ヒトヒトの実モデル“決闘者”withふわんだりぃず   作:月日は花客

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☆30:ふわんだりぃず×がーぷ

 

「ルフィー! まだ海賊になるなど言っとるんか!!」

 

 それは僕が目覚めて数日経った、ある昼のことだった。

 マキノさんのところで掃除の仕事をしていると、外でポニクスと筋トレ(ポニクスはルフィくんの背中に乗ったりしている)しているルフィくんを呼ぶ声が聞こえた。

 

「げっ! じーちゃん!」

「げっとはなんじゃげっとは! 今日こそお前の精神を叩きのめしてやるわい!」

 

「……ど、どうしたんですか? あれ」

「ああ……ルフィのお爺さんのガープさん。海軍の偉い方なんですけど、ルフィくんが海賊になるって言うのに大反対してて」

「うーん、まぁそりゃそうですよね」

 

 海軍と海賊は白と黒。絶対に混ざらない敵対関係だ。

 自分が海軍なのに孫が海賊になると言うのは、非行に走る家族を止めるのと同じなのだろう。

 外を覗いてみると、ガープさんはルフィくんを村の奥にある山へと連れて行った。

 

「あっちの山って……」

「ああ、コルボ山ね。あそこはかなり過酷だから、ガープさんはルフィくんの修行ついでにあそこに連れて行くの」

「修行……」

 

 僕もやらないとなんだよな、修行。

 鍛えないと……とは思うんだけど、この身体は毎日赤ちゃんを何時間も抱こうがゾロ君の修行に付き合わされようが一切筋肉がつかなかった不変の体である。つまり、筋肉的な向上は望めない。歳を取らない代わりにここら辺も止まっているのだと思う。

 低身長の細身の見た目少年というのは、たぶん、すごくゴロツキに目を付けられやすいのではないか? もう41も過ぎそうな年齢なんですけど。あの、せめて背だけでも伸びてくれませんか?

 無い物ねだりをしてもしょうがないので、どう鍛えれば良いのか悩んでいるのである。

 

 ガープさんは海軍の偉い人かぁ……なら、なにかヒントをもらえないだろうか。

 

「ルフィくんにポニクスを預けた身ですし、ちょっと挨拶してきます」

「行ってらっしゃい」

 

 マキノさんにぎこちない笑顔を返しつつ、僕はガープさんを追って走り出した。

 この身体はただのカードゲームオタクだった頃のままなので、ずっと走るのも正直きつい。もやし、もやしである。

 よくグランドラインを旅してた時死ななかったなと奇跡を思う。どれもこれもカードのみんなのおかげだ。

 

「えっと、ガープさーん!」

「ん? なんじゃ貴様は」

「少し前から村に滞在している遊鳥といいます。ルフィくんにその鳥を渡した本人でもあるので、ご挨拶くらいはと」

「ああ、この小鳥か! ルフィのことだし肉にでもするのかと思ったら、修行仲間というから驚いたぞ!」

 

 ガープさんは大柄な体に白髪混じりの髪をしたおじいさんだった。

 

「こやつがいつまで経っても海賊になると聞かんのでな、精神を叩き直すついでにこの山で鍛えさせようと思ったんじゃ」

「ポニクスはその、ルフィくんがやる気なら喜んで付き合うと思うんですけど……」

「はなせー! おれは海賊になるんだー!」

「──……」

 

 ポカポカと全く効いてないパンチを繰り出すルフィくんを、ポニクスはオロオロと見つめていた。ガープさんには自分は敵わないことをわかっているのだろう。それにガープさんも、なにもルフィくんを殺そうとしているわけじゃないから、扱いに困っているのではないだろうか。

 ガープさんはポニクスについてはどうでも良いようだった。

 

「んん? そういえば遊鳥……という名前はどこかで聞いた覚えがあるぞ」

「えっ?」

「ああそうじゃ、クザンが言っておった! 海賊との戦いで援護してくれた旅人じゃろう、お主!」

「クザン……ああ、あの人ですか」

 

 あの氷の人ね。報告が入ってたのか、ガープさんみたいな偉い人も知ってるってことは、クザンさんも実はかなり偉い人だったり?

