね」
まさか一ヶ月もこんこんと眠る羽目になろうとは。
デュエルディスクを見れば、LPは8000に回復している。
「うーん……たぶんもう全快かな」
「は? まだ傷跡が……」
「僕の状態はこのディスクの数値でわかるんだ。最大値が8000だからもう治ってると思う」
ロー君は信じられないと言った様子で僕の頭の包帯をほどいた。
後頭部だから僕は見えないけれど、きっと跡もなく綺麗に塞がっていたんだろう。「ありえない……」という言葉がロー君の口から溢れる。
「背中の湿布も、もう大丈夫だよ」
「……悪魔の実の能力によるものか」
「そうだね、貧血は単純に傷を負った時に流した血と三日三晩寝食無しでロー君を探し回ったせいかも」
「そこまでして……。最初はやけに変に止血だけされてておかしく思ったんだが」
「ああ、能力でちょっと無理やり回復させて来たから……って目が怖い、目が怖いよロー君」
確かにちょっとだけ無茶をしたけれど、決闘者にとって3000ダメージってそこまで重要な数値じゃないしさ!?
まさか傷口が開くとは思ってなかったけど、無理が祟ったのかな。
「ちゃんと食え、ちゃんと寝ろ、怪我は医者に見せろ!!」
「おっしゃる通りです……。でも、ロー君が本当に生きてるってわかるまで、不安で眠れなかったし食事も喉を通らなかったんだ」
「…………」
スロワーも明確な位置がわかるわけじゃない。右往左往しながら、もしかしたらどこかに死体で埋もれてるんじゃないかとおもったりもした。不安だった。それにスロワーが必死に探してくれている中、僕が寝るわけにはいかない。
「ローさん、湿布の変え持ってきたよ!」
「こっちはスープ」
「あとお茶」
なんだか小さい子が増えてる。
シロクマと、キャスケット帽被った子と、PENGINって書かれた帽子を被った子。
それぞれたぶん僕のためであろうものを持ってきてくれた。
「おう、そこに置いといてくれ。おれは今からコイツにお説教をする」
「えっ」
「コラさんには適度に食事と睡眠を摂らせてたくせに、自分は一切摂らない……。怪我の放置、防寒対策の甘さ……怒ることはいっぱいあるぞ」
「えと、あの、生きてたのでオールオッケーってことには……」
「ならない!!」
えーん離乳食まで作った子にガチ説教されるの辛いよー!!
*
「……わかったか、もう下手な無茶はするな」
「はい……はい……すいませんでした……」
べしょべしょに泣いた。ロー君の説教は正論で、少し反論しようものならさらにド正論で叩きのめしてくる。「また置いていかれるかと思った」と言われた時に、僕の涙腺は決壊した。
「でも……ここまで大きくなってくれたのは本当に嬉しい。良かった、スロワーと再会させられて」
「それは……ありがとう。スロワーがいたからおれの精神はもってたんだ」
スロワーは今は姿が見えないが、きっとコラさんのところなんかで遊んでいるのだろう。スロワーはロー君もコラさんも同じくらい好きみたいだ。
「ところで、なんだかお友達が増えたみたいだね」
「ああ……アイツらはシロクマがベポ、あとシャチ、ペンギンだ。俺が助けた」
「すごい! ロー君はオペオペの実を使いこなしているんだね!」
あんなにコミュニケーションに難があったロー君に、友達が一気に3人も! それは素直に喜ばしいことだ。
ニコニコと微笑むと、ロー君は照れたように視線をずらした。
「アンタの悪魔の実はなんて言うんだ?」
「それがわかんないんだ。悪魔の実の図鑑を読んでみたこともあったけど、載ってなくて」
「そうか……。ああ、あとあんたの血液型を知っておきたいんだった。万が一のために輸血できるように」
「僕? 僕はO型だよ」
そう言うと、ロー君が今日何度目かの「は?」と言う顔をした。
「それはしかるべき医療機関で測ったのか?」
「うん、小さい時に病院で測った」
「O型という血液型は存在しない」
「え? ……あ、あー」
なるほど、異世界だから血液型の概念も違うのか。まさかこんなところで異世界育ちの弊害が起こるとはね。
「うーん……僕の生まれっていうか、人種っていうかが特殊なんだ」
「特殊?」
「僕、神にされかけた事があるんだけど」
説教に疲れたのか紅茶を飲みながら僕の話を聞いていたロー君が、噴き出した。
「げほっ、か、神ィ?」
「なんかの術か魔法かで攫われてね、神子さまーって。悪魔の実はその時無理やり食べさせられたんだ。で、両脚切り落とされそうになったから逃げてきたの!」
「待て、理解が追いつかない」
「だよね」
いやーあの時は必死だった。今でこそ穏やかに生活できてるけど、あそこで捕まってたら僕としての人格は死んでた気がする。流石に両脚持ってかれたらライフも6500くらい減ってただろう。
「なんで両脚を……」
「神になるには無足一眼にさせる必要があったんだって。だから片目も取られそうになった」
そっと左眼を撫でようとすると、ロー君にがしりと腕を掴まれた。跡に残りそうなくらい強い力だった。
「それ、何処かわかるか」
「えー? なんだっけ、たしかグランドラインにあるツュジマ島ってとこ」
「わかった、いつか燃やす」
「物騒〜」