ヒトヒトの実モデル“決闘者”withふわんだりぃず 作:月日は花客
「東の海に赤髪海賊団?」
それ聞いたのは、宴の途中……ホンゴウさんがふと言い出したことだった。
どうやら独立した赤髪ことシャンクスくんが東の海に滞在しているらしい。なぜかはわからないけど。
「グランドラインにいないんですね」
「ああ、まぁたまには穏やかな海に行きたいって気持ちもわかるがな……どうだ、久しぶりに会いに行ってやったら」
「たしかに! 特に行き先を決めてなかったので、会いに行くのも良いですね!」
「おーい遊鳥、ちゃんとノンアル飲んでるか〜」
「はい! ノンアルカクテル美味しいです」
四番隊の人が即興で作ってくれるオリジナルノンアルカクテルを飲みつつ、料理に舌鼓を打つ。
白ひげさんところの宴は、規模が大きくて賑やかだから好きである。
「イゾウー! 余興に早撃ちでもしてくれよ」
「この前もやっただろ!」
「余興?」
「あーまぁ出し物みたいなもんだな。ほら、ただひたすら飲んで食うだけじゃつまらんだろ」
なるほどなるほど、宴にはそういう芸事も必要なのね。確かに、結婚式なんかにも余興があるらしいし……僕は行ったことないけど。
「なら僕やりますよ! このままだとただ宴にお邪魔してるだけになっちゃうので」
「おー! 遊鳥の余興か! また鳥のねーちゃん出してくれよ!」
「またあの踊りをみたいぜ!」
あの時の宴にいた人達が、わいわいと声を上げる。新入りの人たちは、なんだなんだと不思議そうに串物を食べていた。
音楽家たちは、そっと楽器を準備し始める。
「いいですよー、どうせなら複数呼びますか! 《ハーピィ・ダンサー》《ハーピィ・クィーン》《ハーピィ・パフューマー》!」
「おおー!!」
踊りながら現れた羽根を持つ乙女たちに、会場は歓声に包まれる。
音楽家の奏でるアップテンポな客に合わせ、ダンサーやパフューマーが踊る。色とりどりの羽が舞い、美人なお姉さんがセクシーに踊る姿に男性陣はメロメロだ。
「ヒューヒュー! 綺麗だぞ、ハーピィー!」
「こんな美女を侍らせられるなんて、遊鳥お前もスミにおけないなぁ!!」
「はは、僕はモンスターとしてしか見れませんがね……」
なんならこのくらいの年齢の女の人は苦手なまであるのだ。実を言うと、僕はちょっと女性恐怖症なのである。
「若い女の人はちょっと……昔の出来事のせいで苦手で……」
「うん? 何かあったのか」
「ちょっとまぁ……僕にも恋人と言える人がいたんですけど」
大学時代、僕も穏やかな雰囲気がウケたのかわからないが、そこそこモテたのである。自分で言うことじゃないが。
ただ、ちょっと金遣いや距離感に難がある人が多く、告白をお断りしていた。
そんな中で、唯一付き合ってもいいと思える人がいたのだ。黒髪が綺麗な、僕と同じくらいの背をした女の人だった。
「ほうほう、それがどうして女性恐怖症に繋がるんだ?」
「その……浮気をされまして……四股です」
「それはまたすげぇな」
僕なりに記念日にアクセサリーや花を贈ったり、デートなどしていたのだけれど、ある時やけにブランド物のバッグや服が増えていることに気づいた。
ちょっと自分にご褒美をあげたのかな? と指摘してみると、あからさまに動揺する。まさかと思って問い詰めたら、他の男の人と付き合って貢いでもらっていた。と言うことが判明。
「本命は僕、とは言ってましたが、僕の贈ったアクセサリーなんかは全て換金していたらしくて……それ以来ちょっと、20代女性は怖いって言うか」
「それはまた……凄まじい体験をしたなぁ遊鳥」
「妙齢の方や結婚してる人は大丈夫なんですけど……はい……」
「そういうのは飲んで忘れろ! ほら、ハーピィの姉ちゃんが酌してくれるってよ」
