ヒトヒトの実モデル“決闘者”withふわんだりぃず   作:月日は花客

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☆31:ふわんだりぃず×さかずき

 

「お主には見聞色の覇気の才があるようじゃな」

「けんぶんしょく?」

 

 それはガープさんに指導を受け始めて一週間経った頃だった。

 三日で合気道などの体術を死ぬ気で叩き込まれ、四日で能力の幅を拡張し淀みなく使えるように瞑想や研究に当てられた。

 筋肉は相変わらずだし体力もすぐに尽きるけど、ガープさんは僕のLPが昏睡に陥らない程度にきちんと調節して指導してくれるから、徹夜して指導されても平気だった。

 そんな折に、お昼ご飯を食べてながらふと言われたのだ。

 

「気配を察知する力や……感情なんかを強く認識する力じゃ。極めれば未来すら予見できる」

「そ、そんな力が僕に……?」

「今まで、誰かの感情を強く感じたり、生物の声無き声を聞いたことはないか?」

「え……たしかに、ルフィくんが攫われそうになった時は気配を強く感じたり、モンスターの意思を感じ取ることはできますが……。てっきり、危険な時に本能が過敏になってるか能力かと」

「それが覇気じゃ。見聞色なら、お主の言う『傷つけず勝つ』と言うことも可能じゃろう。なんせ極めれば相手の攻撃を予見してあらかじめ避けることができる。いくら攻撃しても当たらない相手に、そう長く突っかかるやつはおらん」

「見聞色の覇気……を、鍛えることがこれからの目標ですか?」

「そうじゃな、体術と能力についても並行して鍛えさせるが……わしはそろそろ本部に戻らねばいかん」

 

 そうだ、ガープさんは海軍の偉い人。ずっとここに要られるわけじゃない。一週間も滞在してくれただけ良い方だろう。

 

「ということで、助っ人を連れてきた!」

「助っ人?」

「わしの部下の……サカズキじゃ!!」

 

 そう呼ばれて出てきたのは、真っ赤なシャツを着た強面のおじさんだった。

 

「わしぁ稽古をつけろと言われて来やしたが……こんな若ぇもんの相手ですかい、ガープ中将」

「ぶわっはっはっ! サカズキ、こいつの歳はお前とそう変わらんぞ! 41歳じゃ!」

「はぁ? どう見ても16かそこらのガキでしょう」

「悪魔の実の能力で時が止まっておるんじゃ! まぁ歳の近いもの同士、仲良くやるんじゃな! 任せたぞー!」

「あ、ちょ……! はぁ……」

「…………」

 

 ガープさんは僕をサカズキさんに預けると、あっという間に去っていってしまった。どうやら出航の準備が近かったらしい。

 僕とサカズキさんは気まずい雰囲気の中、村はずれに取り残された。

 沈黙が流れる。

 

「……ええと、遊鳥旅途といいます。ガープさんにはお世話になりました、旅人をしています」

「……サカズキという。海軍では少将をやっとる。これからお前さんの指導をしろと言いつけられちょる」

 

 低い声で発せられる方言は、厳しそうな……いやでも、困惑も強いかもしれない。

 とりあえず、これからよろしくお願いしますと頭を下げた。そしたら、サカズキさんも帽子をとって挨拶を返してくれる。

 たぶんいい人だ。

 

「悪魔の実の説明をしゃあくれんか」

「えっと……名称はわからないんですけど、こんなふうにカードから……」

 

 僕は《炎獣王 ガルドニクス》を呼び出す。なんとなくサカズキさんに似合うと思ったカードだ。

 

「モンスターを呼び出せます」

「召喚……超人(パラミシア)か……? ともかく、稽古をつけるから好きにかかってきんさい」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 最近の僕は、モンスターを操りながら自分でも受け身や合気を使うこと……そして相手を無力化することを目標としている。

 見聞色の覇気は流石にまだ完成型まで至っておらず、取り敢えず覇気に頼らず頑張れ! というガープさんのお言葉に従っている。

 

 ガープさんほどじゃないけど、サカズキさんも背が高い。明らかに普通の人間のサイズじゃない。そんな人から一本取るのは、ぶっちゃけ僕の身体では到底不可能である。

 だから、その分をモンスター達で補う!