 

「あの時の礼ができなかったとクザンが言っておったぞ!」

「ええ……そんな、僕はただ一般人が巻き込まれてるのが許せなかっただけです」

「ふむぅ、みろルフィ! こういう精神が海軍に相応しいんじゃ!」

「やだー! おれは海賊になるんだ!」

「ええいうるさい! のぉお主、海軍に入らんか!?」

 

 ガープさんがルフィくんを山の中にぶん投げた。やばいな、あの山って猛獣とか居るって聞いたんだけど。何かあったらポニクスが庇うだろうけど。

 

「その……僕は海軍には入れません」

「何故じゃ? 人を守りたいという心はあるのじゃろう」

「だからこそ、人を殺せないんです。その人がどんなに悪党であろうとも。海賊を殺せない海兵は海軍に要らないでしょう」

 

 そう言うと、ガープさんは苦々しい顔をした。なにか……眩しいものを見るような、言いたいことをグッと堪えるような表情だった。

 

「お主……よくそれで海軍と海賊の争いに突っ込んだな」

「今思うと無茶ですけど、この体は常人より回復が早いですし、悪魔の実の力もあったので……。ですが、それに頼り切るのも限界があると、思い知らされることがありました」

 

 僕はガープさんに頭を下げる。

 

「ガープさん! 海兵にもなれない僕ですが、よければ鍛えてくれませんか!? もう、怪我をして誰かを心配させたくないんです! 人を殺さずに、生き残る力が欲しいんです!!」

「…………!!」

 

 ガープさんの表情は見えない。

 無茶なお願いだ。本人も海軍として忙しい立場だろう。でも、これしかないと思ったのだ。

 ガープさんはきっと、ルフィくんに真っ当な生き方をして欲しいのだと思う。そういう「正しい」生き方を、生き延び方をして欲しいのだと。

 でもルフィくんは過酷な海賊の道を選ぼうとする。それが不安なんだ。

 なんとなく、そういう()がガープさんから見えた。

 

「……わしとて暇ではない、そう何日もみられない」

「承知の上です」

「……厳しいぞ、短期間で叩き込むなら更に」

「はい、覚悟してます」

「…………人を殺さないと言う選択はこの海ではあまりにも厳しい縛りじゃ。それ相応の訓練を積まねばならん」

「…………」

 

 これでダメだったら、自己流でなんとかするしかない。それこそ、あの山で一人で猛獣と戦うみたいな。そんな武者修行を。

 しかし、諦めかけたその瞬間ガープさんからの圧がふっと消えた。

 

「先ずは組み手、それから悪魔の実、そして覇気……順番に、されど迅速に叩き込む。弱音を吐いたらすぐに辞めるぞ」

「────はい!!」

 

 その日から、僕の修行の日々が始まった。

 

 先ずは筋力がつかないことや自分の悪魔の実の能力について説明した。何事もまず事前の情報共有が大切だ。

 カードの中には簡単に人の命を奪えてしまう強力なモンスターもいる。いつも移動手段に使っている《ダークネス・シムルグ》や《霧の谷の巨神鳥》なんかは特に攻撃力も高い。

 

「ふむ……ならその体でできる力を流すような受け身や合気から学ぶか。能力は一度封印せい。海楼石に囚われても戦えるようにならんとな」

「海楼石?」

「能力者がそれに触れると悪魔の実の能力が使えなくなる。能力者に対抗するいちばんの手段じゃ」

 

 つまり、えんぺんと同じ能力を持った石ってことか……。なんだかマルコさんがえんぺんの話を禁じた理由がわかってきたぞ。

 ガープさんには一応話さないでおいた。僕はあくまでも旅人で、海賊と関わっていることを知られたら普通に処罰されそうだと思ったから。

 

「筋肉が無いなら技術を磨く! 先ずは……かかってこぉい!!」

「いきなり実践形式!? っ、行きますよ!」

 

 その後、僕はすぐ投げ飛ばされるわけだけど……不思議とその痛みすら爽快だった。

 強くなろう、絶対に。

 もうローくんやルフィくんの涙を見たくないから。

 








遊鳥の身長は154cmくらいを想定しています。体重も軽いもやし君です。もちろん筋肉も無いです。
デュエルマッスルは決闘者の必需品だぞ!!
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