ハーピィ・クィーンにノンアルカクテルを注いでもらいながら、僕はほんのりと目に涙を浮かべた。
あれはもうなんか、トラウマである。付き合って半年の記念日だったのも悪かった。僕はそこそこ記念日にこだわるタイプで、その日も彼女が欲しいと言っていたネックレスをサプライズに用意していたのだ。
今思うと僕も僕でかなり貢いでいたなぁ……それは全部オークションサイトに消えた訳だけど。
「あ、ハーピィはあんまりお触りがすぎるとビンタしてくるので気をつけて」
「あっぶね!?」
ハーピィにデロデロになっていた船員さんの中に危うい人がいたので涙を引っ込めて注意する。お触り厳禁。それがハーピィの掟。
「スゥも無理すんなって、お前に酌は無理だよ」
「お前はいるだけでかわいいから何もしなくていいんだ」
スゥはスゥでハーピィたちに対抗して自分もお酌したいらしい。でも脚で何とか掴もうとしては、失敗してテーブルを濡らしている。
しかし船員の人たちはそんな所も可愛いと言うように、笑顔で対応していた。本格的にメロメロになっているのはこっちなのかもしれない。
「グラララララ……お前がくると一瞬で愉快になるな」
「僕としては、ここはいつも愉快だと思いますよ……?」
「そりゃ、客人がいたらそいつに構いたくなるもんさ。それにお前みたいなポヤポヤした奴は警戒しなくていいしな」
「ポヤポヤ……」
僕、そんなポヤポヤしているだろうか? 警戒心を持たれないと言うのは良いことかもしれないけれど。
「そろそろ宴もたけなわだ。お前は東の海に行くんだろう?」
「はい、宴ありがとうございました。料理もカクテルも美味しかったです!」
「えー遊鳥さんもう行っちまうのかよ!」
「せめて一晩泊まってけよー」
「あんまり長居するのも悪いですから、それに気候がちょうど良いので」
グランドラインは気候変化が激しい。北の海のように吹雪くこともあれば、南国のように太陽が照りつける時もある。
静かな夜の海は珍しい。
「じゃ、赤髪によろしく言っといてくれよい。どーせふらふら酒でも飲んでるだろうしな」
「はい、承りました〜。それじゃあ、また今度!」
僕は《ダークネス・シムルグ》を召喚し、ハーピィたちをデッキにしまう。
ここからは、また空の旅だ。
*
「そういえば、東の海のどこにいるかは聞いてなかった……」
ここで痛恨のプレミ。いや、白ひげさん達も流石にシャンクスくんがどこにいるかは知らなかったかもしれない。
でも結構名のある海賊になっているらしいから、でかい船に乗って、なんか派手になってるはず……!
「大きい船……ってうわわ!?」
ダークネスが思いっきり体を捻って進路を変えた。さっきまで飛んでいた場所に砲丸が飛んでくる。
「危ないなぁ! あれは……海軍と海賊?」
どうやら海軍の軍艦一隻と海賊船一隻が戦っているようだった。
砲弾を撃ち合い、迫力のある海戦をしているようだが、すこし海軍の方が劣勢のようだ。
「むむむ……海賊船の方に民間人らしき存在発見! ダークネス、海軍に加勢するよ!」
一般人が縄に縛られて人質にされている。これによって海軍は好きに動けていないようだ。
なら、第三者の僕が奇襲すれば良い。
「《ハーピィ・チャネラー》! 《護神鳥シムルグ》! 《ふわんだりぃず×いぐるん》! いっくよー、突撃!!」
さっきまで海賊と宴をしていた身で海軍に味方するのもどうかと思うけど、相手は一般人を人質に暴れる卑劣な海賊だ。
存分に叩きのめしてやれる理由がある!
「あら? 援軍……と言って良いのかね」
モサモサ頭をなんとか帽子に収めた海軍の人が、海賊に突撃していった鳥達を見てそう呟いた。
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