 

「《ふわんだりぃず×とっかん》《ふわんだりぃず×いぐるん》!」

「なるほど……視界を奪うのが目的!」

 

 先ずは二体に翼を広げさせ視界を奪い、こちらの動きを視覚的に奪う。

 体重差的に足払いとかではびくともしないのは経験済みなので、あえて動き的に上を向かせて、体幹の直線を崩す。

 そしてアドバンス召喚、《ふわんだりぃず×すのーる》! 三鳥とシロフクロウはさっきの二体とは違う、相手の視覚外からぶつかり意識と崩れかけた体幹に追い打ちをかける。

 体躯が小さい小鳥なので、勢いはあれど殺すほどの威力は無い。というか抑えてもらっている。あくまでも「体幹を崩す」ことと「思考を乱す」ことに集中させる。

 そして僕自身は背中に周り、その腕に手を──

 

「甘い!!」

「かはっ!?」

 

 サカズキさんの肘鉄が腹に決まる。

 しかし意識をしっかり持つ、受け身をなめらかにとって、もう一回とっかんといぐるんで目眩しを。

 

「同じ手はくらんわい!」

「わかってますよ!」

 

 これは目眩しではなく、相手の肩……関節を狙う動きだ。肩を抑えれば、人の腕の動きというのはほぼ制限される。また、体幹を崩すことにも大いに役立つ。

 いぐるんととっかんは攻撃力は弱いけれど、力は一般人の何倍もある。

 たとえ3メートル近い相手でも、つま先は浮く!!

 

「はぁっ……!」

「動きは良いが……策が見え見えじゃ!」

「あ゙っ゙!!」

 

 浮いた足で脳天に思いっきり蹴りを入れられ、僕の意識は暗転した。

 

 *

 

「すまんのぅ、こういう形式の指導は慣れちょらんかった」

「いえ……僕が甘かったです。流石海軍の少将さん」

 

 気絶した僕を、サカズキさんは取り敢えず修行に使っている村の空き家に運んでくれたらしい。ガープさんなら水でもかけられて強制的に起こされていたから、やっぱりサカズキさんは優しい。

 起きた時にはすっかり夜になっていた。

 

「怪我は大丈夫か」

「《ふわんだりぃずの旅じたく》で回復したんで、普通に寝たら治りそうです! 手加減感謝します」

「いや……わしも訓練にしては危険な事をやった」

 

 頭というのは人間の最大の急所だ。そこを踵落としで気絶させるレベルの衝撃を与えるのは訓練としては確かにやり過ぎかもしれない。

 でも、僕はこのくらいで弱音を吐いてちゃ旅を続けられないのだ。

 

「今夜はもう訓練は終わりにしましょうか、サカズキさんお夕飯食べました?」

「いや……まだじゃ」

「なら作りますよ! 好きな料理は何ですか?」

「……米と辛いもの」

「なら麻婆茄子でも作りますか。待っててくださいね〜」

 

 麻婆茄子は一人暮らし時代もよく作った料理だ。程よい辛さでお米が進む。僕も好きな料理である。

 

「暇でしょうから、麻雀でもしてます?」

「麻雀?」

「あ、知ってます? 麻雀」

「いや知っちょるが、何故」

「見聞色の覇気を鍛えるために、こういうので心の声や感情を機微を悟る訓練をしろとガープさんに言われまして」

「いやそれ完全に遊ぶ言い訳……」

「麻雀卓もそこにありますよ! ルールご存知なら後でやりましょう!」

 

 実際、夜の麻雀を始めたら何となく感情の察知が上手くなったような気がしたのだ!

 ガープさんに頼って良かった、あの人の訓練は苛烈だけどきちんと身を結ぶものだ。

 サカズキさんにそう言うと、なにかきゅっと口を注ぐんで水を飲んでいた。

 

「じゃが二人では……」

「あ、僕のモンスターがやってくれますよ」

「打てるんか!?」

 

 はい、《雀姉妹》がいるのでね、なんなら彼女らの方が麻雀強いよ。この前四暗刻出されてガープさん共々点数ぶん取られた。

 

「しばらくよろしくお願いしますね、サカズキさん!」

「……おう」

 

 作り上げた麻婆茄子は普段より辛い仕上がりになったけれど、サカズキさんはおかわりもしてくれた。

 








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