ヒトヒトの実モデル“決闘者”withふわんだりぃず   作:月日は花客

24 / 34
☆23:ふわんだりぃず×しろひげ②

 

「僕、そろそろまた旅に出ようと思う」

 

 そう言ったのは、みんなで朝ごはんを食べていたとある日だった。

 ロー君と再会して一年ほど経った、スワロー島にしては暖かい朝だった。

 ぽろり、とコラさんがプチトマトをさらにこぼす。

 

「もう行くのか」

「はい、元々ここに来た目的はロー君の安否確認ですから。今は病気の心配もなく元気にやっていると判断したので、旅に戻ろうかと」

「えー! ここを出てっちゃうのかよ!」

「なんでー? ここの生活、嫌いになっちゃったの……?」

 

 シャチ君やベポ君がそう言うけど、別にこの生活が嫌ってわけじゃ無い。

 

「僕は元々、あんまりひと所に留まらない性格なんだ。ここだとあんまりモンスター達も飛ばせてあげられないし、そろそろ潮時かなって」

「なぁに、もう二度と会えないわけじゃ無いだろう! 本人が決めたことじゃ、黙って見送ってやれい」

 

 ヴォルフさんには事前に話しておいたので、すっかり見送ってくれる気のようだ。助かる。コラさんも、寂しさはありつつも納得してくれたようだった。

 問題は子供たちだ。

 

「……本当に行っちまうのかよ」

「もう遊鳥さんのご飯食べられなくなっちゃうの? それは嫌だよー!」

「旅になんて出るなよ、もうちょっとここで過ごしていこうぜ!」

「…………」

 

 少年たちが口々に名残惜しい言葉を叫ぶ中、ロー君はただ黙っていた。

 スロワーはロー君の頭の上、黄色い花を咥えている。

 

「ごめんね、この生活が悪いわけじゃ無いんだけど、これは僕の気質なんだ」

「我儘を言ってないで、ほれ、見送る準備をせい」

「えっこの後すぐ行っちまうのかよ!?」

「雪が降ってないスワロー島は珍しいし、この天気もいつ崩れるかわからないからね」

「うう……ぜ、絶対また会いに来てくれよな! 俺たちもいつか海に出るんだ!」

「うん、絶対会えるよ」

 

 ベポ君が泣きながら僕の手を握った。ふわふわしている毛皮の感触が、暖かく僕の手に伝わってくる。

 ペンギン君とシャチ君も、僕に固く握手をする。剣ダコができた二人の手は、努力を重ねた戦士の手になりかけていた。

 

「……ちょっと、話がある」

 

 ロー君が、他のメンバーからは少し離れた場所に僕を呼んだ。

 周りも空気を読んでか、追いかけてはこない。僕とロー君は二人で向き合った。

 

「……あんたは無茶ばかりする」

「ごめんね」

「でもおれの恩人だ、スロワーもこれからは絶対に破壊なんてさせない」

「うん、頼んだよ」

「だから……絶対に、あんたも死ぬな。おれを置いていくな」

「……わかった。約束する」

 

 その言葉に、僕はゆっくりと頷いた。

 ロー君はきっとこれからどんどん大きくなっていく。もう身長は僕を超えているし、声だって低くなってきた。

 もう、あの頃の弱いロー君じゃないんだ。

 今度は僕が心配される側になってしまった。

 

「また会おうね、みんな。スロワーをよろしくね」

「ゔん゙! 絶対だからな! 絶対だからなー!」

「またコロッケ作ってよねー!」

「スロワーの世話は任せろ!」

「いやアンタが世話される側だろ!?」

「じゃあな、遊鳥さん」

 

 僕は《霧の谷の巨神鳥》を召喚し、朝日を浴びながら飛び立った。

 ロー君たちが米粒みたいに小さくなって、もうその手が振られているのかわからなくなるまで、声は聞こえていた。

 

 *

 

「かと言って、次はどこにいくと言う当てがあるわけでもなく……」

 

 僕はスワロー島を出発し、朝霧の深い上空を飛んでいた。

 毎回僕は行き先を決めない。それはこの世界の地理が全然わかんないからである。なんだかグランドラインはすごい特殊な海域であること、カームベルトには怖い魚?がいっぱい潜んでいること、聖地マリージョアというところには行かない方がいいことを教えられたが、それ以外の地理はさっぱりだ。

 

 どうしようかな、と巨神鳥の背中に寝転んだとき……。

 

「おーい! 遊鳥ー!」

 

 ふと、懐かしい声がした。マルコさんの声だ!

 

「っマルコさん!? 白ひげ海賊団の皆さん!」

 

 少し高度を下げると、大きな白鯨を模した船が目に入る。紛れもなく白ひげ海賊団の船だ。

 僕は迷うことなくそこに降り立った。

 

「お久しぶりです!」

「本当に久しぶりだよい……元気にしてたか?」

「はい! スゥも久しぶり、調子はどう?」

「──!」

 

 スゥ……《雛神鳥シムルグ》も元気そうだ。かわいくリボンなんかで飾り立てられて、可愛がられているのが一目でわかる。

 

「遊鳥はなんでまたこんなグランドラインの端に?」

「この前まで北の海にいたんですけど、特に当てもなく放浪してた感じです。マルコさんたちは?」

「うちはナワバリの島を巡ってた感じだよい」

 

 あれから10年以上経っているからか、船員も一部様変わりしている。新人も入ってきて、より大規模に、賑やかな海賊団になってきているようだ。

 

「ま、マルコさん、彼は……?」

「ああ、うちのスゥの元飼い主だよい。遊鳥が来たことを親父に伝えてきてくれ」

「はい!」

 

 下っ端っぽい人が白ひげさんの元へ駆けていく。

 

「普通に挨拶に行きますよ」

「ああ、案内するよい」

 

 船が大きくなって、見通しはいいものの辺りには貨物や武器がたくさん積んである。それをマルコさんはするする通り抜け、僕を白ひげさんのところまで導いてくれた。

 

 相変わらずの巨体で、大きな白ひげを蓄えた顔はいかつい。あと、やっぱりほんのりピリピリとした圧を感じる。

 

「グラララララ……久しぶりだな、遊鳥」

「お久しぶりです。白ひげ海賊団も、とっても賑やかになっているようで」

「まぁな、スゥも一員としてよくやってくれている。下手な船員より古株だ」

「大事にされているようでありがたいです」 

 

 久しぶりの再会からか、スゥは僕の足元で珍しく甘えている。最初の頃はマルコさんにべったりだったのに。

 

「スゥ自身も白ひげ海賊団のお役に立てて嬉しいそうですよ」

「グラララララ、うちの姫は働きモンで助かる」

「親父、今夜は宴にするかよい?」

「ああ、久しぶりの客人だ。ああ、ノンアルコールもちゃんと用意しろよ」

 

 その言葉に、昔やらかしたあの事件を思い出して顔に熱がたまるのを感じた。あの時は迂闊だった。

 

「そういえば……ロジャーさんは亡くなってしまわれましたね」

「まぁ、あの終わり方は本人が納得してるだろうよ。ロジャーのとこにいた奴らは独立したり自由にやっているようだしな」

「新聞を見て驚いたものです。もうだいぶ昔になりますが」

 

 ロジャーさんが処刑されると新聞で見た時は、悲しさもあったが海賊として生きることの厳しさも感じた。

 彼の一言が時代を変えたのは、彼自身のカリスマだろう。

 

「ま、赤髪のハナッタレやバギーのやつも好きにやってるようだし、どこかで会うかもな」

「ああ、彼らにも会いたいですね! 一体どれだけ大きくなっているんだか」

「ロジャーが死ぬ前に会ったが、その時点でお前の身長は軽く越してたぞ」

「うぐぅ……」

 

 別に僕の身長が特別低いってわけじゃ無い……ないはずなんだ……。この世界の身長がおかしいだけなんだ……。

 ブツブツと負け惜しみを言いつつ、懐かしい船の上で僕は宴の準備に加わることにした。

 スゥはいつの間にかマルコさんの元へ駆けていってしまった。せめてもう少し甘えて欲しかったよ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。